Fate/Silverio answer   作:いろはす(*´Д`*)

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やあ。いろはすだ。久しぶりだね、うん。

全話執筆後に更新するつもりだったけれど、中々終わらないので──とりあえず一話だけ更新します。次回は未定かな。

………今週のイベント、頑張ってあの子を引き当てなければ。俺は既に、石の準備は出来ている。さあ、武蔵ちゃんの二の舞にはならない事を祈るぞ(十数万が水の泡)


神へ捧げよ、汝らの血肉──楽園(エデン)の創世を此処に《3》

 草花が生い茂り鬱蒼とした森の深く、木々に囲まれてその小屋は建っていた。その小屋の周囲には白い花が広範囲に咲き誇っており、その中心には──手造りだろう──名前は彫られていないが、石で出来た墓が三つ並んでいた。それを横目で見ながら、シエル達は麗人の背に着いて行く。そして石で出来た簡素な階段を登り、何処か気品を感じさせる古びたドアを両手で開け放った。

 

「「わぁ……」」

「へぇ……」

 

 その部屋を目にして立香とマシュは目を見開いて「すごい」と右往左往とさせ、傍に立っているクー・フーリンは部屋の至る所に存在している仕掛けに感心の声を漏らした。──まるで、狩人の巣のようだ、と。

 

 一方、シエルは関心を持たずに麗人の警戒をし続けていた。刀の柄に手を添えて、いつ襲われても抜刀出来る態勢にある。その対照的な面々の様子に麗人は苦笑し、それぞれに座るように促した。それに従い、暖かい火が燃える暖炉の前、そこにある木製の椅子に立香とマシュ、クー・フーリンは座る。と、座る様子のないシエルに麗人は銀色の目を向けた。

 

「君はいいのかい?」

「ああ、立ったままでいいさ」

 

 そうか分かった、と苦笑しつつ麗人は頷き「お茶を用意するから、少し待っていてほしい」と部屋の奥に消えていった。フワリと揺れる銀の束を観ながら、シエルは部屋を見渡す。入室する際に確認はしたが、もしもがあったらマズイ。念には念を入れなければ駄目だろう。

 

 天井から吊り下げられている楼台、そこに灯る複数の蝋燭に灯る火は入室と同時に点灯されていた。さらに、普通より大きい蝋燭と言えど、この室内全体を明るく照らすのは不可能だ。蝋が熱で溶ける様子もなし、恐らく特殊なものだろう。暖炉の火も同様だ。

 

 壁に立てかけられている絵画、其れ等からも妙な気配を感じていた。監視されているような、興味を持たれているような視線がシエル達に刺さっている。今のところ危害を加える気は無いようだが、もし戦闘になれば分からない。警戒していた方がいいだろう。

 

 まだ沢山違和感、気配はするが──一際目立ったものを感じて止まないのが麗人が入っていった部屋の奥である。悍ましい迄の血の匂い、染み付いた狂気を感じる。それと、それを凌駕する憎悪もだ。必ず殺す、挽きずり墜とす、凌辱してやるという念が此れでもかと溢れていた。

 

 やはり、危険か。そう判断して、刀を握る手の力を強めていると。

 

「フォウ」

「っ、おい。何をするんだ……ッ!?」

「フォウ、フォウッ!」

「グッ、ッ」

 

 シエルの頭の上で寝ていたフォウが唐突に彼の顔面を尻尾で叩きだした。それも一回ではなく、連続で力強く一切の手加減も無く。たまらず刀から手を離して、フォウを右手で掴み取った。そして、何のつもりだ謎動物? と目を細める。

 

「フォウ! フォ、フォウ!」

「……あの人間は、悪ではない。だって、シエルくん」

「……藤丸?」

 

 何かを訴えかけるフォウに首を傾げていると、立香が横からフォウを奪い取って、その腕の中に抱えた。シエルは立香から告げられた言葉に目を丸める。あ、この表情はレアだ、と呟く立香。

 

