新幹線変形ロボシンカリオン ふたりのはやぶさ 作:小田急ロマンスカー
昨日の口直しです
道場に響く竹刀のぶつかり合う音
打ち合っていた二人のうちの一人が竹刀を回して巻き上げると一瞬のスキを突いて切り込んだ
「めーんっ!」
一人の声とともに対戦相手は面を打たれ尻もちをついてしまう
「ふぅ、やっぱり強いなぁ、発音さん」
倒れた少女が面をとるともう一人も面をとって頭に巻いた布を引いてほどく
きれいな青緑色の髪がその勢いで靡いた
「いえ、こちらも何度か危ない局面はありました」
シンカリオンと滅びゆく種族との戦いを終えた運転士たちはその後も運転士であり続けた
だが運転士たちの適合率は年齢を重ねるとともに下がっていった
運転士たちはもうシンカリオンに乗ることはできない
それでも子供を戦わせていた負い目もあるだろうが超進化研究所とのつながりは消えていなかった
埼玉県内の高校にスポーツ推薦で進学したミクもその一人
もともと北海道に住んでいた彼女がこちらに移住する際の住まいの手配などを援助してくれた
遠く離れた地で暮らすことでの不安はもちろんあった
何より彼女は故郷が大好きだったのだから
それでも充実した環境で剣道に打ち込むことができて二年生になるころには彼女の不安はすべて消えていた
「すっげえよな発音先輩」
練習帰りにそう話すのは今年剣道部に入部した一年生の男子生徒だった
「美人で剣道強くて勉強もできるんだろ、完璧じゃん」
「確かになぁ、俺アタックしてみようかな」
「よせよせ、お前じゃ釣り合わねえよ」
「ちぇっ、ん?あ、噂をすれば………」
少年の視線の先にはチャームポイントである長めのツインテールを揺らし校門の方へかけていくミクの姿があった
「あんなに急いでどこ行くんだろう?」
少年たちが視線で彼女を追いかけると校門のところで他校の男子生徒と思われる少年に声をかけるのが見えた
「えっ?」
やがてその少年の腕に抱きついてうれしそうな顔で校門から出ていくミクの背中を少年たちは立ち尽くしたまま見送った
「発音先輩、彼氏いたんだ………」
「そうだよなぁ、あんな美人男ならほっとかねえよな」
「顔はよく見えなかったけど俺だって」
「「無理無理」」
「あれ、あんたたちミクに彼氏いるの知らなかったの?結構長いらしいわよ」
そう言って乾いた笑いをこぼす少年たちに声をかけたのは剣道部に所属する二年生の女子生徒
こちらでのミクの友人の一人だ
どうやら二年生の間では有名な話だったらしい
さて、学校を出たミクはといえば先ほどの少年とてっぱくのトレインテラスで二人座り込んでいた
「ここはいつ来ても変わりませんね」
「そうだね………俺も子供のころからこの場所が大好きだよ」
「ふふっ、ハヤト君の場合は新幹線が見れるからじゃないですか?」
そう、この少年こそかつてE5の運転士として中心に立っていた速杉ハヤトだった
現在は子供の頃からの夢であった新幹線の運転士を目指して高校に通いながらこのてっぱくでバイトをしている
「そう言えば昨日、電話で久しぶりにツラヌキと話したよ」
「元気にしてました?」
「元気元気、まあ勉強は大変みたいだけどさ」
「ふふっ、私もこの間試合に行った先で偶然アキタ君と会いましたよ」
「みんな頑張ってるなぁ」
あれからシンカリオン運転士たちはそれぞれの進むべき道、目指す道を走り続けていた
アキタは目指していたビームライフルの強豪校への進学を果たし
競技を続けながら守るために銃を握る道
警察官を目指して勉強しているという
ツラヌキは故郷の金沢に帰りジムに通いながら実家の建設会社を手伝っている
ずっと目指していた道を文字通り貫いていた
「きっとツラヌキがこの場にいたらこういうと思うよ、俺の好きな四文字熟語は」
「「初志貫徹だ」」
二人の言葉がぴったり重なって笑いあう
シノブは故郷で修行を続け受け継いできた技が色褪せぬよう受け継いでいく道を選んだ
彼らがシンカリオンに乗れなくなってから超進化研究所では新たな運転士を選定してきた
E3の運転士候補はシノブの弟弟子だという
超進化研究所山形支部で訓練中とのことだ
「まあ、シノブはまだE3に乗れるみたいなんだけど、本人に続けるつもりはないみたい、引き際を見極めるのもまた忍びの役目、だってさ」
そしてリュウジ
