バンドリ!~オプション付き5人と少女達の物語~   作:akiresu

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必要なのは勇気

 ―――――翌日の放課後―――――

 

 今日、レンと利久はバイトのシフトが入っていないらしい。だから今日の放課後は来人の家で練習をしないかって言われた。けど・・・

 

 明日香「ごめん!今日この後バイト入ってるから」

 

 来人「わるいな、俺も今日はバイトだから」

 

 レン「そうか・・・いや、気にするな。じゃあ頑張れよ」

 

 残念ながら今日は僕と来人にバイトがあってできない。残念だけど練習はまたの機会に。とりあえず僕は来人と一緒にバイト先に向かった。けど、その道中・・・

 

 明日香「来人、あれ・・・」

 

 来人「うん?あ!」

 

 僕が指さす先には外国人夫婦に話し掛けられて、狼狽えているりみちゃんの姿があった。どうやら道を聞かれているみたいだけど英語で聞かれているから何を言っているのかさっぱり解らないみたいだ。けどその時だった。

 

 香澄「どうしたの?」

 

 どこからともなく香澄ちゃんがが現れた。香澄ちゃんは外国人夫婦を見ると話し掛けにいった。もしかして香澄ちゃん、英語話せるの?

 

 香澄「ハロー!アイムカスミ!アイムギタリスト!」

 

 うん、どうやらできないみたいだ。突然のことに外国人夫婦の2人も「どうゆうこと?」って顔に出てるし、状況がさらに悪化した。

 

 明日香「これは助けた方がいいよね?」

 

 来人「だな!」

 

 困っている女の子を見て助けないなんて男として恥ずかしいしね。

 

 明日香「香澄ちゃん!りみちゃん!」

 

 りみ「明日香君!?来人君!?」

 

 香澄「あ!2人とも、今この人達に道を聞かれてるんだけど・・・」

 

 明日香「大丈夫、状況は理解してるから。それじゃあ来人、頼んだよ」

 

 来人「俺頼りかよ!お前がやるんじゃないのかよ!?」  

 

 明日香「僕が話すより来人が話した方がいいでしょ?なにせ来人は英語もフランス語もペラペラなんだから」

 

 来人「あー!わかったよ!・・・Excuse me,where do you want go?・・・ふむふむ、なるほどなるほど・・・If that place go straight this way and you will turn right at the third traffic light.Will guide.」

 

 来人に対応を任せると僕らは外国人夫婦を目的の場所まで案内することになりそこまで送っていった。

 

 来人「I got up.・・・No problem, you are welcome.」

 

 来人の英話術のおかげで外国人夫婦に道案内して2人を送り届けることができた。これで一件落着かな?そして僕らは近くの公園の階段で一休みしていた。

 

 香澄「案内できてよかったね!あっ君とライ君が来てくれて助かったよ!」

 

 りみ「うん・・・2人ともありがとう…」

 

 明日香「別にいいよ、たまたま通りかかっただけだし」

 

 来人「そうそう、それに目の前で女の子が困ってたら助けるのは男として当然のことだよ」

 

 りみ「私すぐに上がっちゃうしテンパっちゃって・・・かっこわるい…」

 

 来人「そんなことないよ、りみちゃんは可愛いよ」

 

 香澄「そうだよ、ライ君の言う通りりみりんは可愛いよ」

 

 りみ「うんうん・・・香澄ちゃんすごい・・・」

 

 香澄「え?」

 

 りみ「自己紹介とか、バンドのこととか・・・全部一生懸命で・・・楽しそうで・・・」  

 

 明日香「りみちゃん・・・」

 

 りみ「香澄ちゃんがバンドに誘ってくれて嬉しかった。でも・・・ステージに上がるの怖くて・・・みんなに見られてると頭真っ白なって動けなくなっちゃう・・・お姉ちゃんみたいにかっこよく出来ない、間違えたら迷惑かけちゃう・・・きっと、がっかりさせちゃう…」

 

 明日香「っ!」

 

 来人「・・・」

 

 そうゆうことだったんだ・・・りみちゃんがゆりさん、グリグリ、そしてバンドに対して強い憧れを抱いていたのに、今まで誰ともバンドを組まないで、香澄ちゃんの誘いも断っていたのは・・・りみちゃんは自分に自信を持てなかっからだったんだ…

