バンドリ!~オプション付き5人と少女達の物語~   作:akiresu

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ヒーローは5色

 翌日、昼休みに俺達は学校の中庭で前と同じように戸山達と昼食を一緒に取ることになっていたのだが・・・

 

 香澄「お待たせー・・・あれ?レン君は?」

 

 碧斗「誘ったが断わられた。今は1人になりたいらしい」

 

 香澄「そっか…」

 

 沙綾「やっぱり昨日ことで香澄と顔を会わせずらいんじゃない?教室でもレンは顔を合わせようともしなかったし…」

 

 香澄「・・・・・」

 

 やはり昨日のことがあってか戸山はレンとすれ違い状態にあるみたいだ。しかしその事を知らない内6人が頭に疑問符を浮かべていた。

 

 利久「え?香澄ちゃん昨日レンと何かあったんですか?」

 

 りみ「そういえば今日2人とも会話してなかったね?」

 

 明日香「2人とも顔を合わせればなんか思いつめた表情して目をそらしてたし」

 

 香澄「それは・・・」

 

 戸山は昨日のことを何も知らない6人に話そうか言い淀み、暫くの間沈黙が続いた。しかしその沈黙は次に飛んできた一言でぶち壊された。

 

 たえ「もしかして香澄・・・レンに告白したの?」

 

 『え!?』

 

 有咲「お前本当かよ!?」

 

 りみ「か、か、か、香澄ちゃんレン君に告白したの!?」

 

 利久「え!?そうなんですか!?」

 

 明日香「えー・・・全く、レンはまた女の子を落としたの…」

 

 来人「あいつ、マジで1回修羅場に会えばいいのに…」

 

 花園が爆弾発言をしたことによってうち3人は驚き、1人はまたかと呆れ、最後の1人は恨み言を吐いていた。

 

 香澄「ち、違うよおたえ!してないからー!」  

 

 それに対して戸山は顔を真っ赤にしながら必死に否定した。けど戸山のこの反応・・・もしかして若干脈ありか?だとしたら難儀だな…て、そうじゃなかった。とりあえず戸山は昨日レンのことを説得しようとして逆に怒らせてしまったことを6人にはなし誤解を解いた。

 

 利久「成程、つまり・・・」

 

 明日香「2人揃って罪悪感で顔を合わせずらいってことだね」

 

 香澄「う、うん・・・」

 

 来人「まったくアイツらしいっちゃアイツらしいけどな・・・そういえば何で急にまたこのメンバーで飯食うことになったんだ?」

 

 碧斗「ああ・・・実はな――――――」

 

 俺は昨日の出来事の一部始終を来人に話した。すると来るとは苦虫を噛み潰したような顔をしていた。

 

 来人「なに人に無断で約束してんだよ・・・しかも俺の過去を話せって・・・」

 

 碧斗「正直悪かったと思っている。だが後悔はしていない」

 

 来人「このヤロウ・・・」

 

 碧斗「まあ話せる範囲で構わない、お前の昔の事とか俺達とバンドを組むことになった経緯を戸山達に教えてやってほしい」

 

 来人は俺のことを睨みつけてくるが、観念したのか深くため息をついて話す決心をした。すると昔の来人のことを知っている花園が何かを思い出すかのように口を開いた。

 

 たえ「そういえば・・・幼稚園に通ってた時のライ君って今と違ったよね?なんていうか・・・今よりもずっと大人しかったし、女の子に話し掛けに行ったりしてなかった」

 

 沙綾「え!?それ本当なの!?あの来人が?」

 

 りみ「え!?来人君小さい時はナンパしてなかったの!?」

 

 しかしその言葉を聞いた瞬間、沙綾と牛込が驚きの声を上げて来人に詰め寄った・・・というか牛込の中でもやっぱり来人=ナンパのイメージがあったのか… 

 

 来人「おい待て、2人ともちょっと失礼じゃないか?わかった、わかったから!そんな詰め寄るな!」

 

 碧斗「2人とも落ち着け。とりあえずお前の話を聞かせてやってくれ」

 

 来人「はぁ・・・それで?どこから話せばいいんだ?」

 

 碧斗「全部だ」

 

 来人「わかった・・・」

 

 そう言うと来人は一息つき、自分の過去を話し始めた。

 

 来人「俺が生まれたのは横浜の産婦人科だった。3203gの元気な赤ん坊で「誰が生い立ちから話せって言った!あと、しれっと噓をつくな嘘を!」

 

 俺は来人の話の出だしに突っ込みを入れた。しかしここで俺はハッとした。突っ込みを入れるのに熱が入り余計なことを口にしてしまった…

 

 香澄「うそ?」

 

 俺の言葉を聞き逃さなかった戸山は首を傾げながらさっき俺が口にした事の意味を聞いてきて、来人と利久と明日香は呆れた目で俺のことを見てきた。  

 

 沙綾「どういうこと?」

 

 たえ「ひょっとしてライ君・・・宇宙人なの!?」

 

 来人「そうそう、火星探索をした宇宙飛行士についてた地球外生命体がお腹の中の赤ちゃんに自分の遺伝子を・・・て、違うから!誰が筋肉バカ脱獄犯ライダーだ!」  

 

 たえ「それじゃあ野生児だったの?」

 

 来人「そうそう、故郷の村を滅ぼされて命からがら逃がされた俺は野生のトラに・・・て、俺は某激獣タイガー拳の使い手でもないから!」  

 

 有咲「いいからとっとと話を進めろー!こっちは漫才見せられに来てるわけじゃねーんだぞ!?」 

 

 来人「すいません・・・」

 

 来人は市ヶ谷に一括され茶番漫才を終わらせた。やれやれ・・・ようやく話が始まる…

 

 来人「それじゃあ今度こそちゃんと話すぞ」

 

 そう言うと来人は語り始めた。本来人に聞かせることのない・・・世界の残酷さを知った幼き日のことを。その時に感じた・・・血の繋がりの無い家族の愛を…自身を変えた人生最大の悲しい別れと、そこから立ち直らせてくれた出会いを…

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 自分の最も古い記憶は何かと聞かれたら大抵の人は何と答えるだろうか?俺の最も古い記憶は日本ではない別のある国のある街だった。そこは雨期に入ったためか雨が一頻り降り続け、そこの薄暗い裏路地では雨音に交じりながら悲痛な赤子の鳴き声が響き、ごみ置き場の上にはまだ乳離れもできていない1人の小さな金色の髪の赤子が置かれていた。その赤子こそ他でもない幼き頃のこの俺、そう俺は捨て子だった。当時の俺は喋ることはもちろん、身動きすらとることができず、辺りを見渡せば変わることのない曇り空と建物の壁、そんな状況下で俺はただ泣くことしかできなかった。

