バンドリ!~オプション付き5人と少女達の物語~ 作:akiresu
2年前、中学2年だった俺は教室の中で自分の席に座り小説本を眺めていた。そして周りの人間はそんな俺の姿を見ながら会話する奴らがほとんどで、その目は男女で二種類に分かれていた。女子はまるで高級品を見るかのような好奇の目で、そして男子は嫉妬や妬みの籠った怒りの目で俺のことを見ながら。すると1人の女子が俺に近づき話しかけてきた。
「ねえねえ海原君、何読んでるの?」
話しかけてきたその女子はこのクラスの中でもカーストの上位に当たる存在で学年のマドンナとまで言われている人物だった。そいつは笑顔を浮かべていたが明らかに作り笑いであることがすぐに分かった。まるで媚を売るように話しかけてきた女はこれで何人目だっただろうか。俺はうんざりしてそこには誰もいないかのようにその女子を無視した。
碧斗「・・・・・・」
「そう言えばこの前またコンテストで優勝したんだよね?その時に作った料理私にも食べさせてほしいな~?」
しかしそんなことは気にも留めずに俺に話しかけ続けてきた。さらにずっと無視していることに流石に怒りを覚えたのかついには怒鳴り散らしてきた。
「なによ!?折角私が話しかけてあげてるのに無視!?こんな美人が不愛想で友達の居ない貴方に話しかけているんだから少しくらい喜んでもいいんじゃない?それとも私は貴方とは釣り合わないって言いたいの?お高くとまってほんといい御身分ね!」
ほんと鬱陶しい・・・俺は目の前の女を黙らせるために無言でそいつを睨みつけた。
碧斗「・・・」―――ギロッ―――
「ひっ!な、何よその目は!?」
するとそいつは怯み、そのままさっきまで自分が話していたグループへと戻っていき、周りの男子の視線の憎悪が一層強まった。何故こうなっているのか、理由は分かり切っていた。俺の顔立ちはかなり整っていて所謂イケメンと言われる部類に入る。それに加えて小学生のころから料理コンテストに何度も出場し、優勝してきて料理に関しては中学生の中ではかなりの腕前を持っており、学校での成績も優秀である為かなり女子にモテる。別にナルシストとかお高くとまっているとゆう訳ではないがそれを謙遜するほど嫌味な性格をしている訳でもなくただ単に事実として自覚している。しかしそれが理由で学校内の女子達は俺によく告白をしてくるのだが、明らかに下心が丸出しで俺という存在を恋人にする事で自分自身のスペックにしたいのが丸分かりだった為全て断っていた。しかしその行為が今度は男子の怒りを招くこととなった。自分の好きな女子が俺に告白して振られたことを知った男子、さらに俺がモテていることに嫉妬した男子がさっきの様に憎悪の目を向け、陰湿な嫌がらせをしてくる。それに加えて俺はさっき言われた通り不愛想であまり人と話さない、その為俺と仲良くしようとする者は誰もおらず、小学校からボッチを決め込んでいる。別に痛くもかゆくもないが・・・
―――キーンコーンカーンコーン―――
おっと、予鈴が鳴ったから俺は小説を閉じると次の授業を確認した。えーと次は家庭科か・・・確か調理実習だ。俺は愛用の調理服を手に持つと家庭科室へと向かった。
「きょうは餃子です。3人1組で作業を行ってください。包丁と火を使うときはしっかりと気を付けるように」
教科担任の指示を受けた俺らはグループを作ろうとしたが周りの奴らはすでにグループを作り終え誰も俺と組もうとはしなかった。それもそうか、俺の腕があればあっという間に1人で作り終えてしまいペアになった奴は退屈もいいところだ。仕方なく俺は独りで作ろうと思っていたその時だった・・・
「なあ、海原もグループ余ったのか?」
