新幹線変形ロボシンカリオン ふたりのはやぶさ   作:小田急ロマンスカー

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はじめてのお泊り

この日首都圏に出現した巨大怪物体と戦った運転士たち

発音ミクの助太刀もあって撃退には成功したが

「困りましたね………」

悪天候により青森から北海道へと向かう路線が運休

ミクはこの日のうちに帰る術をなくした

「しょうがないわね、ミクさんはこっちに一泊して、天気が落ち着いてから戻ることにしましょう」

フタバの提案に皆頷く

「あの………それでしたら」

 

「というわけで、よろしくお願いします」

速杉家の玄関で挨拶するミク

ハヤトの母、速杉サクラはその場で震えていたかと思うと

「ハヤトが女の子を連れてきたー!?」

驚いてマンションだということも忘れて大声で叫んでしまった

ちなみに母の隣にいた妹のハルカはと言えばいつもは無表情を貫いているが今日は目を大きく見開いて動かない

 

「けど、なんでハヤトん家なんだ?」

「まあ、お母さんや妹さんもいるし、男の子だけの寮より安心できるでしょ」

「それならフタバの姉ちゃんの所でいいじゃねえか」

ツラヌキの指摘に目を丸くしてドキリとするフタバ

「あ、ほら、私はお仕事あるし」

「話は読めた、忙しくて部屋の片づけをしばらくしていなかったのを知られたくないんだな」

「どきっ」

アキタの鋭い指摘に黙ってしまう

「いざとなったら俺ら、手伝うからさ、俺の好きな四文字熟語は整理整頓だ」

落ち込んでデスクに突っ伏すフタバの肩を優しく叩くツラヌキ

 

「ごちそうさまでした、とても美味しかったです」

「そういえばミクちゃん、着替えとかは大丈夫?急だったんでしょ」

夕食の直後、サクラがミクに問いかける

「問題ありません、ここに来る前に用意していただきました」

「え?いつの間に」

「なぜお兄が驚くのか不思議なわけで………けほっ、けほっ」

「あれ?ハルカ?」

「この子ってば今朝からちょっと咳っぽくて………」

「ちょっと失礼します………」

ハルカの額に手を当てるミク

「風邪の引き始めかもしれません、まだ症状は軽いようですが」

「夜遅くまでゲームしてるから」

「ハヤト君も人のこと言えないと思いますけど………」

「ギクッ、あ、ほら、じゃあミクに卵酒作ってもらえばいいよ、俺も前にお世話になった………あっ」

自身が口を滑らせていることに気付いたハヤトはゆっくりと顔を上げる

「ハヤト、お風呂上がりにテレビに夢中になって、お母さん何度も注意したわよね………」

「あ、その………」

 

首根っこ引っ張られてハヤトがお説教されているころ

彼の提案通りに卵酒を作り始めるミク

念のため台所を借りる許可はもらっている

笑顔で許可をしながらハヤトを引き摺っていく姿を見てわずかに同情したが

ほぼ彼の自業自得なので心の中で合掌するだけにとどめた

出来上がった卵酒を持っていった後まず熱を確かめてハルカの額に冷却シートを張るミク

熱が上がってきたらしくハルカはミクが看病する間おとなしくしていた

「………優しい」

「え?」

ふとハルカの呟いた言葉が聞こえたミクは首を傾げた

「うちのおっかあはああだし、私もこんな調子、後お兄の身近の女の子といえば上田アズサぐらいなわけで」

「ああ」

ハルカの口にした名前はミクも覚えがある

というか何度かこちらに来た時に顔を合わせたこともある

「女の子らしくて………新鮮なわけで」

「ふふっ、貴方たちのお母さんも十分素敵な人ですよ、怒ってくれるということは、それだけ心配しているということですから、飲めますか?」

最初微笑ましい空気だったがハルカが投げ込んだ爆弾にミクが困惑することになる

 

ハルカの看病をサクラに引き継いだミクはお風呂を借りて入浴を済ませる

丁度リビングではハヤトがテレビを見ているところだった

「ミク、見てみて、ほら」

ハヤトに促されてテレビを見てみるとそこには彼女の愛する地元の街、北海道の函館の景色が

どうやら北海道新幹線の旅を題材にした番組らしい

「ハヤト、お風呂入っちゃいなさい」

「はーい、じゃあミク、俺お風呂入って………」

今まで画面に夢中だったハヤトが顔を上げる

緑色に白の水玉模様が入ったワンピースタイプのパジャマを着た彼女の姿に少し見とれてしまっていた

「ハヤト君?」

「あ、うん、じゃあね」

そんなハヤトの反応を不思議そうに思いながらミクはテレビの前のソファに腰を掛けた

こちらで運転士の仲間たちと過ごす日ももちろん楽しい

だがやはりミクは北海道の地が好きだった

そして思い出していた、先ほどのハルカとのやり取りを

 

「女の子らしくて優しくて、貴方みたいな人がお兄のお嫁さんになってくれたら嬉しいわけで」

「えっ!?ちょっ!?」

「いや、もちろん冗談だけど、その反応はまんざらでもないわけで?」

顔を真っ赤にして慌てるミクの姿に戸惑うハルカ

 

「ハヤト君………」

僅かに顔を赤らめ胸の前で手を握るミク

テレビの声は彼女の耳には届いてなかった

 

「ミク?こんなところで寝ていたら風邪ひいちゃうよ?」

お風呂から戻ったハヤトはソファで眠りこけてるミクの姿に首を傾げた

「それにしても随分幸せそうな顔で、一体どんな夢を見ているのか」

「そういう娘じゃないんだけど………」

そう言って覗き込んだハヤトの耳に微かに寝言が聞こえる

顔を真っ赤にして飛び退くハヤト

「ハヤト?」

「な、何でもないよ、それよりミクをベッドに連れていかなきゃ」

「それもそうね」

肩をすくめてミクを抱き上げるサクラ

「(俺の名前?俺の名前だったよね、いや、でも東北新幹線のはやてと聞き間違えたかも、でも………)」

幸せそうに眠るミクが自身の名を呟いていた

その事実にハヤトはサクラに連れていかれる彼女を無意識に目で追ってしまった

 

新函館北斗駅のホームに入線してくるE5系

その姿を赤子を抱えながらホームの先頭から眺めていたミク

やがて運転席から降りてきた男性に飛びついた

 

「なんて夢を………」

耳まで真っ赤になって布団の中で蹲るミク

朝食の際もハヤトと目を合わせることができなかった

 

「それでは失礼します」

H5の運転席に乗り込むミクをハヤトたちが見送る

「ハヤト君」

「えっ?何?」

「今度は函館の私の家にも是非………今回のお礼もしたいので」

そういって振り返ったミクの笑顔にしばし見とれたハヤト

そのままH5が発車していくのを呆然と見守っていると

「名指しか」

「あいつあんな表情するのな」

アキタとツラヌキに冷めた目で見られる

更に

「ハヤトくんも隅に置けないのであります」

「ちょっ!シャショット!そんなんじゃないって!」

真っ赤になってシャショットを追いかけるハヤト

同じ頃北海道へ向かう路線を走るH5の車内でミクが顔から火が出そうなくらい赤くなって悶絶していた

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