 

 来人「オギャー!オギャー!オギャー!」

 

 次第に雨の影響で体が冷えだし、早く温めなければ赤子ならばすぐに死んでしまう。それは生物特有の生存本能から助けを呼んでいたのか、はたまた1人でいる事に耐え難い寂しさを感じていたからなのか、何方にせよ俺は誰かに来てもらう為に泣き続けていた。するとどこに隠れていたのか野良猫たちが俺の周りに集まり、俺を温めるかのように寄り添ってきた。これにより低体温症で死ぬことは免れた。しかし、体が温められたからと言って長く放置されていたことから来る飢餓状態の問題がまだ残っていた。数日間何も口にしていない乳幼児の体は栄養失調に陥り、このままでは餓死してしまう。それを逃れようとした俺は再び大きな鳴き声を上げた。

 

 来人「オギャー!オギャー!オギャー!」

 

 しかし俺がいるのは滅多に人が通らない裏路地、さらには折角上げた鳴き声も雨音にかき消されて誰にも聞こえず、まさに状況は絶望的だった。それでも俺は泣き続けた。それが赤子の本能だったからなのかも知れないが、それでも最後まで生きる意志を諦めなかった。けれども幼い赤子にそこまでの体力があるはずもなく、次第に声も弱くなっていき、ついには泣くのをやめてしまい、小さな1つの命が消えようとしていた・・・その時だった。

 

 

 

 ―――カツカツカツカツ―――

 

 

 

 突然足音が聞こえてきてその音はどんどん近づいてきていた。その足音は俺の元まで来ると止まり、薄れゆく意識の中で俺の目に映ったのは1人の男だった。俺はその人に抱きかかえられとそのまま意識を手放してしまい、次に目を覚ました時にはとても豪華な部屋で揺り籠の中で寝かされていた。すると部屋の扉が開き、中に金髪の若い女の人が入ってきてその人は俺を見るや駆け寄って抱きしめてくれた。

 

 「よかった・・・もう大丈夫だから…」

 

 その時俺は生れて初めて人の温もりを感じた。それ以降のことは記憶には残っていないが・・・俺は黄島 来人という名前をもらい、拾ってくれた命の恩人である黄島 岳斗とその妻である黄島 エレンの息子となって、2人に本当の息子として愛情をもって大事に育てられた。その1年後には妹もできて、俺は妹と共に日本で幼少期を過ごした。なんでも父さんはとても名の知れた芸術家で普段は日本に住んでいるのだが、今は海外からの依頼をこなしたり作品の幅を広げる為に色んな国を回っていて、俺を拾ったのもその最中だったらしい。けれども赤子2人を連れて海外を転々とするのは流石に無理があった為、1度日本に帰国して俺と妹がある程度大きくなるまで旅を控えることにしたそうだ。ちなみにたえちゃんと出会ったのもこの頃だ。けれども妹が幼稚園を卒園すると俺達の将来の視野を広げさせる意も込めて旅を再開させて、4人で色んな国を回った。アメリカにフランス、ドイツ、インド、中国、ロシア、アフリカに南米、チベット、数ヶ月単位で色んな国に行った。けど、その中には荒れた国もたくさんあった。テロに犯罪が横行し、住む場所も宛ても無くさまよい餓えや貧困に苦しむ人々に溢れ、何より酷く心を痛めたのは・・・それらに苦しめられる自分と歳の変わらない子供達だった…父さんはそれらを世界に伝え広めたり、そういった人々への支援や子供達の通う学校の設立を目的として芸術活動をしているそうだ。けど、この時俺の中で1つの疑問が生まれた。俺もそういった子の1人の筈なのになぜ俺だけがあの時拾われて2人の子供として育てられることになったのか?気になった俺は2人に聞いてみた。すると2人は顔を曇らせ、俺の生まれ故郷である国のことを話してくれた。

 

 「お前の生まれた国はな・・・とても平和でそれこそ貧しい人なんていないと言われるほどだった…けれどもお前はその国で生れてすぐ捨てられた。それも誰にも見つけて貰えないような場所に…」 

 

 それを聴いて俺はすぐに察した。そう、俺の生みの親は別にやむを得ない事情があった訳じゃなくただ単純に邪魔だったから、いらなかったから捨てたということを…それを知った時、俺の中で湧き上がった感情は怒りでも悲しみでもなく、恐怖だった…自分の子の命を簡単に蔑ろにする人の血を引いているのか、俺も何時かはそんな風になってしまうのではないか、そして・・・また俺はいらない存在になってこの2人からも捨てられてしまうのではないか…この2人に限ってそんな事は無いということは俺が1番よく理解している。けれどもその時はそんな事を考える余裕がないほどに俺の思考は恐怖で満たされてしまっていた。その時だった、不意に両親が俺のことを抱きしめてくれた。そして俺に優しく、それでいて強く言い聞かせてきた。

 

 岳斗「来人、大丈夫だ。たとえ血の繋がりが無くても、お前は私達の大切な息子だ。それに私はお前を見つけた時に心に決めたんだ。今にも消えてしまいそうな程弱っていたお前をこれからは私達が守っていく、決して離したりしないと」

 

 エレン「あなたを産んだ人達は自分でお腹を痛めて産んだ子供を自分勝手な理由で捨てるなんて親として・・・いえ、人として最低なことをした。けれどもそれはその人達がそういう人だったってだけであなたまでそうなる訳じゃない。だから私達はあなたに名付けたの、あなたがlight()あふれる明るい未来を生きる人になってほしい、誰かの未来のlight(明かり)になれるような人なってほしいって…」

 

 岳斗「それにな来人、確かに世界中には大人の勝手な都合でお前より辛い思いをしている子供が山ほどいる。お金も住む場所も家族もない、学校にも通えずに小さい時から辛い仕事をしている子が。けどそういう子供達を1人でも助けて、この現実を世界に広めようとし始めたのは・・・お前が家に来てからなんだ…」

 

 来人「僕が?」

 

 エレン「そうよ、お父さんはあなたに誰かを照らせるようになってほしいって名付けた手前、自分達がお手本にならなきゃいけないからって色んな国への支援を始めたの。言い換えれば来人、あなたが私たちの息子になってくれたから今もこうして沢山の人に生きる希望を与えられているの。あなたはもう誰かの未来を明るい照らせているのよ」

 

 岳斗「そうだ、だから来人・・・この世界に生まれて、私達の息子になってくれて―――――

 

 

「「ありがとう」」

 

 