運転士たちの頼れる兄貴分だった彼は母の病気を治すため医者を目指した
現在は大学に通いながら超進化研究所東海支部の一員としても働いて生計を立てている
ちなみに同じようにてっぱくでバイトしながら超進化研究所の一員でもあるハヤトの先輩でもある
ハヤトの高校受験の勉強に付き合ったのも彼だ
「すっごく厳しくて、つらい日々だったけどさ」
空手の道をあきらめきれなかったのか弟妹達がしっかりしてきてからは少しずつ再開してきているという
ちなみに現在中学生のレイは宇宙飛行士の夢を叶えるため勉強を続けている
超進化研究所で技術関連の手伝いを続けながら
去年ごろから成長期に突入したようで電話で成長痛に悩まされながら嬉しそうに報告してきたのをハヤトは昨日のことのように覚えている
必死に背伸びしようとしていた彼が望んだ姿に届く日もそう遠くないようだ
「また去年みたいにみんなで夏祭り行こうね」
「もちろんです」
ハヤトの言葉に笑顔で答えながらミクは彼を見た
ミクは剣道を続け現在でも競技を続けている
首都圏の強豪校にスポーツ推薦で入学を果たし故郷を離れた
ほかの運転士たちと違い彼女には明確な目標はない
剣道は続けていきたい
大好きだった故郷のために何かしたいという気持ちもある
アキタのように守る道を選ぶのもいいだろう
ハヤトやリュウジのように超進化研究所、函館支部に努めてお世話になった大沼指令長に恩返しする道もある
ただ一つだけ言えること
それはどんな道であろうと、大好きな彼が隣にいてくれれば………
「あっ、ハヤト君、H5が」
「本当だ!あ!向こうからE5も」
よく似た二つの新幹線がすれ違う光景を共に眺めながら二人は笑顔になった
そう、自分たちはこれからも走り続ける
新幹線のように夢へと向かうレールの上をまっすぐに………
「はーい、お二人さん、今日も仲良くデートですか?」
「ひゃあぁ!?」
「うわあぁ!?う、上田アズサ!?」」
そんな二人に後ろから声をかけたのは長い髪をサイドポニーにまとめた上田アズサだった
「な、何でここに」
「それはもちろん取材のためー、文化祭用の作品のネタ探し」
彼女はユーチューバーを続けながら高校では映画研究会に所属し作品作りに励んでいた
目下の目標はシンカリオンと滅びゆく種族の戦いを元にした映画を作り大ヒットすること、だそうだ
「にしても相変わらずお熱いですなー、まったくこの時期にこっちまで暑くなりそう」
「余計なお世話だ!」
ちなみにハヤトと同じ高校でクラスも一緒
ハヤト曰く幼馴染の腐れ縁は続いているようだ
「ねえ、せっかくだから研究所の方も見せてよ」
「えー、俺今日休みなのに………」
困惑するハヤトの姿にくすくす笑いながらも助け船を出すべくミクが身を乗り出す
「ただいま~」
「お邪魔します」
現在は一人暮らしをしているミクだがこうして時々は速杉家の夕食に招かれることもあった
「お帰りであります~」
シャショットはハヤトがE5を降りた後次の運転士に引き継がれる話もあった
だが彼自身がそれをよしとしなかった
彼はハヤトの相棒であり続けることを望んだのだ
現在はハヤトの超進化研究所での仕事をサポートしながら新たに開発されたE5のインターフェースロボットに先輩として指導している
「お帰りハヤト、ミク君もいらっしゃい」
「お父さん今日は早いんだね」
「ハハッ、たまにはな」
戦いが終わり超進化研究所京都支部での業務を終えた速杉ホクト指導長も単身赴任を終え大宮へと戻った
現在はフタバとともに新たな運転士たちの指導をしている
夕食を終えミクを送るべく一緒に歩くハヤト
「楽しみだね、夏祭り」
「夏祭りももちろんですけど、私の試合の応援に来てくれる約束も忘れないでくださいね」
「忘れたりしないよ、俺は時間と言ったことは守る男だもん」
「ふふっ、変わらないですね、そんなハヤト君だから好きになったんですが」
「ミク………」
二人はそのまま見つめ合い、やがてゆっくりと唇を重ねた
「ふう、お兄たちも、いちゃつくならもうちょっとマンションから離れてからにするべきで」
そんな兄たちの様子をマンションのベランダからこっそり撮影するハルカの姿があった
後日招かれた夕食の席でその時の写真を見せられハヤトとともに真っ赤になるミクの姿があったという