バンドリ!~オプション付き5人と少女達の物語~   作:akiresu

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約束は繋がり

 

 とても懐かしい光景だった、これは俺が小学校低学年の時だったか?ある夏の夜、緑の草が生い茂る高原で上空には普段都会では滅多に見ることのできない満天の星空が煌めく幻想的な光景が広がり、俺の隣では兄さんが天体望遠鏡をのぞき込んでいた。

 

 レン「すっごいキレイ!こんなに星がいっぱいあるの初めて見た!」 

 

 当時幼かった俺は初めて見た光景にとても感激していた。そんな俺の姿を見た兄さんは微笑みながらあることを口にした。

 

 晴緋「なあレン、知ってるか?この星の光はずっと遠くから何億、何千万年もかけて届いた物なんだ。それがずっと昔から世界中で色んな人に見られてきた。俺達は遠い時間・場所にいる人と同じものを見ている。人は誰もがこの星空でつながっている・・・」

 

 レン「・・・?どうゆうこと?」

 

 まだ幼かった俺は兄さんの言っていることの意味が理解できず首を傾げていた。そんな俺に対して兄さんは俺の頭の上に手を置き笑いながら諭すように言った。

 

 晴緋「今のお前にはまだ難しすぎたか・・・でも何時か分かる日が来る、その時にわかればいいさ」

 

 レン「・・・?よく分からないけど俺にも望遠鏡見せて!」

 

 晴緋「はいはい、分かったから落ち着け」

 

 俺は望遠鏡をのぞき込み天体観測を楽しんでいた。その時だった・・・

 

 ?『ねえあっちゃん見て見て!』

 

 突然女の子の声が聞こえてきて、声のした方を見るとそこには俺と同い年くらいの2人の女の子がいた。様子を見る限りどうやらあの2人も俺と兄さんと同様に2人だけでここへ星を見に来たようだ。

 

 晴緋「レン、折角だからあの子達も誘ってきたらどうだ?」

 

 レン「うん!」

 

 兄さんに言われた俺は2人の女の子の元に駆け寄り声をかけた。

 

 レン「ねえ君達」

 

 ?「え?」

 

 ?「きゃあ!?」

 

 俺が声をかけると片方の女の子が声をあげてもう1人の女の子の後ろに隠れた。どうやら驚かせてしまったようだ。

 

 レン「驚かせちゃってごめん、君たちも星を見に来たの?」

 

 ?「うん、もしかして君も?」

 

 レン「うん、よかったらこっちで一緒に見ない?天体望遠鏡で見るとすごいんだよ!」

 

 ?「天体望遠鏡!?行く行く!行こうあっちゃん!」

 

 そういうと目の前の女の子は後ろに隠れていた女の子にも呼び掛けた。するとその子は恐る恐る背中から顔をのぞかせて俺の様子をうかがってきた。

 

 レン「一緒に見よう!すごく楽しいよ!」

 

 ?「・・・うん!」

 

 その子がうなずくと俺は2人を連れて兄さんの元まで行った。兄さんは2人のことを快く迎えてくれて俺たちは4人で天体観測を楽しんだ。

 

 晴緋「この空いっぱいに広がる星の集まりが天の川っていうんだ」

 

 ?「へぇ~、あれが天の川なんだ!」

 

 晴緋「そしてあそこにある星がベガ、その向かい側にある星がアルタイル、織姫様と彦星様だよ」

 

 博識で物知りな兄さんは俺と2人の女の子にいろんな星に関する知識を教えてくれた。兄さんの話はとても面白くて俺と2人の女の子は夢中になって色々聞いて、星座版を使って一緒に星座を探したりした。しかし楽しい時間が過ぎてしまうのはあっという間だった。

 

 晴緋「あ、もうこんな時間だ。君達もそろそろ戻らないとお父さんとお母さんが心配するよ?」

 

 ?「え~、私もっとお兄ちゃんからお星さまの話聞きたい~!」

 

 ?「お姉ちゃん、唯でさえ内緒で来ちゃってるんだから遅くなると怒られちゃうよ」

 

 ?「う~・・・あ、じゃあさじゃあさ明日もここで一緒にお星さま観よう!」 

 

 晴緋「うーん、とっても素敵な提案だけど無理かなー、俺達も明日の朝には帰るし」

 