 ありがとう、その言葉を言われた瞬間俺の心のうちは嬉しさで満たされた。嬉しくて嬉しくて・・・涙を流して、大声で泣いた。するとそれを聴きつけたのか突然部屋の扉が開き、そこから母さんと同じ奇麗な金髪をした俺の妹、黄島 未羽が入ってきた。未羽は泣いている俺を抱きしめる両親を見るや駆け寄ってきた。

 

 未羽「お兄さまどうして泣いてるの?どこか痛いの?」

 

 来人「ううん・・・大丈夫だよ未羽。なんでもない…」

 

 未羽「何でもなくないでしょ!何でもないのに泣いてるなんておかしい!私もお兄さまを慰めるの!」

 

 そう言うと未羽は両親と同様に俺を抱きしめてくれた。ありがとう未羽・・・もう俺はこんなことで悩まない!俺は黄島 岳斗とエレンの息子で、未羽のお兄ちゃんだって胸を張って生きていく!そして、3人に幸せを貰った分、沢山の人を幸せにできるようになるんだ!俺はその時、幼少期から抱いていた父への憧れは大きくなり、俺は決心した。俺は父さんの様に芸術の力で世界中の人の心を照らす存在になると…それから俺は父さんから主に音楽について色々と教わり、色んな楽器の弾き方や音楽に関する知識を学んだ。そして俺は父さんからあることを教わった。

 

 岳斗「なあ来人、芸術家が良い作品を生み出す切っ掛けは何だと思う?」

 

 来人「うーん・・・あ、楽しいって思った時?」

 

 岳斗「ははっ、確かにそれもあるかもな。けど私は1番の切っ掛けはやっぱりこれなんじゃないかと思うんだ」

 

 来人「それってなあに?」

 

 岳斗「出会いさ…人の心を変えてしまうような大きな出会い・・・それは人に留まらず様々な物事との出会いが人の運命を大きく変える。私はそう思うんだ」

 

 来人「父さんはそんな出会いがあったの?」

 

 岳斗「ああ・・・山ほどあった。その中でも特に私を変えてくれた大きな出会いが3つあった。1つ目は師匠との出会い。幼き日の私に芸術の素晴らしさを教えてくれて、私に芸術家としての道を示してくれた。2つ目はエレンとの出会い。旅先で偶然出会って、作品作りに思い悩んでいた時にいつも優しく励ましてくれて・・・それ以来私の心の支えとなってくれた。そして3つ目は・・・いや、これは言わなくてもいいか」

 

 来人「え~!?なんでなんで?」

  

 岳斗「だって前にもう話しているから言う必要ないだろ?」

 

 来人「え?」

 

 今思い返すと、その時の父さんの顔はどこか照れ臭そうだった。そして父さんは俺の問いをはぐらかすと続けて笑顔で言ってきた。

 

 岳斗「まあ、私が何を言いたいかというと、いずれお前にもそういう出会いが訪れる。その時はその人を大切にするんだぞ?」

 

 来人「うん!」

 

 それから1年後、俺は父さんの言うような俺自身を変える出会いをすることとなった。けどそれが俺の人生で最も辛くて悲しい、最大のトラウマになる出来事だとは・・・その時は思いもしなかった…

 それは次に俺たち家族が訪れた国にある辺境の村での出来事だった。その国は隣国と戦争状態にあり、何度も町が襲撃を受けて破壊されていた。なんでも今この国に父さんの古い知り合いの戦場カメラマンの人が来ていて、この国の情勢を伝える手伝いをするために今回はこの国に訪れ、俺達が向かった村でその人と落ち合うことになっていた。そこは国のはずれで戦争の被害は全くと言っていいほどなく、その為襲撃を受けた町に住んでいた人の一部が移り住んでいた。俺はそんな村の散策して1人で歩いていた時のことだった。村にはタイ米の稲田や畑が辺り一面に広がり、俺は畦道を歩いていると突然声を掛けられた。

 

 ?「ねえ、あなたこの辺じゃ見ないけどどこから来たの?」

 

 来人「え?」

 

 俺は声のする方を向くとそこには麦わら帽子をかぶり、日焼けした肌をに黒い髪の俺と同い年くらいの女の子がいた。その子は俺の元まで駆け寄ってくるとまじまじと見つめてきた。

 

 ?「あ、髪も金色だし目も青色ってことは外国の人だよね?もしかして最近村に来たっていう芸術家って君の家族?」

 

 来人「う、うん、そうだけど・・・君は?」

 

 シャラ「私はシャラ!」

 

 来人「僕は来人」

 

 シャラと名乗った少女に俺も名を名乗った。話しを聞くと彼女も難民の1人で故郷の街が襲撃に会った際に両親を亡くし、祖父と共にこの村へと逃れてきたのだが村に来てすぐに祖父を亡くしてしまい、それからは水運びなどの農作業の手伝いを仕事にしながら1人で生活しているそうだ…何でもこの村にいる同年齢の子供は彼女だけらしく、彼女が少し人懐っこいのもあって俺とシャラは会ってすぐに仲良くなった。それからというもの俺はシャラと一緒に村の人達の農作業を手伝ったり、森の中を探検して遊んだり、一緒に絵をかいたりして村にいる間の殆どの時間を彼女と過ごしていた。そんな日々を過ごしている中で、俺は明るく懸命に頑張るシャラの姿に次第に惹かれていき、何時しか俺の中には彼女に対する特別な思いが芽生えていた。けど、そんな日々は突如として終わりを告げる事となった…村にきてしばらくたったある日のことだった・・・

 

 岳斗「来人、急ですまないが明日この村を出ることになった」

 

 来人「え!?」

 

 突然の父さんの宣言に俺は驚きを隠せなず動揺してしまった。父さんから話を聞くと本来の目的地である戦争被害を受けた町から安全の確認が取れたためすぐにそこへ向かうことにしたそうだ。けど、それはつまりシャラとお別れをしなくてはならないということでもあった。そんなのは嫌だ!そう思ってからの俺の行動は早かった。

 

 来人「シャラー!」

 

 シャラ「あ!どうしたのライト、そんなに急いで?」

 

 俺はいつものようにシャラのもとまで向かうと早速本題を切り出した。

 

 来人「シャラ、今日はどうしても君に伝えなくちゃいけないことがあるんだ」

 

 シャラ「え?なになに?」

 

 来人「実は僕・・・明日村を出ることになったんだ…」

 

 シャラ「え・・・そう、なんだ…じゃあ今日でライトとはお別れなんだね…」

 

 来人「いや、そうはならないよ」

 

 シャラ「え?」 

 

 来人「シャラ、僕と一緒に行こう!僕と一緒に世界を回ろう!」 

 

