池の水が灰色の泥で固められた。
馬引沢ではたくさんの異変が起こり始めた。
農家のじいさんたちが一人、また一人といなくなっていった。
「妖怪にくわれたんじゃねぇか?」
「鉄の荷車でどこかに行ったのを見たぞぉ?」
とにかく誰もいないもんで、誰もいない農村はありがたく僕らで使わせてもらうことにした。
「おーい!義男!湯加減がぬるいぞ!!」
「作助に頼めよ!!あいつが当番だよぉ!!」
「そっか!わかった!!作助!!作助!!」
そんな話を聞きながら、僕は台所の窯に薪をくべる。
火打石どこにあったかな?
僕らは廃村を、そのまま使わせてもらうことにした。
そんな、ある日。
一台の車が止まる。
車の側部には山川建設と書かれていた。
そこから、2人の人間が下りてくる。
「ここが建設予定地か。」
「ここは、電化設備を使ってる家が少ないが、漏電やガス漏れには注意しろよ。」
「わかりました。」
物影から、様子をうかがう僕たち。
「なんだぁ?あの人間はぁ?」
作助が不思議そうに人間たちを見つめている。
僕らも、作助と同じでなんで人間が来たかはわからない。
だけど、辰吉はわかったみたいだ。
「あいつらは、ケンチクギョウシャて言って、家を新しく作り直したりするんだぜ!ほら、あの村長の家は壁のボタンを押すだけでお湯沸かしたり、火がついたりするだろ。あれを作った連中の仲間だ。」
「マジか!?じゃあ、他の家もあんな風にしてもらえるのか!?」
「うわぁ、そやうれしいじゃないか。楽しみだね。」
「あぁ、義男。俺たちも長老や辰吉みたいな豪華な家でくらせるぞ!!」
この時は、僕も光夫も作助も、辰吉の若親分も長老たちも、そう思っていたんだ。
でも、違ったんだ。
村が豪華になると思ってた僕らは、村唯一の土壁じゃない石の家である村役場でどんちゃん騒ぎさ。
昨日も、農家のじいさんたちが置いていった日本酒の残りを引っ張り出して、飲んで歌っての大騒ぎ、ちょっと頭が痛い。
二日酔いなのか、ちょっと痛む頭を押さえて、役場の外に出ると、とんでもない光景が広がっていた。
村が、鉄の化け物に壊されている最中だったんだ。
「うわぁああああ!!みんなぁ!!起きろ!!大変だぁ!!」
僕の声を聴いて、他の狸たちも集まってくる。
「な、なんだぁ!?」
「あわわわわわわ。」
周りの家や蔵が破壊されていく。
移住してから日が浅い場所だけど、自分たちの住処が無残に破壊されていくのは、みんなにとっても衝撃だったんだと思う。
腰を抜かしていたり、茫然としていたりしているのもいた。
僕も、その中の一人で叫んだあとは周りの言葉が全く聞こえなかった。
「義男!光夫!作助!みんな!!沢の奥に逃げるぞ!!」
辰吉の大きな声が、僕を現実に引き戻してくれた。
「おい!しっかりしろ!!義男!!逃げるんだよ!!」
僕よりも先に正気に戻った光夫が、僕の手を引いて沢の奥へと進んでいく。
辰吉を先頭に沢の奥へと身を隠し人間をやり過ごそうとした。
でも、人間たちは回転する刃物を持って、木々や茂みを刈り倒しながら沢の奥までやってきたんだ。