平成狸合戦ぽんぽこ(ガチ)   作:公家麻呂

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06話 族長会議

 

 

僕らが、権太さんの鷹ヶ森に移住して初めのうちの2・3年のうちは馬引沢時代のように平和な時を過ごしたが、そんな生活もそう長くは続かなかった。

 

 

何度目かに及ぶ餌場争いの最中、乱入したおろく婆によって見せられた。

鷹ヶ森・鈴ヶ森の禿山の姿を目にしたことにより、その争いは終わった。

 

人間社会において、昭和40年あたりから全国各地で山林の無秩序な大開発が開始した。

東京都では総面積3千ヘクタール居住予定人口3万人、山を削り森を切り倒し、田畑を埋め、昔ながらの家屋敷を破壊し、多摩丘陵を完全に変貌させ巨大な造成地を作り出し、ここに巨大なベッドタウンを作り出す。大開発事業が進んでいたのである。

 

この緊急事態に、多摩丘陵全域の狸たちは、それぞれ一族を引き連れ、牡丹餅山万福寺の廃寺に集合した。

議長にはこの万福寺に住む105歳になる古狸鶴亀和尚が満場一致で推薦された。

 

「本来の夜行性に拘らず、昼間でも臨機応変に行動していかねばならんのじゃ。」

 

また、この会議において義男が、多摩丘陵開発の犠牲となった馬引沢を中心とした地域、故郷を失った狸たちの暫定的な長に就任した。

比較的若年である狸であった義男ではあったが、そういった狸の中で、都心部を縦断し生き残る。山犬の影を従える等の目に見える逸話を持っており、権太を中心とする上役狸たちの推薦もあり、これといった反対意見もなく無事就任の運びとなった。

 

「では、義男を長老衆の一角として迎え入れるものとする。よいかの…」

「「「異議な~し。」」」

 

大会議はこの開発阻止の大方針を決めたのち、危険を考えただちに解散。

その後に開かれる族長会議に一任されることになる。

 

族長会議では廃れていた化け学の復興、人間研究に5か年計画で取り組むことを宣言したのちに、四国と佐渡から有名狸を化け学指南として招聘することを決定。

 

だが、長距離の危険な旅に志願者はなく。全員狸寝入りを決め込んだ。

 

「「「「「Zz~・・・・」」」」」

 

また、議長団の議々進行において用意したマクドナルドのハンバーガーは極めて有効に働いた。

 

「モスの方がうまかった」

 

というのは義男の言である。

また、次回の長老会議ではモスバーガーのハンバーガーを購入することが決定された。

 

会議は長老たちの腹の一本締めで閉会した。

 

「「「「「よおっ!!」」」」」ポン!!

 

 

 

 

 

 

そして、後日…

人間研究を実り豊かなものにするものとして、万福寺の本堂にTVを設置することにした。

 

『動くな!!こいつの命が惜しくないのか!!』

『いったい何が目的だ!言うんだ!』

『逃走用のヘリコプターと逃走資金1千万用意しろ!』

 

義男はテレビのリモコンをいじる。

 

『本日、東京銀座の洋品店に何者かが侵入し、現金120万円が盗みだされると言う…』

 

義男の背後から不意にかかる声、権太のものである。

 

「おい、義男。お前、またテレビを見てるのか?と言っても他の連中も似たようなもんか。」

 

そう言って、TV番でもないのにTVを見ている狸たちに睨みを利かせる。

 

「まあ、いいじゃないか。彼らも勉強してるんだ…人間研究には違いないさ。」

 

 


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