スーパーロボッコ大戦   作:ダークボーイ

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EP14

 

「よいしょ、っと」

「いっぱい買ったね~」

「すいません、お金は後で返しますから……」

「経費で出すからってポリリーナさんが言ってましたよ」

「そもそも、私達ここで使えるお金持ってないよ………」

 

 大量の食料を手にした芳佳に、それにつきあったユナ、エグゼリカ、リーネがそれぞれ買い物袋を手に船へと戻ろうとしていた。

 

「それにしても、大学なのに大きなお店とかもあるんですね~」

「何でも、野菜なんかの新種開発もここでやてて、その販売モデルも兼ねてるとか」

「ユーリィ、なんかエミリーちゃんの知り合いに新種の試食とか言われて連れてかれたけどね………」

「それって毒見なんじゃ………」

「ユーリィは大抵の事じゃお腹壊さないから大丈夫♪ 第一、ユーリィに食べ物持たせたら帰る途中で全部なくなっちゃうよ~」

「ルッキーニちゃんみたい……」

「あの時は持たせた経費全部オヤツで使っちゃったんだけどね」

「お父さんは見つかったけど、ルッキーニちゃんとサーニャちゃん、あとエイラさんとミーナ中佐、どこにいるんだろう………」

「大丈夫だって芳佳ちゃん! 何年も見つからなかったお父さんだって見つかったんだから、他の人もきっとどこかで元気にしてるよ♪」

「うん、そうだね。ようし、じゃあお父さんにご飯作ってあげないと!」

「手伝うよ芳佳ちゃん」

「そう言えば、お父さんオムレットにちゃんとエサあげてるかな?」

「確かネコちゃんだよね? ここからなら地球にメール届くよ」

 

 少女達がにぎやかに話しながら、ドッグへと向かっていく。

 ドッグに辿り付いた時、大型のコンテナが幾つも運び込まれているのに気付いた。

 

「リューディア!」

「あらユナ、お買い物は終わったんですか?」

 

 コンテナの受け取り確認をしていたリューディアにユナは声を掛けると、向こうも作業の手を一時休めて声を掛けてきた。

 

「うわあ、これは何ですか?」

「資材よ、艦内であれこれ作るためのね」

「資材?」

 

 買い物袋を抱えたまま、芳佳とリーネも運び込まれるコンテナをポカンとした顔で見つめていた。

 

「エルナーに、今後何が起きるか分からないから、私はここで資材の中継をする事になったの」

「なるほど、ここなら色々そろいますね」

「ゴメンねリューディア、色々させちゃって」

「いいのよユナ。それに今回の事件、恐らくそう簡単に終わらないと思うわ」

「え? そうなの?」

 

 思わず呟いた言葉に、ユナが首を傾げる。

 そこで余計な不安を与えないようにと、とっさにリューディアは笑顔を浮かべて言葉を続けた。

 

「だから、私がここでバックアップするわ。補給は心配しないで」

「ありがとうリューディア!」

 

 そう言って笑みを浮かべるユナに、リューディアも心の底から笑みを返す。

 なお、見るからに怪しい新種野菜(らしき物)を大量に手土産としてユーリィが持ち帰り、芳佳が調理に苦心するのはこれから2時間後の事だった。

 

 

 

『いただきます!』

 

 プリティーバルキリー号のミーティングルーム兼食堂で相変わらず皆が騒がしく食事をしていた。

 

「お父さん、どう?」

「うん、うまい。上手になったな、芳佳」

「よかった~、いっぱいあるから、たくさん食べてね」

 

 娘の手料理を食べる宮藤博士が、娘の満面の笑みにこちらも笑みを返す。

 

(母親の味そっくりだな……これも遺伝するのかな)

 

 ふとその懐かしい味にまだ扶桑にいた時の事を宮藤博士は思い出していた。

 

「お父さん、そう言えばお仕事の方は?」

「ああ、しばらく有給取ったから大丈夫だ」

「正確には、しばらく身を隠した方がいいって事になってるけど」

「え?」

 

 エミリーの一言に、芳佳どころか周囲の者達全員が首を傾げる。

 

「新理論発表後、宮藤博士の引き抜き合戦が裏で激化してるの。各惑星国家の軍隊から民間企業にいたるまで。能力関係の開発をしている所で、彼の頭脳を欲しがらない所はないわね」

「新型ストライカーユニットを完成させた時もそうだったな。世界各国の軍から民間企業に至るまで、あらゆる所が宮藤博士を欲しがった物だ」

「色々苦労した前例だからね……」

 

