スーパーロボッコ大戦   作:ダークボーイ

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EP8

 

『目標まで、あと2時間半の予定です』

「船籍登録完了、ダンボーのドッグの予約も取ったわ」

『ありがとう、何から何まで』

『助かりました~』

 

 査察官の特権を利用してカルナダインの登録関係の一切合財を済ませたミサキに、クルエルティアとカルナが礼を述べる。

 

「着くまでの間、そちらから貰ったデータをこちらでも少し調べてみるわ」

『お願いするわ。こちらのネットワークにはまだ不慣れで』

「はっはっは、私はこの船のドアの開け方すら分からんぞ」

「マスター、それくらいは覚えてください」

 

 普段どおりの剛毅な笑い声を上げる美緒に、アーンヴァルが冷静に突っ込みを入れる。

 

『それでは、詳しい話は向こうについてから』

「了解」

 

 通信が切れた事を確認した美緒は、即座に顔を冷静な物へと変える。

 

「今更言うのはなんだが、向こうを無条件に信用していいのか?」

「私もそう思うわ。けど、ユナは信用してるみたいだから、私も信じる事にする」

「ああ、さっきの通信の………随分と彼女を買っているんだな」

「少し違うわね。ユナは、光の救世主としての力もあるけど、それ以上にすごい力を持っているの?」

「それは?」

「自分を狙ってきた敵とでも、友達になれる力よ」

 

 ミサキが小さく笑い、美緒は思わず呆気に取られる。

 

「リア…いえポリリーナも、エリカも、そしてこの私も、元はユナを狙っていたの。けれど、ユナはそんな私達を闇の力から救い出し、友達になってくれた。だからみんな、ユナについていくの」

「敵と友達になる力、か。確かにそれは最強だな」

 

 吊られて美緒も小さく笑うが、ふと似たような事をやりかけた人間が身近にいた事を思い出す。

 

「あの時、私があいつをもう少し信用していれば、何か変わったのかもしれないな………」

「あら、ちょっといい?」

「ん?」

「これなんだけど………」

 

 ミサキが送られてきたデータの一部、ユナや芳佳達が戦っている所を報道関係者が取ったらしい画像を映し出した所で、美緒の顔色が変わる。

 

「これは、ネウロイだ! 前にリバウで同型と戦った事がある!」

「それだけじゃないわ。トリガーハートが戦っていたヴァーミスらしい存在との戦闘報告が今銀河ネットワークのあちこちから上がってきてる………詳細情報を今調べてるけど、どうやらダンボーでのんびり出来る時間は少なそうね………」

「……皆にはまだ言うな。せっかくの骨休めを中断させるまでの確証が無い」

「……そうね」

「了解しました、マスター」

 

 迫り来る戦闘の予兆を感じつつ、二隻の宇宙船は惑星ダンボーへと向かっていった。

 

 

 

 その頃、再度地球攻撃への用心のために永遠のプリンセス号を地球圏に残し、プリティーバルキリー号はダンボーへと到着していた。

 

「うわあ、すご~い!!」

「これが全部温泉!?」

「未来はなんでもスケールがすごいですわね……」

 

 自分達の目の前に広がる、一大温泉テーマパークにウイッチ達が歓声を上げる。

 

「ここは通称「火の惑星」と呼ばれる程地殻活動が活発で、そのお陰で大量の温泉があるんですよ」

「色んな温泉あって、全部回るの大へ~ん」

「私は~全部~入りました~」

 

 やけにのんびりとした喋り方をする元暗黒お嬢様13人衆のひとり、おっとりの詩織こと神宮寺 詩織が懐から常連の証である会員カードを見せる。

 

「へ~、どれくらいかかったんです?」

「毎月通って~、三年かかりました~」

「ええ!? そんなにかかるんですか?」

「彼女の行動はものすごくスローモーですから、参考にしない方がいいですよ?」

「うかれるな! 私達は観光に来たわけじゃないぞ!」

 

 変な方向に驚いている芳佳にエルナーが注意するが、そこでバルクホルンの一括が響く。

 

「まあまあトゥルーデ、せっかく来たんだから。で、どこから入ろうか?」

「ハルトマン! ここで脱ぎ始めるな!」

『エリカ様~』

 

 軍服のボタンを外し始めたハルトマンをバルクホルンが慌てて止める中、こちらに向かって手を振りながら来る二人の人影が有った。

 