 ?「そんな~、折角仲良くなれたのに~…」      

 

 女の子がこれでお別れになってしまうと知ってとても悲しそうな表情をしていた。しかしその時だった、夜空に一筋の光が走った。

 

 レン「あ!流れ星!」

 

 ?「え?どこどこ!?」

 

 レン「ほら、あそこあそこ!」

 

 俺が上空に向かって指をさすと次から次へと流れ星が降り注いだ。

 

 晴緋「お、来たか!」

 

 レン「え?兄さんは流れ星が降るの知ってたの?」

 

 晴緋「ああ、ラジオで今日はペルセウス座流星群が観れるって言ってた。そうだ、折角だから3人で願い事してみたらどうだ?」

 

 レン「うん!」  

 

 ?「キラキラどきどきできますように!」

 

 レン「誰かを助けられるヒーローになる!」

 

 ?「あっちゃんは?」

 

 ?「私は・・・またお兄ちゃん達と一緒にお星さまを見れますように!」

 

 ?「あ!私もそれお願いする!」

 

 レン「俺も俺も!」

 

『また一緒にお星さまを見れますように!』

 

 俺達は星に再会を願った、そして・・・

 

 ?「また何時か絶対に会おうね!」

 

 レン「うん!約束だよ!」

 

 また会うことを約束し、俺と兄さんは2人の女の子と別れた。

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 レン「う~ん・・・なんかすごい懐かしい夢を見たな…それにしても・・・」

 

 あの時会った女の子2人、あの時は名前を聞かないで別れちゃったな。でも姉の方はきらきらドキドキとか言ってたし、妹の方はあっちゃんって呼ばれてたけど・・・まさかな…まあ色々と思う所はあるけど、とりあえず今は早く準備しなくちゃ。俺は準備を整えると何時ものように5人で登校した。

 

 香澄「あ・・・レン君おはよう」

 

 レン「あ、ああ・・・おはよう」  

 

 今日も香澄が挨拶をしてきたが一瞬間があった。いったい如何したんだ?その後授業中も香澄は時折俺の方をちらちらと見てきた。まさかとは思うが、やっぱりあの夢に出てきた女の子って・・・いや、まさかそんな奇跡みたいな事がある訳ないか…そして放課後、俺は学校が終わってすぐに家に帰宅していた。もうすぐテストがあるから師匠も学生の本分は勉強と言ってしばらくSPACEも出禁にされて特にやることのない俺は家に帰っていたのだが・・・

 

 レン「・・・」

 

 ―――クルッ―――

 

 レン「・・・」

 

 さっきから誰かの視線を感じる。試しに振り返ってみたがそこには人の姿はなかった。気のせいか?そう思い俺は再び歩を進めた。しかし今度は俺以外の足音が聞こえてきてそれを聞いて俺は確信した、確実に誰かに後をつけられている。俺は立ち止まり再び振り向いた。しかしやはりそこには誰も・・・うん?なんか電柱の後ろに隠れている人の姿が見えた。というか腕とかスカートの裾とか背負っているギターケースがはみ出てるし、そして何よりアスファルトに写るその人物の影、頭部に猫耳の様なものがあった。間違いない、あれは香澄だ。本人はあれで隠れているつもりなんだろうが・・・明らかにに隠れきれていない。

 

 レン「アイツ何やってんだ・・・」

 

 色々とアイツに聞きたいことはあるがちょっと泳がせてみるか…俺は再び歩を進め途中から小走りに切り替えた。すると向こうも同じく小走りを始めて俺は曲がり角を曲がるとすぐに壁に寄りかかり身を潜めた。すると目の前を香澄が小走りで通り過ぎ、俺を見失った香澄は辺りをキョロキョロと見渡して俺を探していた。

 

 香澄「う~・・・見失っちゃった…」

 

 レン「へ~何を見失ったんだ?」

 

 香澄「うんとね、レン君を追いかけてたんだけどここを曲がったら消えちゃったんだよ~・・・へ?」

 

 香澄はゆっくりと振り返ると俺と目が合い、顔から血の気が引いていた。さてと・・・

 

 レン「なんで俺を追いかけてたのか教えてもらおうか?」

 

 香澄「それはその・・・」

 

 俺は香澄に俺をつけてきていた理由を問い質した。しかし香澄は黙り込んでしまい話そうとはしなかった。

 

