平成狸合戦ぽんぽこ(ガチ)   作:公家麻呂

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12話 停滞

 

林が藤野へ帰った後も、多摩丘陵の狸たちは化学を行使し開発の妨害を続けた。

 

これらゲリラ戦は、狸たちの勝利と言えた。

開発は一時中断され、狸たちは祝杯を挙げた。

 

この結果には、鷹ヶ森の権太も満足するものであった。

しかしながら、工事の中断は一時的で、しばらくすると開発は再開された。

 

川はコンクリートで固められ、のっぺら丘には道路が走り、大量の資材が運び込まれ、遂には住宅の建設が始まった。

 

しかし、開発現場での奇怪な事故や多摩丘陵での怪奇現象は、全国的に週刊誌やワイドショーなどで取り上げられ有名になった。

 

狸たちの意気は過激派慎重派ともに上がっていったのであった。

 

そして、秋になった。

懸案の、化学指南招聘の使者が白熱的なじゃんけんによって選ばれた。

四国方面には、鬼ヶ森の玉三郎。

佐渡へは、水飲み沢の文太。

 

さらに、長老会議では協力を得られそうな者たちへの使者を各地へと送り出した。

例として諏訪大社に現在も鎮座する二柱には、赤松林の洋二郎と言った感じであった。

 

翌日の満月の日に、仲間たちと水杯を交わし若者たちは旅立った。

 

使者が出立した後も、狸たちは怪異に勤しんだ。

開発に影響が出るか否かは関係なく、とにかく行動あるのみであった。

 

義男たち率いる過激派は、信号に化けるなどして事故を誘発させるなど、過激な行動が目立っていた。また、商店などで積極的に盗みを働いたのもこの派閥である。

 

狸たちのゲリラ戦は、開発の進行に大きな影響を出すことがかなわず。

権太や青左衛門と言った族長たちを苛立たせ始めていた。

 

 

 

 

このまま、活動を続けて人間たちを追い払えるのだろうか。

鶴亀和尚やおろく婆のやり方は手ぬるい…。

しかし、権太さんのようなやり方でも足りない。

人間を数人殺した程度じゃ、止められそうにない。

何か、強力な力とか…。武器とか…。

 

義男は以前警官から盗んだ拳銃を見て物思いにふける。

 

権太さんの手法は、間違ってはいないはずだ。

もっと、仲間や武器がいる…。

じゃあ、どうやって集める。鉄砲はそうそう手に入るもんじゃない。

鉄砲以外の武器?何がある?刃物とか?刃物はどこにある?どこで手に入れる?

 

「義男?人んちに上がり込んできて、家主そっちのけで物思いにふけるのは失礼だと覆うんだけど?」

「あ、ごめん。」

 

最近の影は、もうすっかり言葉を話すようになって片言になることもない。

最近はケモの耳をはやした人間みたいな姿になることが多い。

なんでも、人間に化ける練習中だそうだ。

 

「ねぇ、義男?あなた最近、疲れてるんじゃない?」

「な、なんでだい?」

 

「目つきが怖いもの。」

「そ、そんなことは…。」

 

「さっきだって、物騒なことを考えてた。わたしにはわかるの。それに、もうあなたと会って何年くらいたったかな。だいぶ経ったよね?たぶん、ここじゃあ、わたしが一番付き合い長いと思うよ。」

「あの地獄のような施設で出会ってから、4・5年たったのかな?長いなぁ…」

 

影は長い髪をかき上げる。

 

「そうね。昔とはいっぱい変わちゃったわね。ここも、ここに住むみんなも。」

「だね。君も変わったよ。子犬だった君を拾って、今じゃ君の方が大きい。」

 

影は義男の方を向いて、にやりと笑って言ってくる。

 

「ねぇ。手伝ってあげようか?人間をやっつけるの?わたし、山犬だから狸より強いし、化学だってそこそこ使えるんだから!」

 

影は自分の胸に腕を寄せポーズをとる。

 

「あはは、いいよ。そんなことしなくても、君が街に出たらオマワリとかリョウユウカイとかが出てきて大変そうだもの。」

「そんな、ヘマしないわよ!失礼ね。」

 

影はプクリと頬を膨らます

 

「いやー。ごめんごめん!冗談だよ!」

「むぅ…。なんだか、ごまかされた感じ……。でも、義男の怖い顔も治ったし良しとしますか。」

 

影と触れ合っている時が、義男にとっての癒しの時間であった。

 

「あ、そろそろか。正吉とおキヨの双子星作戦が終わる頃だ。ちょっと行ってくるよ。」

「うん、いってらっしゃい。」

 

義男と影の関係は、すでに夫婦のようなものになっており、彼らを知る狸たちにとって影は義男の内縁の妻であると認識されていたのである。

 

 

正吉達の双子星作戦は成功を収め、番場にいた作業員を追い出すことに成功した。

しかし…。次の週には新たな作業員が現れ、幾度追い返しても途切れることはなかった。

 

 

 

『地元では、狐か狸の仕業ではないかと言われているようですが?』

『であれば、簡単なんですがね。そう言った動物を退治すればいいだけですから。』

 

TV番は緊張した。

 

『しかし、あぁ言う化かし方は昔話にそっくりですからね。そういう噂が立つのもわかりますね。』

『それこそ、誰かが悪質な悪戯や噂でも流しているのでは?』

 

『悪質な噂とはなんだ!!俺はこの目で!!』

テレビの雛壇に座る化かされた人たちがヤジを飛ばす。

 

『まぁまぁ、そう言った動物は害獣駆除の対象にして駆除しますので、そう言った被害を受けた方々は、役所に連絡ください。証拠があればの話ですがね。はっはっは!』

 

正吉をはじめとする狸たちは人間を化かすことによって、開発を止めるということに懐疑的になり始めていた。

 

 

 

 

 


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