Fate/Silverio answer 作:いろはす(*´Д`*)
ゆっくり更新していきます。
不滅の光/prologue
───歪み捻れた、七つの歴史を巡れ。
───その命、魂、意志全てを薪木とし。
───最果てにて、世界を救ってみせろよ“後継者”
───その暁に、貴様は◼️◼️へ至るだろう。
───嗚呼、天に舞い戻れよ◼️◼️! 遍く邪悪、その一切を滅ぼして。煌めく明日を目指すのだ!
〜γ〜
「……キリエライト。こんなところで何をしている」
白髪赤目の少年、シエル・エンプティは訓練で火照った体から出る汗をタオルで拭きながら、廊下で右往左往とする知り合いの少女を見かけて声を掛けた。
「あ、シエルさん。フォウさんを見かけませんでしたか?」
声を掛けられた少女、マシュ・キリエライトはシエルに駆け寄りながら、カルデアを闊歩する謎の小動物について尋ねる。
「フォウさん……。ああ、あの謎の小動物の事か。見かけてないけど、どうしたんだ?」
「いえ、朝から見かけないので。少し心配で……」
「心配? 別にアイツをとって食う奴なんてカルデアに、は……いるな」
シエルの脳裏に浮かぶのは、カルデアに在籍するマスター候補の連中だ。アイツらなら謎の小動物を実験台代わりにするなんて事は大いにあり得る事態だ。キリエライトが心配するのも良く理解出来る。
「……暇だし」
「え?」
「訓練終わって暇だし、探すの手伝うよ。今度飲み物でも奢ってくれ」
「あ、ありがとうございます! シエルさん!」
「うっ、あ、ああ、気にするな」
顔が熱い。
多分、頬が赤くなっているだろう。だが、これは決して照れているわけではない。ないからな。訓練後だから、体が火照ってるだけだ。
顔を背け、ぶっきらぼうにシエルは「ほら、行くぞ」と背中越しに言い放つと、スタスタと足取り早く歩き出すのだった。
──そして、現在。
「……案外早く見つかったな」
「フォウ! フォフォウ!」
頭に乗られて、顔を前脚でテシテシと叩かれながらシエルは呟いて、廊下……カルデア正面入り口にて爆睡していた茜色の髪をした少女を見つめる。まだ寝惚けているようで、「ここは…?」やらマシュの質問に対して「自分はここで寝ていたのか……?」と言っている。あと、そろそろ謎動物は顔を叩くのを止めろ。焼くぞ。
「フォウ!?」
「っ、いつか焼くぞ。謎動物め……」
頭から降りる瞬間に尻尾で叩くとは油断していた。
シエルは鼻を抑えて、忌々しそうにフォウを睨むが、当の本人はどこ吹く風と知らん振りをして走り去っていく。
と、そこで。
互いの自己紹介が終わったのか、マシュと少女の目がこちらに向いていた。
「貴方は…?」
「っ、俺は……」
少女の目、それと合わせた瞬間。自分の内側から轟っと、激しい熱が生まれ、すぐに消えていった。初めて感じたその感覚に戸惑いながら、シエルは己の名を告げる。
「俺は、シエル。シエル・エンプティ……少し枠は特殊なだがカルデアのマスター候補の一人だよ。よろしく、っと……名前は?」
「私は藤丸立香。よろしくね! えっと、なんて呼べばいいかな?」
「シエルでいい。エンプティ、とはあまり呼ばれないしな」
「うん。じゃあ、シエルくんだね……綺麗な響きだね!」
「っ、あ、ああそうか。一応、ありがとうとは言っておく……」
なんだこいつ、口説いてるのか? いや、そんな感じはしないから……まさか天然物か。……おそろしい。
シエルは顔を背けて、赤くなっている顔を見せないようにする。この少年、女性に対しては全くと言っていいほど耐性がない。手が触れ合うだけで、頬を染めるぐらいだと言えば分かるだろう。乙女か。
「ところで、先輩はどうしてこんなところで睡眠を?」