 エミリーの説明に、美緒が宮藤博士の下でテストパイロットをしていた時の事を思い出し、宮藤博士も当時を思い出して苦笑していた。

 そこで横から声が入ってきた。

 

「皆さん! 食べながらでいいから聞いてください。この数日、収集できる限りの情報を集めましたが、正直、ヴァーミスの明確な目的がつかめてません。何でもいいですから、変わった情報はありませんか?」

 

 エルナーの声に、皆が顔を見合わせる。

 

「あったか?」

「聞いてないわね~」

「保障関係で揉めてる所はありましたわ」

「どこかで捕獲に失敗したようよ」

「素手で倒そうとして重傷負った人がいるって話も……」

 

 取り留めの無い情報にエルナーも思わずため息を漏らす。

 

「これからどう動けばいいのか、判断情報が少なすぎますね………」

「地球でも新たな敵の目撃は無いわ。ヴァーミスがあれだけの行動で終わるはずは無いのだけど」

「ストライカーユニットのオーバーホールは終わっている。こちらは戦闘に支障は無い」

「う~ん、一体…」

 

 クルエルティアと美緒の言葉に、エルナーもどうすべきか悩んだ時だった。

 突然船内に警報が鳴り響く。

 

「むぐ!?」

「何!? 何!?」

 

 何人かが思わず喉に詰まらせそうになる中、それぞれのリーダー達が食事を中断してブリッジにすっ飛んでいく。

 

「何が起きたの!?」

「救難信号よ! しかもこの船向けの!」

 

 ブリッジで一人作業をしていたミサキの言葉に、全員に緊張が走る。

 

「強力なECMが掛かってる!」

「こちらでECCMを掛けます!」

「各センサー最大!」

 

 エルナーとポリリーナがコンソールを次々と操作し、救難信号を何とか拾い上げる。

 

『こち……香……ユナ……この通信を……敵に襲げ………』

「この通信パターン、機械化帝国の物よ!」

「亜弥乎ちゃん達の!?」

 

 ご飯茶碗片手にようやくブリッジに来たユナが、その言葉に過敏に反応した。

 

「場所はどこだ!」

「近いわ、30分とかからない!」

「すぐに行こう!」

「分かったわ、緊急発進準備!」

「カルナダインに戻ります! こっちの方が早いかもしれません!」

「座標データ送ります!」

「501小隊、総員出撃準備!」

「え~、まだご飯の途中……」

「早く食えハルトマン!」

「リューディアはここに残ってください!」

「出港許可が出たわ! 急ぐわよ!」

 

 突然の事に皆が慌てて食事をかきこみ、それぞれの準備を整えていく中、二隻の宇宙船が高速で救難信号の発信元へと向かっていった。

 

「ますますECMが強くなってくわ! このスクランブルパターンは銀河連合のデータバンクに存在してない!」

「位置を見失わないように! 最高速度まで上げるわ!」

「装弾急げ! ユニットは大丈夫だな!?」

「アールスティア、ディアフェンド、リンク開始!」

「救難信号、弱くなってきてる!」

「あと10、いえ7分持ってくれれば!」

 

 戦闘準備を整えつつ向かう少女達に、遠くから僅かに見える爆発のような光が航行用ディスプレイに写し出される。

 

「エルナー、フィールド展開準備!」

「分かってますポリリーナ!」

「こちらはすぐに出れる!」

「こちらもです!」

 

 皆が焦りを覚えつつ、エルナーが戦闘用フィールドの展開準備に入る。

 

「目標補足、減速開始!」

「フィールド展開します!」

「TH60 EXELICA、発進します!」

「TH32 CRUELTEAR、発進!」

 

 救難信号を発してる宇宙船がフィールド範囲内に入るギリギリでフィールドが展開され、即座にトリガーハートの二人が出撃する。

 

「間違いない、ヴァーミス!」

「エグゼリカは右翼、私は左翼から! 敵の注意を引く事を最優先!」

「了解姉さん! 行ってディアフェンド!」

「行きなさい、カルノバーン・ヴィス!」

 

 トリガーハートの二人が素早く散開、同時に二つのアンカーが射出され、宇宙船に攻撃を加えていたヴァーミスの小型ユニットの一体をキャプチャー、そのまま振り回されて周囲の小型ユニットを次々と巻き込んで破壊、そして明後日の方向に投じられて爆散する。

 

「うわあ、エグゼリカさん達すごい………」

「こちらも出撃する!」

「負けてられんぞ!」

 

 芳佳がトリガーハートのすさまじい戦い方に感心する中、美緒の号令と同時に美緒とバルクホルンを戦闘にウイッチ達が出撃していく。

 

