バンドリ!~オプション付き5人と少女達の物語~   作:akiresu

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師匠は鬼厳しい

 

 レン「なあ香澄・・・なんで俺も連れきたんだ?」

 

 放課後、俺はなぜか香澄にりみちゃん、有咲、花園さんと一緒にSPACEに連れてこられた。俺、今日はシフト入ってないのに。今日は明日香と来人がバイトだからどこか適当にスタジオ借りて自主練しようと思ってたのに…

 

 香澄「私達、ここでバイトさせてください!」

 

 レン「おい聞けよ」

 

 香澄は俺を無視して凛々子さんにバイトさせてほしいとお願いした。うん?達ってことは・・・りみちゃんと有咲も?それは・・・無茶苦茶助かる!確かSPACEは今人手不足のはずだからスタッフが増えればあの弟子使いの荒い師匠も少しはこき使うのを抑えてくれるだろうし。俺と利久してみれば嬉しい限りだ。

 

 凛々子「バイト?」

 

 香澄「はい!」

 

 凛々子「3人で?」

 

 有咲「いえ」

 

 なん、だと?

 

 香澄「え!?みんなでやろうよ」

 

 有咲「ざけんなよてめえ!」

 

 りみ「私はお母さんたちに聞かないと・・・」

 

 なに!?してくれないのか!?

 

 レン「待ってくれ!俺からも頼む!ここでバイトしよう!」

 

 有咲「はあ?お前まで急にどうしたんだよ」

 

 りみ「レン君、どうしたの・・・?」

 

 凛々子「レ、レン君?」

 

 俺はバイトを進めると3人から疑いの目で見られた。まずい、もし師匠が人使い荒いから俺と利久の仕事を軽くするためにバイトしてほしいってことがばれたら、バイトしてくれない!

 

 レン「それは・・・その、えーと・・・」

 

 俺が何とか誤魔化そうとしていたその時だった。

 

 オーナー「準備中だ!関係者以外は出ろ」

 

 奥から師匠が姿を見せた。そうだ、直接頼めば香澄だけでも雇ってくれるかもしれない。

 

 有咲「げ~」

 

 りみ「こんにちは」

 

 香澄「オーナー、バイトさせてください」

 

 香澄はオーナーを見ると速、バイトさせてほしいとお願いした。けど・・・

 

 オーナー「そんな時間あんのかい?」

 

 香澄「え?」

 

 少しキツイ言い方をしてきた。そういえば師匠は香澄がバンドやろうとしていてそんな時間が無いことを知ってる。つまりこれはダメだと言われているということだ。そんな、これじゃあ俺と利久はこき使われ続ける…いや待て、俺からも頼めば許してくれるかもしれない・・・

 

 レン「オーナー!俺からも頼みます!香澄をここでバイトさせてあげて下さい!」 

 

 俺は師匠に向けて頭を下げた。しかし師匠は何も言わず俺の事をただジッと睨みつけてきた。

 

 レン「オ、オーナー?」

 

 オーナー「レン」

 

 レン「は、はい!」

 

 オーナー「なんでそこまでこの嬢ちゃんおここでバイトさせたいんだい?まさか、人が増えればアタシがこき使う人が増えてお前と石美登の扱いがマシになるからって訳じゃないだろうね?」

 

 有咲「はあ?」

 

 香り「「え?」」

 

 な、なんでわかったんだ!?この人読心術でもあるのか!?てか自覚有ったのかよ!

