新幹線変形ロボシンカリオン ふたりのはやぶさ 作:小田急ロマンスカー
本当はスザクからイザの情報を得る話にしたかったけど書いてるうちに判明しちゃったので変更
慌てて仕上げたので後半とかやっつけ仕事
セイリュウとアズサは買い物のため上野を訪れていた
「なぜおれが………」
アズサの買ったものを抱えながら歩くセイリュウ
「文句言わないの、終わったらケーキ御馳走してあげるから」
ケーキの誘惑に抗えず押し黙るセイリュウ
すると何かに気付いて立ち止まる
「どうしたの?」
「久しぶりだな、何の用だ?」
彼の後ろにはヒトの姿をとったスザクがいた
「最近なんだか楽しそうだと思ってね」
「楽しい?」
スザクの投げかけた言葉に思わず復唱して振り返るセイリュウ
「あら、違うのかしら?」
「いや、以前と違うというのは、俺もなんとなくわかる、しかし、なぜおまえがそれを気にする」
「別に、ちょっとした気まぐれよ………」
「迷っているのか?」
セイリュウの問いかけにスザクは肩を落とした
スザクは軽く手を振り返してそのまま踵を返そうとする
「前に私が言ったこと、そのまま返されるとは思ってなかったわ、お買い物中に邪魔してごめんなさいね」
「なんか………前と雰囲気変わった?って言うかなんか元気なさげ?」
その様子が気になったアズサは思わずセイリュウに問いかける
「なぜ、お前が気にする必要がある」
「だって、あの人もセイリュウの仲間なんでしょ?前にも言ったと思うけど、仲間の仲間は仲間じゃない、元気がないなら励ましてあげなきゃ」
「励ます………どうやって?」
「それはこれから考える!」
「いや、それもなんだが………」
セイリュウが指をさしてみるとそこにすでにスザクの姿はなかった
「って!いないし!」
「ふぅ」
「ちょっと何よそのリアクション!あんたも探すの手伝いなさいよ!」
「ちょ、なぜおれが!おい!引っ張るな!」
日暮里の新幹線が見える陸橋
以前セイリュウと話していたその場所でスザクは独り考え込んでいた
そのすぐ下をE5系新幹線が通り過ぎる
「(ビャッコ、ゲンブ………あなたたちが感じたもの………私も知ることが出来るかしら)」
「11時35分、日暮里駅付近に黒い貨物列車出現」
「直ちに捕縛フィールド射出」
捕縛フィールドの光を地上から眺めるスザク
その体には黒い粒子が纏われていた
「あれは………」
「え?なになに?」
セイリュウがその光を目撃しアズサはそんな彼に問いかけた
「シンカリオン E5はやぶさ」
「シンカリオン E6こまち」
「シンカリオン E7かがやき」
「シンカリオン E3つばさアイアンウイング」
鳥の被り物をかぶった戦士のような姿の敵が目の前にいた
「あれもクレアツルス?」
「いや、あれはもしや………」
「待っていたわ、シンカリオン」
「この声!?」
「スザク………」
「え!?じゃあ、あの人今ハヤトたちと戦ってるの!?ど、どうしよう」
「慌てるな、おそらくすぐ終わる」
「え?なんで?」
「スザク、君はセイリュウの仲間じゃないの?」
「答える義理などないわ、私と戦いなさい、シンカリオン」
そういって向かってくるスザク
その攻撃を何とか避けたE5
アキタのE6が弾幕を張ってその動きを止めるとE3のシュリケンが向かっていく
かろうじて避けたスザクに対してE7が突っ込んでいく
「くっ」
「スザクは頭は切れるが、直接の戦闘はゲンブやビャッコ程得意ではない、おそらくすぐに決着はつく」
「っていうかあんたはなんでそんな冷静なのよ!」
「グランクロス!」
「くっ!」
E5の放った光に飲み込まれるスザク
セイリュウの言った通りの結果となった
「やつのことだから何か仕掛けているのではと警戒したが」
「特に何もなかったな………」
日暮里の歩道橋で寄りかかるスザク
額に手を置き大きくため息をついた
「結局………何もわからなかったわね………」
「あ!居た!」
そんな彼女の耳に聞こえたのは一人の少女の声
「あの子は………(って言うかセイリュウは一体何してるのかしら)」
アズサに手を引かれ振り回されているだけに見えるセイリュウの姿にスザクは半ば同情のまなざしを向けていた
喫茶店で3人座るアズサたち
もちろんスザクも人の姿で
「ちょっと………これどういう状況」
「いいからいいから」
運ばれてきた3人分のケーキにセイリュウとアズサは目を輝かせる
「(セイリュウ………あんた)」
ずいぶんと変わったかつての仲間の姿にまたため息を零すスザク
「(何やってんのかしら、私)」
