Fate/Silverio answer 作:いろはす(*´Д`*)
今回から少しの間は、羽休めで幕間の物語を投稿するよ。オルレアン編も少しずつ同時進行で書いているから、ちょっと待っていてね。
今回はマシュマロの一日、マシュの短編です。
一人称で書いてます。とりあえず、天使かよ……ってなりました。
こんないい子を序章であんなにいじめるなんて! 鬼畜かよ!(犯人)
マシュマロの一日
「よしっ」
皆さんおはようございます。マシュ・キリエライトです。
私はカルデアに所属する職員でもあり、現在は先輩──藤丸立香のデミ・サーヴァントも務めています。周りからは「マシュ」や「マシュちゃん」などと呼ばれていますね。あ……シエルさんだけ、未だにキリエライト呼びです……っ。何故かむかむかしますが、ぐっと我慢します。朝から怒るのは良くありませんので。
「むーっ」
あれ? 笑ったつもりですが、リスのように頬が膨らんでいます。不思議です! と私が鏡の前で自分の顔とらめっこをしていると、部屋に先輩が入ってきました。大変可愛らしく、さらに戦闘の際には頼りになる自慢の先輩です。
「あ、いた。マシュおはよー、一緒に食堂行こ?」
「はい! お供させていただきます!」
朝ご飯……今日はなんでしょうか? と先輩とお話ししながら食堂へ向かって歩いていきます。廊下を歩いていると、忙しなく働く他職員の方々が駆け回っています。皆さんの顔には疲労が見られますが、決して諦めるような事はしてません。一刻も早くカルデアを復旧させる為に身を粉にしています。私も、見習わなくてはっ。
──もう冬木の特異点から帰還して、早くも三日が経ちました。
最初はこの歩いている廊下も酷い状態でした。瓦礫が散乱して、機材がバラバラになって至るとに点在している──遺体だって、転がっていました。見慣れた方が倒れ伏したまま動かない……その光景を見て呆然と立ち竦んでいましたが──シエルさんが、言ったんです。
「……無念のまま散っていった者も背負って、俺は必ず未来を取り戻そう。キリエライト、君はどうだ。そのままでいいのか?」
と、瞳に怒りと決意を宿して。その目に見られた瞬間、胸が焼けるように疼いて──気づいたら私はシエルさんの手を握りしめていました。きゅっと、力強く。シエルさんは何故か顔が赤くなっていましたが、どうしてでしょう? ダ・ヴィンチちゃんに聞いてもニヤニヤするだけですし、他の人も微笑んでいるだけで教えてくれませんっ。いじわるです。
そうやって思い出して頬を膨らませていると、前からシエルさんが歩いてきました。どうやら訓練後のようで、首からタオルを掛けています。シャワーを浴びていたのか、まだ髪が乾いておらず、僅かに濡れた髪から水滴がポツポツと垂れていました。かなり薄着で、普段は軍服で隠されていた引き締まった二の腕が見えます……私もあれぐらいになりますかね? 要訓練ですっ。
「わっ、なんか……えっちぃ……」
「先輩?」
「わひゃっ!? な、なにかな!?」
「い、いえ。何か言っていたので、気になってしまいました」
「う、ううん! 気にしないでマシュ、何にも言ってない「藤丸、キリエライトか。おはよう」ひゃいっ!」
「だ、大丈夫ですか?」
「す、すまない。驚かせてしまったな」
「だ、大丈夫だよ! 全然ビックリしてないから! うんうんっ!」
と顔を赤らめ引きつった笑みを浮かべて食堂に入っていく先輩を、シエルさんと並んで不思議そうに見つめます。すると、シエルさんは少し落ち込んでいる様子で、
「俺、何かしたのかな……」
と呟いています。少し、可愛いかもです……先輩が言っていた事が分かった気がします。これがギャップ萌え、なんですね先輩っ!