 レン「そんなに話しにくいことなのか?」

 

 香澄「う・・・ご、ごめんなさい!」

 

 レン「まったく・・・謝るくらいなら最初からやるな!はぁー・・・ついてこい」

 

 香澄「え?」

 

 レン「こんなところで話すのも癪だ。俺の家に来い」

 

 香澄「うん!レン君ありがとう!」

 

 とりあえず俺は香澄を家まで連れていくことにした。けど今の状況、明日香と来人がしったらまたなんか言ってきそうだな… 

 

 レン「着いたぞ」

 

 香澄「へ?ここがレン君の家?」

 

 レン「そうだけど?」

 

 香澄「大きい・・・もしかしてレン君の家って大金持ち?」

 

 レン「あ~まあな、とりあえず中に入るぞ」

 

 香澄「おじゃましまーす・・・うわ、中もすごい豪華!」

 

 俺は香澄を中に入れると結構驚いていた。いや、俺よりもすごい家に住んでいる人を俺は5人知っているから何とも言えない。

 

 香澄「お家の人は?」   

 

 レン「いない」

 

 香澄「え?どういうこと?」

 

 レン「父さんと母さんと兄さんはイギリス、爺ちゃんと婆ちゃんはアメリカの叔父さんの所にいる」

 

 香澄「じゃあレン君1人暮らししてるってこと?」

 

 レン「まあ、そうなるな」

 

 香澄「そう・・・なんだ…」

 

 明らかにおかしい、さっきから、いや今朝から香澄の様子がどうにもおかしい。今朝のあいさつも少しぎこちなかったし、それにさっきも俺の後をつけてくるなんて怪しすぎる。いったい何があったんだ? 

 

 レン「香澄」

 

 香澄「なあに?」

 

 レン「お前は俺に何を聞きに来たんだ?」

 

 香澄「その、おたえからレン君達オーディションまだ受けてないって聞いて・・・それでその理由を色んな人に聞いたら・・・」

 

 俺達がオーディションを受けていない理由?まさか・・・

 

 レン「お前、兄さんのことを聞いたな?」

 

 香澄「ギクッ!そ、それはその~・・・」

 

 レン「誰から聞いた?」

 

 香澄「う・・・ゆりさん達とリッ君、あとオーナーから…」

 

 レン「そうか・・・」

 

 やっぱりそうだったか・・・でも師匠は意外だった。あの人はこういう事あんまり人に話したりするような人じゃないのに…

 

 レン「それでお前は俺に何を聞きたいんだ?」

 

 香澄「レン君、どうしてオーディション受けないの?SPACEの最後のライブなんだよ・・・出たくないの?レン君達ってオーナーのお弟子さんなんでしょ?きっとオーナーも出てほしいって思ってる!」

 

 レン「香澄・・・」

 

 香澄「それにレン君は何も悪いことしてないのに・・・自分を攻めるのは間違ってる!」 

 

 何も悪いことはしてない・・・・か…違うんだ香澄、俺はもうしている、それも最悪なことを・・・

 

 レン「・・・そんなことはない…俺はひどいことをした。俺はギター始めて、バンドを結成した。そのせいで兄さんはバンドを解散させなきゃいけなくなったんだ!」 

 

 香澄「どういう・・・こと?」  

 

 レン「俺がまだ小さかった時、兄さんは生まれつき体が弱くて何もできなかった。スポーツをすることも、友達と外で遊ぶことさえもな…」

 

 今でもあの時の兄さんの姿は覚えてる。何度も入退院を繰り返して、外で遊ぶ他の子達を羨ましそうに、そして悲しげに見つめる兄さんの表情を…

 

 レン「けどそんな中兄さんが出会ったのがバンドだった。兄さんはギターを始めて中学2年の時にバンドを結成した。その時の兄さんは輝いてた。今までやりたい事ができなかった分すごく楽しんでて、そんな兄さんを見てたら俺も一緒の事がやりたくなって、俺もギターを始めて碧斗達とバンドを結成した」

 

 香澄「そっか、それでレン君はギターを始めたんだ…」

 

 レン「ああ、けど4ヶ月前にあのイベントステージでの悲劇が起きた」

 

 香澄「うん、それも聞いた・・・それでお兄さんのバンドは解散しちゃったんだよね…」

 

 レン「いや、違う。それだけじゃないんだ」

 