俺は不意に声を掛けられて声のした方を見るとそいつがいた。他の奴らとは違い俺に対してフレンドリーに接してきて赤い髪をしたそいつ、赤城 レンが。
碧斗「お前も余ったのか?」
レン「ああ、ほら、うちのクラスに1人不登校の奴がいるだろ?それで1グループだけ2人になっちゃってな」
碧斗「そうか・・・わかった、必然的にお前と組むしかないってことだな」
レン「話が早くて助かる。それじゃあよろしく頼む」
こうして俺はレンと一緒にグループを作ることになった。けど、この時は思いもしなかった。まさかこれがきっかけで、俺がこいつの背中を預かることになるなんて…
レン「それじゃあ早速始めるか。まずはどうすれば・・・え・・・」
俺は早速包丁を使いネギとニラとキャベツを刻んだ。それを塩もみにして水分を絞り出し、それをボウルにひき肉と入れると酒、みりん、醤油、ごま油を加えて混ぜて餡を作った。餡作りを高速で終わらるとレンは唖然としていた。
レン「お前はえーな・・・」
碧斗「慣れてるからな。ほら、皮で餡包むの手伝え」
レン「ああ、わかった」
結局レンは餡を皮で包む以外は殆んど見ているだけで俺がほぼすべての作業をやってしまった。餡を皮で包む以外何もやっていないレンはきっと不満だっただろう。そう思っていたその時だった。
レン「よし決めた!海原・・・いや、碧斗!お前がドラムだ!」
碧斗「・・・はあ?」
いきなりこいつは何言ってんだ・・・周りの奴らもポカーンとしてるし・・・ドラム?あの太鼓みたいなやつとかシンバルがセットになってるやつか?
レン「うん?どうしたんだ?ポカーンとして」
碧斗「お前がいきなり意味不明なことを言うからだろ・・・」
レン「意味不明?そうか、ならわかりやすく言う、俺のバンドのドラムはお前に決めた!お前にはドラムをやってもらう!」
碧斗「全くもって理解できない・・・というかやることは決定事項なのか…」
レン「お前のさっきの包丁捌きを見て決めた。俺と一緒にバンドやろうぜ!」
碧斗「訳が分からない・・・悪いが他をあたってくれ」
レン「あ、おい!碧斗!」
後片付けもすべて終えた俺はこの妙に暑苦しい奴から離れるために教室へと戻った。しかし・・・
レン「なあ碧斗、いいだろ?一緒にバンドやろうぜ!」
碧斗「さっきも言ったが他をあたれ。俺はドラムなんかやった事が無い」
レン「大丈夫だ!お前のあの包丁捌きはすごかった!一切の乱れもなく一定のリズムで野菜を切る手の動き、あの腕ならお前は凄いドラマーになれる!」
碧斗「別に俺はドラマーを目指してはいない・・・はぁー、言うだけ無駄か…」
その後も暇さえあればしつこく俺をバンドに誘ってきた。話し掛けてくるだけならまだ良い、しかし此奴はありとあらゆる方法で俺を勧誘してきた。時には勧誘のビラを机や下駄箱に忍ばせ、明らかに怪しい契約書にサインさせようとして来たり、ラブレターに似せた勧誘の手紙を忍ばせたりしてきた。俺はこれらを全て・・・
碧斗「・・・・・」―――ビリッ!ビリビリッ!―――
破ってごみ箱に捨ててやった。
レン「あーーーー!折角書いたってのに!人から貰った手紙はちゃんと読め!相手の思いはきちんと受け止めろ!断るんなら読んでから断れ!」
碧斗「どうせ断ってもしつこく勧誘してくるだろ?」
レン「当然だ!」
碧斗「・・・はぁー、バカの極みだな…」
レン「なっ!?」
その時のレンの表情は今でも思い出すと少し笑えてくる。しかし、それでもめげずにレンは勧誘を続けてきた。するとそれと同時に俺に対する周りの反応も少し変わり始めていた。
「海原君最近少しだけ柔らかくなったよね?」
碧斗「はあ?」
俺はまた何時ものようにクラスの女子から話し掛けられてきたが不意にそんなことを言われた。いったい何言ってんだ?