「キミは、フォウの言葉が分かるのか?」

「何となく、ニュアンスぐらいだけどね。シエルくんが怖い顔してるから、フォウが落ち着けってやったんだと思うよ」

「怖い顔……藤丸から見てもそう思うか?」

「うん」

「そ、うか……すまない、少し気を張りすぎたかもしれないな」

 

 力む体から力を抜き、深呼吸。立香とフォウに「ありがとう」と礼を述べて、壁に背を預けた。先ほどのようにピリピリとした雰囲気は感じず、穏やかな雰囲気が感じられた。立香はその様子に笑みを浮かべるとフォウを連れて椅子に戻っていく。去り際にフォウは「フォ……」と子供を見るような目でシエルに対してため息を吐いていた。それを見てこめかみがピクリと動くも、まあ今回は……と気持ちを鎮める。

 

 ──そんなこんなで騒がしくしていると、漸く麗人が戻ってきた。手にはトレイを持ち、その上に人数分の紅茶が湯気を立てて置かれていた。

 

 トレイをテーブルに下ろし、紅茶をそれぞれに手渡していく。毒物等は混入してないようで、通信機越しにロマンが『大丈夫、毒は入ってないよ……いいなぁ、紅茶』と呟いていた。そして最後にシエルが紅茶を受け取り、麗人が立香達の対面にある椅子に座る。

 

「その紅茶の茶葉は私が作ったものなんだが……口に合わなかったら申し訳ない」

 

 手に持つ紅茶を見ながら苦笑する。その言葉に立香やマシュは「自分で作ったんですか!」と目を輝かせ、クー・フーリンは珍しそうに紅茶を眺めている。彼の時代には無かったのだろうか。

 

「ああ、元々農家をやっていてね。知り合いに茶葉を作る人がいたから教えて貰ったんだ。まあ、付け焼き刃だけどね」

「いえ、そんな! すっごい美味しいです! ね、マシュ!」

「はい、暖かい気持ちになります……あ、先輩っ、フォウさんが!」

「フ、フォウッ!?」

「フォウくん!? だ、ダメだよ!? 火傷しちゃうから!」

「猫舌かよ……って、猫なのか、そいつ?」

「俺に聞くな。まあ、少なくとも、猫ではないだろ」

 

 ──しかし、美味いな。シエルは少し量が減った紅茶を見て、純粋にそう思った。マシュが言った通り、何処か安心して暖かい気持ちになる味だ。……最も、自分に味の品評などできないが、とシエルは内心で苦笑する。

 

 そんな騒がしくも楽しげな彼らの姿を見て、麗人は己の家族、村の人々を思い出して涙が出そうになる──が既に枯れてしまった目から雫が流れる事はない。胸に走る過去の思い出(痛み)に耐えながら、今は小さな笑みを浮かべる。

 

「ふふ、仲が良いんだね。いいことだ……大切にするといい」

「は、はいっ」

 

 立香はその微笑みに顔を赤く染める。今まではっきりと見ていなかったが、顔を隠すマスクと帽子が外されており、その美しい素顔が晒されていた。白磁の肌、銀色の髪、銀色の瞳、怜悧な目は冷たい印象ではなく知的且つ気品溢れる雰囲気を感じるものだ。

 

「ん? どうしたのかな……? やはり、口に合わなかったかな?」

「あ、あっ、そんなことないです! はい! ただ、その、き、綺麗な髪だなーっと思いまして!」

「綺麗な髪、か……」

 

 そうやって立香が銀色の髪を褒めると、何故か顔色を曇らせる麗人。何か不味い事を言ったのか!? と慌てるが、麗人は「ああ、大丈夫。気にしないでくれ」と立香を落ち着かせた。マシュはその隣で立香に「せ、先輩、落ち着いてください」と立ち上がりかけていた彼女を座らせていた。クー・フーリンは紅茶を飲んで「おお」と目を見開いていおり、シエルはというと、そろそろ本題に入ってくれないか? と麗人に対して目を向けている。その視線の訴えを受けて、麗人は紅茶を一飲み、喉を潤してから口を開いた。

 

