マブラヴ THE COCKPIT 作:おほほ
1945/1995
昭和20年 8/6 (月) 晴レ
1945年、戦争の末期。すでに日本は敗戦へと向かっており、今日の午前中には原子爆弾が広島へ落とされる。一式陸攻に積まれた桜花では防げない。命を投げうる行為をしていることは理解している、だが1つでも空母を撃沈し本土への空襲を和らげることができれば、それでいい。みんなが同じ気持ちだ、死にたいと思っている奴がこの攻撃部隊に志願した者はいない。家族を友人、国を守りたいという思いが、こんな狂った形になっただけなのだから。
『右上方に敵機!太陽からも敵機や!!』
友軍機より通達された情報に、誰も微動だにしない。すでに米軍には探知され、囲まれることなど最早当たり前のことなのだ。作戦に参加しているのは皆熟練者であり、日本の状況をよくわかっている。
「尾翼損傷!」
「左に旋回しろ!零戦の近くを飛ぶんだ!!」
敵空母までの、道のりの険しさは前回の戦績でわかっていたつもりだ。しかし、F6Fのスピードは一式陸功では相手が悪すぎる。
「機長、この距離なら命中できます。切り離してください」
「ダメだ!ここではお前でも確実に当てるのは無理だ」
俺の提案がひとけりされるのも無理はなかった。すでに満身創痍の母機が今更桜花を射出したところで、撃墜されるのは目に見えていた。タンクはすでに引火しており、出力も低下。尾翼機銃の操作兵はすでに戦死し、これといった援護はない。どれだけの距離を縮め、俺の特攻の確実性を上げられるかの根比べだ。だが、この根比べに俺の母機は勝った。敵艦の見える位置まで運んでくれた。
「ッ、敵艦が見えました!」
「了解...ありがとう、切り離してくれ」
「後は頼んだぞ浅山!!」
射出時の警報音が鳴り響く。衝撃に耐えるため、力強く自身に喝を入れる。母機とはどんどん距離が離れていくが、最期の別れを告げるため、ロケットを作動させた。
すでに1隻の空母が撃沈されていた。成功させたものがいる、それだけで勇気が湧いてくるのを感じた。間違いなく、山岡中尉や野上少尉が責務を果たしたものだろう。しかし、VT信管の猛攻を掻い潜るこの機体性能は本当に素晴らしいかな。すでに目標としている、母艦にまであと数キロにまでさしかかっている。再び生を受け、十数年の命だったが、後悔はない。決意、覚悟、力を授けてくた方達への俺なりの恩返しなのだから。
海上スレスレを飛び、信管の影響を少しでも減らす。もっとも米軍の信管でも、反応する前に桜花は飛び去ってしまう。音速を越えた飛行に、機体も悲鳴をあげていた。だがそんなのは直撃すれば、もう関係ない。
「ハアアアア"ア"ア"!!」
艦中央へと直撃させ、浅山の意識はたたれた。アメリカ空母は大破したものの撃沈とは至らず、負傷者多数、死者少数の結果であった。
昭和二十年八月六日 浅山 剣次朗 少尉 戦死
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1995年
帝国大学の研究所、そこではオルタネイティブ第4計画の総責任者、香月夕呼が研究を進める予定であった。
「はぁ、仕事ばかり増えるわねこのごろは」
彼女のため息は、研究に対してではなく自身の研究室で倒れる若者へのものだった。
「起きてくれるかしら。たく、どうやってはいってきたのやら」
若者を揺さぶると、どうやら意識が戻ってきたのか反応があった。生きているのかいないのかは、すこし重要だったが、生きているのならば好都合であった。
「うっ...こ、ここは」
「お目覚め?旧日本兵の格好をしてなんのつもりか知らないけど、あんた、何者?」
浅山が目を覚ますと、見慣れない空間、そして女性の存在があった。なぜ、自分が生きているのかといった疑問はあるが、一番驚くべきことは、目の前の女性の存在だった。
「香月夕呼、さん...」
「あら、あたしのことはしってるみたいね。でも、あたしはあんたのことを知らないのよ。もう一度聞くわ、あんたは何者かしら?」
彼女がどういった人物なのか、理解しているが、この現状にいまだ動揺を隠せない。それでも、正直に答えるしかない。自分の所在を。
「は、大日本帝国海軍、桜花特別攻撃隊所属、浅山 剣二朗です」
「ふーん、仮にそれを信じるとしてなんでここにいるわけ?」
それは自分でも謎なところがあるが、彼女に信頼してもらうには、自分のことを話尽くす必要があるだろう
「理由はわかりませんが、戦死したと直後にこの場所へ倒れていたと思われます...西暦を教えて頂けませんか?」
「今年は1995年よ」
「......」
言葉が出ない。マブラヴという世界は2001年から始まり、ことをおぼろ気にしか覚えていない。過去の出来事はよくわからない、そんな状況だ。
「...あんたの話を本気で信じると思う?憲兵につきだすけど抵抗しないでちょうだい」
「ッ、まってください!」
彼女は自分の言葉に耳を貸したのか、俺の目を見据えた。あの計画は始まっているのか、そもそも、そんな計画は行っていないのかわからないことだらけだが、発言しなければ何も、わかってもらえない。話すことが、彼女との付き合いでもっとも重要なことと俺は思っている。
「因果律量子論、これで納得してもらえませんか?自分は元々、2018年の、BETAなんて存在しない世界に生きていました」
「わけあって死んでしまいましたが1920年代、前世の記憶をもって戦前に生まれ、そこでも死に、今に至ります」
これでは彼女は納得しないだろう。ただ俺のことを語っただけで彼女の害になっても利になることはないのだから。
「それで?それがなんだっていうのよ。あんたを...」
「オルタネイティブ4、00ユニット...これらを円滑に研究を進めるなら俺を使ってください!」
「!?......」
彼女におしの一言、オルタネイティブ計画について触れれば、絶対に食いつくといった予想は的中した。
「2000年代になるまでは助言はいらないと思います。そこまでは計画も順調に進むはずです。その時まであなたの兵士として働かせてください」
「そんな必死になることないわよ。ここにいた時点で、ただ者でないことはわかっていたしね」
「......」
実際彼女の言っていることは本当だろう。スパイなら彼女とただおしゃべりをするはずもない。そしてスパイや反オルタネイティブ4の者と思うならば、俺を起こす前に拘束しておくものだ。
「浅山、あんたの話はもう少し後に聞かせてちょうだい。これからいろいろすることがあるわ。ちょうど横浜に訓練学校を設立したし、そこで優秀な駒になってなさい」
「っ、了解しました...香月さんは元からこのつもりで?」
「まさか。あんたが不審だとは思っていたし、憲兵にも突き出すつもりだったわ...1年時間をくれるって、あたしがいってんだから命令は守りなさいよ。いろいろ、手配しておくわ」
ご都合主義全快でいかせていただきます
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