「フィールド外は真空です。ご注意をマスター」

「分かっている」

「……速度の出しすぎは禁物です、お姉様」

「う~ん、やりにくいなあ……」

 

 アーンヴァルと飛鳥がそれぞれのマスターに忠告するのを聞きながら、ウイッチ達は銃のセーフティを外す。

 

「目標は襲撃されている船の保護だ! 射線に注意! 攻撃開始!」

 

 美緒の号令と共に、一斉に銃弾が吐き出される。

 

「宮藤とリーネは目標に近接してシールド展開、防御に専念! ペリーヌは二人の護衛! 他は私に続け!」

『了解!』

 

 こちらに攻撃をしかけてきたヴァーミスを掻い潜り、芳佳が巨大なシールドを展開、その反対側でリーネもシールドを展開させていく。

 

「敵はこちらで受け持つ! 救出を急げ!」

「お願いするわ!」

「この!」

「ええい!」

 

 遅れてきたユナ達がトリガーハートとウイッチが敵を撃退する中、目標の宇宙船へと肉薄していく。

 

「まずいわ! 損傷がエンジン部にまで達してる!」

「直にあの船、爆発するわ!」

「ええ!?」

 

 ミサキとポリリーナの指摘に、ユナが思わず悲鳴をあげ、周囲で戦っていた者達も驚愕する。

 

「ミドリ!」

「分かってます!」

「手伝いますわ!」

 

 エリカの言わんとする事を察したミドリが己の操る氷で消化作業に入り、元暗黒お嬢様13人衆の一人、お茶の佳華が己の操るレーザーウォーターでそれを援護する。

 

「急がないと!」

「ハッチが開かない! 壊れてるわよこれ!」

「ユーリィ!」

「はあい! クルクル~パーンチ!」

 

 ユナが急いで中に入ろうとするが、外部スイッチが一切利かない事に舞が思わず悲鳴を上げる。

 だがユナは間髪いれずにユーリィに頼み、ハッチを強引に叩き壊させる。

 

「気をつけて! 中にも少し入り込んでるわ!」

「外敵は私とエリカ7で止めますわ! 早く中へ!」

「お願い!」

 

 徐々に減りつつはあるが、更に湧いてくるヴァーミス相手にミサキとエリカがハッチの両脇で己の得物を構え、ユナを先頭に何人かが中へと飛び込んでいく。

 だが直後、エンジンの一部が小爆発を起こした。

 

「エリカ様! 長くは持ちません!」

「ユナ急いで! きゃあ!」

 

 消化活動に当たっていた二人だったが、すでに己達に止められるレベルではなくなっている事に焦りを覚え始めていた。

 

「いかん! 持たないぞ!」

「だが、こちらは手が離せん!」

 

 美緒とバルクホルンが戦闘を続けつつも、最早一刻の猶予も無い状況に必至になって考えを巡らせる。

 

「水上艦なら、キングストン弁を抜くという最後の手段があるが………」

「この時代の船に使えるのか!?」

「それ以前にどこに水があるんだ!? いやいっそフィールドを解除して真空にするってのは!」

「……ダメですお姉様。この時代の反応炉では使えません」

 

 シャーリーの提案に、彼女のそばで三七式一号二粍機関砲を速射していた飛鳥が否定。

 

「手が無いわけでありません、マスター」

「どうすればいい!」

「バーニア部分を切り離せば、少しは持つはずです」

「バーニア、噴出口か!」

 

 アーンヴァルのとんでもない提案に、美緒は即座に背負っていた烈風丸を抜いた。

 

「先端部から順次パージしてください。余剰エネルギーを分散できます」

「……エネルギー分布測定しました。まずは先端部から5m程を分離してください」

「あそこらかな? シュトルム!」

 

 飛鳥が頭部のウサミミのような三八式特殊電探を駆使して分離箇所を指定、ハルトマンが固有魔法を発動、己を中心とした竜巻状の衝撃波となってバーニア先端部を吹き飛ばしていく。

 

「これで少しは持ちます! 救助を急いでください!」

「いや、どうやらそれよりも先にやる事が出来たようだ」

 

 アーンヴァルが急かすが、美緒は構えていた烈風丸を別の方向へと向けて構え直す。

 そこに、星の光を遮るような大きな影が浮かび上がってきていた。

 

「……9時の方向、巨大反応があります」

「な、こんな近くに来るまで気付かなかったのか!?」

 

 飛鳥の言葉に全員がそちらにある物に気付く。

 そこには、無数の小型ユニットを従えたヴァーミスの大型ユニットの姿があった。

 

「コアユニット! あれを破壊すれば、ヴァーミスは統率を失います!」

「エリカさんのお宅を襲ったのよりも、大きいですわね………」

「だが、関係ない!」

 