「あ、あの人達も同じ顔してますよ」

「アコちゃんとマコちゃんだ♪」

「こっちはそっくりな双子みたいですね」

 

 その二人、伸ばした髪をそれぞれ右と左のボリューム違いでまとめてる事以外は見分けがつかないくらいそっくりの双子、エリカ7の閃光のアコと疾風のマコこと、卓球部部長・副部長を務める緋川亜子と緋川真子がエリカのそばへと駆け寄ってくる。

 

「言われた通り、香坂財団の保養所、確保しておきました!」

「いま来てない人達への連絡及び交通手段も確保しました!」

「ご苦労様、貴方達がここにいてちょうど良かったわ」

『いえ、エリカ様の言いつけでしたから』

「それじゃあ皆さん、こちらで用意した保養所に荷物を置いたら、温泉を堪能いたしましょう。ここは水着着用ですから、それも準備してますわ」

『わ~い!!』

 

 シンクロして返事したアコとマコに笑みで答えると、エリカが皆に保養所へと案内する。

 歓声をあげて皆がそれに続き、荷物もそこそこに手ごろな水着をまとって温泉へと繰り出していった。

 

「それじゃあ行くぞ~!」

「ねえねえリーネちゃん、どこに行こう?」

「う~ん、芳佳ちゃんはどこがいい?」

 

 淡い黄色のワンピース水着に身を包んだユナを先頭に、同型の淡い緑の水着をまとった芳佳、それに連れられてピンクのフリル付きワンピース水着(胸の露出を限界まで抑えようと苦心した)を着たリーネが続く。

 

「え~と、なんて書いてありますの?」

「こちらの効能は肩こりや腰痛、そっちは美肌効果だそうですわ」

 

 シンボルカラーでもある青一色のワンピース水着をまとったペリーヌが効能の書かれた看板をメガネ無しのボヤけた視界で睨みつけ、ペリーヌに合わせたのか(ボディライン以外)同じ青のビキニをまとったエリカが説明する。

 

「わ~い」

「泳ぐなハルトマン!」

「温泉卵おいしいです~」

 

 どこにあったのか迷彩柄のワンピース水着をまとったハルトマン(※砂漠ブラウン迷彩仕様)が温泉の中で犬掻きするのを、同じく迷彩柄のワンピース水着をまとったバルクホルン(※グリーン迷彩仕様)が一喝し、お湯飛沫がかかってくるのも気にせずに紅白ツートンカラーのセパレート水着をまとったユーリィが温泉卵を端から平らげていく。

 

「これが温泉、確かに有機部品の再生効率は上がりそうですね」

「確かあっちにサイボーグ用温泉があったけど、貴方には効くかしら?」

 

 興味深そうに温泉を眺めていた何故か胸に「えぐぜりか」の名札が付いた紺のスクール水着姿のエグゼリカに、トリコロール柄のビキニをまとったミキが首を傾げる。

 それぞれ思い思いの水着姿の少女達のかしましい声が、周辺に響いていった。

 

 

「皆楽しんでるようね」

「羽目を外しすぎてる気もしますがね」

 

 皆が思い思いに温泉を堪能する歓声が響いてくる中、ポリリーナとエルナーは保養所に残り、設置してあるターミナルから情報収集と整理に腐心していた。

 

「やはり、地球に現れたヴァーミスは威力偵察の先遣隊でしょう」

「エリカ達にこっぴどくやられて、一時手を引いたようね。その変わり、あちこちの星に偵察を出してるらしいわ」

「ユナにはまだ言ってませんが、佳華、マリ、アレフチーナにエミリー、それぞれが別々の星で偵察機らしき物と交戦したようです。今こっちに向かってますが」

「でも散発すぎるわね………ひょっとして、どこかで大規模戦闘が起きてる?」

「でもどこで? 近隣の星系ではそんな情報は無い模様ですが………」

「私もその可能性が高いと思うわ」

「けどそんな情報は無いわ」

 

 いきなりの声に二人がそちらを向くと、今着いたばかりらしいクルエルティアとミサキの姿があった。

 

「あら、早かったわね」

「急いで来たから」

「君が指揮官か?」

 

 二人に続いて姿を現した美緒に、ポリリーナは笑って首を横に振る。

 

