平成狸合戦ぽんぽこ(ガチ)   作:公家麻呂

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10話 反撃 その2

 

不慮の事故だった。

胴上げの最中に、開発が継続されるという報道を聞いた狸たちは権太を落とした上に、彼を踏みつけながらTVに集まったのだ。

気の毒にも、今作戦の功労者、鷹ヶ森の権太は複雑骨折と内臓破裂により全治一ヶ年の大けがを負ったのである。

 

権太は、療養に入る際。自分の代行に義男を指名。

義男は一時的とはいえ、強硬派の首魁に収まったのであった。

 

 

TVで地元民が祟りを恐れていることを知った、狸たちはさらに行動を始める。

暗い夜道でお化けに化けて人を脅かしたり、建設作業員を不気味な声で脅かしたりして攻勢に出た。

馬背山の神社を根倉にしていた熊太郎は、移転の儀式の最中にこの地の伝承に残る正一位のお使い狐に化けて、その姿を現したのである。

雇われ神主の祝詞は役に立たず。

お使い狐に化けた熊太郎は、供え物の棚と忌み火の焚かれた篝火を倒した。

 

その時、事態は発生した。

 

「ぎゃあああああ!!」

 

倒れた篝火は雇われ神主含む、参加者数名が火を浴びる。

雇われ神主の体が火に包まれる。

熱さから逃れようとする雇われ神主は、近くにいた男性に抱き着く。

奇しくも、その男性は移転賛成派の地元住人のリーダーであった。

 

儀式は急遽中止され、救急車と警察車両が並び報道各社が事態を伝える大惨事となった。

 

 

『馬之背山神社の祟り、移転の儀式の最中の惨事‼』

 

TVのワイドショーを賑やかした。

 

『全身火傷によって、2名が死亡。重軽傷者6名。この前の多発事故と言い何かあるんじゃないですかね。』

 

この、熊太郎の活躍によって馬の背山の開発工事は見合わせとなった。

 

これにより、狸たちの活動は活発化した。

狸たちのグループは習ったばかりの、化学を行使し各地でゲリラ戦を展開した。

 

「またか!?」

 

工事車両の運転手が車両から降りて頭を抱える。

通のど真ん中に粗大ごみの山が築かれていた。

 

 

 

 

ある、建設作業員が周辺の木を切り倒していると、切込みすら入れていない木が倒れてくる。

 

「うわぁああああ!?」

 

倒れた木の下敷きになる作業員。

 

「ぐわぁああああああ!!」

 

足が挟まれ悲鳴を上げる。

 

周辺の作業員が事態に気が付き近寄ってくる。

 

「また、まただ…。これで8人目だ…。」

 

作業員の一人がつぶやいた。

 

 

 

 

そして、若手筆頭の正吉と過激派筆頭の義男は極めつけの作戦を行う。

 

ある狸が人間の女性に化けて蹲る。

そこへ、付近を巡回していた警察官が声をかける。

 

「どうしました?」

 

女性に化けた狸はさらに深くなくそぶりを見せてから一瞬だけ哂った。

顔を覆い隠して…

 

「のっぺらぼ~う」

 

警官は驚いた。女性に顔がなかったのだ。

仰天した警官は自転車を乗り捨て、悲鳴を上げながら逃げ出す。

女性に化けた狸は、警官が乗り捨てた自転車に乗って、それを追いかけた。

警官は拳銃を、追いかけて来たのっぺら坊に放った。

 

「キャイン!?」

 

女性に化けた狸は、声を上げ転げ落ちた。

狸の体から血が流れる。拳銃の弾が当たったのだ。

一匹の狸が駆け寄る。

 

「おい!大丈夫か!!晴美!!晴美!!」

 

この狸は、撃たれた狸と夫婦だったのだ。

 

「くっそー!!あいつめ!!」

「おい!武彦どこに行く!!」

 

武彦は走り出した。仲間の静止も無視して走り出した。

 

 

 

