新幹線変形ロボシンカリオン ふたりのはやぶさ 作:小田急ロマンスカー
超進化研究所の出水シンペイ指令長は腹の内が読めない人物だ
突然職員たちを温泉旅行に連れ出したり上田アズサが訓練に同行することをあっさり認可してしまったり
突拍子もないことをして三原フタバを驚かせることがある
そして今回もまた親睦を深めるべく企画を用意してきた
「なんで………釣りなの」
海辺の町で釣りに挑戦するシンカリオン運転士たち
だが、試験の近い清州リュウジが不参加
速杉ハヤトと大門山ツラヌキの二名はテストの点数が悪く居残り勉強のため不参加
その結果男鹿アキタ、月山シノブ、発音ミクの三名のみの参加となった
「釣りは初めてだな、おまえらは?」
「川でアユや鮭とったことはあるども海づりは初めてだ」
「私もそうですね、渓流釣りなら何度か」
「おめの場合は経験ある方がびっくりだ」
「ワカサギ釣りの経験もあります」
頭を抱えるフタバとは裏腹に無表情のまま会話を交え釣り船に乗り込む運転士たち
「………ちょっと待って、船?」
「うう~」
真っ青な顔で蹲るミク
彼女の乗り物に酔いやすい弱点がこの不幸を呼ぶこととなった
「大丈夫だ、今日は防波堤釣り、降りれば楽になる」
「だといいんですけど」
背中をさするアキタの裾をシノブが引っ張る
何事かとみてみれば
「うぅ~」
船酔いしているのはもう一人いた
「しっかりしろ保護者」
「そんなこと言っても………」
防波堤に降りると平然とするミク
フタバはと言えばなかなか船酔いから回復せず安全な場所で待機している
元々物静かな三人だ、特に会話が弾むわけでもない
ミクなど持ち込んでいた書籍を開いて読み始めてしまった
「今日は竹刀を持ってないんだな」
「竹刀を振る音で魚が逃げてしまいますから」
「かかんねな」
アキタの問いかけに本に集中しつつ答えるミク
シノブはじっと竿を見つめていた
「それ、何の本だ?」
「君(×に)〇〇〇たい」※〇=ピー音
「ハヤトだろそれをお前に勧めたの」
「よくわかりましたね」
「いやわかるわ、俺もそれ読んだし」
「お、かかった」
アキタとミクが現実逃避をしているとシノブにアタリが来たようだ
「お、おもて」
「手伝う」
「私もです」
「ああ、やっと落ち着いてきた、どう、釣れた?」
「私は坊主です」
「俺も坊主、シノブがアタリ二回来たけど一回逃げられた、後はメバルの稚魚が一匹、それはもうリリースした」
「あれぜって大物だった」
シノブが本気で悔しがっているあたり運転士たちも本気で楽しんでいるようだ
「さ、私も釣り始めちゃおうかな」
いつの間にかミクは本を読むことを辞め真剣に釣りに挑んでいた
「おい、海釣りは初めてなんだからそんなムキになることは」
「ムキになってません」
アキタの言葉にムッとしながら答えるミク
あれからしばらくしてアジやメバルが2~3釣れたもののミクだけは未だに坊主
意外と負けず嫌いな彼女は何か大物を釣って見返してやろうと真剣だった
「さ、そろそろ戻るわよ」
「あ、待ってください、あたりが」
「そんな自棄になって」
「ほんとにあたっとう」
釣り糸が力強く引っ張られミクを海に引き込まんとしている
「ねがかりじゃないよな」
「いえ、さっきとは違います」
一度ねがかり(※海藻や岩に釣り針が引っ掛かること)を起こしているミクはその時とは違う感覚であることにすぐに気づいた
「それっ!」
チャンスを見て一気に引っ張るミク
そこにいたのは
運転士たち全員集まっての速杉家での夕食会
「うわぁ、結構釣れたね」
「はじめてにしちゃ上々なんじゃねえの?」
「ちなみにお前海釣りの経験は?」
「あのなぁ、俺の地元は海産の豊富な石川県だぜ、あるに決まってんだろ」
「そういえばそうだったな」
男性陣が刺身などを前に話に花を咲かせていると
「まあ、これは全部俺らが釣ったんだども」
「え?じゃあミクは?」
「ひょっとしてあいつ坊主か?」
「ミク髪すごく長いけど?」
「あー、違う違う、魚が一匹もつれねぇこと坊主っていうの」
「違いますよ」
そう言って本日のメインディッシュの乗った皿を持ってミクが台所からやってきた
「え?何これ?」
「うおぉ!?クロダイじゃねえか?何?お前これ釣ったの?」
「高級魚なわけで」
「え!?すごい!?」
ハヤトとツラヌキが驚いているとミクは自慢げな表情になった
「ま、あれ一匹だけだけどな」
「し、言わぬが花だ」