「私はポリリーナ、戦闘部隊リーダーみたいな物ね」

「私は501統合戦闘航空団副隊長、坂本美緒少佐だ」

「私は超惑星規模防衛組織チルダ、対ヴァーミス局地戦闘用少女型兵器トリガーハート・《TH32 CRUELTEAR》」

「私は英知のエルナー、軍師と言った所ですかね」

「私は武装神姫・天使型MMS アーンヴァルと言います」

 

 美緒とクルエルティアから差し出された手をポリリーナが握り返し、エルナーには美緒の肩に座っていたアーンヴァルが名乗りながら頭を下げる。

 

「ふむ、なら指揮官に会いたいのだが……」

「あいにく、私達は軍隊じゃないから、指揮官なんていないわ。リーダーっぽいのはいるけど」

「光の救世主、神楽坂 ユナか」

「どこにいるのかしら」

「今向こうの温泉でくつろいでるわ」

「随分と緊迫感の無いリーダーのようだな」

「あの子はそれでいいのよ」

「そうね」

 

 ポリリーナとミサキの言動に、美緒とクルエルティアは少し首を傾げた。

 

「それなら、こちらも温泉に行くとするか。あいつらに無事な顔を見せてこないとな」

「行ってきて下さいマスター、データの整理はこちらで行います」

「頼むぞ、私はその機械の使い方なぞ分からないからな」

 

 美緒の肩に乗っていたアーンヴァルがターミナルの前へと降り立ち、キーボードの触り方すら分からない美緒は豪快に笑いながら脱衣室へと向かう。

 

「ヴァーミスの目撃データを。トリガーハートにはヴァーミスの行動パターンが予測できるかもしれないから」

「それではお願いします。もっともあまり詳しいデータは………」

「こちらにもマスターとの交戦時のエネルギーデータがあります」

「そのサイズで、随分と高度な装備してますね~」

「それはそちらも同じかと」

「………一体誰が作ったのかしら?」

 

 エルナー並とは言わないが、かなりの高性能なアーンヴァルに興味を持ちつつ、残った者達は今あるデータに加え、集められるデータを全て集め、解析に乗り出していた。

 

 

「そうか、そちらではそんな事があったのか……」

「坂本少佐こそ、よくご無事で」

「まあな。多分私が戦ったのもそのヴァーミスとやらだろう」

 

 ネィビーブルーのワンピース水着をまとい、温泉にゆったりとつかりながら、美緒は他のウイッチ達が地球で戦った相手の事を聞いていた。

 

「それにしても、ペリーヌの子孫までいるとはな」

「微妙には違うそうですけど………」

「その人が、芳佳ちゃん達のボス?」

 

 話し声を聞きつけ、向こうの温泉からこちらに来たユナが美緒のそばへと寄ってくる。

 

「501副隊長の坂本 美緒少佐だ」

「光の救世主、神楽坂 ユナです」

「救世主とは大層な肩書きだな」

「あははは~、エルナーには自覚が足りないってよく言われるけど」

「もっとも、それに恥じない活躍をしているとも聞いている。以後よろしく」

「こちらこそ」

 

 挨拶が済んだ所で、ユナがそっと芳佳のそばに行くと耳打ちする。

 

「美緒さんって、何かかっこいい人だね。いかにも軍人さんって感じで」

「すごい強いし、扶桑有数のウイッチとしても有名なんですよ。私も坂本さんにスカウトされてストライクウィッチーズに入ったんです」

「へ~、すごい人なんだ………あの眼帯なんかいかにもって感じ」

「お~いミヤフジ~、こっちになんか胸が大きくなる温泉があるって~」

「ホントですかハルトマンさん! リーネちゃん行こ♪」

「あの芳佳ちゃん、私はこれ以上は………」

「あそこ前に散々入ったけど、全然効かなかったよ………」

「はっはっは、温泉で胸が大きくなるのか? どれ試しに私も行ってみるか」

「お、お供しますわ!」

 

 効能を全然感じなかったユナが呟くが、皆が面白がってその『豊乳の湯』の方へ向かう。

 

「うふふふ、でもここで待ってればその内ポリリーナ様と一緒に………」

「温泉卵追加お願いです~」

「あらあら~、ユーリィさん~、皆さんの分も~、残しておかないと~~~」

 

 なお、ずっと待っていたユナと豊乳の湯に入り続けたペリーヌが湯あたりで搬送されるのは、二時間後の事だった。

 

 

「う~ん………ポリリーナ様~……」

「はうう………本当に効果あるんですの………」

「まったく、二人して何やってんのよ」

「幾ら珍しい温泉といっても、入りすぎは毒だぞ」

 