 こちらの宇宙船よりも巨大な敵影に、ペリーヌが少しだけ頬を引きつらせながら、片手に銃を持ったまま、もう片方の手で腰のレイピアを抜き放つ。

 敵影に恐れず、バルクホルンが先陣を切って接近、銃撃をお見舞いするが、魔力を帯びているはずの弾丸はあっさりと大型ユニットの外部装甲に弾かれる。

 

「何!?」

「この~!」

「スポットライトビーム!」

 

 驚愕するバルクホルンを追い抜くように、ハルトマンの銃撃とミキのビームが直撃するが、それすら弾かれてしまう。

 

「いけない! 地球での戦闘データが取り込まれてます!」

「エグゼリカ! 目標をコアユニットに変更!」

「はい姉さん!」

 

 トリガーハートの二人がアンカーを大型ユニットへと向けて射出、アンカーをロックオン状態にし、攻撃を集中させる。

 

「攻撃の手を緩めるな! いかな頑強な装甲でも、無限に耐えられるわけではない!」

 

 美緒が叫びながら、大型ユニットの多数の砲塔から放つ弾幕を機敏に回避し、斬撃を食らわせるが、それも表面に傷を負わせるだけで、しかも即座に修復が始まっていく。

 

「厄介だが、そんな物はこちらもネウロイ相手に慣れている!」

「坂本少佐!」

「馬鹿者! 己のポジションを崩すな!」

 

 シールドを張っていたリーネが援護しようと銃を構えるが、そこで美緒が一喝する。

 

「けど、うわ!」

 

 芳佳も銃を構えようとするが、そこへ小型ユニットが直接シールドへと突撃し、僅かに体勢が揺らぐ。

 

「トネール!」

「縦横無尽!」

「レ~ザ~発射~!」

 

 再度突撃しようとした小型ユニットを、ペリーヌの固有魔法とエミリーと詩織の攻撃が粉砕、更にエリカ7が二人と背後の宇宙船を護るべくフォーメーションを組む。

 

「アーンヴァル! あの船はあとどれくらい持ちそうだ!?」

「えと……」

『あと五分、それが限度だ』

 

 美緒の問いかけに、船内から戦闘の様子をモニターしていた宮藤博士が代わりに答える。

 

『私の計算でも同じです。急いでください!』

「その前に、こいつを倒さねばな………」

 

 カルナからも同様の報告に、美緒は集中攻撃を受けながらも平然と応戦してくる大型ユニットに向けて魔眼を向ける。

 

「コアは、恐らくアレか? 私の魔力をすべてこめれば………」

「けど少佐! 攻撃が更に激しくなってきたぞ!」

 

 シャーリーの指摘通りに、大型ユニットの攻撃は更に激しさを増していく。

 

「これじゃあ近寄れないよ!」

「きゃあ!」

「エグゼリカ! くっ!」

 

 あまりに激しい弾幕に、ハルトマンが思わず弱音を吐き、攻撃を開始し損ねたエグゼリカが体勢を崩してロックオンが外れ、一瞬そちらに気を取られたクルエルティアも弾幕がかすめていく。

 

「じゃあスピードでかく乱すれば!」

 

 シャーリーが固有魔法の超加速を発動、高速でユニットの間を掻い潜りながら弾幕をばら撒き、反転しようとする。

 

「お姉様!」

「あ……」

 

 そこで随伴していた飛鳥が叫び、限定フィールド内だった事を思い出したシャーリーがシールド併用で急ブレーキをかけるが、曲がりきれずにフィールドから片足が出てしまう。

 

「まずい!」

「カルノバーン・ヴィス!」

 

 途端にストライカーユニットが機能を停止、危うくそのまま出そうになった所で、飛来したアンカーが彼女をキャプチャー、強引にフィールド内に引き戻す。

 

「助かった! ありがと!」

「ここではその能力は使わない方がいいわ」

 

 寸での所で救出に成功したクルエルティアが苦言を呈した所で、再度大型ユニットの攻撃が激化してくる。

 

「……ルッキーニがいたら、なんとか突破できるのに」

「いない人間の事を言っても始まらん。私がなんとか切り開く!」

「何を言ってるんだ少佐! シールドの張れないウイッチがどうやって…」

「マスター、私が道を開きます。見ててください!」

「……お姉様、あなたが勝利を願うなら……わたしは負けない!」

 

 突破口が見出せないウイッチ達を見た武装神姫二体が、一気に加速して大型ユニットへと突撃していく。

 

「エンジェリック・スカイ発動! これはどうっ?」

 

