Fate/Silverio answer 作:いろはす(*´Д`*)
圧倒的難産! 書き上げるのにかなり時間が掛かったよ……。
では、オルレアン編の始まりです。
神へ捧げよ、汝らの血肉──
太陽の光が届かない、暗く陰湿とした部屋。
どこか寒々しさを感じる部屋の中心、その場所には巨大な逆十字が床に突き刺さっており、それを囲むように周りには異様な数の直立した棺桶が設置されていた。そして、それら全ての棺桶の隙間からは夥しい量の血液が溢れ出ていて、まるで神に供物を捧げるように──逆十字へと流れていた。
逆十字は血液が捧げられる度に脈を拍って胎動し、歓喜と狂喜に満ちた叫びを上げる。──だが、まだ足りぬ。まだ、捧げよ。
──
その光を浴びた、血の狂信者は狂気に満ちた雄叫びを上げて〝嗚呼、我が神の為〟と男も女も、母も父も、老人も赤子も、その一切を慈悲も容赦も無く命を刈り取り、血を啜り、魂を売って大地を赤く染め上げる。
──全ては楽園の創世の為に。
誰も彼もがその為に血を流して、〝我が神に、この身を捧げます〟と歓喜に震えたまま死んで逝く。それこそが、真の救いだと
あまりにも、悲惨。
あまりにも、無慈悲。
あまりにも、冒涜的。
この地は既に……救いようが無い。悍ましい狂気の毒に、侵されてしまったのだから。
逆十字、その前に佇む神父服の壮年の男は嗤う。
「楽園の創世は近い──しかし、迷い込んだ子羊がいるようだ」
星詠みの観測者、焼却された世界を救わんと奮い立った英雄の卵。それが、この地に足を踏み入れたようだ。
「愚か、というべきか。運が無かった、というべきか──どちらにせよ、彼らには退場頂こうか」
だが、そうだな。
「折角訪れた優秀な人材だ……彼らを贄にするのもいいか。嗚呼、それがいい、そうするべきだ」
彼らを楽園創世の礎にしよう。世界の為に役立てるのだから、これ程名誉なこともないだろう? と神父は目を狂気に輝かせる。己こそが正しい、そう信じ切った者の目だ。
「さて、ならば──
闇に語りかける──すると、長身痩躯の人間が現れた。その体は血に塗れ、臓物の肉片がこびり付いていた。右手には鋸のような鉈を持ち、左手には古めかしい銃を握っていた。
「仕事だ。なに、いつも通りだ。君たちは自由に獲物を狩ればいい。だが、優先順位は異邦の者だ。いいな?」
「◼️◼️」
「ああ、それで結構。では、始めようか──」
──狂気と信仰の闘争を。
「無論、〝勝つ〟のは私だとも」
必ず創世してみせよう──
〜γ〜
過去のフランスに特異点が発見され、レイシフトの決行時間や現地での行動を決める
──扉を開けて手をひらひらと振り、自室に入ってきたロイドを見て小さなため息を吐く。……何をやっているんだ、この人は。
「やあ、シエル。特異点が見つかったんだって?」
「ヘレスさん……管制室に居なくていいんですか」
「んー、大丈夫さ。ボクが居なくても何とかなるとも。それに君がレイシフトしたら、ボクだって管制室に戻るしね」
「そうですか」
沈黙。それ以降会話が途切れ、シエルが荷物を鞄に入れる音だけが部屋に響いている。そしてロイドはその隣に座り込み、彼の横顔をじぃっと見つめ続けていた。時折、つんつんと指先でお腹やら頬やらを突いて遊んではニコニコと笑顔を浮かべており、大変楽しそうだ。
シエルはそれを無視して黙々と準備を進めていく。彼女に悪戯されるのは日常的なので、もうすっかり慣れてしまった。むしろ、ここで反応してしまえば、さらにロイドはシエルを構い倒してくるだろう。まるで、我が子を愛でるが如くそれはもうベタベタと。そうなると凄く面倒なので、反応せずにされるがままが安定するのだ。
「んー、癒されるなぁ」
「準備が完了した。管制室に向かいますよ、ヘレスさん」
最後の道具を突っ込み、鞄をキツく閉じた。それを肩に背負って立ち上がると、シエルがいきなり立ち上がった事でバランスを崩した彼女を見下ろしながら、そう言い放った。答えを待たずに入り口へと歩き出し、部屋から出ようとした瞬間──
「あーん、待ってよー。渡すものがあるんだーいっ」
「ぅぐっ、こほっこほっ……渡す、もの?」
──勢いよく首根っこを掴まれて、後ろに引っ張られた。シャツが喉に食い込んだ所為で、軽く咳き込みながらシエルは尋ねる。すると、ロイドは懐から
「これは? 何かの薬みたいですが……」
「うん。君のために調合した特別な薬さ、効果は
「確かに、それは……」
凄い。凄過ぎる、と言えた。回復はまだ分かるが、再生とは……しかし、毎度傷だらけになる自分には持ってこいの効果の薬だった。念の為鞄に治癒魔術が刻まれたスクロールや回復薬を入れていたが、それが要らなくなる勢いだ。