 シャラと離れたくなかった俺は彼女も旅に誘った。父さんにお願いすればシャラが旅に同行することをきっと許してくれるはず、そう思って俺は彼女に手を差し伸べた。しかし・・・

 

 シャラ「ごめんなさい!私はあなたと一緒には行けない!」 

 

 来人「え・・・」

 

 その手は拒まれた。思ってもみなかった返答に俺は動揺しながら理由を聞いた。 

 

 来人「どうして?」

 

 シャラ「ライトの誘いはとっても嬉しい。私もあなたと一緒に行きたい」

 

 来人「なら「けど!」ッ!」

 

 シャラ「それ以上に私はこの村の人達と一緒にいたい!パパとママとお爺ちゃんがいなくなって、1人になった私を温かく受け入れて優しくしてくれた村の人達は私にとっての家族なの。だから私は家族を捨てるなんてことできない」

 

 家族、その言葉を聞かされたら引き下がるしかないじゃないか・・・

 

 来人「そっか・・・そうだよね。ごめんね、無理言っちゃって…」

 

 シャラ「ううん、気にしないで。でも・・・ライトとはこれでお別れなんだよね…」

 

 そういうとシャラは落ち込んだ表情になり、顔を俯かせてしまった。確かに、せっかく仲良くなったのにこのままお別れなんて寂しい…

 

 シャラ「あ!そうだ!ねえライト、明日の朝村を出る前にまたここに来てもらえる?」

 

 来人「う、うん」

 

 シャラ「絶対だからね?じゃあまた明日」

 

 そういうと彼女は走り去っていった。そして翌日、俺は約束通り待ち合わせの場所へと向かった。

 

 シャラ「あ、ライトー!」

 

 来人「シャラ!」

 

 シャラ「ごめんね、忙しいのに呼び出しちゃって」

 

 来人「構わないよ。それで、どうして僕を呼び出したの?」 

 

 シャラ「うん、ライトにこれを渡そうと思って」

 

 そういうと彼女は手を差してきて、その中にはミサンガが握られていた。

 

 来人「これを僕に?」

 

 シャラ「うん、いつでも私を思い出せるようにって」

 

 来人「ありがとうシャラ!僕も何か渡したいんだけど・・・」

 

 シャラ「別にいいよ、そこまで気を使わなくても」

 

 来人「そういう訳にはいかないよ。うーん・・・あ、そうだ!これ僕の気に入りのハーモニカ!」

 

 俺は彼女に父さんからプレゼントしてもらったいつも持ち歩いているハーモニカを渡した。

 

 シャラ「いいの?これとっても大事なものなんでしょ?」」

 

 来人「うん、でもそれはあげるんじゃなくて預かっててもらうんだ!いつか僕は音楽家になってまたこの村に来るから、その時まで預かっててほしいんだ」

 

 シャラ「うん!わかった。それじゃあライトも大きくなったら絶対に音楽家になって村に演奏を聴かせに来てね?」 

 

 来人「うん、約束する!」

 

 そして僕はシャラと別れると両親と妹、そして父さんの友人の戦場カメラマンの人と一緒に町に作物を売りに行く時に使うロバが引く大きな荷車に乗って村を後にした。俺は荷車に揺られながら名残惜しく徐々に離れていく村のある場所を見つめていた。さよなら・・・僕の初恋の人…俺が村での思い出に思い馳せていたその時・・・それは突然として巻き起こった…

 

 

 

 ―――ドッガーン!―――

 

 

 

 突然大きな爆発音が鳴り響き、その音に反応したロバは動きを止めて荷車の動きも止まった。

 

 岳斗「ッ!なんだ今の音は?」

 

 エレン「いったい何があったの?」

 

 未羽「ねえ!あれ!」

 

 俺達は突然の出来事に困惑しているとある場所を指さし未羽が声を上げた。そして未羽が指をさす方を見るとそこには・・・村のあった場所から黒い煙が上がっていた。それを見た瞬間俺は咄嗟に馬車を飛び降りて村に向かって走りだした。シャラ・・・無事でいてくれ!その一心で俺は止める両親の声も聞かずに走り続けた。そして村に着くと、そこに広がっていたのは地獄絵図だった。家々が燃えて物が焦げた臭いが漂い、耳を劈くような銃声と逃げ惑う村の人達の悲鳴が響き渡り、地面には何人もの動かなくなった村の人達が倒れていた。その光景に恐怖し一瞬固まったが無我夢中だった俺は瞬時にそれを振り払いすぐに目当ての人物の名を叫んだ。

 

 来人「シャラー!」

 

 すると俺の声が届いたのか人混みの中から彼女がこちらに駆け寄ってきた。

 

 シャラ「ライト!?どうしてここに!?村を出たんじゃなかったの!?」

 

 来人「うん、けどいきなり村の方から爆発音が聴こえて煙が上がっているのが見えたから・・・」

 

 シャラ「それで戻ってきたの!?何でそんな危ないことしたの!」

 

 来人「そ、それは・・・そんな事よりもずっとここにいたら僕達も危ない。早く逃げよう!」

 

 シャラ「ッ!う、うん・・・」  

 

 俺はシャラの手を掴むと俺が来た道を走った。しかしその先には銃を持った民兵が何人もいて行く手を塞がれてしまっていた。まずい、アイツらに見つかったら2人とも命は無い…万事休すか・・・そう思ったその時だった。

 

 「来人君!こっちだ!」

 

 突然茂みの中から俺を呼ぶ声が聴こえ、そこを見るとさっき一緒に馬車に乗っていた父さんの友人の戦場カメラマンの人がいた。俺達は言われるがまますぐに茂みに入り込むとその人に案内され、身を潜めながらその場を逃げ出した。そして、あと少しで村出られると思ったその時だった・・・

 

 「おい!逃げだした奴がここにもいたぞ!」

 

 最悪なことに民兵に見つかってしまった。もし捕まれば確実に殺される!俺達は全力で走って逃げた。次の瞬間・・・

 

 

 

 ―――バンッ!―――

 

 

 

 1発の銃声が鳴り響き、それと同時に俺が掴んでいた手がするりと抜け落ちた…俺は恐る恐る後ろを振り返ると、そこには背中を真っ赤に染めて地べたに俯せで倒れるシャラの姿が映った…

 

 来人「う、嘘・・・シャラ・・・シャラ!」

 

 俺はすぐさま彼女に駆け寄ろうとしたが腕をつかまれて引き留められた。

 

 「ダメだ!早く逃げないと君まで撃たれる!」 

    

 来人「放して!シャラ!シャラ!!」

 