頭を抱えてうずくまるスザク
そんな彼の様子に気付いたセイリュウ
「スザクも食べろ、こいつのことだからそのつもりで連れてきたんだ」
「あんたもわかってきたわね」
「はぁ………わかったわ、食べればいいんでしょ」
半ば呆れながらフォークを使いケーキを食べ始めるスザク
「ん?」
どうやらケーキは彼女の口にもあったようで一口食べた彼女の表情に変化が見て取れた
その反応を見たアズサはセイリュウと(ほぼ強引に)ハイタッチをした
続いてアズサたちは宇都宮線の電車に乗り大宮へと向かっていた
「なんで私が………」
スザクの反応を見たセイリュウは思わず小さく笑った
「なによその反応」
「いや、ただ、こいつらと関わるようになったばかりの俺と、同じ反応だと思ってな」
「それがどうしたっていうのよ………」
「それで彼女を連れてきたというわけか………」
「特に逃げる様子もない、当分はおとなしくしてるだろう」
考え込む出水に対してセイリュウは落ち着いて答えた
「エージェントゲンブの時のように、彼女が興味を持っていることに触れることが出来れば………」
「それなら心当たりがある」
そういってセイリュウは後ろ指でアズサを指した
「こいつが適任だと思うんだが」
「え?………えぇぇっ!?」
大宮駅からほど近いファッションビルでスザクを引き連れてお店を見て回るアズサ
その少し後ろをハヤトたちとともに見守るセイリュウ
「なんで上田アズサに?」
「スザクは以前から人の心を操ったり、覗いたりしてきた、人の心を弱点だと考えていた」
「話は読めた、だからこそ奴は人の心に興味を持つ、そういうことだな」
かつてブラックシンカリオンでの出撃を拒んだセイリュウの様子を見たゲンブとスザクが交わしていた会話
それを思い出していたセイリュウ
「わからないわね」
ベンチにアズサと共に座りながらスザクがつぶやいた
「どうして私をそこまで気にかけるのよ、私はあなたを利用したのよ」
「ああ、そういえばそんなこともあったっけ」
過去の出来事を思い返して苦笑するアズサ
しかも利用されたのは実質2回である
「でも、お姉さんのおかげでシンカリオンのことを知れたわけだし………」
そういってセイリュウたちの方を見るアズサ
ハヤトがスマホを開いて驚きの声を上げそれを食い入るように見つめる
「セイリュウとも、お姉さんとも知り合えた………ずっと、ありがとうって言いたかったの」
ありがとう、その言葉を初めて受けたスザクは戸惑っていた
「っていうか、あいつら何してんの?」
「うおぉぉぉ!間に合ってよかったあぁ!」
大宮駅のホームに泊まる白い新幹線を前に歓声を上げるハヤト
「おお、これが………」
セイリュウもその隣で瞳を輝かせている
「これがどうかしたのよ、銀のシンカリオンじゃない」
「ああ、シノブのE3ね、確かに似てるけど………」
「ぜんっぜん違うよ!これはEastiって言って東北新幹線の検測車両!ドクターイエロー以上に遭遇することが珍しいまさにレア中のレア!俺もこんな間近で見るのは初めてだよ!」
呆れるスザクに対してその手を引くアズサ
「セイリュウのあんな顔、見たことある?」
アズサの視線の先にスザクが目を向けてみればセイリュウはEastiを瞳を輝かせて見つめていた
「ないわね………私たちキトラルザスは滅びゆく種族、自分たちが生きるための道を見つけることしか頭にないもの………」
「私は見てみたいな、お姉さんの笑顔」
「笑顔………」
その言葉にスザクはセイリュウを見た
Eastiを見送って満足げな顔をしている
「私にあんな顔、できるかしら………」
「きっとできる、って言うか、私がお姉さんを笑わせて見せる!」
真剣に言うアズサにスザクは目を丸くした
「(ありがとう、さっき、この子にそういわれたときから、妙にざわつく………これが、心?セイリュウたちもこれを感じた?)」
「セイリュウ」
スザクがセイリュウに声をかけるとこちらを振り返った
「あんたやゲンブがこの子たちに何を感じたのかはまだわからない、けど、こうして一緒に居れば、いずれわかる気がする………」
「スザク………」
「だから、そのためにちょっと準備したいの、少しだけこの子と待っていて、幸い私がこの場にいることはソウギョクたちはまだ知らない、きっと帰ってくる」
そういってスザクはアズサの頭を優しくなでた
「きっとあなたの見たいものも見せてあげられる」
地底へと戻ったスザクはある部屋で機械のようなものを操作していた