錠剤を持つロイドの手に手を伸ばし──避けられた。眉を顰め、自分の為に作ったものなのでは? と首を傾げる。
「これを使う上で、必ず約束して欲しい事があるんだ。聞いてくれるかい?」
「勿論」
「よろしい。えっと、ね……先ずだけど、これを使用する際は最初に赤、次に青の錠剤を含んでくれ。逆じゃダメだし、同時に呑むのも禁止だ。分かったかい?」
「はい」
「ん、後はだねぇ……使い所をちゃんと見極めるように。もう、どうしようもない! このままでは死ぬっ! って時じゃなきゃ使用は禁止だ。過剰な回復、再生はむしろ身体を壊すからね」
「はい、了解です」
「最後に……本当はこの薬を君に作りたくなかったし、渡したくは無かったんだ。如何してか分かるかい?」
「……カルデアの備蓄が減るから、勿体ない、とかですか?」
「それもあるけど、一番は違う」
「それは、一体──」
──と、そこでロイドは顔を盛大に顰めて言った。
「この薬を使う度、君の命は削れていく」
それが代償だ、と唇を噛んだ。そしてロイドの言葉を聞いて、シエルは一瞬眉を顰めるが──その程度か、と呟いた。
「問題ありません。その程度で済むなら、俺は構わず使用します」
「ん、そっか……分かった。覚悟はしてるようだし、君に渡すよ。だけど、あまり使わないでね?」
「ええ、なるべくそこまで追い詰められないようにします。俺もそんな無様にやられる訳にはいきませんから」
「うん。よしよし、なら安心だっ! じゃあ管制室に向かおうか! ほらほら、遅れてしまうぜ?」
「はぁ、元々貴女が来たから遅れたのでは……」
「何のことかな! さあ、行こう! 新たな特異点が待っているぞぅ!」
「っ、引っ張らないでください。自分で歩けまっ──!」
「まあまあ、良いではないか良いではないかぁ〜」
「ぐっ、ぅおおお!?」
ずるずる、ずるずると引き摺られていくシエル。何でこんなに力強いんだ、この人!? と困惑しながら、二人は管制室へ向かうのだった。
〜γ〜
管制室。
爆破の影響で悲惨な有様だったが、ここ数日の間でかなり修復が進んでいた。壊れた機材は元に戻り、転がっていた瓦礫や亡骸も見当たらない。──カルデアの一般職員、魔術師である職員が共に協力して奮闘した結果である。
勿論、レイシフトする為のコフィンも修復が完了しており、起動の時を今か今かと待ち望んでいる。だが、もしもの時を想定して現在も不備が無いかのチェックを職員数人で取り掛かっていた。
その様子を見ながら、シエルは刀を研いで精神を集中させる。これより始まるのは世界を救う旅路の最初の難関──気は抜けない。全力で駆け抜けて、必ず勝利を掴んでみせる。
──と、そんなシエルの元に歩み寄る男性が一人。
彼はシエルの肩を後ろから叩いて「よう」と、快活な笑みを浮かべて話しかけた。青い装束に身を包んだ槍兵、ランサーのクー・フーリンである。立香に召喚された彼はどうやら冬木の記憶があるらしく、最初からかなり友好的だ。ここ数日はシエルと模擬戦をよくしており、良き指導者となっている。
「ランサーか、俺の所に来て藤丸達は大丈夫なのか?」
「おう、問題ねぇよ。マスター達は準備中でよ、暇だからこっちに来た。お前さんと話しとこうと思ってな」
「そうか」
「おう、そういうこった」
そう言って、クー・フーリンはシエルの隣に座り込む。そして、シエルが持つ刀に目を向けて、疑問を口にした。
「お前さんが持ってるこの刀……一体何なんだ?」
「何、とは?」
「見たことねぇ金属が使われてるし、柄近くには妙な気配を放つ結晶が埋め込まれてるし──冬木から気になってたんだよ、そいつ」
「ふむ……何と言ったらいいか……」
「なんだ、坊主も理解してねぇのか?」
「いや、そういう訳じゃ無いんだが……いかんせん特殊な物だからな、説明が難しい」
「んなもん、簡単でいいぜ、簡単で。坊主が分かる範囲で問題無い」
「そうか、なら──」
刀の全体を指差して、シエルは「これはアダマンタイトだ」と言い、クー・フーリンは「アダマンタイト?」と首を傾げる。
「アダマンタイト、星辰奏者専用特殊合金──らしい。これを使うことで、俺は真の能力行使が可能になる。簡単に言えば、魔術を使う際に必要な触媒だな」
「待て待て、そのアダマンタイトってのは分かったが。先ず星辰奏者ってなんだ? 聞いたことねぇぞ、そんな言葉。それが坊主の身体能力、回復力、後は妙な力に関係あるのか?」
「……そうか、そこの説明もしなければいけないのか。忘れていた」
「おい、坊主」