 俺は掴まれた腕を振り解こうとしたが子供の力では敵わず、俺は抱きかかえられてその場から逃がされた。その時でも俺はずっと後ろを見ながらどんどん遠くなっていく最愛の人の名を叫び続けた。

 

 来人「嫌だ!シャラ!シャーラー!」 

 

 しかし、悔しくもその必死の呼びかけにも彼女は反応することなく、俺は大声で泣き叫んだ。そして、気づいた時には手を引かれながら両親と妹の元まで連れ戻されていた。

 

 未羽「あ、お兄様!無事でよかった」

 

 エレン「来人!なんであんな危ないことしたの!?ケガじゃ済まないところだったのよ!」

 

 俺の姿を見るなり未羽は安堵し、母さんは涙目で怒ってきて2人ともとても心配していた事がわかった。父さんはとても厳しい表情を浮かべながら無言で俺のことを見つめていた。 

 

 岳斗「来人・・・」

 

 来人「父さん・・・僕・・・助けられなかった…シャラを・・・」 

 

 岳斗「ッ!・・・そうか・・・」

 

 父さんはそれだけ言うとあとは何も言わなかった。その後俺達は再び馬車に乗ると目的の街へと向かい、そこでの活動を終えると旅を終わらせ、俺は小学校5年生の秋に日本に戻ってきた。きっと父さんもかなり責任を感じていたんだ・・・俺を危険な目に合わせ、心に深い傷とトラウマを与えてしまったことを…その傷を少しでも癒そうとして気を使ってくれたんだ。

 

 来人「初めましての人は初めまして、久しぶりの人はお久しぶり。黄島 来人です。少し前までは父の仕事の関係で海外を転々としてました。1年の時までこの学校にいたから何人か知っている人がいると思いますが改めてよろしくお願いします」

 

 日本に戻ってきた俺は以前通っていた小学校に再び通い始めて日本での平和な暮らしを送っていた。けれども俺の心の傷は癒える事は無く、今でもあの時の光景を夢で見る…

 

 ―――シャラ!!嫌だ!シャラ!シャラー!―――

 

 目の前には血を流して倒れる彼女の姿。俺は手を伸ばすが彼女はどんどん遠ざかっていくばかり…こんな夢を毎夜みては目を覚ます。そんな毎日を送っていた俺の脳裏に浮かんだのはあの言葉だった・・・

 

 岳斗『人の心を変えてしまうような大きな出会い・・・それは人に留まらず様々な物事との出会いが人の運命を大きく変える』

 

 そうだ・・・彼女を忘れてしまうぐらい何か夢中になれる存在を見つけられれば、こんな辛い思いをしなくても済むかもしれない…そう思ってからの俺の行動は早かった。音楽以外にも様々なことに挑戦した。父さんに教わりながら絵を描き、サッカー、野球、水泳にテニス、色んなスポーツをやり始めて全力で勤しんだ。けれど俺はそれだけに留まらず人にも出会いを求めた。

 

 来人「ヤッホー!お前たち今日も元気かー!」

 

 「お、おう・・・なんかお前バカにテンション高いな・・・」

 

 来人「そうか?俺はいつもこんな感じだぜ?」

    

 「お、俺?お前一人称僕じゃなかったか?」

 

 来人「そんな細かい事別にいいじゃないか。楽しければなんだって・・・お!君もしかして髪型変えた?すっごく似合ってるよー!」

 

 俺は周りに明るくフレンドリーに振舞い自分を捨てて・・・()()になった。沢山の人を幸せにすると誓ったのに、1番幸せにしてあげたかった最愛の人を幸せにすることができなかった僕という存在はいらないから…だから俺は過去の自分の事を捨て去るために常に笑顔を振りまき、さらに熱い恋を求めて女の子に重点的に話しかけまくった。そして時がたって中学生になるとすっかり周りには俺はチャラ男のイメージが浸透して、俺の行いはさらにエスカレートした。街に出て可愛い女の子を見れば話し掛け、部活動では色んな運動部に助っ人に入っては女子部員やマネージャーの娘に話しかけまくった。さらに俺は放課後、夕方になると駅前にある広場やステージを使わせてもらってそこで路上ライブをさせてもらい、サックスにバイオリン、ギターを使いながらクラシックの他に女の子が好きそうな曲の演奏をしながら道行く女の子を口説いていた。そんな生活を続けて1年がたったある日のことだった。俺は出会った、心に傷を負った俺を変えてくれた最高の仲間と・・・

 

 来人「そこの可愛い君!俺の演奏聴きに来てよ!君の為ならどんな曲だって演奏してみせるよ!」

 

 「え・・・いや、結構です!」

 

 来人「うーん釣れないな~・・・お!今度は超絶美少女発見!」

 

 何時ものように放課後に路上ライブをやる為に駅前に向かっている最中、俺は美少女を見つけた。短めのピンク色の髪に白粉を塗ったかのような白い肌、服装はボーイッシュだがそんな事は気にならない程他の娘とはレベルが違う、もう神々しいほどにまでその娘は美しかった。絶対お近づきになってやるぜ!

 

 来人「ねえそこの君!」

 

 ?「え?あ、僕の事って・・・」

 

 おお、一人称が僕って、これが世に言う僕っ娘か!しかもこの娘、楽器ケース背負ってるな。ギターよりもケースが少し大きいってことはベースか。これはセッションしてもらえるかも!

 

 来人「ねえ、君が背負ってるそれってベースだよね?俺とセッションしない?」

 

 ?「いや、遠慮しておくよ」

 

 来人「え~、そんな釣れないこと言うなよ~!ねえ、少しだけでいいから!君の得意な曲でいいからさ~!」

 

 ?「はぁ~・・・じゃあストレートに言わせてもらうよ。嫌だね!僕は君みたいなチャラ男に割いてる時間は無いんだよ黄島 来人さん!」

 

 え?なんで俺の名前知っているんだ?もしかして・・・

 

 来人「君もしかして俺と同じ学校の生徒?学年とクラスは?」

 

 ?「ちょ・・・あ~!もう面倒くさい!僕はこれからバンドの練習に行かなきゃいけないんだ!」

 

 バンド?そういえば最近ガールズバンドがブームになり始めてて、学生間でもバンドを組んでライブハウスでライブをしたりしているらしい。つまりこの娘もそういったうちの1人ってことか・・・だったら!

