平成狸合戦ぽんぽこ(ガチ)   作:公家麻呂

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18話 はじまり

 

馬の背山の神社で行われた演説を機に、反人間を掲げた諸勢力は行動を開始した。

 

二代目刑部を襲名した義男は影響下の八百八狸の召集を指示、並びに四国の長老衆に対し軍隊狸の編成を要請した。

 

また、竜太郎ら人間社会に潜っていた狐たちの伝手で、基本は包丁や鉄棒などが関東主要の抵抗勢力に流されていき、一部には刀剣類や古式銃すらもが含まれていた。

 

狐たちが車の中から木箱を下ろし並べていく、狸たちが木箱をこじ開ける。

その中には、乱雑に詰め込まれた刃物や鈍器が入っていた。

 

関東各地の狸たちは、狐たちが流した武器を持って武装化を進める一方で、酒屋や居酒屋の裏から多くの空き瓶を盗み出し、建築現場などからガソリンや灯油を盗み出し、それをもとに火炎瓶の製造を進めた。

 

 

この日、再び義男たちはレミリア・スカーレットと接見する。

 

「わずかな間に、ずいぶんと見違えたようね。」

 

レミリアの言葉に義男は平伏して答える。

 

「いえ、そのようなことは…。スカーレット卿のお与えくださった短槍のおかげでございます。」

 

グングニルは勝利を手繰る寄せると言うものがあり、この劣化コピーである義男の短槍もこれに類する力があった。

義男は、正確にか否かは別として、それを本能で理解していたのだ。

 

「ふむ。心がけには感心…とは言っておこうかしらね。でも、それだけではないわよね?面を上げて話してみなさい。内容によっては考えてあげるわよ?」

 

レミリアは義男の出方を見るように話しかける。

 

「恐れながら…。スカーレット卿は幻想郷への旅路の支度をされておられるとか?スカーレット卿には我らの同胞たちの幻想郷同道を許していただきたいのです。」

 

レミリアは値踏みするように義男に返事を述べる。

 

「それに私が許可を出すと?我々にどのようなメリットがあると言うのかしら?」

 

そこで、義男は顔を上げて答える。

 

「高度に秘匿されたかの地への道を切り開くには、かなり大掛かりな術が必要なはず。」

 

レミリアは、目を細めて義男の次の言葉を待つ。

 

「これほどの大掛かりな術であれば、完全に隠すのは不可能。相当目立つものではないかと察します。」

 

義男の言葉を聞いて、レミリアはパチュリーに意見を求める。

 

「ちゃんと隠蔽はしているわ。魔法の魔の字も知らない現世の人間にどうこうできるとは思えないわ。」

 

「万が一は絶対にないのかしら?」

 

レミリアはパチュリーに再度問い直し、パチュリーはレミリアの意図を察して訂正する。

 

「そうね。転移の術は詠唱開始の時点から術はかなりの光量を持つわ。」

 

レミリアは再び義男の言葉を促す。

 

「だそうよ?馬引沢の義男、いえ、二代目陰神刑部の義男。貴方は私にどんな見返りをくれるのかしら?」

 

「我々は、スカーレット卿の事が成るまで、人間たちの気を引いてごらんに入れましょう。誰一人の邪魔も入れません。」

 

「貴方…死ぬわよ?」

 

「もとより覚悟の上、種の保存のため…同胞たちを死なせぬため…腹はくくっております。」

 

レミリアは、義男に背を向ける。

 

「新天地に旅立つわけだし…、自分たちの影響下にある者達は多い方がいいわね。二代目陰神刑部義男…あなたの提案を受けるわ。」

 

レミリアは義男の要請にこたえて、妖狐理などの義男の影響下にあるもの達の保護が開始されるのであった。

 

 

 

 

 

 

義男の傘下に納まった喜左衛門は四国に戻っていた。

四国長老会議にて軍隊狸の編成が決定されたためであり、これに加えて八百八狸を率いて関東入りを果たすためでもあった。

 

四国各地に点在する狸を祭る寺社にある蔵の扉があけられる。

蔵の中から中の物を運び出す。

狸たちは、蔵にしまわれていた赤い軍服を袋に仕舞う。

蔵に仕舞われていた旧式の銃が配られていく。狸たちは持参した竹刀袋やバットケースに銃を仕舞っていく。

 

狸たちは長時間の移動に耐えるために頭に葉っぱを乗せて人間に変化する。

変化した狸たちは、飛行機・船舶・電車・長距離バスなどを用いて次々と関東入りをしていくのであった。

 

また、四国以外の各地からも少なくない有志の変化者達が関東へと向かっていった。

 

 

諏訪大社の神である二柱に、頭を下げる動物妖怪たち。

 

「お前たち、本当にいくのか?」

 

二柱の神の一人、八坂神奈子が問う。

 

彼らの中にいる狒々が前に出て答える。

 

「ニンゲン、ヤマケズッテル。ゴミステル…ワルイ…。ホカノミンナ、コマッテル。」

 

今度は老狸が歩み出る。

 

「八坂様、洩矢様。わしら、諏訪の狸もかつて高速建築で住処を追われた。関東で起こっていることは、是の比じゃないくらいに酷いものじゃそうだ。今ここで、歯止めをかけなくてはいずれここまでくるかもしれんのじゃ。…それに、人間の高慢に歯止めをかける最後の機会が今だと思うのですじゃ。」

 

彼らは、再び頭を下げて諏訪大社を後にした。

 

彼らを見送った洩矢諏訪子は、悲しそうに彼らを見て呟いた。

その呟きに神奈子は小さく返答した。

 

「本当に歯止めがかかれば、私たち神への信仰が戻ってくるかもね。でも…。」

「たぶん、無理だろうな…、もう遅い…。人間の信仰心は発展とともに消えた。」

 

 

それから、数カ月の時が経った。

 

 

深夜、人通りの少ない時間。人間に化けた変化者達が横浜市役所の前に集まる。

彼らは、ボストンバックから港北ニュータウン開発反対の抗議文を取り出し、市役所の門戸に張り付けた。

そして、市役所の周りを囲むようにならび…。

手に持っていた火炎瓶を投げ込んだ。

 

「ついに、遂にこの日が来た。」

 

港北の狸のリーダーである新太郎狸は燃え上がる横浜市市役所を見ていた。

 

 

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