 

 レン「え?そ、ソンナワケナイジャナイデスカー」

 

 有咲「お前・・・」

 

 レン「有咲さん、そんなことないから。だからその軽蔑しきったような目をやめて」

 

 りみ「レ、レン君・・・」

 

 レン「待ってりみちゃん、そんなこと微塵も思ってないから露骨に距離を取らないで」

 

 凛々子「流石に女の子にそういう事させるのはどうかと思うよ?」

 

 レン「だから違いますって!ただ俺はここでバイトすれば香澄がバンドをやる上で色々と学べると思ってその善意の心でお願いしただけですって!」

 

 香澄「レン君」

 

 オーナー「ふーん」

 

 よかった、どうやらわかってくれたみたいだ。

 

 オーナー「なら、半人前のお前も色々と学ぶべきことがあるんだろう?なら丁度いい、今日はオフだったけどお前もシフトに入りな」

 

 レン「・・・へ?」

 

 どうしてそうなったー!何この人、そんなに俺のことこき使いたいの?鬼だ…

 

 レン「いやー残念ですけど今日は俺その辺のスタジオ借りて、1人でギターの練習しようと思ってたんでちょっとー…」

 

 オーナー「そうかい、なら今日のライブが終わった後にステージを使いな。久々にアタシがしごいてやるよ」

 

 オーマイゴッド!逃げようとしたらさらに追い詰められた。いや、師匠に教えてもらうのは嬉しいよ?ただこの人の指導滅茶苦茶厳しいんだよ!特にギターは!けどもう俺に逃げ場はない・・・

 

 レン「わかりました…入ります、入ればいいんですよね?」  

   

 俺は今日もシフトに入ることになった。最悪だ…俺は何時ものようにスッタフ専用Tシャツに着替えると今日のライブの準備に取り掛かった。

 

 レン「まったく・・・どうしてこうなったんだ…」

 

 その後俺はブラックボードに今日のライブに出るバンド名を書いている花園さんの横で窓拭きをしていた。香澄達は準備が終わるまで外で待たされていた。

 

 香澄「ダメかー…」

 

 有咲「いきなり何なんだよ」

 

 香澄「SPACEのこと、もっと分かるかなーって」  

   

 レン「なるほどな、それでバイトしようと思った訳か」

  

 香澄「うん、なんで聖地なの?」

 

 たえ「聖地は聖地だよ」

 

 香澄「なるほどー」

 

 レン「今ので分かったのかよ」

 

 有咲「全然わかんないんですけど」

 

 りみ「えーと、SPACEはガールズバンドの為に造られた場所なんだ。オーナーはツアーとかもやるバンドのギターでライブハウスは怖くて危なそうってイメージを壊したくて30年前に造ったの」

 

 レン「けど、ある日やる気のない演奏したバンドが居てな・・・それからオーナーはオーディションをやってここでライブするバンドの熱意を確かめているんだ」 

 

 有咲「こえ~」

 

 香澄「かっこいい!」

 

 怖いにかっこいいか・・・確かに2人の言ってることはよく分かる。師匠の音楽に対する姿勢はとても尊敬している。だからこそ俺達はあの人に弟子入りしたんだ。

 

 たえ「よく知ってるねりみ」

 

 りみ「お姉ちゃんに聞いたの」

 

 たえ「お姉ちゃんってグリグリのゆりさん?」

 

 りみ「うん、お姉ちゃん達もファーストライブはここって決めてた」

 

 レン「ファーストライブ・・・か…」

 

 そういえばあの人達もそうだったっけ・・・それに・・・ラストライブも…

 

 香澄「レン君?」

 

 有咲「おーい、大丈夫かー?」

 

 たえ「起きてるー?」

 

 レン「え?あ、ああ・・・大丈夫だ…」

 

 おっと、無意識のうちにボーっとしてたみたいだな。

 

 りみ「レン君・・・あ、そういえばレン君達もファーストライブはここだったよね?」

 

 レン「ああ、懐かしいな。あの時の俺達はほんと未熟だったよ」

 

 香澄「そうなんだ!あれ?そういえばレン君達って男なのにどうしてここでライブできてるの?」  

 

 レン「え?ああ、別にここはオーディションさえ受かればそういうのは関係ないんだよ。ライブを観たり、出たりするのに男も女も関係ないってオーナーは言ってて、音楽に一生懸命向き合ってる人にはここでのライブを許してるんだよ」

 

 たえ「でも実際レン達の演奏はすごいもん。神の異名を持つバンドなんて言われてるくらいだし。それにあのオーナーに弟子入りして楽器の弾き方を教わるなんてすごく羨ましいことだよ」

 

 香有「「・・・え?」」

 

 急に香澄と有咲の表情が固まった。なんだ?なんか変なこと言ったか?