「ふぅ、さて──そろそろ、本題に入ろうか。ああ、その前に、自己紹介がまだだったね……私はアリア、只の狩人アリアだ。短い間かもしれないが、よろしく頼むよ」

「私は藤丸立香です! よろしくお願いします、アリアさん!」

「先輩のデミ・サーヴァント、マシュ・キリエライトです。よろしくお願いしますね、アリアさん」

「ええ、よろしく二人とも。立香さんにマシュさん、と呼んでいいだろうか?」

「「もちろん!!」」

「ありがとう。それで、そちらの二人は?」

 

 チラリと流し目を送り、男組二人の名前を尋ねる。クー・フーリンは飲みきった紅茶のカップを机に置いて、自らの名前を明かした。

 

「ランサー、クー・フーリン。まあ、よろしく頼むぜ、美人さん」

「クー・フーリン……ランサー……やっぱり、貴公は──」

「あん? どうした?」

「いや、何でもないよ──と、あとは少年だけだね。君の名は何という?」

 

 ──銀の瞳と赤い瞳が交わる。互いの視線に敵意はもう無く、警戒の色も無かった。しかし、何処か見覚えのある気配が互いに感じられる。まるで、同類(・・)のような。

 

 シエルは静かに口を開き、名を告げた。

 

「シエル。シエル・エンプティだ……よろしく、アリアさん」

「ああ、よろしくシエル。さん、は付けなくていいよ、その方が君も楽だろう?」

「……そうだな、その方が助かる。では、改めてよろしく」

 

 

 ──アリア。

 

 

 

 〜γ〜

 

 

 

「では、自己紹介も済んだ。改めて、本題に入ろうか」

 

 紅茶のカップを置き、麗人──アリアはシエル達に向き直る。その言葉に緩んでいた雰囲気が霧散して、緊張感が広がっていく。同時に、このフランスで体験した異常事態が脳裏に思い起こされた。この土地、時代、星にはいる筈の無い幻想種存在。さらに、理性を無くして狂気に染まった住民達に……異様な武器を持ち、血に塗れた装束を着込んだ集団。

 

 ──そして長剣と短刀の二つを巧みに操り、それらを惨殺する狩人アリア。

 

 惨たらしく惨殺された現場を思い出して、立香は吐き気が込み上げてくる。アリアのことは怖くない……出会った当初は恐ろしい気持ちもあったが、彼女は正気を保った人間だった。自らの拠点にシエル達を招き入れ、笑みを浮かべて紅茶をご馳走してくれる人間が悪辣とはとても思えないのだ。

 

 ──だからこそ、あのような状況になった原因が知りたい。知らなければいけない、と立香は手を力強く握る。

 

 シエルはその様子を見て感心しながら、挙手をしてアリアに尋ねる。幻想種が現れた原因、住民達が理性を失い獣の様になった原因、あの異様な集団はなんなのか、そしてこの特異点で戦うべき()は誰なのかと。

 

 その問いを全て聞き入れ、アリアはゆっくりと語り出す。この地に染み込み、今も侵食を続ける毒について。

 

「先ず最初に、君たちが言う幻想種──あの怪物が現れたのは、つい最近だ。竜の魔女、復活した聖女ジャンヌ・ダルクがオルレアンに現れたと同時に発生し、その脅威を今も拡大させているよ」

「竜の魔女、聖女? 待ってくれ、ジャンヌ・ダルクと言ったな。彼女は死んだ筈──まさか、英霊……? しかし、召喚されたとして彼の聖女がこんな事をするのか……?」

「まあ、英霊だって人間だ。してもおかしくないんじゃねぇか? 生前に起きた事含めて、恨みぐらいあんだろ?」

「そうだな……」

 

 クー・フーリンの言葉に頷き、確かに聖女にした彼らの所業を考えれば、恨みの一つや二つぐらい持ってもおかしくはないだろう。しかし、どうにも納得出来なかった。──憧れている英雄、その一人だからだろうか……つい過剰に反応してしまう。

 