 保養所のリビングに寝かされたユナとペリーヌに、舞と美緒がやや呆れた声をかけてやる。

 

「これなら、冷やしていればすぐよくなりますよ」

「ありがと芳佳ちゃん」

「うう、坂本少佐の前でこんな惨めな姿を…

…」

「あとは水分だな」

 

 てきぱきと冷やした濡れタオルを二人にあてがう芳佳に、ルイがスポーツドリンクを手渡す。

 

「まったく、たるんどるぞ!」

「トウルーデがあがるの早すぎるんだって」

「は~い、夕飯できたアルね。中華バイキングよ~」

「他にも色々ありますから」

 

 元暗黒お嬢様13人衆の一人、チャイナの麗美こと紅 麗美とリーネが料理を次々と運び込み、皆がそれに一斉に群がる。

 

「すいません、お料理途中までしか手伝えなくて………」

「いいネいいネ、これも将来に向けての修行アル。あんたも色々忙しかったらしいから、タンと食べるアル」

「ゴハンゴハン………」

 

 芳佳が湯あたりした二人の治療で抜けた事を麗美に謝るが、当人は気にせず料理を盛り始め、匂いにつられたのかユナがはいずりながらテーブルに近寄ろうとする。

 

「ユナさん、もうちょっと休んでないと………」

「でも、早く食べないとユーリィに食べられちゃう………」

「やっぱり麗美さんの中華料理おいしいですぅ~♪」

 

 ユナの危惧通り、大皿に盛られた料理を小分けもしないでむさぼっていくユーリィに、皆が大慌てで自分達の分を取り分け始める。

 

「すさまじい食欲だな………腹が減っては戦は出来ぬというしな」

「ユーリィがお腹空いてない時なんてあるかしら?」

『ないない』

 

 美緒が感心するのにポリリーナがぼそりと呟くと、ユナの仲間達が一斉に首を横に振る。

 

「どういう消化機構してるんでしょう?」

「さあ? 恐ろしい程効率がいいか、恐ろしい程燃費が悪いのか………」

 

 生体部分維持の栄養だけ取れば問題ないエグゼリカとクルエルティアが、自分達と似たような存在のはずなのに並んでいる料理を片っ端から平らげていくユーリィに興味と畏怖を同時に感じていた。

 

「こんな事もあろうかと、ちゃんとユーリィ用に用意しておいたネ! この特製カオルゥツゥー!!」

「どいてくださ~い!」

 

 麗美とリーネが二人がかりでユーリィの前に巨大な牛の丸焼きを叩きつけるように置いた。

 

「わあい! おいしそうですぅ!」

「いや、さすがにアレは………」

「明らかにやり過ぎです」

「どう見ても生体消化機構の処理能力限界を超えてるんじゃ………」

 

 明らかに己の体積以上の肉の塊にユーリィが嬉々としてかじりつくのを、美緒とアーンヴァル、クルエルティアは戦慄を持って見つめる。

 10分後、皿の上に肉片どころか骨一片すら残さず、次の皿に取り掛かったユーリィにウイッチ達とトリガーハートはこの世界の恐ろしさの一端をまざまざと感じていた。

 なお、しばらく経ってようやく起き上がったペリーヌがテーブルの上に何一つ残っておらず、急遽デリバリーで過ごす事になったのはまた後の話。

 

 

「お腹いっぱい~」

「半分以上ユーリィが食べちゃったけどね」

「よくあれで平気ですね~」

 

 食後のお茶を飲みながら、芳佳、ユナ、エグゼリカが一息ついていた。

 

「エグゼリカちゃんもいっぱい食べた? エルナーがこの後忙しくなるかも、って言ってたから、食べられる時に食べておかないと」

「大丈夫です。私はユーリィさんほど大量には有機燃料は摂取しませんから」

「燃料………」

 

 どこか考え方が違うんだな、と芳佳が感じた所で、ふとユナがある疑問を口にした。

 

「そういえば、芳佳ちゃんはどうしてウイッチになったの?」

「私は、元々ウイッチの家系なんですよ。お母さんもおばあちゃんも、その力で診療所をしてて、私もそこを継ごうと思ってたんです。けど、そこにお父さんからの手紙が届いて………死んだと思ってたお父さんが生きてるかもしれない、だから探しに行こうと思って坂本さんと一緒に赤城に乗って、501に入ったんです」

