刀使ノ巫女-穢れた刀の一閃-   作:オーガスト

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1-3 『剥離』

時は少し戻り、歌留多が結芽と対峙している一方古住美弥は伊吹丸を右手に持ち、目の前の二人獅童真希、此花寿々花に目を向ける。

 

「親衛隊は私達に用があるの?」

 

横風で髪がなびき、目を細めなぜ親衛隊はここに来てるのか、美弥は二人に問いてみる。

手合わせとは言えそれだけでは理由になっていないからだ。

それが理由だとしたら親衛隊として来てるとしたら滑稽でもある。

自分たちに関係するとしたら、姉妹、家庭……いや折神家のことだからそれを関係するとしたら。

 

「勧誘……かしら?」

 

恐らく実力だと自己分析する。

その仮定を口にすると獅童真希が頷く。

 

「そうだ、古住美弥。報告書を見る限り君は全ての任務をパーフェクトにこなし更にはこの綾小路武芸学舎内での無敗を持っている」

 

かつての母校で使っていたであろうジャージを羽織る真希は御刀を取り写シを張る。

 

「その評価の元、貴女を我が親衛隊に配属させようと参られましたわ」

 

寿々花も同様に抜刀し写シを張る。

完璧・無敗だから、学舎内でも時折耳をしとあるものは尊敬または畏怖の眼差しが突き刺さることがある日々であった。

その話は伍箇伝おろか折神家にも届いた。

そしてその噂の確認と実力の査定で来たということだろう。

ただ一つ気になると言えば一つ。

 

「私の妹、歌留多も親衛隊に入れさせる気かしら?」

 

今までの話からとすると美弥一人だけの要件なのだ。

歌留多の話だと北山先生に呼ばれて来たということ。

 

「そうですわね。歌留多さんも結芽さんと同じ実力ならぜひとも親衛隊に迎え受け入れたいですわ」

 

しかし彼女らの雰囲気から歌留多のことは勧誘するつもりは無かった。

もしかして、と美弥は頭を過ったがもう遅かった。

歌留多も知らない間に私と同じく実力試しされていることを。

横目にし歌留多と結芽の戦いを見てると鞘と御刀を使った二刀流で変幻自在に戦っていた。

 

「できればあの子には巻き添えはしたくなかったけど……」

 

だが債は投げられたのだ。

今は目の前の相手に集中し伊吹丸を振り待ち構える。

 

「親衛隊第一席を甘く見るなよ!」

 

真希と寿々花は美弥の表情は余裕な感じを示し、真希が先陣を切り迅移で肉薄し凪ぎ払うが美弥はそれを受け止める。

 

「はぁ!」

 

「きゃ!?」

 

「っ!やるな」

 

一瞬だった。

受け止めていた真希の御刀を両手で力任せで弾き飛ばし勢いを殺さず後ろへと回し寿々花をも弾き飛ばした。

140㎝もある御刀『伊吹丸』を軽々と振り回しその長いリーチを生かし二人の御刀は美弥まで届かせないようにしていた。

一瞬だとはいえ美弥の実力を肌に感じ真希は少しの冷や汗をかき戦術を組み立てる。

 

「寿々花!同時に仕掛けるぞ」

 

「承知しましたわ」

 

寿々花は了承し交互に攻撃を仕掛ける。

美弥は合わせてるかのように振り回し弾かせ、避ける。

 

「もらったぁ!」

 

相互の攻撃から前後からの一斉攻撃、二ヶ所同時なら速くても弾くこともできない。

 

「なに!!」

 

先を見越してたのか真希と寿々花の攻撃の交点で受け止めて弾く。

だがこれで攻撃は終わらない。

弾くのなら弾かせないように攻撃を加え、弾かれる前に空いた空間に攻撃をするが美弥は大きく下がり距離を取る。

 

「中々の連携ね。少し危なかったかな」

 

煽りではない美弥の二人への評価。

彼女にとっては親衛隊の評価を少し甘く見ていた。

 

「そっちも、噂でしか聞いたことありませんでしたが本当にS装備相手に勝つほどの実力の持ち主ですわね」

 

逆に親衛隊もそうであった。

美弥の評価は書類上でしか確かめてなくその中でも信憑性が低かった10人のS装備戦の圧勝がそれであった。

 

「寿々花……この勝負僕にやらせてくれないか」

 

だが御刀と交えて確信した。

彼女の実績、噂は本当であったことを。

 

「駄目ですわ真希さん!今回はあくまで試験として来ましたのよ!力を使うほどでは」

 

真希の目が紅く染まり、寿々花はそれを止めようとする。

 

「だが試してみたいんだ。僕の全力が彼女に届くかどうか」

 

好奇心、敬意、プライド。

その全てを今注ぐ。

 

「真希さん……貴女は」

 

寿々花はため息を吐きその場から下がる。

 

「いいでしょう、来なさい」

 

美弥は真希の雰囲気が変わるのを察知し伊吹丸を構える。

 

「はぁ!」

 

「くぅ」

 

肉薄した真希の御刀が美弥の長い伊吹丸の刃を滑り鍔まで届かせ美弥は根をあげる。

 