 アーンヴァルのリアウイングが可変し、その移動速度が一気に上昇、その小ささと併用して弾幕を一気に掻い潜りながら、手にしたGEモデルLC3レーザーライフルを構える。

 

「マスター、見ててください。これが私の本気です!」

 

 放たれた高出力レーザーが大型ユニットの砲塔を次々と破壊、明確に弾幕がその数を減らしていく。

 

「鬼よ………我に宿りたまえ」

 

 飛鳥も腰の霊刀 千鳥雲切を抜いて頭上に構えると、その刀身に光を宿して、軽快な動きで弾幕を避け、砲塔を次々と斬りさいていく。

 

「うわあ、やるな~」

「一気に決める! 援護を!」

 

 予想以上の武装神姫の攻撃力に、シャーリーが思わず感嘆する中、美緒は烈風丸に魔力をこめていく。

 

「一斉攻撃ですわ!」

 

 エリカの号令と同時に、各々が自らの得物で大型ユニットに攻撃を集中させる。

 

「エグゼリカ!」

「姉さん!」

 

 トリガーハートのアンカーが周囲の小型ユニットをまとめてキャプチャーし、勢いをつけて大型ユニット目掛けて投じられ、炸裂する。

 

「今だ! 烈風斬!!」

 

 その隙を逃さず、美緒が全魔力をこめた烈風丸から凄まじい斬撃波が放たれ、大型ユニットを半ばまで両断、内部の制御コアを斬り割き、その巨体が僅かな間を持って大爆発を起こす。

 

「やった~!」

「撃破確認!」

「救出は!?」

 

 皆から歓声が洩れる中、冷静な何人かが振り返る。

 そこには、あちこちで小爆発を起こす宇宙船の姿と、壁をぶち破って人影を護るように飛び出すユナ達の姿が有った。

 

「こっちは大丈夫! みんな離れて!」

「総員待避!」

 

 ユナの声と美緒の号令に、全員が慌ててその場を離れようとする。

 

「くっ…」

「大丈夫!?」

 

 だが、体勢を崩して落下しかけた美緒を慌ててクルエルティアが支え、その場から離脱する。

 全員が船へと戻ろうとする直前、宇宙船は爆発を起こした。

 

「あ、危なかった~………」

「助かりました、皆さん」

 

 芳佳が胸を撫で下ろし、そこでお礼を言われてユナが連れている人物を見た。

 

「私は白香(パイシャン)と言います。機械化帝国の者で、ユナさんのお友達です」

 

 そう言いながら微笑む、中国風に思える格好に長髪、そしてカタツムリのようなシェルを背負った少女に皆の視線が集中した。

 

「いやあ~、まさか白香が乗ってるなんて思ってなかったよ。お久しぶり~」

 

 ユナの能天気な挨拶に、先程まで極めて危険な状況にあった緊迫感がその場から消え失せていく。

 

「しかし、なぜ貴女はヴァーミスに襲われていたの?」

「………実は、私はユナさんに救援を頼むために来ました」

「! 機械化帝国に何かあったんですか!?」

「実は…」

 

 クルエルティアの問いに、白香が重い口調で呟く。

 その一言にエルナーが敏感に反応するが、それ以上言葉を発する前に白香の体が崩れ落ちそうになる。

 

「わわ! 白香大丈夫?」

「話を聞くのは後にした方がいいだろう。まずは負傷者の治療を」

 

 ユナが慌てて支える中、出迎えに来た宮藤博士が全員の状況を見回し、激戦を物語る皆の状態にまずは手当てをするように促す。

 

「じゃあ私が治します! まずはその人から…」

「あの、芳佳ちゃんの魔法って機械人に効くかな?」

「自己治癒できますから大丈夫です。少し休んでからですが」

「ユナは白香を医務室へ。他に重傷の子は?」

「エグゼリカが少し損傷したけど、カルナダインで簡易修理させるわ。それよりも彼女を……」

「私は大丈夫だ」

「無理をするな少佐、先程の一撃で魔力を使い果たしてるのだろう? ペリーヌ、少佐も医務室へ」

「わ、分かりましたわ」

「リューディアから回復アイテムが送られてきました。こちらは請求書だそうです」

「こっちで払っておくわ。多分これ魔力の回復にも使えると思うから、ウイッチの人達にも渡しておいて」

 

 ウルスラが持ってきた回復アイテムをポリリーナが仕分ける中、皆が軽症の者に手当てを施したり、先程の戦闘の詳細を確認していく。

 ふとそこで、ポリリーナは宮藤博士がその様子を興味深そうに見ているのに気付いた。

 

