Fate/Silverio answer 作:いろはす(*´Д`*)
では、prologue4です。どうぞ。
あー、さらにトンチキさせたい……オルレアンを早く書きたいぞい。
───その黒い巨人は悍ましいまでの狂気に囚われていた。空に上げた咆哮には憎悪・怒り・殺意とあらゆる負の感情が込められており、聞いた者がたとえ戦士であろうとも容易く心がへし折られてしまうだろう。
そして、当然。彼女達にそれが耐えられる筈もなく、全身を恐怖と絶望感が支配して凍えるように固まっていた。……それは致命的な隙だ。敵対者の前で、ましてや黒い巨人のような怪物を前にして晒していいものではない。
───故に、この結果は当たり前に訪れる。
狂乱の咆哮を轟かせて、集まってきたスケルトンの群れすら薙ぎ払い、黒い巨人は両手に持った
「ぐぅぅぅうっっっ!!」
硬直から解けたマシュが力を振り絞り、圧倒的な暴力に対して盾を翳してひたすら耐える。
───しかし、それがどうした? なんだその抵抗は、矮小な身で立ち向かうと? 笑止、無駄だ。疾く失せよ、砕けて散って柘榴になって死んでしまえよ羽虫共。
黒い巨人は羽虫の抵抗など露ほど意に介さず、力任せに盾ごと彼女の体を地面に叩き落とした。
足が砕け、体の至る所に激痛が走る。手が赤い……潰れてしまったようだ。臓器の幾つかも駄目になっている。いくらデミ・サーヴァントとはいえ、致命傷に至るものだ。
突如として現れた災害。
彼女達には成すすべもない。ただ、無残に屍を晒すだけ。運命は潰えた。最早救いはなく、彼女達の死は決定した。
「ま、しゅ……! マシュ! ぐっ、どうすれば、礼装も使えないしッ、ああ、ぁあ……!」
「せん、ぱ…ぃ」
あれだけ明るく振る舞っていた立香も涙を流して、恐怖に身を震わせている。必死にマシュを治療しようとするが、彼女にそのような知識はない。治癒魔術など使えない。礼装も待機時間がまだ掛かる。八方塞がり、絶望感が支配していく。
号泣しながらオルガマリーもマシュに対して治療を施しているが、所詮焼け石に水だ。もっと膨大な魔力、尚且つ優秀な魔術師がもう一人居ないと治療は難しい。
「にげて、ください……わたしが、おと、りを……ッ」
耐える。
耐える。
耐える。
痛い、苦しい、もう嫌だ。
マシュは弱気になる心を押し殺して、砕けた足のまま立ち上がる。盾を支えに、ゆっくりと迫ってくる黒い巨人に向き直った。
「だめ! そんなの、絶対に嫌だよ! マシュは、マシュがぁ…!」
「……マシュ、あなた」
砕けた足を引き摺り、盾を支えに前へ前へと進んでいく。そのマシュの後ろ姿を見て、立香は「いかないで!」と必死に引き止める。しかし、歩みは止まらない。守る為に、彼女は往くのだ。
「いや、やめて、お願いだから……!」
祈る。
「だれか、誰でもいいからぁ!」
必死に祈る。
「────マシュを、たすけてぇ……っ!」
少女の祈り、それを搔き消すかのように黒い巨人が再びマシュに斧を振り上げて───
「────ああ、助けよう」
───絶望を斬り裂くべく、仲間を守るべく、少女の祈りに応えるべく、死の運命を否定するが為に◼️◼️の後継者が降り立った。
〜γ〜
「ふ───ッ!」
──一閃。振り下ろされた斧を弾いて軌道を逸らす。斧を弾く際に筋肉が断裂して骨がヒビ割れたが、さして気にすることでもない。刀を振るうのには支障は無く。むしろ、己の技量でこの程度の負傷で済んだ事だけで十分だ。全くもって問題ない。
「◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️ッッ!!」
「喧しい。少し黙っていろ」
返し刀で胴を斬り上げ、止まらず畳み掛ける。
一閃、二閃、三閃、四閃──と怒涛の連撃。黒い巨人の体に無数の裂傷が刻まれていく。
「キャスター! キリエライト、盾の少女を保護して退がれ! そちら治療に専念を。こいつは──俺が葬る」
一撃一撃が必殺。
擦れば即死、塵芥のように吹っ飛ぶであろう暴力の嵐を紙一重で躱し続けて刃を閃かせる。恐れはないし、決して臆したりなどしない。シエルはただ前に進み続ける。──燃ゆる怒りを瞳に宿して。
背後で倒れ臥す少女、マシュ・キリエライト。
クー・フーリンに回収されて、魔術による治療を受けているが……酷い有様だった。カルデアで短くはない時を共に過ごした仲間。それを傷つけられて、怒りが燃えないわけがない。
そして、なにより。
「◼️◼️◼️ッ!? ◼️◼️ッ!?」
「貴様は──」
チリチリと鳴く音と共に、刃に青い稲妻が走る。
受け流す攻撃で体が削られ、血が舞うが関係ない。ただ、前へ。前へ、前へ、前へ……ッ!