「今までずっと表情崩さないで不愛想な顔してたけど、赤城君と話すようになってから表情が柔らかくなったから」
俺の表情が?別に俺はしつこく勧誘してくるアイツをあしらっているだけだが…けど確かに、今まで俺に話しかけてきたやつは皆下心丸出しの女子と敵意むき出しの男子くらいだったがアイツだけは違った。勧誘が目的とは言えどアイツは今までの奴らとは違い純粋に俺と仲良くしようとして話し掛けてきた。その事に対して俺は多少なりとも嬉しさが有ったのかもしれない。けど、流石にイラつかない訳でもなかった俺は余りのしつこさに対して俺はついに我慢の限界がきてしまった。
レン「なあ碧斗、バンドやろ「いい加減にしろ!何がバンドだ!何が凄いドラマーだ!そんなくだらない事をやったって時間の無駄だ!」
俺は溜まっていた今までのイラつきを全てぶつけた。これだけ言えばきっと此奴も諦めるだろう。そう思っていたその時だった。
レン「おい、今なんつった?」
さっきの明るい表情とはまるで違う顔になりとても冷え切った声で言ってきた。その顔に浮かぶ物はまさしく怒りそのものだった。どうやら俺は此奴の逆鱗に触れてしまったようだ。
レン「バンドがくだらない?ふざけるな!バンドのことを何も知らないお前が勝手に決めつけるな!」
碧斗「・・・!」
驚いた、いつも明るく振舞ってた此奴がまさかここまで怒りをあらわにするとは・・・
レン「放課後、俺に付き合え。お前にバンドの凄さを見せてやる」
レンの剣幕に押された俺は頷くことしかできなかった。おそらくそれにはさっき俺が言ったことに対する罪悪感も有ったんだろう・・・放課後、俺はレンにある場所へと連れていかれた。
碧斗「おい、どこに連れていくつもりだ?」
レン「いいから黙って付いてこい」
そう言われ俺が連れてこられた場所、そこは・・・
レン「着いたぞ」
碧斗「ここは・・・ライブハウス?」
レン「そうだ、ここが俺が連れてきたかった場所。ライブハウス、『SPACE』だ」
碧斗「SPACE・・・」
俺は中に入るとライブのチケットをレンから渡され、それをスタッフの人に渡してホールの中に入った。そして俺は魅せられた。ステージの上で行われるバンドたちの演奏に、特にSkyineというバンドのドラムに俺は引き付けられた。最初は目元が前髪で隠され表情の分からない事と一言も言葉を発しなかったことから第一印象はとても暗そうだった。しかし演奏が始まると打って変わり、激しくドラムを叩く腕は雷光、響かせる音は雷鳴、演奏をするその姿はまさに雷神。俺はその人の姿に雷に打たれたかのような衝撃を受けた。
碧斗「・・・・・」
レン「どうだった、Skyineの演奏は?」
碧斗「・・・!ああ、凄かった…」
俺は意識を持ってかれライブが終わった事にも気づかずにいた。きっとレンに声を掛けられなければ俺はこのままここに突っ立ったままだったかもしれない。さっきの人達の演奏を聴き終わり、俺は少し前にアイツに対して感情のまま言ったことを後悔した。
碧斗「その・・・さっきは悪かったな…少し感情的になりすぎた。取り消す、バンドは下らなくなんかにない。バンドは凄い」
レン「そうだろ!お前にも分かってもらえたみたいで何よりだ。それでどうだ?お前もバンドをやってみたくなったか?」
碧斗「ああ、まあな…」
レン「なら「けど!やっぱり俺はやらない」な!?」
碧斗「俺は1度もドラムなんて、そもそも楽器なんてやった事のない超初心者だ。そんな俺がバンドをやっても迷惑かけるだけだ。どうせやるならちゃんとできる奴とやった方がいい。だから俺はお前とはバンドは出来ない」
レン「なんだ、そんなことを気にしてたのか?それなら問題ない、俺もギター全然弾けない!」
碧斗「・・・・・はあ?」
え?こいつ今なんて言った?ギターが弾けない?それも全く?それなのにこいつはバンドをやろうとしたのか?