 

 香澄「おたえ、今なんて?」

 

 有咲「今さらっと凄いこと言わなかったか?」

 

 香澄「神の異名を持つってなに!?凄くかっこよさそう!」

 

 有咲「そこじゃねーだろ!?あの婆さんの弟子!?どうゆうことだよ!?」

 

 香澄「え~!?レン君オーナーのお弟子さんなの!?」

 

 有咲「今気づいたのかよ!?」

 

 香澄「りみりんはこのこと知ってたの!?」

 

 りみ「う、うん・・・」

 

 あれ?この2人の反応から察するに、もしかして知らなかったのか?てっきりりみちゃんがもう教えてるもんだと思ってたけど…

 

 レン「なんだ、2人とも知らなかったのか。そうだよ、オーナーは俺の、俺達Brave Binaeの師匠なんだよ」

 

 有咲「マジかよ!?」

 

 香澄「だからレン君達の演奏はあんなにすごかったんだ!」

 

 レン「まあ確かに楽器の弾き方を教わりはしたけど、それは基礎中の基礎と応用くらいだよ。主に学んだことと言えばバンドの心得・・・かな?」

 

 香澄「心得…」

 

 有咲「じゃあ神の異名ってのはなんだよ?」

 

 レン「あーそれな・・・それは俺もよくわかんないんだよ…なんでも俺達の演奏を観た人が1人1人に日本の神様に例えてそんな風に呼んでるらしい」

 

 利久と来人は気に入っていたけど俺からしてみればちょっと恥ずかしい・・・俺らはそんな大したバンドじゃないのに…

 

 レン「おっと、そろそろ中の掃除もしなくちゃな。わるい、すぐに終わらせて中に入れるようにするからもう少し待っててくれ」

 

 香澄「うん、わかった」

 

 有咲「りょーかーい」

 

 りみ「気にしないで」  

 

 俺と花園さんは中に入りステージの機材のセッティングやホールの掃除などいろいろとライブの準備をした後、準備を終えて開店すると今日のライブに出るバンドとお客さんがやってきて今日のライブも大盛り上がりを見せた。

 

 レン「ありがとうございました。またのお越しをお待ちしております」

 

 ライブが終わり、お客さんを見送ると閉店作業をするためにホールに入ると。そこには花園さんと話す香澄と有咲とりみちゃんの姿があった。

 

 レン「おーい、閉店作業始めるからそろそろ出ろ」

 

 香澄「あ!レン君、私達ライブするの!」

 

 有咲「まだいいとは言ってねー!」

 

 俺は3人を外に出そうとすると香澄達からライブすると言われた。 

   

 レン「ライブ?どこでやるんだ?」

 

 香澄「有咲の家の蔵で。凄いんだよ!蔵に地下室があってそこでやるんだ!クライブだよ!」

 

 レン「くらいぶ?あ、蔵でライブするからクライブか?」

 

 香澄「流石レン君、そうだよ!そのライブでおたえをドキドキさせられたら一緒にバンドやってくれるの!」

 

 たえが香澄のバンドに?そういえば聞いた話だと花園さんは小学生の頃からギターをやってるのに、今まで誰ともバンドをやっていなかったらしい。これは花園さんにとってもいい機会かもしれない。 

 

 レン「そうか、まあ取りえず閉店作業しなきゃだからそろそろ出てくれ」

 

 香澄「うん、じゃあねおたえ、レン君」

 

 有咲「あ、おいコラ待て!」

 

 りみ「えーと、レン君、おたえちゃんまたね。香澄ちゃん、有咲ちゃん、待ってー!」

 