 

 来人「なになに、バンド!?じゃあさじゃあさ俺も君のバンドのメンバーに合わせてよ!君みたいな可愛い女の子がいるバンドなら是非ともその演奏を聴かせてほしい!」

 

 俺はとびっきりの笑顔を浮かべてお願いした。これならこの娘も了承してくれる。そう思った次の瞬間・・・

 

 ?「はあ?今、ナンテイッタ?」

 

 なんかすごい怒気が溢れ出てきた!しかも殺気を感じる程に!ちょっとこの娘なんでこんなに怒ってんの!?

 

 来人「ちょ、ちょっと待ってくれ!女の子がそんな殺気なんか出したらせかっくの可愛さが台無しだよ?」

 

 ―――ブチッ―――

 

 なに!?今完全に何かがキレる音したよね!?俺がビビった次の瞬間、急に全身に衝撃を感じ気が付くと俺は地面に組み伏されていた。え?なに!?

 

 ?「もう1回言ってみなよ・・・」

 

 来人「放して!痛い痛い痛い!」

 

 押さえつけられた腕にさらに力が籠められた。腕に激痛が走り、俺は痛さのあまり悶絶した。やばいやばいやばい!これ本気で折る気だ!

 

 ?「違う違う、僕は悶絶しろじゃなくてもう1回言ってみてって言ったんだ。もしくは腕を折られる前に泣いて詫びろ、と捉えてもらっても構わないよ?」

 

 え?なにこの娘ドSなの!?俺もしかしなくてもメッチャやばい娘に話し掛けちゃった!?俺が恐怖と後悔の念に駆られていたその時、見覚えのある3人の男子がこっちに歩いてきた。

 

 レン「おーい明日香!」

 

 碧斗「待ち合わせの時間になっても来ないから探しに来てみれば・・・何やってるんだ?」

 

 利久「道端でプロレスごっこですか?せめてそうゆうのは公園の砂場でやりましょうよ」

 

 こいつらは確か学校の女子の中でも人気の男子の海原 碧斗、石美登 利久、そして赤城 レン。最近バンドを始めただとかでなにかとつるんでいることで有名な3人だ。なんだ?この娘はこいつ等と知り合いなのか?

 

 来人「赤城、海原、石美登・・・何でお前らがここに?この娘とどうゆう関係だ?」

 

 レン「え?えーとお前は確か・・・」

 

 来人「黄島 来人だ」

 

 レン「そうそう、来人だ。学校1のチャラ男で運動部の助っ人の!それでそのチャラ男の来人は何で道端で明日香とプロレスごっこしているんだ?」

 

 明日香「別に僕はそんなことしてるつもりはないよ…ちょっとこの人にナンパされて、後は言わなくてもわかるよね?」

 

 レン「あー・・・なるほど…」

 

 碧斗「まあ自業自得だが・・・ちょっと可哀そうだな…」

 

 利久「ドンマイです」

 

 いや、なんか知らないけど会って数秒で哀れまれた!?全然話が理解できない!

 

 来人「ちょっと待て!人を置いて会話を進めるな!」

 

 レン「あー・・・大変言いにくいんだが」

 

 碧斗「明日香は男だ」 

 

 へ、男?オトコ、おとこ・・・OTOKO・・・Man…

 

 来人「う、噓だろ!?男!?こんな可愛いのに!?」

 

 明日香「ねえ、マジで折っていい?」

 

 レン「残念なことにな・・・」

 

 来人「そ、そんな・・・う、ウゾダドンドコド~ン!」   

 

 そう言えば小耳にはさんだことがある。めっちゃ可愛い女の子みたいな見た目の男の娘が同学年にいるって。その名前が確か・・・そう、桃瀬 明日香!屈辱だ…美少女だと思って声を掛けたのがまさかの男だったなんて・・・まさに俺の人生最大の黒歴史が出来上がった瞬間だった。  

 

 来人「見た目がこんなにも可愛い美少女なのに男だなんて・・・」

 

 明日香「よし、折るだけじゃなくてもう2度とナンパなんかできないようにしてあげるよ」 

 

 あ、俺終わった。そう思ったその直後、俺をボコそうとする明日香を止める声が上がった。

 

 レン「まあまあ明日香、来人も悪気があった訳じゃないだろうから許してやってくれ」

 

 明日香「レンが言うなら・・・」 

 

 そう言うと明日香は俺を解放してくれた。いやー、助かったー。

 

 来人「はぁー、ようやく解放された…けどまさか男を口説こうとしたなんて・・・屈辱だ…」

 

 明日香「ねえ殴っていい?いいよね?」

 

 レン「まあ落ち着けって明日香。ところで来人だったよな?お前サックス持ってるけど弾けるのか?」

 

 来人「ああ・・・それ以外にも一応フルートにトランペット、ギターとバイオリン、二胡なんか大体の弦楽器と管楽器は弾ける」

 

 レン「そうか・・・なあ来人、よかったら演奏を見せてくれないか?」

 

 来人「まあ、別に構わないが・・・流石に今ここで弾くわけにはいかない。付いてこい、俺がいつも演奏をしている場所があるからそこで聞かせてやる」

 

 俺はレン達4人を駅前の広場まで連れて行くとそこでケースからサックスを取り出した。

 

 来人「何かリクエストはあるか?何でも弾いてやるよ」

 

 碧斗「なら、俺からいいか?『ゴールデンタイムラバー』を頼む」

 

 来人「ああいいぞ。はぁ・・・♪~ 」

 

 リクエストに応えて俺は夕陽の射す駅前でサックスを弾きならした。この時間は学校や仕事から帰りに電車を利用する多くの人が行きかうため観客を集めやすく、さらに夕陽を受けた俺のサックスがさらに輝く。まさに路上ライブをするにはゴールデンタイムだった。

 

 来人「ふぅ~・・・」

 

 ―――パチ!パチ!パチ!―――

 

 曲が終わると5分弱の間にもかかわらず、俺の周りには複数人の人が集まり拍手を送ってくれていた。その中から俺の演奏を聴きたいと言ってきた人物に目をやるとニヤリと笑みを浮かべ口を開いた。

 

 レン「よし来人、俺達と一緒にバンドやろうぜ!」

 

 来人「は・・・はぁ?」

 

 俺はいきなりの事に困惑の声を上げたが他の3人は溜息をついて呆れていた。なんかもう見慣れてる感じだ。それに対してレンは気にも留めずに話を続けた。 

 

 レン「俺は自分のバンドをやるならメンバーは5人がいいって思ってたんだ。それに、お前の演奏を聴いてたらお前と一緒にステージに立って演奏したいって思った!だから俺達と一緒にバンドをやってくれ!」

 

 一緒にバンドをやってほしいか・・・今まで楽器の演奏は基本1人でだったし、誰かと一緒に弾くのもたまに父さんや未羽とセッションするくらいだったから中々新鮮で面白いかも知れない。けど・・・