 香澄「え?」

 

 レン「その年で俺は中学を、兄さんは高校の卒業をまじかに控えていた時だった。父さんが俺をイギリスで留学させようとしたんだ」

 

 香澄「え?!留学!?どうして!?」   

 

 レン「うちの父さん大きい会社やっててさ、本当は父さんも俺達にも好きなことをやってほしかったんだろうけど、周りの人達の声もあって俺か兄さんのどちらかに将来継がせようとしていたんだ。でも兄さんはバンドのプロデビューの話があって将来が決まっていた、だから父さんは俺に継がせようとしたんだ。でもその話を知った兄さんはイベントでの出来事を理由にプロデビューの話無くしてバンドを解散させて、療養も兼ねて俺の代わりに留学することにしたんだ…」

 

 兄さんは絶対バンドをやめたくはなかったはずだ。それは華美さん達他の4人もそうだったに違いない。けど兄さんは・・・兄さん達は俺1人の為だけに自分達の夢を諦めた。あの人達の夢を奪ったのは他でもない、俺なんだ…  

 レン「あの時俺が兄さんの事しっかり気にかけていればライブで倒れることも、それを理由にバンドを解散させることもなかった。兄さんはやっと見つけたのに・・・自分にも出来る事を、今まで何にも挑戦することが出来なかった自分にも楽しめることを、それを俺は奪った」

 

 香澄「違う!そんなこと「違わないさ!」ッ!」

 

 レン「俺は5人の夢を奪った、それは変えようのない事実だ。俺が1つのバンドを潰したんだ!大切な人の夢を奪ったんだ!こんな俺に本来ならギターを握る資格なんてないんだ!夢を見ちゃいけないんだ!」

 

 俺は自分自身が抱える罪悪感をすべて吐き出した。すると俺の目柱は熱くなり、無意識に涙が零れ落ちていた。 

 

 香澄「レン君・・・じゃあ、何でギターをやめなかったの?」

 

 俺の話を聞いた香澄はその中で1つ疑問に残ることを聞いてきた。俺がギターをやめなかった理由、それは他でもない・・・

 

 レン「最初は、俺もギターをやめて一緒にイギリスに行こうとしたさ…でも、ギターは俺と兄さんを繋げてくれている唯一の物だし、ギターをしていると兄さんが近くにいる感じがするんだ。それに兄さんと約束したんだ・・・兄さん達が、Skyineが叶えられなかった夢を俺達が夢を叶えるって…」

 

 香澄「その夢って?」

 

 レン「輝くこと・・・大きな舞台で、さらなる高みで、誰かを照らせるような、誰かにとっての光のような輝ける存在になること…けど、俺には無理だ…」

    

 香澄「無理・・・?」

 

 レン「俺には兄さんの様にすることはできない。あの人のギターの腕はすごかった、俺には誰かを惹きつけられる、誰かの憧れになれるような事は出来ない。どれだけ努力したって足りないんだ!俺は、約束を果たすことができない・・・あの人に追いつくことなんて一生できないんだ!」

 

 香澄「そんなことない!」

 

 レン「ッ!?」

 

 香澄「だってレン君がギター弾いてるとき凄くキラキラしてた!それにその時のレン君見てたら私もキラキラドキドキしたもん!だから絶対に無理なんかじゃない!それにお兄さんだって、きっとレン君なら出来るって信じてる、信じたから夢を叶えてってお願いしたんだよ!」

 

 レン「お前に・・・お前に何がわかるんだ!?お前に俺の辛さがわかるのか!?今までずっと一緒にいた大切な人が居なくなって、頼んでもいないのに勝手に気使われて夢まであきらめられて、託されて、悩まされて、1人にされた俺の何がわかるんだ!?」

 

 

 ―――ドンッ!―――

 

 

 何も知らない癖に知ったようなことを言う香澄の言葉に苛立ちを覚えた俺はそれをぶつけるかのように声と同時に拳を壁に叩きつけた。しかしそれだけでは怒りは収まらず俺は香澄に対してさらに言葉をぶつけた。

 

 レン「帰ってくれ・・・」

 

 香澄「え・・・」

 

 レン「帰れってくれ!」

 

 香澄「ッ!・・・わかった・・・ごめんね…」

 