「そうだな、俺の身体能力やその他諸々に関係している。星辰奏者と言うのは、特殊な強化措置──体を手術して、成功した者の事を言うんだ。高い確率で死亡するが、適正すれば超人的な力を得る事が可能になる」
「人体改造……それがあの力を……はぁ、人間の技術ってのは凄いもんだなぁ」
「びっくり人間代表が何を言ってるんだ」
「ひでぇっ! んで、その強化措置ってのは誰にでも受けられるのか?」
「……受けられるが、ヘレスさんはやらないな」
「あ? あの変な姉ちゃんが?」
「あの人が作り上げた技術だからな。強化措置も、アダマンタイトの武器作成も、セイファートの作成もヘレスさんしか出来ないんだ」
「はぁ……マジかよ。人は見かけによらねぇな、って今聞きなれない単語が聞こえたが、セイファートってなんだ?」
「星辰光、つまり俺が扱う能力を底上げする道具だ。刀に埋め込まれている結晶がソレだよ」
「ほーん、こいつがねぇ」
ツンツンと青い結晶を突いていると、後ろから立香達の声が聞こえてきた。どうやら準備が完了したらしい。立香が「おーい」と呼びかけている。シエルは刀を鞘に納めて立ち上がり、クー・フーリンと共に彼女達の元へ向かうと、立香とマシュは既にコフィンの前で待機していた。見るとどちらも武装しており、立香は腰に一本の短剣を差して、カルデア礼装を着用している。マシュも盾は出していないが、デミ・サーヴァント状態になっていた。
「藤丸、その短剣……」
「うん。ロイドさんに貰ったんだ、護身用に持っていきなさいって」
立香の腰に吊られた鞘に入っている短剣、その柄に見慣れた結晶が付いているのを見つけて、不思議に思って尋ねるとその言葉が返ってきた。
「そうか、怪我はするなよ」
「……う、うん。ありがとっ」
「ああ」
「……」
「……」
変な空気になったが、そこで丁度ロマンがやって来た。手にはタブレットを持ち、耳にはインカムを装着している。顔は緊張で強張っているが、イレギュラーな冬木を除けば初めてのレイシフト、初めての特異点攻略だ。彼がそうなるのも無理はない。
「さて、集まってくれてありがとう。もう一度、目的の確認をするけど、いいかな?」
「はい、大丈夫ですドクター」
「私も平気です」
「俺も問題ねぇよ、優男」
「同じく、問題は無い」
それぞれの返答を聞いて頷く。
「うん。よし、じゃあ確認だ──我々の目的は特異点の探索及び修正。そして、何処に存在する聖杯の奪取若しくは破壊。簡単に言ってしまうとこの二つだ。しかし、コレが難しい。沢山の困難があるだろうし、想定内になる事の方が少ないだろう。それでも、君たちは世界の為に戦えるかい?」
ロマンの問いかけ、それに最近に答えたのはシエル。刀の柄を握り、眼光鋭くカルデアスを見ながら雄々しく吠えた。
「愚問だな。必ず救ってみせよう──未来を取り戻し、勝利をこの手に掴んでみせる」
恐怖を押し込み、これが正しいことだから──と短剣を強く握りしめて立香は心を奮わせる。
「立ち向かわなきゃ、ダメだから……! 私も、頑張ります…ッ!」
マシュは大切な人達を守る為、焼却された世界を取り戻す為に怯えて竦む体を勇気で押さえつけ、前を見据えた。
「皆さんと共に、私も──ッ!」
クー・フーリンは英雄の卵を見届ける為、コイツらの道を阻む敵に呪いの朱槍を存分に奮おうと獰猛に笑った。
「こいつらの行く末、見届けさせてもらうぜ」
自分より子供の彼らがこんなにも頑張っているんだ、自分が怖がって立ち止まり訳にはいかない。全力で彼らのサポートをして、必ずこの場所に帰還させよう。──ロマンはそう覚悟を決めて、改めて告げる。旅の始まりを、未来を取り戻す戦いの号砲を。
「これより、第一特異点へとレイシフトを行う! 総員、持ち場に戻り、彼らを全力でサポートするぞ! さあ、共に未来を取り戻そうっ!」
──第一特異点、どうしようもなく腐った毒に侵された、神亡き土地で、これより始まる遥かな旅路の幕が上がった。
まだ出来に納得してないけれど、まあいいでしょう……本当に書きたいのはもっと先のシーンなのさ。そこまでが長い…ッ!
今回、星辰奏者やその他諸々のお話しましたが、間違っていたらすみません。一応、wikiとか公式見たんだけどね……設定が難しいよ。
さて、オルレアンが始まります。大体は原作沿いですが……。
オルレアン編のテーマは「狂信」「冒涜的」「悲惨」「叛逆」「悍ましい星」などなど他にも沢山あります。
このワードの数々からかなりアレな事が分かるだろう……。あと、冒頭で出てきた狩人の元ネタ分かる人はわかるかな?
それじゃあ、また次回もよろしく! まだ書けてないから、しばらく待っていてくれ。感想、アドバイスなども歓迎するぜ!