一方で、警官は近くにあったコンビニへ逃げ込み中にいた人々に助けを求めた。

 

「あ、あそこ!で、出た!」

 

「「「ひょっとして、こんな顔?」」」

 

中にいた人々は、皆狸の化けた姿であった。

 

「っひ!?」

 

全員ののっぺら坊を見た警官は気絶した。

 

「わーい!やったやった!」

「やったぞー!!勝った!」

「いぇ~い!」

 

勝利に沸き立つ正吉をはじめとする狸たち。

 

そこに目を血走らせた武彦がやってくる。

武彦は、周りが静止す間もなく手に持っていた太い木の棒で気絶した警官を殴りつけた。

 

「妻の仇だ。」

 

武彦の周りに、集まってくる正吉ら若狸たち。

警官の頭からは大量の血が流れてくる。

 

「うわぁ…痛そうだな。」

「これ、死んだのか?」

「どうする?さすがに殺す気はなかったんだけど…」

 

ポン吉に問われた正吉は、対処に困ってしまう。

 

「困ったなぁ…。おろく婆に怒られちゃうよ。」

 

対処に困っている正吉を見て、次に若狸たちは義男の方を見る。

 

義男は意を決したように、警官に歩み寄る。

義男は警官の腰のホルスターから拳銃を抜き取り、周りの狸たちに周辺に隠れるように言って、合図をするまで出てこないように言った。

 

狸たちは、命令の意図を理解できず不思議そうにしていたが、正吉は義男に策があることを察して、義男に従うように説得した。

 

 

義男は、拳銃を持って歩き出す。

義男は、人間に化けて交番の前に立った。

中では先ほどとは別の警官が書類仕事をしていた。

 

義男は足元に落ちていた石ころを、交番の窓ガラスに投げつける。

窓ガラスは割れ、警官が飛び出してくる。

義男は、仲間の待つコンビニへ駆け出す。

 

「こら!待て!」

 

義男は、警官に追いかけられながらコンビニへ駆け込んだ。

 

そして、警官がコンビニの中まで追いかけてくる。

 

「よし!今だ!取り押さえろ!!」

 

義男の合図で、狸たちが一斉に警官を羽交い絞めにする。

 

「んぐぅぅうううう!?」

 

「あ、暴れるな!」「足、抑えて!!」「捕まえろ!」

 

狸たちが警官を押さえつける中、義男は拳銃を警官に向ける。

そして、引き金を引いた。

 

警官は苦しそうにする。

狸たちは、拳銃の音に驚き、羽交い絞めにした警官から離れようとする。

 

「離すな!!」

 

義男の一喝で、狸たちは再び拘束を強める。

しばらくすると、警官は動かなくなった。

 

「え?また殺しちゃったよ?」

「どうするんだよ?」

「増えちゃったじゃんか。」

 

狸たちは、混乱していた。

義男は、そんな仲間たちを無視して先ほど殺した警官の警棒を武彦に渡す。

 

「武彦、この棒でさっきお前が殴ったオマワリをもう一回殴れ。」

 

「うわぁああああああ!!」

 

武彦は先ほどの警官を警棒で滅多打ちにした。

 

「これくらいでいいか。おい!君たち!あのオマワリに川に沈めとけ!!」

 

義男に気おされた狸たちは、警官を運び始める。

 

義男は警官の死体を運び出す前に、拳銃を回収した。

正吉は恐る恐る義男に尋ねる。

 

「よ、義男さん…そ、それは?それに、なんで川に沈めるんですか?」

 

義男は、何の気なしに答える。

 

「最初は、仲間割れに見せかけようかと思ったんだけど。これが欲しくなってね。」

「それって、鉄砲ですよね?」

 

「川に沈めたのは、死体が見つかるよりは行方不明の方が怖いだろ?それに、人間に知られるのはまだ早すぎる。見つかるにしろ時間が欲しいからね。」

「義男さん…。」

 

翌日、警官二名の行方不明報道が行われ、開発が捜査のために遅れることとなった。

 


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