〜γ〜
「あ、シエルさん!」
シュミレータールーム。修復が完了したその部屋の中で、私は壁に背中を預けて立っているシエルさんに声を掛けました。どうやら、何か読んでいたようで、手には分厚い表紙の本があります。
「ああ、キリエライトか。早いな」
「いえ、そんなことは……それは本ですか?」
「ん、ああ。勉強だよ、知識は力になるからな」
「なるほど。どんなものを読んでいるんですか?」
「えっと、今日は──宗教、に関しての本だな」
「宗教、ですか?」
「ああ。宗教の成り立ち、役割、何を信仰しているのか……まだ読んで間もないからあまり詳しくは語れないが、中々面白いぞ」
「そうなんですか。私も今度、読んでみますねっ」
「良ければ、貸すが」
「本当ですか! あ、でもまだ読んでいますし……」
「いや、気にしなくていい。他にも本はあるからな……ヘレスさんが押し付けてくるんだよ。プレゼントだ、って」
「あー……」
嬉しそうですが、どこか面倒そうな顔をするシエルさんを見て、納得の声が出ました。ロイドさんがシエルさんに良く構っているのを見かけますし、何かをプレゼントしている姿も日常的です。
「だから、気にしなくていいぞ? 読むべきものは、まだ沢山ある」
「そ、それなら、その……お借りさせていただきます」
「ああ、じゃあ後で渡そう。……そろそろ、行こうか」
「あ、は、はいっ」
話すのが楽しくて忘れていました……今からシエルさんとの戦闘訓練なんです。先輩との連携訓練も有るんですが、まだまだ強くなりたい私はシエルさんに頼み込みました。二つ返事で了承してくださったシエルさんとの戦闘訓練、模擬戦は二日前から始めています。……負け続きなので、今日こそは勝ちたいです。
──というか。何故、サーヴァントに勝てるんでしょう? 人間、ですよね?
本人に聞いても「本気でやれば、出来ないことはないだろう?」と言うだけですし……。シエルさんの〝本気〟はレベルが尋常じゃないんですよね……いえ、私が本気ではない訳じゃないですが。
セイバー戦、他の戦闘にも共通しますが……勝つことへの執念が恐ろしいほどに高いんですよね。悪いことではないんですが……何とも言えないです。
刀を構えて此方を見据えるシエルさんを見て、私も盾を構えます。一瞬でも目を離せば、その瞬間に懐に入られてしまうので、彼から目を離すのはダメです。初日は姿を見失い、その瞬間に背後から刀を首に添えられて負けてしまいました。昨日も前日の失敗をしまいと意識をしていましたが、飛んできたナイフに気が取られ、またも同様に敗北……今回は引っかかりませんからねっ。
「勝利条件は相手に負けを認めさせるか、若しくは戦闘不能に陥らせること」
「敗北条件は負けを認めるか、戦闘不能に陥るか……ですね」
「ああ。前回、前々回と同様だよ」
「……今回は、負けませんっ」
「ああ、いい気概だ。だが、俺も負けられない」
ジリジリと部屋が暑くなっていきます。緊張しているのか、体から汗が止まりません。カウントダウンが始まり、そして──!