 

 りみ「ごめんね…」

 

 香澄「うんうん」

 

 香澄ちゃんは首を横に振ると立ち上がって階段を昇った。

 

 明日香「香澄ちゃん?」

 

 香澄「りみりんとまた話せてよかった!」

 

 そう言うと香澄ちゃんは横にあった滑り台から無邪気な子供のように滑り降りて、着地するとりみちゃんに向けて笑顔を見せた。それを見たりみちゃんはさっきまでの浮かない顔と打って変わって笑顔になった。

 

 香澄「それじゃあ私行くね?有咲のこと待たせちゃってるから」

 

 そう言うと香澄ちゃんはこの場を後にした。香澄ちゃん凄いな・・・それなりに付き合いがある僕達でも今まで聞くことが出来なかったりみちゃんの胸の内を会ってたった数日の関係なのに聞き出すなんて・・・

 

 来人「おっと、そういえばバイトに行かなきゃいけないんだった」

 

 明日香「あ!そうだった!」

 

 そうだった!こんな所にいる場合じゃなかった!急いでいかなきゃ!そう思って僕は立ち上がろうとした。けどその時だった。

 

 来人「おっと、お前はここに残れ」

 

 来人に止められた。え?ちょっと何言ってんの!?

 

 明日香「ちょっと来人!?」

 

 来人「安心しろ、店長にはお前は遅れるって伝えておくから。じゃあねりみちゃん、また明日!」 

 

 そう言うと来人は足早にこの場を去っていった。相変わらず逃げ足速いんだから・・・まあ、こうなった以上仕方ない、レンにも頼まれてるし・・・

 

 明日香「よっこらせ」

 

 りみ「あ、明日香君!?」

 

 僕はりみちゃんの隣に腰を下ろした。突然のことにりみちゃんは驚きを隠せないでいた。

 

 明日香「隣、いい?」

 

 りみ「う、うん///いいけど・・・その・・・アルバイトはいいの?」

 

 明日香「大丈夫、まだ時間はあるから」  

 

 りみ「そ、そうなんだ///」  

 

 明日香「・・・・・」

 

 りみ「・・・・・」

 

 すっごく気まずい!ああもう!沈黙が続いて何とも言えない空気になってるし!レンも来人も僕にどうしろっていうのさ!?兎に角今はこの空気を何とかするためになんか言わなきゃ・・・

 

 明日香「あ、あのさ、りみちゃんはどうしてベース始めたの?」

 

 りみ「え!?えーと・・・やっぱり、お姉ちゃんがやってたから・・・かな?」

 

 明日香「そ、そっか・・・そうだよね…」

 

 やばい!さっきよりも気まずくなった!あ~僕の馬鹿!なんで答え解ってる質問をしちゃうのさ!

 

 りみ「あ、明日香君は・・・どうしてベース始めたの?」  

  

 明日香「え?僕?僕はレンにお願されたから。あと、小さい頃お婆ちゃんに三味線と琴の稽古を付けられてたからかな?」

 

 りみ「そうなんだ・・・ね、ねえ、明日香君は、どうしてレン君とバンドやろうって思ったの?」

 

 明日香「え?ああ、そういえばりみちゃんには僕がレン達とバンド始めた時のこと話したことなかったっけ」

 

 あんまり人に聞かせる様なもんじゃないけど・・・りみちゃんになら、いいかな?

 

 明日香「実は僕、最初はバンドやりたくなかったんだ」

 

 りみ「え!?そうだったの!?」   

 

 明日香「うん、りみちゃんはさあ、僕が親の言いつけで子役やってたのは・・・知ってるよね?」

   

 りみ「う、うん・・・でも、やめちゃったんだよね?どうして?」

 

 明日香「・・・嫌になったんだ・・・芸能活動が…」 

 

 りみ「え?えーと・・・なにかあったの?」

 