 

 来人「わるいな、俺は納豆と男が大嫌いなんだ!可愛い女の子からのお誘いならまだしも、むさ苦しい男・・・ましてや俺よりもイケメンでモテモテな野郎の頼みなんて真っ平ごめんだね!」

 

 レン「え、えー・・・」

 

 碧斗「凄い僻みと私念が混じった理由だな・・・」

 

 明日香「ここまでハッキリ言われるといっそ清々しい…」

 

 俺は捨て台詞を残すとそれに戸惑っているレンと、さっき以上に呆れ交じりの冷たい視線を俺に向けてきた碧斗と明日香を後目にその場を立ち去った。唯1人、俺に悲しげな視線を向けている人物に気づくことなく…それからレンは毎日俺の路上ライブに通い詰めてくるようになり、学校でも事ある毎に俺に話し掛けてくるようになった。

 

 レン「頼む来人、俺達と一緒にバンドをやってくれ!」

 

 来人「しつこいな・・・お前は俺のストーカーなのか?」

 

 レン「な!?誰がストーカーだ!」

 

 来人「お前だよ、お前。生憎だが俺に男からストーカー行為をされて喜ぶような趣味は無い。熱烈な女の子のストーカーは何時でもWelcomeだが、男からの熱烈アピールはNo thank youだ!」

 

 俺はそれを何度もあしらったがそれでも諦めずにレンは俺に話掛けてきた。けれども、碧斗と明日香はその事をあまり快く思っていないみたいだった。

 

 碧斗「レン、流石に今回は諦めた方が得策だ。俺はこういう何かしら厄介ごとを持ち込んできそうなやつをメンバーにするのは反対だ」

 

 明日香「僕も、こんな浮ついた性格の人が仲間になるのは賛成できない」

 

 2人はレンが俺をメンバーに勧誘する事に反対の意を示した。けど、ただ1人だけ動じずにレンに助け舟を出す人がいた。

 

 利久「あの・・・僕はいいと思いますよ?来人が仲間になるの。来人みたいな演奏が凄く上手い人がメンバーになればバンドの躍進にもなりますし、何よりリーダーであるレンが仲間にしたいと言っているんですから反対する理由がありません。それに、来人は女の子にモテたいんですよね?なら尚更僕達と一緒にバンドをやった方がいいと思いますよ?」

 

 利久だった。こいつは2人とは逆に賛成の意を示し、それに加えて尚更自分達とバンドをやった方がいいと進めてきた。

 

 来人「その理由は?」

 

 利久「まずイケメンという点でしたらそれは来人にも言えると思えますよ?それに学校内で名が知れている3人と一緒にバンドをやれば女子の注目を集める事はまず間違いないですし、少なくとも大してかっこよくもない僕よりも来人は人気者でモテモテになれると思いますよ?」

 

 なるほど、言われてみればそれもそうかもしれない。けれども利久、自分は大してかっこよくないとか嫌味か?嫌味なのか?まあそれはいい、それよりもだ・・・

 

 来人「確かにお前の言う通りかもしれないな。お前らと一緒にバンドをやれば俺もモテモテ男子の仲間入りか・・・悪くないかもしれないな」

 

 レン「それじゃあ「ただし!」ッ!?」

 

 来人「条件がある」

 

 レン「条件・・・それはなんだ?」

 

 来人「レン、お前は俺の演奏を聴いて俺と一緒にバンドがしたいと言ったな?」   

 

 レン「ああ・・・」

 

 来人「なら、俺にお前たちの演奏を聴かせてくれ。お前達と一緒に演奏したい、俺にそう思わせられたらお前達のバンドのメンバーになってやる」        

 

 流石に会って間もないやつらにバンドのメンバーになってくれと頼まれても直ぐに頷く事は出来ない。父さんから聞いたことがある。複数人の演奏は演奏者同士の調和や波長があってこそ美しく完成され、余計な存在があると意図も簡単に壊れてしまう。オーケーストラなどの大人数の演奏にはそれを合わせる為に指揮者という存在があるがバンドにはそれがない。だからこそ、こいつらの演奏を聴き定めて俺という存在が入る場があるか否か確かめる必要がある。

 

 来人「場所はここのステージだ。時間は明日以降の放課後と休日でやる日とタイミングはお前に任せる。お前達の演奏、楽しみにしてる」

 

 レン「ああ、絶対お前を仲間にしてみせる!」 

 

 レンはそう高らかに宣言し、その様子を見た碧斗と明日香は溜息をついたが、表情は微かに笑みを浮かべていた。翌日、俺はいつもの場所に訪れるとそこには広間にポータブル電源とミニアンプを置き、それらにギター、ベース、電子ドラム、キーボードを繋いで立つ4人の姿があった。

 

 レン「ふぅー・・・よし!こんにちは、俺達中学の同級生でバンドをやっている・・・・・」

 

 うん?MC始めたと思ったら気直ぐに黙り込んだぞ。いったいどうしたんだ?

 

 レン「そういえば俺達・・・バンド名考えてなかった」

 

 突然のレンの発言に俺と碧斗達を含めた周りの人達が唖然とした。いやそれめっちゃ大事だろ!なんで考えてねえんだよ!俺コイツとバンドやるのやめようかな…

 

 レン「まあ無いものは仕方ないんでとりあえず今は『ヒーローズ(仮)』とでもしておいてください」

 

 ダッさ!仮だから仕方ないかもしれないけどそう思わずにはいられなかった。

 

 レン「気を取り直して。俺達はまだ結成したばかりで未熟なので演奏もあまり上手くないです。けど今日はあるヤツと賭けをして、そいつに納得がいく演奏を聴かせるために今日はここでライブします。俺達はまだ自分達の曲を持っていないので、やる曲は全部カバー曲ですが良ければ聴いて行ってください!それじゃあまずは1曲目、『ネバギバ!』」

 

 レンの掛け声を合図に演奏が始まり、俺はそれを他の観客に紛れて静かに見ていた。

 

 レン「もう心配無いよお前なら そう空が笑~てる気がした 汗と涙の数 きっと輝ける~」

 

 その演奏は完璧だった。まだ日が浅いにも関わらず4人の息が合った演奏を出来ていた。見ただけで相当練習した事が窺える素晴らしい演奏だった。しかし・・・唯それだけだった。俺が一緒に演奏したいとはどうしても思えなかった。その後もレン達はほぼ毎日駅前で路上ライブをしていたが一緒に演奏したいと思える瞬間は無かった。

 

 レン「来人、今日はどうだった?」

 

 来人「うーん、演奏は申し分ない。寧ろ完璧だった」

 