「うーん、偽物とか? ほら、敵が用意したさ。そんな事無いかな?」

「偽物……英霊の力を持った偽物ですか。あり得る可能性もありますね、流石です先輩!」

「えへへ……」

 

 立香の頬が緩み、赤く染まる。シエルは立香が言った偽物、という言葉に反応して考え込んでいた。確かに敵が用意した偽物の可能性もある。聖杯を持っている可能性もあるんだ、それが出来ても不思議ではないだろう。それだけ、聖杯というのは出鱈目な物なのだから。

 

「……実際にこの目で見ない限り、正確な判断は下せないか」

 

 そう呟いて、一旦ジャンヌ・ダルクの件については傍に置いておく。どの道、何処かでぶつかり合うだろう。その時にこの目で確認し、悪であれば斬り裂けばいい。──そう結論を出して、シエルはアリアの話を途中で止めた事を謝り、その続きを促した。

 

「次は……そうだな、あの住民達について話そうか。そうすれば自ずと猟犬達の説明も出来る」

「猟犬……?」

「そう、猟犬さ。忌々しく、悍ましい狂信者(光の奴隷)のね……。この世界を楽園に変え、闇を全て滅ぼす事を目的として、その実現の為に手段は選ばず、無辜の民ですら磨り潰す塵屑だよ、あの神父は」

 

 アリアは眦を吊り上げ、憎悪で目を染めながら吐き捨てる。力強く噛んだ唇からは血が流れ、手に持っていた紅茶の中へと滴り落ちた。その様子を見て、シエル達も彼女の境遇を察した。おそらく、いや確実に被害者の一人なんだろう。そうでも無ければ、このように強い憎しみの感情は露わにならないから。

 

「──申し訳ない。少し、気が昂まったようだ……続きを話そう」

 

 ふぅ、と昂まった意気を吐き出し、アリアは再び口を開く。しかし、まだ完全には落ち着いていないのか、目は憎悪で染まったままだ。

 

「狂信者──神父が現れたのは今から一ヶ月前になる。私も正確には把握してはいないが、その辺りからおかしくなりだした(・・・・・・・・・)から、そこまで間違ってはいないだろう」

「おかしくなりだした……?」

 

 立香の疑問に「ああ」と頷き、小屋の外を指差して目を細める。

 

「先ほども見たように、正気を失った人間が段々と増えていったんだよ。そして、それと同時にあの黒尽くめの猟犬もね──地獄だったよ、まさにあの光景は」

 

 かつての光景を思い出して、ギリッギリと歯を鳴らして噛み締める。それほどまでに悍ましく、狂気に満ちたものだった。狂笑を叫びながら互いに殺し合い、貪り合い、犯し合う。そこに性別、年齢の差なんて有りはせず、一つとして例外は無い。

 

「……私のように、辛うじて狂気に染まらなかった者達も居たけれど、それも猟犬共が根刮ぎ刈り取ってしまった。だから、君たちを見た時は嬉しかったよ……まだ、正気な人間がいる事にね」

「アリアさん……」

「ん、ああ、立香さん気にしないでくれよ。ふふ、すまない。少ししんみりとしてしまったね──さて、シエルくん」

「ああ」

「雑な説明になったけれど、これで十分かな?」

「問題ない。この地の状況は把握出来た──俺が戦うべき敵も定まってきたよ」

 

 ──復活した聖女、竜の魔女と呼ばれるジャンヌ・ダルク。そして、狂気に染まった人間達に、それらを狩る猟犬共。さらに、その猟犬を飼い慣らす狂信者、神父と呼ばれる男。

 

 

 

「──眼前に塞がる、この地全ての悪を斬り裂こう」

 

 

 

 ──それが、時代を救うことにも繋がるだろう。

 

 シエルは定まった未だ見ぬ()に対して意志を高めながら、刀の柄を強く握りしめた。

 

 

 




簡単な説明会でしたね、はい。
一応、次回で動き出す感じの展開にしてあります。みんな大好き教授も出てくる予定だぞい!やったね!

続きはしばらく待っていてください。頑張って執筆してますので。
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