「───嗤ったな、貴様。彼女達を見て無様だとッ」
「◼️◼️ッ!?」
───斬ッ!
右腕が肩口から斬り裂かれ、血飛沫撒き散らして宙を舞う。
「彼女達の足掻きを、戦いを、尊い想いを貴様は嗤ったんだ!」
───斬ッ!
左腕内部に青い稲妻が迸り、内側から焦がし尽くす。
「ふざけるなよ、なんだそれは!」
ああ、そうだ。必死に生きようとする想い、誰かを守る為に立ち上がる勇気、
──そうだ。許してはならない。怒り、砕き、斬り裂くのだ。眼前の邪悪、その一切を否定しよう。
昂ぶる感情、それに比例して加速する刀。最早、彼の動きに黒い巨人は追随することは出来ない。
困惑、驚愕、あり得ない展開に恐怖する。なんだこの男は、なんだこの力は! ただの人間風情が、どうして自分を圧倒している!? ふざけるなよ、矮小な虫けらが!!
「◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️ッッ!!」
泥に呑まれ、堕ちて劣化した身なれど。この我を侮るな。宝具の開帳が出来ない? ──やらなければ、わからないだろう。ああ、見せてやろう我が宝具。我が軍勢を。全てを蹴散らしてみせようこの力で。
「ぐぅ──ッ! 魔力が高まって……宝具、だと? させるかァ!!」
黒い巨人の周囲の魔力が高まっていき、徐々に形を形成していく。骨が軋み、肉が裂けるが、御構い無しに駆け抜ける。宝具の開帳、それを許してはいけない。チャンスは今、決めなくてどうするよ。加速、加速、加速の連続。そして、刀を心臓目掛けて一直線に抉り抜くッ!!
「──◼️◼️ッ!」
「獲ったぞ。そのまま、奈落に堕ちていけ」
宝具の開帳、ならず。発動すんでのところで黒い巨人は霊核を砕かれた。形を形成していた魔力は霧散して、ただの魔力へと変換される。
黒い巨人は忌々しそうにシエルを睨み、そして───すまなそうに頭を下げた。シエルの背後、マシュ達に向けて。
元々、バーサーカーで呼ばれた故に狂っていたのだが、泥の影響でそれは顕著なものとなっていた。しかし、霊核を砕かれた事によって、理性が少しばかりだが戻ったのだ。
それを見て、シエルは目を細める。堕ちたとしても、劣化したといえども、やはり英雄は英雄か。最後にこれとは……そのまま完全な邪悪として消えていけば良かったものを。──モヤモヤするな、くそ。
「──お前は……」
「◼️◼️◼️ッ!!」
───次は、こうはいかない。次に合間見えたその時に、我が最強の軍勢を披露してやろう。次は勝つぞ、雷の如き男よ。
「……そうか。機会が来れば、見せてもらおうか。だが──」
刀を鞘に納め、眼光鋭く睨みつける。
「───〝勝つ〟のは俺だ」
その言葉を聞いて、黒い巨人は口を歪める。
おお、我が宿敵よ。新たな敵が、現れたぞ。雷霆の如き、眩しき男だ。どこか貴様に似て───忌々しいな。
──暴力の嵐、絶望を与えた災害は魔力の粒子となって消えていった。
後に残ったのは静寂。シエルは軋む体に鞭を打ち、その場から背を向けて、此方を驚愕の目で見る立香達の元へと近づいて行く。そして、真顔で彼は血を吐いて──?
「えっ」
「し、シエル!?」
「ちょ、おまっ」
「すぅ、すぅ……」
「すまない。治療、頼めないか」
決して倒れず、さらに体から血を吹き出した。
では、待て次回。
本当はもっと戦闘シーンとか、その後も長かったけど。削ってこうなりました。まあ、まだこれぐらいで……後々戦闘もっと増えるから。うん。