平成狸合戦ぽんぽこ(ガチ)   作:公家麻呂

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13話 藤野狸決起

 

冬の終わり、雪解けが始まったころ。

 

正吉主導によるショベルカー落とし作戦が決行された。

 

「「「たんたん狸の金玉は風も無いのにぶ~らぶら、それを見ていた親狸腹を抱えてワッハッハ!!!」」」

 

狸たちはたんたん狸の金時計を歌いながら凱旋した。

 

この行動に対して、長老衆は賛否両論であった。

 

 

『夏以来のニュータウンの怪に便乗したもののようですが…』

 

TVを見た狸たちは…

 

「なんということを!!」

 

青左衛門は正吉を責め立てるが、それを義男は庇う。

 

「いや、問題はないでしょう。奴らは私たちを見ていない。むしろ、これくらいのことはやっておかないと、奴らは何も感じないでしょう。」

 

「くっだらねぇ…。」

 

権太は、そう吐き捨てたが義男は別の思いを抱いていた。

 

狸がやったと言う直接的な言葉を聞いて、各地の他の仲間たちの呼び水になれば…。

人間にはばれないように、各地の同胞たちに決起を促す。難しい条件だが、勝機はこれしかない。

 

 

 

 

 

 

舞台は変わり、ここ小松島市の金長大明神では、この地の主六代目金長に事の次第を告げた玉三郎は上京を願うと、そのままどっと病に伏したが、金長の娘小春の献身的な介護もあって奇跡的に回復し、この春二人は夫婦となり3匹の子供をもうけたのであった。

 

奥殿では、四国を代表する長老狸たちの深刻な会議が続いていた。

 

開発阻止と言う一点では、全国的な開発に歯止めをかける意味合いで全員賛成であった。

しかし、誰を送るべきか?後の四国の収めを誰に置くかが問われ、万が一の際の跡目相続は喧嘩出入りなく円滑に行えるかなどが問われた。

 

「父様たちは今日も会議会議。こんなにいい日よりなのに。」

「正月からだと、かれこれ半年か。いつになったら会議はまとまるのだろう。」

 

不安を口にする玉三郎に、小春は不安な胸の内を告げる。

 

「会議がずっと終わらなければいい。そしたら、ずっと玉様といられるのだもの。」

「小春さん、僕だってそうしたい。だけど、僕の帰りを多摩丘陵のみんなが待っているんだ。」

 

「玉様、わたし父様にお願いしてみる。玉様がここに残って、金長の跡目を告げるようにって。」

 

玉三郎が、多感な青春の悩みにふけっている頃。

佐渡に渡った文太であったが、二つ岩のマミゾウ狸の姿は見つからず。大苦戦であった。

 

そんな中、文太は二つ岩のマミゾウ狸の居場所を見つけることに成功する。

二つ岩のマミゾウは妖怪たちの隠れ里幻想郷への引っ越し直前であり、最初のうちは断られてしまう。

しかし、文太の日参での訪問歎願によってマミゾウは今回限りの条件付きで化学指南を引き受けたのであった。

 

 

また、多摩丘陵の狸たちに危機が訪れていた。

歯止めの利かぬ多摩丘陵の開発と、狸たちのベビーブーム、夏の天候不順によって食料不足となり、変化狸たちによる。食料調達でも足りず、変化できない狸たちも街に出て食料調達に勤しんだ。

しかし、やはりと言うべきか。

人家に出た狸たちは罠に掛かったり、車にひかれるなどして命を落とす者たちが続出した。

 

長老会議では、正吉らによる対策案が出され、賛成多数で可決されたのだが、狸たちの主導的まとめ役であったおろく婆の理性が利かない狸たちへの失意の発言によって長老衆や会議に出席する側近衆の間に暗い空気が流れ始めていた。権太の檄にも反応は弱かった。

 

『さきほど、神奈川県藤野町相模湖インターチェンジにて推定20台の車両が巻き込まれる大規模な玉突き事故が発生しました。』

 

最初のうちは、このニュースに反応したものは少なかった。

 

『警察発表では、倒木に数台の車両が巻き込まれたことが原因とされています。現場では強風が吹いていたとはいえ、目撃者の証言では木が根元から急に抜けて飛んできたと言った証言もあり、情報が錯綜しています。現場につながりました!現場の鈴木さん!』

 

まるで、自分たちが多摩丘陵でやったことの様な内容に次第に注目が集まる。

 

『現場の鈴木です!!現在現場は警察消防救急が入り乱れていて、騒然としています!!』

『木が不自然な抜け方をしたという情報がありますが?』

『確かにそのような情報があります!ただすでに倒木の撤去が始まっており、確認はできておりません!!』

『人為的な、ものではないかと言う話もありますが?』

『はい!こちらの様な被害は出ませんでしたが、相模湖東出口でも同様の事故が起きており、そのような話が出ていますが、警察や関係機関からの公式なものではありません!!』

 

狸たちは、TVに注目する。

すると、正吉がTVの画面を指さす。

 

「あ!あれ!林さんだ!!」

 

事故にあった被害者たちが治療を受けている一角から、TVカメラの方に視線を向ける林と2匹の変化した狸の姿があった。

 

「誰?」「どういうことだ?」「誰の事だ?」

疑問の声が上がったが、権太が歓喜の声を上げる。

 

「藤野の奴らだ!隣の藤野町の狸たちが立ち上がったんだ!!俺たちに協力するために、土砂の流れを食い止めたんだ!!俺達には味方がいるぞ!!仲間がいるぞ!!戦いは終わりじゃない!!今始まったんだ!!」

 

権太の言葉に、強硬派の一人熊太郎が続き、他の狸が追従した。

 

「そうだ!!流れはこちらにあるぞ!!やるぞ!!」

 

「熊太郎の言う通りだ!!いける!いけるぞ!!」

「人間を追い出せ!!多摩丘陵を守るんだ!!俺たちの多摩丘陵を!!」

 

 

多摩丘陵の狸たちは藤野の狸たちの決起に勇気づけられた。

この報道を聞くために、TVの前には多くの狸達が集まって来ていた。

 

「みんな!!四国の長老をお連れしたぞ!!」

 

四国へ旅立った玉三郎の帰還であった。

 

 


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