 3人はそう言うとSPACEを後にした。ライブでドキドキさせるか・・・そういえば来人をバンドに加入した時もそんな感じだったな…

 

 レン「これは俺の予想だけど花園さんは絶対香澄達と一緒にバンドをやることになると思うぞ?」

 

 たえ「え?どうしてそう言い切れるの?」

 

 レン「アイツの事だ、一度ダメだったとしても何度もしつこく花園さんをバンドのメンバーにするために挑戦する。現に俺もそうだったし…」

 

 たえ「・・・ストーカーだったの?」

 

 レン「違う!なんでそうなる!?」

 

 コイツ、あの時の来人と同じこと言いやがって…

 

 レン「兎に角そういう事だから。あ、あと花園さん「おたえ」え?」

 

 たえ「レンも私の事そう呼んで。香澄が折角つけてくれたんだから」

 

 レン「あ、ああ・・・じゃあおたえはもう上がっていいってさ。後の事は俺がやるからオーナーから指示だ。どうせ俺最後まで残るし…」

 

 そう、俺にはこの後師匠からのしごきが待っているんだ…

 

 たえ「わかった、じゃあまたね」

 

 残された俺は軽い閉店作業を終えると、愛用のギターを持ってステージの上に立っていた。そして目の前にはオーディションの時のように椅子に座る師匠の姿があった。ただいつもと違うのはその横にはギターケースが置かれていたことだ。

 

 オーナー「準備はいいかい?」 

 

 レン「はい、けど師匠・・・それ・・・」

 

 オーナー「これがどうかしたのかい?」

 

 レン「どうもこうも・・・弾くんですか?無理しない方が・・・」

 

 師匠は見ての通り歳のせいか足を悪くしていて、それ以来ギターを弾くことが出来ていない。なのに大丈夫なのか?

 

 オーナー「馬鹿にすんじゃないよ!まだまだ若いもんには負けちゃいないさ」 

 

 レン「けど・・・」

 

 オーナー「そんなに心配ならギターをつなげるのを手伝いな」

 

 レン「あ、はい」

 

 俺は言われた通りギターケースから師匠愛用の白いVシェイプのギターを取り出し、ギターをシールドでエフェクターとアンプに繋げると師匠に渡した。

 

 レン「どうぞ」

 

 オーナー「よし、まずはアタシが弾くからそれを真似して弾いてみな」

 

 そう言うと師匠は椅子に座ったままギターを弾き鳴らした。さすが元プロの演奏なだけあってその腕前はとても凄かった。よくよく考えてみれば師匠がギターを弾く姿なんて滅多に見ることが出来ない貴重な光景だ。それを間近で見ることが出来るなんて、俺は改めて自分の今の状況の凄さを理解した。

 

 オーナー「ほら、やってみな」

 

 レン「は、はい!」

 

 師匠に言われ、俺は先程の師匠と同じ様にギターを弾き鳴らした。しかし・・・

 

 オーナー「ダメだ!も一度弾くからしっかり見てな!」

 

 容赦なくダメ出しをされてしまい、師匠に再びお手本を見せられた後もう一度弾き鳴らした。

 

 オーナー「そこ!またコードを押さえる指が違う!」

 

 レン「す、すいません」 

 

 オーナー「まったく・・・揃いも揃って同じ癖を持って…

 

 レン「え?」

 

 オーナー「なんでもない、今日はそこが弾けるようになるまで帰さないよ!」

 

 レン「ご、ご勘弁を~…」

 

 その後、師匠に何度も叱られながら俺は遅くまで練習していた。正直もう限界だった…

 

 オーナー「今日はここまでだ」

 

 レン「や、やっとか~…」

 

 オーナ「少しはましになったみたいだね。ここを掃除したらもう帰りな」

 

 ようやく帰宅の許可が下り、俺は言われた通りにステージの掃除を終えるとすぐさま帰宅した。家に着くと俺は疲労のあまり、すぐベッドに倒れ込んでしまった。


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