「博士、何か気になる事でも?」

「いや、聞いた所だと、こうして皆で戦うの初めてではなかったかな?」

「まあ……地球で少しは闘いましたけど」

「その割には、随分と統率が取れてるなと思って。ウイッチ同士でも息を合わせるのは大変なんだが………」

「統率なんて取ってませんわ。ユナが白香を助けようとしたのを、みんなが手助けした、ただそれだけです」

「ああそうか、君達は軍人でも何でもなかったからな。友達を助ける、か。確かにそれが一番の方法だな」

 

 ポリリーナの言葉に、宮藤博士は少し苦笑して頭をかく。

 

「じゃあこちらはストライカーユニットの整備にとりかかるとしよう。彼女が話を聞けるようになったら呼んでくれ」

「ええ」

 

 

 

数時間後

 

 プリティーバルキリー号のミーティングルームのテーブルに、白香を中心として中心メンバー達が集合していた。

 

「心配をおかけしました」

「白香、起きて大丈夫?」

「あまり無理はしない方がいいわね。メインシステムは無傷だけど、各部にダメージがまだ残ってるわよ?」

 

 どこか顔色のよろしくない白香をユナが心配し、状態をチェックしたエミリーが診断結果を手に僅かに眉を寄せる。

 

「それでは聞かせてもらえますか? 今、機械化帝国で何が起きているか、を?」

 

 エルナーの言葉に、白香は背中のシェルをまさぐり、一枚のデータチップを取り出す。

 

「今から半月前の事です。突然機械化帝国に謎の戦闘機械群が攻撃をしかけてきました。交渉の余地すらない状況の中、白皇帝・玉華(ユイファー)はやむなく交戦を決意、私達は一致団結して闘いは優位に進んでいました……しかし、5日前の事です。敵は突然新型を投入、戦況は一気に逆転されました。それに………」

「それに?」

 

 口ごもる白香に首を傾げるユナだったが、しばし迷ってから白香は次の言葉を告げる。

 

「前線指揮に当たられていた亜弥乎様が、敵に捕らえられました」

「亜弥乎ちゃんが!?」

 

 驚きのあまり、ユナが座っていたイスから立ち上がる。

 

「それで、どうなったの!? 亜弥乎ちゃんは無事!?」

「落ち着いてユナ」

 

 思わず白香に詰め寄るユナだったが、ミサキがそれを制止する。

 

「……亜弥乎様の状況は、分かりません。私はその直後に玉華様の命を受けてユナさん達に助けを求めるために出立したので……」

「そんな………エルナー、すぐに助けに行こう!」

「待ってユナ、まずは敵の情報を解析しないと」

「そんな!」

「その機械化帝国とやらは、ここからどれくらいかかる?」

「そうね、この二隻なら四日もあれば」

 

 ユナをなだめながら、ポリリーナは美緒の問いに少し考えてから答える。

 

「その間に敵を調べる時間は十分にあるはずだ。それが敵のデータだね?」

「はい」

 

 宮藤博士が白香の出したデータチップを受け取り、それをミーティング用のコンソールにセットする。

 程なくして、テーブルの中央に立体映像が浮かび上がった。

 

「これは、ヴァーミス! そうか、この星がヴァーミスの侵食目標!」

 

 その映像を一目見たクルエルティアが思わず声を上げる。

 

「だとしたら、地球に現れた理由も納得できますね。機械化惑星は、ネオ東京をモデルにして都市設計されてるんです」

「ふむ、だがこれは………」

 

 映像は、ヴァーミスと機械化帝国の機械兵の衝突へと切り替わり、それを見た美緒とバルクホルンが顔をしかめる。

 

「すまないが、私にはどちらが敵か味方か区別できん………」

「私もです、少佐」

「……それは後で覚えておいてもらいましょう」

「あら、別口が出てきたわよ?」

 

 ウイッチ達の危険な発言にエルナーが言葉を濁すが、そこでエリカが映像を指差す。

 そこには、先程と打って変わって、見た目は人間と左程変わらないシルエットが映し出されている。

 周囲に無数の攻撃ユニットを従えたシルエットが段々大きくなっていき、オレンジの髪と赤いプロテクターをまとった少女の姿が確認できた。

 だが、それを見たクルエルティアの目が大きく見開かれる。

 

「そんな、まさか………」

「知ってるんですか?」

「フェインティア! これは私達と同じトリガーハート、TH44 FAINTEARだわ!」

「何? 味方だったはずの者なのか?」

「ええ。ヴァーミスに捕獲されて行方不明とは聞いてたけど、どうして………」

「し、少佐これを!」

 