碧斗「ちょっと待て、お前も楽器できないのか?」
レン「ああ!」
碧斗「あれだけ大口叩いてたのにか?」
レン「ああ!」
碧斗「それなのにバンドをやろうとしたのか?」
レン「ああ!」
碧斗「・・・バカなのか?」
レン「ああ!・・・あ?」
碧斗「・・・・・帰る」
レン「ちょっと待ってくれ!頼む!これから上手くなるから!だから一緒にバンドやろうぜ!大丈夫、俺もこれから上手くなるから~!」
俺は帰ろうとしたらレンは腰に抱き着き縋ってきた。ふざけるな!
碧斗「放せバカ!こんな不安だらけの奴と簡単にバンドなんかできるか!それと場所を考えろ!」
今俺達はまだSPACEの中にいる。分かるだろ?俺達は今周りの人達に奇異の目で見られている。俺にまで被害がきている!
レン「バカっていうな!バカって言った方がバカなんだ!よし分かった。なら碧斗、俺と料理勝負しろ!」
碧斗「は?」
こいつ何言いだしてんだ?そもそも俺と料理勝負って分かってんのか?俺が料理のジュニアコンクールで何度も優勝してるってこと。
レン「お前が勝ったら俺は今後お前を勧誘をしない。ただし俺が勝ったら俺とバンドをやってもらう」
碧斗「別に構わないが・・・いいのか?お前も知ってるだろ?俺が料理コンクールで何度も優勝してるってこと」
レン「当たり前だ。だから俺はお前に料理勝負を挑んだんだ!」
成程、俺にとって1番の得意分野で勝負することで俺を納得させる。どうやらこいつは俺に勝つ気でいるらしい。けど、俺が勝てばこいつのしつこい勧誘を受けなくて済む。こんないい話はない。
碧斗「わかった、その勝負受けてやる」
レン「言ったな?なら明日の放課後学校の家庭科室でだ。ルールーは互いに1品作ってそれをクラスの人達に審査してもらう。作る品のジャンルは特に指定なし。どうだ?」
碧斗「ああ、かまわない」
レン「よし!じゃあまた明日な」
碧斗「ああ・・・?お前は帰らないのか?」
俺はライブハウスを出ようとしたが、レンは帰ろうとする気配すら見せなかった。
レン「ああ、兄さんを待ってる。今日のライブに出てただろ?」
碧斗「は?今日のライブに出てた?」
レン「ああ、Skyineのギターボーカル、あれが俺の兄さんだ!」
こいつ何サラッとカミングアウトしてんだ?確かに言われてみれば髪色も同じだし、顔付もどことなくこいつと似ていた。それに今のことを聞いてこいつがバンドをやろうとしている訳が大体わかった。
碧斗「そうか、そういう事か…」
レン「は?」
碧斗「何でもない。明日は手加減しないからな」
レン「その言葉、そっくりそのまま返してやる」
碧斗「・・・ふん、面白いやつだ」
俺はそう呟くとSPACEを出た。そして翌日の放課後、俺達は学校の家庭科室にいた。家庭科室の中は俺とレンの勝負の審査員を務めるクラスメイトと何処から聞きつけたのかその勝負を見に来た他のクラスの連中で埋まっていた。今思うとよく先生が許可したな…
レン「それじゃあ始めるぞ」
碧斗「ああ」
俺の返事を合図に勝負が始まった。俺ジャガイモを賽の目切りにし、玉葱を千切り、人参とビーツを銀杏切り、ニンニクをみじん切り、キャベツと牛の細切れ肉を一口大の大きさに切った。鍋にオリーブオイルとニンニクを入れて火にかけ、ニンニクの香りが漂ってきたところで牛肉と赤ワインを入れて炒め、色が変わったら今度は他の野菜と塩と胡椒を加えて少し炒め、ブイヨンスープ、トマトの水煮缶、ジャガイモ、月桂樹の葉、タイム、ビネガーを少し入れて煮詰めた。しばらくすると灰汁が出てきてそれを取り除きながら煮詰め、ジャガイモに火が通ったことを確認したら火を止めて皿によそうと上にサワークリームと刻みパセリを乗せてボルシチが完成した。俺は皿を出すとクラスの連中はひとくち口に入れるとそれを皮切りに一気に食べ進めてあっという間に皿が空になった。