「こんなところかしらね………」
USBメモリに似た小さな機械を手に取ったスザクは部屋を出る
「そこで何をしている」
突如聞こえた声に振り返るスザク
そこにはソウギョクの姿が
「あら、あんた一人なのね」
「こちらの質問に答えてもらおう、しばらくおとなしくしていたようだが、さすがに見過ごせないな」
「何のことかしら………」
「とぼけるな………セイリュウやヒトと接触していたことを私が知らないとでも」
「だったらどうなの」
スザクの体から黒い粒子が湧き出る
てっぱくテラスでスザクを待つアズサ
「あいつなら大丈夫だ………」
そんなアズサにセイリュウが声をかける
「あんたも心配だよね………」
するとアラートが鳴り響いて顔を上げる
「黒い貨物列車出現」
「巨大怪物体を2体確認、片方は先日確認したエージェントスザクと思われます」
「捕縛フィールド射出、エージェントスザクの保護を最優先だ」
「はい」
変形したシンカリオン各機がスザクの前に飛び出し彼女を守るように立ちはだかる
「ソウギョク………」
「まさかこの私が直接出向くことになるとは………」
ブラックシンカリオン紅がソウギョクへと向かっていく
その間にE5やほかのシンカリオンがスザクを保護しようとするが
「おい………お前………」
すでにスザクの体はボロボロだった
「柄にもなく、無茶しちゃったわね………」
「スザク………」
「ぐあっ」
「セイリュウ!」
ソウギョクがブラックシンカリオンの首をつかんで締め上げる
「残念だよセイリュウ、これほどの力、我ら種族の役に立てて欲しかったが」
「ゲンブを利用したお前が………いまさら何を」
「終わりだ………」
ブラックシンカリオンにとどめを刺そうとするソウギョクにスザクが体当たりを仕掛ける
「スザク!?」
「おのれ………裏切者がぁ!」
ソウギョクの放った攻撃がスザクの体を貫いた
「あっ………」
「スザク!」
ハヤトたちの叫ぶ声とともにスザクの体が地面に崩れ落ちる
「チェンジ!バーサーカーモード!」
ブラックシンカリオン紅がバーサーカーモードへと変わりソウギョクに向かっていく
「クッ………」
「ソウギョク!貴様だけは許さない!」
「フミキリキャノン!」
「シャリンドリル!パワードモード!」
「シンフミキリシュリケン!」
「グランクロス!」
シンカリオンの連続攻撃を受けよろめくソウギョク
「くっ」
「セイリュウ!今だ!」
「超へルグランクロス!」
ブラックシンカリオン紅の放った光線がソウギョクを飲み込んでいく
「おのれ………セイリュウううううう!」
「目標撃退」
「スザクさん!」
捕縛フィールドが解かれ介抱されたスザクの下へ急いで駆けつけるアズサ
「あっ………」
だがスザクの体はすでに石化が始まっていた
「そんな………」
「そんな顔しないで………私に笑ってほしいといっていた貴女が………そんな顔じゃだめよ………」
顔を上げたスザクは何とか腕を上げてアズサを呼び寄せる
「これを………きっとシンカリオンたちの役に立つわ」
「スザクさん………」
持ってきていたUSBをアズサに手渡すスザク
「ごめんなさいね………結局貴方の期待に応えてあげられなくて」
「やだよ………スザクさん」
「スザク………なぜおれを助けた」
「さあ、………気が付いたら体が動いていたのよ」
アズサとの触れ合いの中でスザクの中にも何かが生まれつつあった
その答えにあと少しでたどり着けるところまで来ていた
「(あんたたちもこんな気持ちだったのかしらね………)」
散っていった者たちに思いを馳せたスザクは自然と口元を緩めていた
「(私も少しは………ヒトを、心を知ることが出来たのかしら………ねえ、ビャッコ、あんたはいまの私を………どう思うかしらね)」
口元を緩めたまま完全に石化するスザク
「(残念だわ………もう少し、この子たちと笑っていたいって………そう、思えたのに)
石化したスザクを前に立ち尽くすアズサの肩にセイリュウが手を置く
「スザクのあんな表情は………俺も初めて見る」
「セイリュウ………」
「お前がスザクを変えたんだ………きっとあいつはお前に感謝している」
崩れ落ちたアズサの肩にセイリュウが手を置いた
「ぐすっ、セイリュウ………」
涙を浮かべたアズサの頭に手を置いたセイリュウ
「スザクさんが、スザクさんがぁ、うあぁぁぁん」
アズサを励ましながらもセイリュウは石化したスザクから顔を背けた
その日、セイリュウに宥められながらもアズサは泣き続けた
心を通わせた相手との別れを惜しむように、ずっと