 美緒の問いに答えるクルエルティアだったが、そこで今度はバルクホルンが声を上げた。

 

「どうし、な、まさか!?」

 

 映像は、フェインティアに率いられる無数の黒い影を映し出す。

 漆黒のマネキンにも似た姿に、両足にユニットのような物が付いたその敵は、ウイッチ達に見覚えのある存在だった。

 

「これは、ウイッチもどきだ!」

「間違いない! あの時、宮藤と遭遇してたネウロイとそっくりだ!」

「……間違いないのかね?」

 

 宮藤博士の問いに、ウイッチ二人は静かに頷く。

 

「だがなぜ? なぜこの人型ネウロイがここに………」

「人型の報告は宮藤の時を含め、数件しか報告が無かったはず……だがこの数は……」

 

 映像はフェインティアに率いられた無数の人型ネウロイによって、戦況が一変。

 機械化帝国側が一気に不利となっていく中、緑の髪を長いツインテールにした、どこか幼い容姿の少女がフェインティアに向かっていく。

 

「亜弥乎ちゃん!」

 

 その少女、ユナの親友でもある亜弥乎の姿にユナが声を上げる中、奮戦むなしく、ボロボロになった亜弥乎を人型ネウロイがどこかへと連れ去っていく。

 そして、映像は途切れた。

 後には、奇妙な沈黙がその場に満たされていた。

 

「………どういう事だ?」

 

 最初に口を開いたのは、美緒だった。

 その一言が、今その場にいる者達全ての心境だった。

 

「分かりません。分かったのは機械化帝国こそがヴァーミスの目標だった事、そしてヴァーミスの側に何故かトリガーハートとネウロイがいる事、そして亜弥乎が連れ去られた事。以上です」

「早く助けにいかないと!」

 

 エルナーの上げた要点、その三つ目にユナが過敏に反応する。

 

「落ち着いてほしい。連れ去った、という事は何か目的があるはずだ。その目的がある以上、すぐに彼女に危害が与えられる可能性は低いだろう」

「私もそう思います」

 

 宮藤博士の意見に、ミサキも賛同する。

 

「けど、何されるか分からないって事じゃん!」

「もちろんすぐに機械化惑星に向かうわ。全ては、そこにあるのだから」

 

 ポリリーナの言葉に、全員が顔を見合わせ、静かに頷く。

 

「全ての鍵は、確かに機械化惑星にあるでしょう。進路を機械化惑星へ!」

「亜弥乎ちゃんと、機械化帝国のみんなを助けに!」

 

 エルナーとユナの宣言に、全員がその場から立ち上がり、それぞれ指示を出すべく室内から出て行く。

 

「美緒君、あとでちょっといいかな」

「あ、はい」

 

 部屋から出て行こうとうする美緒を、宮藤博士が呼びとめ、声だけかけると彼女を見送る。

 それを見ていたミサキが足を止めると、宮藤博士の方へと歩み寄った。

 

「……宮藤博士」

「ミサキ君も気付いたか」

「……はい」

 

 

 

「失礼します」

 

 地球時間で言えば夜半に当たる時間帯、全員が機械化惑星に向けての準備の慌しさが一段落した後に、美緒は宮藤博士にあてがわれたラボ代わりの部屋を訪れた。

 ドアが開けて入ると、そこには厳しい顔をした宮藤博士とミサキの姿が有った。

 

「あの、宮藤博士、何の御用でしょうか?」

「……まずはこれを見て欲しい」

 

 宮藤博士がコンソールを操作し、画面に先程戦闘に参加したメンバー達の顔と共に幾つもの棒グラフが表示されていく。

 

「これは先程の戦闘時、みんなの個体エネルギー、ウイッチで言えば魔力を測定した物だ」

「ほう、そんな事まで出来る時代とは……」

 

 グラフの上の方、もっとも高い数値を表しているのはユナ、ポリリーナ、エリカ、芳佳、エグゼリカといった面々で、その下にユーリィやハルトマンといった者達が並んでいた。

 だがそのグラフの一番下、一人だけ格段に低く表示されている者がいた。

 

「……なるほど、話とはその事でしたか」

「……ああ」

 

 その一番下、上位陣の四分の一すら満たせてない人物、他の誰でもない美緒自身の数値に、三人の顔が険しくなる。

 

「君は確かもう二十歳になっていたね? 本来ならもう引退している、いや引退していなくてはならない時期のはずだ」

「……分かっています」

「それだけじゃないわ」

 

 ミサキがコンソールを操作して別のデータ、美緒が烈風斬を放つ映像を映し出す。

 

「この技、そして貴女の刀、これは貴女の生体エネルギー、すなわち魔力を著しく消耗している。私の目から見ても、あまりに危険すぎるわ」

 