「先輩? ああ、私のことかー。えっと、なんか変なものと戦ってたんだけど……気づいたら意識無くなっていたんだよね」
「……酔ったんだろうな。入館時のシュミレート、量子ダイブは慣れていないとかなり脳にくる。恐らく、それだろう」
「ああ。そういうことでしたか。納得しました」
「んん? 私は納得してないのだけど? 何を話しているのか、全く分からないよ。専門用語 ワタシ ワカラナイ」
二人が納得した、と頷き合っているのを見て立香は頭上にはてなマークを浮かべる。シュミレート? 量子ダイブ? なんですかそれはー! といった状態だ。
「簡単に言うと、船酔いだよ。彼も言ったが、酔ったのさキミは」
と、そこでもう一人が登場した。
シルクハットを被り、緑のスーツに身を包んだ長身の男性だ。その姿を見てマシュは「レフ教授!」と会釈し、対照的にシエルは顔を顰める。初めて会った時から、
「やあ、マシュ。それにシエルくんも、今朝の訓練も凄かったよ。君の剣は、相変わらず綺麗だ」
しかし、レフはシエルの様子を見ても気にもせず、にこやかにそう言ってみせる。その態度、言動にますます苛立ちが募るが「……そいつは、どうも」と吐き捨てぐっと堪えた。
「えっと、貴方は?」
「ああ、すまない。私は、レフ・ライノール。カルデアで働く技師だよ。君は……藤丸立香くんだね、一般公募で選ばれた」
「あ、はい! スカウトされて、ここに来ました。これからよろしくお願いします!」
「こちらこそ。共に人類の為、世界の為に頑張ろう」
握手を交わす二人。
何故だか、本当に不思議だが……彼女が奴と触れ合っている事が酷く気分が悪かった。胸がムカムカする。
「……で、教授。何か用があるんじゃないんですか? 急いでいるようだ」
時計を気にするレフに対し、シエルは食い気味に尋ねた。
「ああ。そろそろ、所長の説明会が始まるからね。君たちも急ぎ出席した方がいい。初日早々、睨まれたくないだろう?」
「ははは、そうですね。説明会はどこで? というか場所聞いてもわかんないか……」
「大丈夫です、先輩。私が案内役を務めさせてもらいますので、ご安心を」
「ついでに、俺もな。行く場所は同じなんだし」
「わーい、ありがとう二人とも!」
私は感動した! と笑顔を浮かべてマシュに抱きつく立香。マシュは「せ、先輩!?」と驚きながらも楽しげだ。そんな二人を微笑ましげに見るレフは「ふむ、マシュが行くということは。私も出席しなくてはね」と言い、
「では、五分後には中央観測室で説明会が始まる。そろそろ行くとしようか、三人とも」
「はーい!」
「了解です」
「……」
一人は元気に、一人は静かに、一人はテメェが仕切るのかよ結局、と各々がレフの後に続いて行くのだった。
「……シエル」
「なんですか、アニムスフィア所長」
中央観測室、そこへ到着したレフ一行。
辺りを見渡すと、既にシエルや立香達以外のマスター候補やそれぞれの部署のトップ達が着席して待機していた。時計をチラ見すると、僅かに数分の遅れが出ている。
怒られるな、と感じたシエルの勘は当たり、目をギラつかせたオルガマリー・アニムスフィアがシエルの腕を取って、中央観測室の外に連れ出したのだ。
「あなた、
特別枠。
優秀なAチーム、他のチームとは違う枠組み。それがシエル・エンプティが与えられたものだ。所長の権限迄には及ばないものの、それ相応の権限と待遇は所有している。その彼が遅刻していては、下にも示しがつかない。
「申し訳ありません。以後、気をつけます」
「……はぁ。今回は許します。ですが、今後は上の立場にいる自覚を持って行動してください。いいですね?」
「了解しました」
「そ、それと……」
そこで口籠もり、頬が薄く染まる。