「フ──ッ!」
「それは、もう見ましたっ」
ナイフが三本勢いよく飛来して来ますが、サイドステップでそれを回避。地を這うように低い姿勢で走ってくる彼を目で離さないようにしながら、私も前進──刀と盾が甲高い音を立ててぶつかり合いました。
「ぐぅ……!」
──四連撃。止まらず繰り出された高速の斬撃が盾を弾き、私の体に迫ってくる。その攻撃を無理矢理体を捻らせて避け、バックステップ。刀の間合いから離れますッ。
「……やるな。短い時間だが、成長したんじゃないか?」
「はぁ、はぁ、そう…でしょうか?」
──嬉しい。
驚いたように目を僅かに見開く彼を見て、その感情が胸に満ちていく。私も成長してるんだ……先輩や彼の隣に立つにはまだ未熟だけど、ちゃんと私も……っ。
「さて──じゃあ、続けるぞ」
「はいっ! マシュ・キリエライト、頑張ります!」
──いつか、いつかは……私もっ。
盾を握りしめる手を強めて、私は駆け出しました。
〜γ〜
「ふんふんふん〜♪」
「おや、マシュちゃんじゃないか。機嫌良さそうだねぇ?」
「あ、ロイドさん。こんばんは」
シエルさんとの戦闘訓練が終了し、その後は彼の自室で互いに本を読んで過ごしました。借りる、と言っていた「これで君も枢機卿!」も借りれましたし、今日は大変満足な一日です。
──そうやって鼻歌交じりに自室へと戻る最中、廊下でロイドさんと出会いました。挨拶をすると、和かに笑みを返されます。そして、イタズラ味が溢れた笑みに変わりました。……嫌な予感が。
「うんうん、こんばんは。それでぇ〜? どうしてそんなに機嫌が宜しいのかなぁ? お姉さん気になるなぁー!」
「ひゃ、ろ、ロイドさんっ!」
「ふふ、うりゃうりゃー!」
む、胸がっ、わ、鷲掴みにっ!
「ははは、ごめんごめん。いやぁ、最近徹夜続きで癒しがなくてねぇ? ちょうどマシュちゃんがいたから、癒されちゃおーって思ってさ。悪気はないのさ、申し訳ないね」
「あ、その…そういう事でしたら……お疲れ様です」
「君はいい子だなぁ……」
しみじみと呟くロイドさん。そして、何かに気づいたように「ん?」と声を上げました。目線が私が持つ本に向けられています。あ、確かこの本はロイドさんが……。
「その本……確か、シエルに渡したやつじゃないか。どうして君が?」
「お、お借りしました。他にも読む本があるから、と」
「そっかそっかー、なるほどねぇ」
「は、はい。そ、その、ダメでしたらシエルさんにお返ししますが……」
「ん? ああ、いや、大丈夫だよ。ボクは気にしてないから、読むといい。シエルが君に貸したのだからね、ボクは介入しないさ」
「あ、ありがとうございますっ」
「ただ、うん……」
と、そこで少し顔を俯かせました。体調が悪いのでしょうか? そう思い尋ねると、
「体調は大丈夫さ。あ、いや、徹夜続きだし大丈夫ではないか……」
「でしたら、やはり医務室へ!」
「はは、大丈夫だって〜。うーん、ただ、シエルがなぁ……」
「シエルさん……?」
「君みたいな、同年代の子と仲良く本の貸し借り……か」
「えっと……」
柔らかな笑みを浮かべ、まるで自分の子供を慈しむような目をしているロイドさんを見て言葉が出て来ません。このような態度の彼女は見たことありませんでしたから……。
しばらくそうやって何かを思案していましたが、ロイドさんは何時ものイタズラな笑みに戻り、私の肩を軽く叩いて去っていきます。そして、最後に──
「これからも、あの子と仲良くして上げてね」
──と、言って姿を消しました。
「な、なんだったんでしょうか……?」
……ですが、最後の言葉。はい、当たり前です。シエルさんは大切な仲間なんですからっ。あ、あと、その、は、初めての……お友達なんですからっ、はい!
───誰もいない静謐な廊下、その真ん中で握り拳を作って少女は顔を赤らめて微笑んだ。
【幕間の物語】マシュマロの一日【おしまい】
──無垢な少女は、自分の感情に気づかない。だが、もし気づいた時には、大きく人間として成長するだろう。
彼女がシエルに抱いている気持ちは「尊敬」「友情」が今のところ大半です。恋愛的な感情については自分でもわかってません。行き着く感情がどう決着するのかは……今後の展開次第でしょう。親友、大切な仲間、それとも恋人か……さあてどうなるかなぁ。
次回は立香編を投稿しようかな、と思ってます。今執筆してるからしばらくお待ちを……。いやぁ、書く題材決めていたけど、これはもう少し進んでからだなぁ、って内容だったんで構想練り直してます。はい。
では、また次回!