「凄く美味しかった!」
「ああ、味も良かったけど香りもメッチャ良かった!」
「さすが日本一料理が上手い中学生!」
全員が美味いと口にして外野の連中も食わせろと騒ぎ立てていた。さらには・・・
レン「超美味い!碧斗、おかわり!」
碧斗「何でお前まで食ってるんだよ・・・しかもおかわりまで所望しやがって…」
レン「待て待て、俺のももうすぐ完成するから・・・お、できたみたいだ」
レンはそう言うと皿に自分の品を盛った。レンが作った品それは・・・」
碧斗「肉じゃが?」
レン「ああ、母さんから作り方を教えてもらった。さあ食ってくれ」
クラスの連中はレンに差し出された料理を口にするとそれぞれ感想を口にした。
「なんていうか・・・普通?」
「美味いことには美味いけど・・・さっきのボルシチと比べるとなー…」
「なんかいつも家で食べてる味がする…」
正直言ってその反応は微妙だった。これじゃあ結果は丸見えだな・・・けど俺はちょっとこいつの作った料理に興味があった。クラスの奴らが普段食べてる肉じゃがってどんなふうなんだ?俺は気になって少し食わせてもらうことにした。
碧斗「レン、俺も少しもらうぞ」
レン「え?ああ、いいぞ。俺もさっきボルシチ食わせてもらったからな」
そう言うとレンは俺に皿を差し出してきた。そういえば肉じゃがを食うのは何時ぶりだったか。まだ俺が小さくて料理が出来なかった頃、母さんが作ってくれたっけ・・・俺はその時の事に思い馳せながら肉じゃがを咀嚼した。
碧斗「あむ・・・!」
俺は衝撃を受けた。この味は・・・すき焼きのたれを使ったのか…けどこの味、間違いない。この味は母さんと同じ味・・・料理には作った人の心が現れるというが、この肉じゃがからは何というか・・・とても優しい味がした…
レン「じゃあそろそろ結果発表と行くか。全員美味かった方の皿を指さしてくれ」
俺は感傷に浸っているといつの間にか勝負の結果が出されようとしていた。そしてレンに言われた通り指をさしたのは・・・俺のボルシチだった。
レン「はぁ~・・・当然といえば当然か。まあ仕方ない、約束は約束だ、今までしつこくして悪かったな。俺はもうお前を勧誘しな「ちょっと待て」へ?」
俺はその結果に待ったをかけた。そして・・・
碧斗「俺は、こっちの方が美味かった」
レンの肉じゃがを指さした。正直言って自分でも何をしてるのかわからなかった。対戦相手の料理を自分の料理より上手いと言う、それは自分の負けを認めるということだ。案の定俺の行動に家庭科室内にいる全員が驚きの表情になっていた。
「海原君何言ってるの!?」
「そうだぞ!なんで態々負けを認めるようなことをするんだよ!?」
碧斗「別に・・・ただ料理に関しては噓をつきたくない。ただそれだけだ…」
レン「碧斗・・・いいのか?全員お前の料理の方が美味かったって言っているんだぞ?」
碧斗「別に構わない。俺がお前の肉じゃがの方が美味いと思った。それだけの話だ」
レン「じゃあ、俺とバンドを・・・」