 明日香「まあね・・・最初の頃は楽しかった。演じることも楽しかったし、うまく出来ると周りの人も褒めてくれて、友達も沢山できた。でも・・・人気が出るに連れて学校に行けなくなることが多くなって、他にも沢山の習い事に子役の稽古で遊ぶ時間も無くて、友達とも距離ができちゃったんだ。ただ、それだけならよかった・・・学校に行ってないのにテストでは毎回100点を取ってて、それを面白く思わないクラスの子から・・・虐めを受けてたんだ…」

 

 りみ「え・・・」

 

 明日香「でも、まだ僕には芸能活動が残ってた。仕事先で出来た子役の友達が。けど、人気が出て、仕事が増えるに連れてにつれて・・・他の子役の子達からの当りも酷くなってきたんだ…」

 

 今でも覚えてる・・・あの時、友達だと思ってた子達、そして・・・あの人から言われた言葉を・・・

 

 『ほんと気楽でいいわね。桃瀬家の人間ってだけで仕事が貰えて、周りからもチヤホヤされて!何の努力もしてない親の七光のくせに!』

 

 明日香「そして僕は、芸能活動をするのが嫌になったんだ…」

 

 りみ「そ、そんな・・・お家の人は知ってたの?」

 

 明日香「うんうん、僕が隠してた。でも結局お婆ちゃんとお爺ちゃんと姉さんにばれちゃってね。その時に言ったんだ、もう子役をやめたいって・・・父さんと母さんもそれを許してくれて、学生の間は好きにしていいって。だから僕は、小学校を卒業するのと同時に芸能活動をやめて、それに関することをやるのが嫌になったんだ・・・劇もダンスも楽器の演奏も歌も・・・けど2年生の時に出会ったんだ。僕を変えてくれた存在に…」

 

 りみ「もしかして・・・レン君?」

 

 明日香「うん、その時レンは僕に一緒にバンドをやってほしいって言ってきたんだ。でも僕は断った。けど何度も何度もお願いされて、やりたいって思うようになっていったんだ。でも、そのたびにあの時のことが頭をよぎって・・・また友達だと思っていた人に裏切られる、この人もどうせ僕が桃瀬家の人間だから頼んでいるんだ。そう思ったら信じていいのか自信が持てなくなった・・・けどレン達は約束してくれた。絶対に裏切らないし、絶対に友達はやめない!俺はお前とバンドがやりたいんだ!って・・・その後、姉さんの説得も受けて僕はバンドをやることにしたんだ」

 

 りみ「そんなことがあったんだ・・・」

 

 明日香「うん・・・おっと、ちょっと話過ぎたかな?そろそろ行かなくちゃ」

 

 僕は立ち上がるとその場を後にしようとしたその時だった・・・

 

 りみ「ま、待って!」

 

 急にりみちゃんに呼び止められた。

 

 明日香「どうかしたの?」

 

 りみ「わ、私も、変えられるかな?自分を変えること・・・できるかな?」

 

 彼女はそう言いながら僕の目をまっすぐ見つめてきた。その瞳からは強い意志を感じられた。

 

 明日香「りみちゃん・・・大丈夫だよ、変わりたいって思ったその瞬間から、人は変わり始めているんだ。もし変わりたいって思うなら、後はりみちゃん次第だよ!」 

 

  僕は彼女の健闘を称えると同時に勇気づける意を込めて、彼女の頭の上に手を置いた。

 

 りみ「ひゃ!?///はぅ~~///」 

 

 僕に頭を撫でられるとりみちゃんは顔を赤くして少し嬉しそうな表情を浮かべていた。

 

 りみ「ねえ、明日香君・・・覚えてるかな?私たちが初めて会った時のこと…」

 

 明日香「え?」

 

 りみちゃんと初めて会った時のこと?それって・・・

 

 りみ「あ・・・ご、ごめんね?急に変なこと聞いちゃって・・・じゃ、じゃあ明日香君、またね」

 

 明日香「あ!ちょっとりみちゃん!」

 

 僕は呼び止めたがりみちゃんは走り去ってしまった。初めて会った時か・・・それって・・・僕が小学生の頃、お爺ちゃんとお婆ちゃんに連れられて大阪に行った時のことかな?