「ん、んんっ。今夜は、その、私と食事をすること。い、いいですね? 返事は?」
「は、え、その」
「返事は?」
「……わかりました」
渋々了承する。
何故自分なんかと食事がしたいんだ? というか、女性と食事を取るなんて滅多にしないが……作法とか平気だろうか。と頭を悩ませる。
「それでは、戻りますよ」
先ほどまでの雰囲気がガラリと変わり、怜悧な雰囲気へと切り替わる。シエルは「はい」と頷いて、中央観測室の扉を開いた。
「あっ、シエルくん……」
中央観測室に入り、着席すべく最前列へと向かうと、自分の席はちょうど立香の隣だったらしく、彼女はシエルの事を申し訳なさそうな顔をして見ていた。
隣に座ると、立香は小声で話しかけてくる。
「……ごめんね、私のせいで。怒られたよね?」
「いや、気にするな。藤丸の所為じゃないさ」
「でも……」
「はぁ、今度何かあったら助けてくれよ。それでチャラだ、どうだ?」
「う、うん。任せて…!」
ぎゅっと握りこぶしを作る立香。とても頼りに出来そうもない、普通の女の子だ。まあ、これで気も楽になっただろう。とシエルは「そろそろ黙らないとな、怒られるぞ?」と言って前を見る。立香は「う、ん」と頷くが、どこか心ここに在らずのようだ。
「では、ようこそ特務機関カルデアへ。私は所長のオルガマリー・アニムスフィア。貴方たちは───」
ぱたり。
「ん? 藤丸……? これは……」
「すぅ……すぅ……」
「寝ている……ああ、マズイな」
そう、大変マズイ。
先ほどは怒りの矛先がシエルに向いたが、これは───
「ふ、ふふ。舐められたものね……。一般公募……素人同然の子が……」
「せ、先輩〜。起きて、起きてくださぁーい」
マシュが立香を揺らすが「んんー?」と彼女は寝ぼけたまま、すぐに夢の国へGOしている。
「くっ、貴女! ふざけないで!」
パシーンッ、と痛烈な平手打ちが立香にお見舞いされた。
「へぶぅっ!? な、なに!? あ、おはようございます!」
「お、おはようございます……? は、ははは……貴女」
「はい、何でしょう!」
「今すぐ、出て、行きなさい!」
「ふぇっ!?」
立香は戸惑いながらも、自分がやらかしたことに気づいて「わかりました……すみません」と中央観測室を出て行く。マシュがその後を追って行ったので、自分は行かなくとも平気だな…と考えたシエルは目の前の人を宥める事に専念する。
「落ち着いてください、所長。説明会の続きをしましょう。時間もないでしょう?」
「……そうね」
「それと、彼女……藤丸立香にも悪気は無いんですよ。慣れない量子ダイブで体調が悪かったんです。今回は大目に見てもらえませんか? 彼女も反省しているようですし」
「…………」
長い沈黙、その後に。
「……仕方ないわね」
と、一言。
その言葉を聞いて、やはりこの人なんだかんだで甘いよな……とシエルは思う。こういうタイプは付け込まれやすいし、堕ちやすい。悪に利用されなきゃいいんだがな……と内心で呟いた。
「んん。それでは、説明会の続きを──」
そして、説明会は淡々と進んでいき、レイシフトの準備段階へと移行して行く。
────さあて、念には念を。爆破の規模を増やしておこうかな……不確定な要素もある事だからね。
悪意の顎門が、光を喰らわんと牙を剥く。
まだprologueは続きます。
というか、タイトルずっと同じです。番号は付けますが。
現在、prologue3が執筆終了。prologue4を執筆中です。
自分は大体3日、4日。調子が良いと1日か2日で一話執筆できます。しかし、展開に行き詰まったり納得出来ないと何度も消して書いてが続くのでかなり遅い更新になると思います。そこのところご了承ください。
では、また次回。