「へえ~」

「けど今は、みんなを守りたいから飛んでいる。お父さんもそれを望んでいたんだと思う」

「……分かる気がします。私にも、お父さんと呼んでいる人がいますから」

「え? そうなの?」

 

 エグゼリカの告白に、思わずユナは首を傾げる。

 

「転送のトラブルで地球近隣に飛ばされた私と姉さんが混乱していた所を、お父さんは拾って面倒をみてくれたんです。その内に、私は地球を新しい場所だと思うようになっていたんです。

けど、トリガーハートとして造られた私は自分の存在意義を悩むようになってました。けれど、地球にヴァーミスが現れた時、思ったんです。この星を守りたいって」

「それでいいと思いますよ。「その力を多くの人を守るために」、父さんの口癖だったそうでうす」

「そうですね。そういえば、ユナさんは?」

「いや~、そんな立派な理由の後じゃちょっと言いにくいんだけど………あたしは元々普通の女子高生だったんだけど、銀河お嬢様コンテストのグランプリを取っちゃってアイドルやってたらいきなりエルナーが現れて、私が光の救世主だって言われて。

そしたら、いきなり闇の力に犯された子達が襲ってきて……でも、戦ってる内に思ったの。戦いたくないのに戦わされてる子達を助けたい、そしてこんな事をしてくる奴を許せないって。だって、戦うよりも、お友達になった方がいいじゃない♪」

「戦うよりも、友達に?」

「そうですね、それが一番ですね!」

 

 ユナの突拍子もない戦い理由に、エグゼリカが目を丸くするが、芳佳はむしろそれに賛同する。

 

「……私はそんな事、考えた事もありませんでした」

「まあ、エグゼリカちゃんは変なのと戦ってたみたいだしね……」

「でも、みんながみんな、友達になれたら、きっと余計な闘いも無くて、平和でいい世界になりますよ!」

「……そうですね、そうなるといいですね」

「そうなるといい、じゃなくてするんだよ。みんなで! みんなの力で、悪い奴をやっつけちゃえば、あとは戦わなくていいじゃない!」

 

 力説するユナに、エグゼリカはしばし唖然としていたが、やがてその顔に笑みが浮かぶ。

 

「そんな事言う人、初めて見ました」

「あはは、そう?」

「でも、私もそれでいいと思います。戦わないために戦うっていうのも」

「私もそう思います!」

「じゃ、これからがんばろ!」

「はい!」

「分かりました」

 

 いつの間にか、三人の手は合わさり、強く握り締められていた。

 

 

「…………」

 

 三人からは物陰となる位置で、それとはなく三人の会話を聞いていたバルクホルンが、壁に背を預けながら押し黙っていた。

 その眼前に、いきなりお茶の入ったカップが突き出される。

 

「そんな難しい顔をしていたら、保養になりませんわよ」

「……そうかもしれんな」

 

 カップを差し出してきた相手、エリカの方を見ながら、バルクホルンはカップを受け取り、その中身を口に含む。

 

「どこかで甘いと一喝する気だったが、言いそびれた」

「言っても効果ありませんわよ、ユナには」

「だろうな。あれはハルトマン以上の楽天主義者だ」

「だから、私も、そしてみんなも着いていくんですわ。彼女は、私達を闇から救い出してくれた、光その物なのですから」

「光の救世主、か。随分とふざけた奴だと思っていたが、何があってもあれは変わりそうに無い」

「だからこそ、仲間がいるんですわ。ユナは、お友達としか思ってないでしょうけど」

「……本当にふざけた奴だ」

 

 残った茶を飲み干しながら、バルクホルンの顔には、小さな苦笑が浮かんでいた。

 

 

 

「ふう………」

 

 夜も大分更け、静かになった温泉に白地のビキニ姿で訪れたポリリーナは、そっと足を湯船に入れる。

 その場で周囲を見回し、誰もいない事を確認すると、マスクをゆっくりと外した。

 お嬢様仮面ポリリーナではなく、リーアベルト・フォン・ノイエンシュタインへと戻った彼女は、ゆっくりと湯にその身を沈めた。

 そこで、間近に別の水音を聞いたリアは素早く外したマスクを着けようとする。

 

「おや、入っていたのか」

「あら、坂本少佐…………」

 

 現れたのが美緒だと気付いたリアは、しばし迷ってからマスクを再度外した。

 