 

 明日香「そうだ、バイトに行かなきゃ」

 

 すっかり忘れていた。兎に角急がなきゃ!僕はバイト先の店までダッシュで向かった。   

 

 

 

 

 

 

 

     ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

  -商店街-

 

   

 明日香「まずい!時間ギリギリだよ!」

 

 僕はひたすら走り、商店街のある店にたどり着いた。そこには僕のバイト先である、羽沢珈琲店があった。僕は急いで店の裏口から中に入った。

 

 来人「お、ようやく来たか」

 

 イヴ「明日香さん、主役は遅れて登場するなんてブシドーですね!」 

 

 僕は店の中に入ると来人とクラスメイトで同じバイト仲間の若宮 イヴちゃんに声をかけられた。

 

 明日香「ごめん、ちょっと遅れた。後イヴちゃん、それは違うから」

 

 先程イヴちゃんがブシドーと言っていたが、彼女は日本の侍の武士道精神に憧れを抱いていて他の人がとる行動に対してよく武士道を感じるらく、それに感激して「ブシドー」と言っている。けど大抵はさっきみたいに武士道の使い方を間違えている。

 

 明日香「て、そんな事より早く準備しなくちゃ!」

 

 僕は店員のエプロンを身に着けると来人とイヴちゃんと一緒にお店の方に向かった。するとそこには独りで接客をする同じエプロンを身に着けた茶色いショートヘアの女の子の姿があった。僕は彼女に声をかけた。

 

 明日香「つぐみちゃん」

 

 つぐみ「あ!明日香君!」

 

 この娘は羽沢 つぐみちゃん。性からもわかる通りこの店の店長の娘で、この店の看板娘でもある。実は彼女はレンとは幼馴染で他にも幼馴染の女の子が4人いる。そしてその娘達と一緒にAfterglowというバンドをやっていて、彼女はキーボードを担当している。

 

 つぐみ「どうしたの?遅れるって来人君が言ってたけど」

 

 明日香「ギリギリ間に合ったよ。あ、手伝うよ」

 

 つぐみ「うん、ありがとう」

 

 イヴ「ツグミさん!お疲れ様です!」 

 

 来人「つぐみちゃん、お疲れ!」

 

 つぐみ「あ、イヴちゃん、来人君、お疲れ様」

 

 さてと、それじゃあ僕も仕事に取り掛かかるかな。

 

 明日香「お待たせしました。こちら、キャラメルラテになります」

 

 つぐみ「いらっしゃいませ、2名様ですね。こちらの席にどうぞ」

 

 イヴ「お待たせしました。こちらショートケーキです」

 

 この後僕達は一緒にお客さんの接客をして、僕と来人は、時々厨房の方に入って店長と奥さんと一緒に珈琲を淹れたり、ケーキを作ったりしていた。そして気が付いたら辺りも暗くなり、終業時刻になった。仕事を終えた僕と来人とイヴちゃんはお客さんが居なくなったお店の中で客席に座って一休みしていた。

 

 来人「だ~!疲れた~!」

 

 明日香「来人は僕達よりも忙しかったからね」

 

 イヴ「ライトさんは今日も修行を頑張ってましたね!ブシドーです!」

 

 つぐみ「お疲れ様~。これ、お父さんとお母さんから。よかったら食べて」

 

 僕達は雑談をしていると、つぐみちゃんがトレーにチーズケーキと珈琲と紅茶を載せて持ってきてくれた。待ってました!これが僕と来人がここでバイトをしている理由だ。ここでは仕事終わりに時々店長が珈琲とケーキをご馳走してくれる。僕はケーキが、来人は珈琲が大好物だ。それで僕と来人はケーキ作りと珈琲の淹れ方を教わることと時々出てくるこの賄いが目的でここでバイトをしている。

 

 明日香「ありがとう、つぐみちゃん」

 

 僕はつぐみちゃんからケーキと紅茶を受け取った。残念ながら僕は珈琲が苦手で、ここでケーキを食べるときはいつも紅茶を頼んでいる。僕はフォークを使ってケーキを口に運ぶと、その濃厚な甘さと香りを堪能すると紅茶で流し込んだ。これさえあればバイトの疲れなんてどころか、嫌な出来事の記憶もどこかに消え去って明日も頑張ろうって気持ちになれる。僕はケーキを食べ終えると着替えをして、幸せな気持ちに浸りながら帰路についた。

 

 


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