 映像は烈風斬を放った後、体勢を崩してクルエルティアに助けられるシーンになっている。

 

「……ストライカーユニットの開発者として言わせてもらう。坂本少佐、君は…」

「博士!!」

 

 宮藤博士の言葉を、美緒は大声で中断させる。

 

「………分かっています。自分の事ですから」

「なら………」

「しかし、今はまだ飛ばなくてはならないのです。ストライクウィッチーズの、副隊長として」

「…………」

 

 毅然として答える美緒に、宮藤博士は無言で厳しい表情を崩さない。

 

「私はいつも言ってたはずだ。その力を、多くの人を守るために。決して君を危険にさらすためにストライカーユニットを作ったわけじゃない」

「美緒、貴女の魔力、こちらで言えばサイキックエネルギーは安全保障理事局の基準でも実戦使用の許可が出るレベルではないわ」

 

 宮藤博士とミサキ、両者続けての通告に、美緒は強く拳を握り締める。

 

「それでも私は!」

「私がサポートします」

 

 そこに突然響いた声に、皆がそちらを振り向く。

 いつの間に来たのか、アーンヴァルが美緒の背後に立ち、三人をまっすぐ見据えていた。

 

「私がマスターの矛となります。ウイッチの方々には、まだマスターの指示が必要です。だから、足らない部分は私が補います。それこそが私の使命なのですから」

「アーンヴァル………」

 

 強い言葉で宣言するアーンヴァルを、美緒はそっと両手ですくい上げる。

 

「……ありがとう」

「あ、いえ………」

 

 面と向かって礼を言われ、アーンヴァルが思わず照れる。

 

「……確かに、彼女の火力なら不足しているサイキックエネルギーを補えるかもしれないけど………」

「……条件は戦闘時にアーンヴァルを随伴する事、後方指揮になるべく徹する事、そして烈風斬を無闇に使わない事、この三つを守ってほしい」

「は! 了解しました!」

「了解です!」

 

 片手にアーンヴァルを持ったまま、もう片方の手で美緒が敬礼し、アーンヴァルもそれを真似して敬礼する。

 

「それと、これを渡しておくわ」

 

 ミサキはそう言うと、懐から一つのアンプルケースを取り出す。

 

「それはなんだ?」

「サイキックブースター、私のような特別査察官に支給される、サイキッカー用の特殊増強剤よ」

「ミサキ君! まだそんな物を持っていたのか!」

 

 ケースを開き、中に並ぶ無針アンプルを見せたミサキに、宮藤博士は思わず立ち上がる。

 

「それは使用禁止薬物のはずだ!」

「分かっています。博士がこれの使用禁止を唱えた第一人者だという事も……」

「つまり、危険な代物だという事か………」

「そうだ。使えば脳に障害が起きたり、一時的な増強と引き換えに力の安定を欠いたりする可能性がある」

「私達でも、使用は最緊急時に限られてるわ。あくまで最後の手段よ」

「なるほどな………」

 

 二人の説明に思わず唾を飲み込みつつ、美緒はそのアンプルケースに手を伸ばす。

 それを、横から宮藤博士が掴んで止めた。

 

「これは、君の烈風丸と同等、もしくはそれ以上に危険な薬品だ。それを留意しておくように」

「分かっています」

「マスター……」

「アーンヴァル、もし必要以上に彼女が使うようなら止めてくれ」

「分かりました、博士」

 

 宮藤博士がゆっくりと手を離し、アンプルケースを受け取った美緒が、それをそっと己の懐に仕舞う。

 

「それでは失礼します」

「いいか、決して無理はしないように」

「はっ!」

 

 再度敬礼すると、美緒はアーンヴァルを伴って部屋を去っていく。

 戸が閉まると同時に、宮藤博士は重いため息を吐いた。

 

「立派に成長したかと思っていたが、変わってないな……昔と同じだ」

「そうなんですか?」

「一度決めた事は絶対に譲らない。私の下でテストパイロットをしてた時もそれで苦労してたよ……ミサキ君、君にも頼んでおく、美緒君が無茶をしようとした止めてくれ」

「分かりました」

 

 それだけ言うと、ミサキも部屋を出て行く。

 一人残った宮藤博士は、しばらく何か考えていたが、やがてコンソールに向き直ってものすごい速さで何かを設計していく。

 

「彼女達には彼女達にしか出来ない事がある。ならば、私は私に出来る事をしよう」

 

 持てる知識を総動員させ、宮藤博士は少女達の力となるべく全力を発揮させ始めた。

 彼女達を、守るために………

 

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