「捉えた!」

 

やっと一手決めれた真希がほほ笑み剣戟を加える。

 

「はぁ!!」

 

攻防が真逆となり真希が進みながら剣戟を加え、美弥が下がりながら弾かずに受け止める。

 

「もらったぁ!」

 

真希は上段の大振り振り下ろしをし、甲高い音とその感覚と共に上半身と下半身が分かれる感覚と共に視線が上向きとなる。

 

「なに……!?」

 

見間違えだろうか、確かに目の前に古住美弥が居る。

居るのだがまるで幻かのような姿をしており、真希の後ろには写シを張っている美弥が居た。

 

「『剥離』」

 

『剥離』、聞いたこともない言葉を美弥が口にし真希は切られた写シを解除に膝をつく。

 

「ば、バカな、このぼくが……親衛隊一席のぼくが負けた」

 

「でも、少し危なかったわ」

 

美弥は振り向き真希にそう答えた。

真希の身体能力の向上の仕方が異様であり美弥は仕方なく使ったのだ。

 

「美弥さん、その技は一体……っ!」

 

寿々花が先ほどの技を聞こうとすると美弥は何かが来るのを察知して伊吹丸を振るう。

 

「へぇー、そっちのおねぇーさんもなかなかやるねぇ」

 

さっきまで歌留多と戦っていた燕結芽が御刀を振るいかけてきた。

結芽が参戦したということは歌留多は、と美弥が横眼向けたら歌留多の御刀が遠くの地面に刺さっており彼女はそれを取りに行こうとしている。

察すにに負けたのだろう。

 

「結芽!」

 

真希が叫び結芽は力強く御刀を込める。

今、美弥と結芽の戦いが始まろうかとしてた。

 

 

「はーい!そこまでー!」

 

突如結芽の後ろに北山亜里沙が現れ、結芽の頭の上に手を乗せた。

 

「北山先生……なぜここに?」

 

「うげっ」

 

美弥達は突如現れたことに少し困惑しながら現れ結芽は身の毛がよだち亜里沙から離れる。

 

「やぁやぁ結芽ちゃんに親衛隊の皆さん久しぶりー。いやー久々に会ったけど貴女達スゴいわね二人をここまでやりあえるなんてデータ採取が捗ったわ。それよりも」

 

やはりか、と美弥は呟き亜里沙はいつの間に撮ってたのかビデオカメラを取り出し頷き、片目を開き美弥に見たと思いきや姿が一瞬消え、美弥の前に現れ首を掴み前後に振るう。

 

「美弥!貴女さっき凄い技やったでしょ!!何!?あれはなに!?」

 

「北山先生、首が痛いです」

 

亜里沙は興奮状態である一方逆に美弥は冷静に言い亜里沙は手を放す。

 

「えっと、『剥離』は写シのエネルギー体を複製させ、分離させて自立させる技です」

 

「そんな技が……」

 

「でも欠点はありそうですわね」

 

美弥は首をさすりながら『剥離』の説明をし真希は驚愕し、寿々花はその欠点があるだろうと指摘し美弥は頷く。

 

「精神力の消耗の激しさがそれです」

 

写シをもう一度張るということ、と美弥はそう言った。

写シはほとんどの人は1回か2回が限度なため『剥離』を使うのは博打であった。

そもそもこの『剥離』を知る者は美弥と歌留多しか居らず美弥は3回、歌留多は一度も使えない。

 

「つまり並な刀使では扱えれない技、ということですわね」

 

「ふむふむ、すばらしい!新たな発見よ!」

 

亜里沙は笑いながらメモ帳で書いている一方歌留多の後ろに結芽が姿を隠している。身長はほぼ同じなため隠れきれてないが。

心なしか少し震えていた。

 

「あ、あの結芽ちゃん……ずっと後ろに隠れてるけどもしかして亜里沙先生のこと苦手ですか?」

 

「あの人きらーい!」

 

「結芽ちゃん!怖がることはないよ!来なさい!」

 

「いやー!!」

 

ウェルカムとばかりに手を広げる亜里沙の反応に絶対的な拒否を示す結芽の攻防が広げられる。

 

「とりあえずだ古住美弥。君の腕前は確かだ。そのうえで親衛隊の隷下に配属しようと思うがかまわないか」

 

「それが折神紫様の命令とならば構わないわ」

 

真希は隷下の配属と進言し美弥は承諾する。

この後は一旦鎌倉にある折神家の屋敷に行くことになるということだ。

歌留多はとは言うと。

 

「あー!だったら私はこの子を部下にしていいよねー!」

 

「え、えええええ!?」

 

結芽の部下公認にさせられてしまう。




単語1

『剥離』
写シの応用技。
刀使の写シであるエネルギー体を自ら引きはがし自立化させる。
『剥離』されたエネルギー体は写シと同じく運動機能も向上しており実体と同じく荒魂を切り沈めることができるが精神疲労は約二倍となり並の刀使では扱えれず持続時間は短い。

使える刀使は現在古住美弥一人のみである。
(歌留多も使えるが3秒間しか使えず戦闘不能になる)

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