碧斗「ああ、お前のバンドのドラム・・・俺が引き受けた!」
レン「・・・!ああ!これからよろしくな碧斗!」
碧斗「こちらこそよろしく頼む、レン」
レン「よし!この調子で残りのメンバーを見つけるぞ!碧斗、お前も手伝え!」
はぁ~、分かってはいたがやっぱり他にメンバーいなかったのか・・・それにやっぱ俺も手伝う羽目になるのか…しょうがない・・・
碧斗「わかった、とことん付き合ってやる」
こうして・・・俺とレンはコンビを組み、バンドを始めた。そしてこの瞬間、Brave Binaeが産声を上げた。この出来事の後、俺はクラスメイトとも上手くなじめるようになり、周りともしっかりと話せるようになった。
碧斗「なあ、ちょっといいか?」
「え?海原君!?ど、どうかしたの?」
碧斗「その・・・前は悪かったな。無視して睨みつけたりして」
「あ、そのこと・・・別にいわよ・・・私もその・・・偉そうな態度とちゃったし…」
碧斗「そうか・・・あ、そういえば俺がコンクールで優勝した時に作った料理食いたいって言ってたよな?よければ今度作るか?」
「え?いいの!?」
碧斗「ああ、別に俺の作った料理を食べたいって言ってくれてるんだ。悪い気はしない。寧ろ少し嬉しい」
「え、なになに?碧斗君が料理作ってくれるの!?私にも作って!」
「ちょっと抜け駆けなんてずるいわよ!ねえ海原君、今度私に料理を教えてほしいな~?」
しかしその代わりにレンにはしつこくされなくなったが、女子がよく迫ってくるようになった。そして・・・
「なんなんだよ海原!お前ばっかモテやがってー!」
「ほんと羨ましいぞ貴様!一発殴らせろー!」
「イケメンな上に超料理上手とか天は不平等だー!この怒り、てめえで晴らしてやらー!」
男子はド直球に俺に怒りや妬みをぶつけてくるようになった。こういう時は・・・
碧斗「・・・」―――ダッ!―――
「あ!逃げやがったぞ!追えー!」
「待てコラー!」
―――ガラッ―――
レン「お、碧斗おはよ「レン逃げるぞ!」はあ?て、なんじゃごりゃー!」
「あ!赤城!お前も海原と同罪じゃー!」
「貴様も俺等の怒りを受けやがれー!」
「イケメンで家が大金持ちで成績優秀とか世の中なめとんのかー!」
レン「なんか知らねえけど俺まで巻き込まれてるー!?」
こうして、俺の新しい毎日が始まった―――――――――――――――
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碧斗「これが、俺とレンがバンドを始めた時の出来事だ」
香澄「そんなことがあったんだ・・・」
沙綾「ふーん・・・」
碧斗「いやふーんって・・・聞いといてなんだよその反応?」
沙綾「別にー?ただ碧斗はモテモテだったんだねー?」
なんか妙に嫌味っぽい言い方だな?それになんかちょっと怒ってないか?
香澄「それで、他の3人はどんなふうにメンバーになったの?」
碧斗「は?もしかしてまだ話さないとだめなのか?」
沙綾「碧斗、諦めた方がいいよ。香澄しつこく聞いてくるから。それに私も気になるし」
碧斗「絶対そっちが1番の理由だろ?分かった話すよ。というよりもさっきの話にも少し出てたしな」
香・沙「「え?」」
碧斗「俺とレンのクラスにいた不登校児、それがBrave Binae3人目のメンバーだ」
そう出会いは突然だった。まさかあんなところで会うことになるなんて俺も思いもしなかった。神の耳を持つ、天才ゲーマーと―――――