「ずっと気になっていたのだが、そのマスク、何か意味があるのか?」

「そうね、半分はユナのためかしら? リーアベルト・フォン・ノイエンシュタインでなく、あの子の憧れのポリリーナとしているために」

「残る半分は?」

「願掛け、かしら? ずっとユナの友達でいれますようにって」

「なるほど、確かにそれは外せないな」

「貴方の、それは?」

 

 リアが美緒の眼帯を指差すと、美緒はそれを外し、その下にある魔眼を見せる。

 

「これのためのフタのような物だな」

「なるほど、その目が貴方の固有魔法って奴ね」

「それが、私の正体を見抜いた能力ですか」

 

 第三者の声に二人が振り向くと、そこに白地のスクール水着姿(胸に「くるえるてぃあ」の名札付き)のクルエルティアの姿があった。

 

「はは、奇遇だな。こんな夜更けに」

「そうね、確かに偶然としか言い様が無いわね」

「でも、ちょうどいいわ」

 

 リアの声が真剣な物になった事に、他の二人も気付くと、静かに三人で輪を描くように湯船の中で固まる。

 

「この三人だけで、聞きたい事と話したい事があるわ」

「つまり、実質的隊長達だけでか」

「ええ、まずはクルエルティア。今分かっているヴァーミスの動きと、貴方の知っているヴァーミスの作戦は同じかしら?」

「いいえ、明らかに違うわ。ヴァーミスは攻撃に出る時はもっと徹底している。けれど、地球でエグセリカ達が交戦した部隊以外に、実質的な部隊は発見されていない。つまり、これはヴァーミスの第一目標が他にあるという可能性が高い」

「地球に現れたのは威力偵察か。ペリーヌやバルクホルン、そしてエリカやエグセリカ達に叩きのめされたようだが」

「そして坂本少佐、地球に現れたネウロイ、どこから来たと思う」

「私達の世界なのは確かだ。だがあれは陸戦用ネウロイ、私達の作戦圏内にはほとんど存在していなかったはずだ」

「以後目撃報告すら無いみたいだから、それは後回しにしてもいいでしょう。やはり今の所最大の問題は」

「ヴァーミスの本隊の目標」

 

 クルエルティアの言葉に、リアと美緒も頷く。

 

「今必死になって探してるけど、どこにもそれらしい戦闘報告は無いわ」

「ひょっとして、別の銀河系?」

「かもしれないわ」

「これ以上地球から離れるのは勘弁してもらいたいな。さすがに宇宙の果ては私の魔眼でも見えん」

「そういう訳にもいかないわ。ひょっとしたら、貴方達の転移にもヴァーミスは関わってるのかもしれない」

「………本当か?」

「推測の域は出ないわ」

「けど、時空間に異常が出る程の転移装置を持ってるとしたら、ヴァーミス以外に考えられない」

「それとも、それ以上の〈何か〉か」

「!? ヴァーミスの上に更に何かいると………」

「分からない。情報が少なすぎるわ…………」

「つまり、今後の我々の目的は敵の本拠地の捜索か」

「この銀河系より先ともなると、検討もつかないけど……何か心当たりは無い?」

「判断できないわ。どんな小さくても、手がかりがないと」

 

 クルエルティアがうなだれると、他の二人も押し黙ってしまう。

 

「一つ提案があるんだけど」

 

 横からいきなりかけられた声に三人が驚く。

 いつ来たのか、そこに青地に白のラインで縁取りされたセパレーツ水着のミサキの姿があった。

 

「ミサキか、提案とは?」

「銀河中央アカデミーに、時空工学と超能力研究の第一人者がいるわ。その人なら何か分かるかも」

「銀河中央アカデミーなら、今エミリーがいるはずよ。何かとんでもない新理論の発表があるとかで、それを聞くまで来れないって興奮してたけど」

「多分その新理論を発表した人ね。私のESP開発にも関わってるわ。それに気になる事があって………」

「それは?」

「………今は確証が無いから言えないわ」

「ま、これで今後の方針が決まったわ。みんなの用意が整ったら、銀河中央アカデミーに向かいましょう」

「それまではここで骨休めか。あまりゆっくりもできそうにないが」

「数日はあるわ。ここの半分は巡れるわよ?」

「はは、半分か。それはいい」

「その間に、私達もなるべく調整を済ませておくわ。全力までは無理かもしれないけど、それになるべく近い状態に」

 

 僅かな休息の時に、静かに闘いの決意は高まっていく………

 

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