 そう言うと香澄は家を飛び出して立ち去った。「ごめんね…」本当は俺が言わなきゃいけないのに・・・俺はさっきの香澄の言葉と姿が頭から離れなかった。此処を出ていくとき一瞬見えた香澄の顔、アイツの目元には涙が浮かんでいた。自分から話しておいて八つ当たりして、その上女の子を泣かせてしまうなんて心底自分が嫌になる…

 

 レン「う・・・うわぁぁぁぁぁぁぁ~!」

 

 もうどうしようもなくなった俺はすべてを吐き出すかのように大声を上げ、そして泣いた…その声は他の誰にも聞こえることなく、唯々部屋の中でこだましていた。

 

 

 

 

 

 

     ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

沙綾「碧斗、今日もシフト入ってるけどいいの?テストも近いし」

 

 俺は放課後、俺は今日もバイトのシフトに入っていた。けど沙綾はテストが近いのにバイトをしている俺のことを心配してきた。でもこれに関してはお前に対しても同じことが言えるだろ?お前の方はテストに加えてSPACEのオーディションに向けてバンドの練習もしなくちゃはならない。

 

 碧斗「別に問題ない、むしろ俺からお願いした。ここ最近お前は忙しそうだったからシフトを入れさせてもらった。お前の方こそいいのか?今日は練習しなくて」

 

 沙綾「今日は香澄が練習を休むって、けどなんか少しだけ深刻そうな顔してた」

 

 碧斗「戸山が?」

 

 沙綾「うん」     

 

 碧斗「何か心当たりはあるのか?」

 

 沙綾「・・・たぶんだけど――――――」

 

 俺の問いに沙綾が答えようとしたその時だった。

 

 

 ―――カランカラン―――

 

 

 店の扉が開き誰かが入店してきた。俺と沙綾は咄嗟に対応しようとしたが止まった。なにせ入店してきたのは・・・

 

 香澄「・・・・・」

 

 つい今しがた話に出てきていた戸山だった。沙綾はいつものように戸山に声をかけようとしたその時だった。

 

 沙綾「あ、香澄いらっしゃ―――ダキッ!―――え!?」

 

 戸山はいきなり沙綾を見るなりいきなり抱き着いてきた。しかしその顔を見て俺と沙綾は再び固まった。俺と沙綾が顔を見ると戸山の目じりには涙が浮かび、今にも泣きそう・・・いや、泣いていた。

 

 香澄「さ~~や~~!ワダジどうしたらいいの~~~!?」

 

 沙綾「ど、どうしたの?とりあえず落ち着いて」

 

 突然泣きつかれた沙綾は戸山を宥め、しばらくすると戸山は落ち着いたのか沙綾から離れた。

 

 沙綾「落ち着いた?」

 

 香澄「う・・・グスッ・・・うん・・・・・・ありがとう・・・」

 

 碧斗「それで何があった?」

 

 香澄「私・・・レン君のこと怒らせちゃった…私、唯レン君にライブに出てほしかっただけなのに・・・なのに私・・・」

 

 成程な、大体わかった。大方レンにSPACEのオーディションを受けるよう説得しに行ってそれで晴緋さんのことを聞いてこうなったんだろう。けどそういう事なら心配はいらないかもしれない。

 

 碧斗「そうか、ならあまり気にするな。アイツのことだ、きっと今頃罪悪感でいっぱいになっているはずだ」

    

 香澄「え・・・」

 

 碧斗「アイツは優しすぎるんだ。アイツは前と変わった・・・けど、そこだけは出会った時から変わらなかった」

 

 香澄「レン君と・・・出会ったとき?」

 

 沙綾「そういえば私もその時の話聞いたことなかった。碧斗ってどうしてレンとバンド始めたの?」

 

 碧斗「別に、大した理由はない。そんな人に聴かせるほど面白い話でもない」

 

 沙綾「ふーん、そうなんだ・・・」

 

 おい、「そうなんだ」って言っておきながらなんで「興味津々」、「いいから話せ」って目をしているんだ… 

 

 碧斗「はぁ~、わかった・・・わかったからその目をやめろ」

 

 沙綾の圧に負けた俺は話すことにした。2年前、誰も寄り付かず孤独だった俺を変えてくれた、俺を初めて料理勝負で負かして背中を預かることになったアイツとの出会いにして、そして・・・Brave Binaeの始まりを――――

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