 レン「なら「だからこそ」・・・?」

 

 来人「俺は一緒に演奏したいとは思えなかった。と言うよりも・・・お前たちの演奏は俺を必要としていなかった」

 

 毎日4人が演奏する姿を俺は見ていたが、その姿は俺にはまぶしすぎる程にとても輝いて見えた。今はまだ未熟かもしれないが・・・何時かこの4人は音楽で誰かを照らせる様な存在になる。この4人の完璧な演奏の中に俺の出す音が加わってしまったら、こいつ等の音は簡単に壊れてただの雑音へとなり果ててしまう…それだけは絶対にダメだ!また俺のせいで・・・誰かの明るい未来を奪うようなことはもうしたくないから…

 

 来人「もし俺がいたら・・・お前達のバンドは崩壊する。だからこそ俺はお前達のバンドに加わる訳にはいかないんだ…」

 

 レン「来人・・・」

 

 来人「そういう訳だからお前らは自信を持っていい。今の状態でライブに出ても大丈夫、観客を沸かす事は出来る。よければその時は俺も呼んでくれ。観に行くからさ!じゃあ、頑張れよー!」

 

 俺は4人に応援の言葉を残すとその場を去った。これだけ言えばきっとあいつらも諦めるはずだ。明日からは前みたいに1人で路上ライブをする日々に戻る。そう思っていた。けど翌日・・・  

 

 レン「こんにちは!今日もここで路上ライブをさせてもらう『ヒーローズ(仮)』です!よかったら俺達の演奏聴いて行ったください!」

 

 俺は駅前に行くとそこには変わらずにあの4人いた。何でいるんだ・・・まさか、あれだけはっきりと言ったのにまだ諦めてないのか!?けど、どうせ何時もみたいに完璧な演奏を4人でするに違いない。しかし、その考えは演奏が始まって変わった。

 

 レン「聴いてください!」

 

 レンの掛け声を合図に演奏が始まった。しかしその演奏は・・・

 

 「なんだ?なんか昨日より下手になってないか?」

 

 「と言うよりなんか物足りない・・・」

 

 「急にどうしたんだ?」

 

 昨日とは明らかに違う、4人の演奏が輝いて見えない…その理由はすぐに分かった。演奏の音がワンパート分足りてない。他の聴いている観客も退屈しているほどにそれは明らかだった。かくいう俺もその1人なわけで・・・なんなんだこの演奏は!?聴いててイライラするのと同時に・・・凄く体がうずく!俺はその衝動についに耐え切れなくなり――――――

 

 来人「ちょっと待て!」

 

 気が付いた時にはもう行動を起こしていた・・・ 

 

 来人「なんだよその物足りない演奏は!こんな演奏人様に聞かせられるか!」

 

 そう言うと俺はサックスを手に持ち、レンの隣に立った。

 

 レン「来人・・・それじゃあ改めて、俺達5人の演奏を聴いてください!」

 

 そして俺はレン達と一緒にカバー曲を演奏した。そして演奏を終えると周りからは拍手が巻き起こり、俺の隣ではレンがニヤリと笑みを浮かべていた。まさか・・・

 

 来人「お前、嵌めやがったな・・・」

 

 レン「まあな。けど、ヒントをくれたのはお前だろ?俺達の演奏はお前を必要としていなかった・・・裏を返せばお前を必要としている演奏を聴かせればいいってことだ!」

 

 来人「ッ!どうしてそこまでお前は俺を仲間にしたいんだよ・・・」

 

 レン「言っただろ?お前の演奏を聴いて一緒に演奏したいって思ったからだ!それに・・・利久が言ってた。楽器を弾いている時、お前からは悲しい音が聴こえてくるって…」

 

 来人「俺から?どういうことだよ?」

 

 利久「実は僕、人の心の音を聴くことが出来るんです。普段の来人は明るく振舞ってましたが・・・その時の来人からはとても悲しい音がして、それが楽器を弾いている時は特により一層強まるんです…それにあの悲しい音には聞き覚えがあるんです。あの音はそう・・・誰か大切な人を亡くして悲しんでいる人の音です…」

 

 レン「それを聴いて俺、放って置けないって思ったんだ。なあ来人、よかったら俺達にお前に何があったのか話してくれないか?出来る事なら俺達はお前の支えになりたい!」

 

 大切な人を亡くして悲しんでいる音か・・・まさかそこまで読まれているとはな…本当は俺は数年前のあの時の出来事が、初恋の人を亡くした時のことが未だに忘れられずにいた。あの時もらったミサンガだって肌身離さず付けているし、ここで夕方に演奏しているのだって本当はシャラを偲んで・・・天国にいるであろう彼女に届ける為に俺は楽器を奏でていた…忘れようと思っていても結局忘れられないこんなにも女々しい自分が嫌になる。こいつ等には隠しても無駄だろうし、いっそ話してしまえば少しは楽になるかもしれない・・・

 

 来人「俺さあ・・・女の子を1人死なせてるんだ…」

 

 レ碧利明『ッ!?』   

 

 案の定、俺が話を切り出すと4人は驚いていた。そりゃあ行き成り人を死なせてるって言えば誰でも驚くか・・・けど俺はそこに追い打ちをかけるかのようにもう1つの真実を打ち明けた。

 

 来人「やっぱり血は争えないってことなのかな・・・平気で人を殺そうとするような人の血を引いているんだからさ…」

 

 俺は全てを話した。俺が初恋の人を目の前で亡くし、その事を忘れようとしてこんな事をしていること。そして、俺が捨て子であったこと・・・

 

 来人「とまあこんな感じだ。どうだ?」

 

 碧斗「どうだって言われても・・・」

 

 明日香「言葉も出ないよ…」

 

 すべてを聞いた4人の表情はとても重苦しいものだった。ただ1人を除いては・・・

 

 レン「・・・・・」

 

 利久「レン?」 

 

 俺に聞いてきた当の本人であるレンは顔を俯かせたまま黙り込んでいた。そして顔を上げて見せたその表情は、とても怒っていた。

 

 レン「なあ来人、そんな辛い出来事話してるのに・・・何でそんな平気そうに笑っていられるんだよ?」   

 

 来人「・・・平気なんかじゃない…無理にでも笑ってないと、今にも泣きそうになっちまうんだ…」

 

 本当は辛くて辛くて仕様がない。けどこうやって笑顔を保ってないと、過去の僕という存在を捨てる事が出来ない。けどその考えは、すぐに払拭された・・・

 

 レン「だったら・・・俺達の前だけでいいからさ、無理に強がらないで少しぐらい弱音を吐けよ!辛い時に辛いって言えなかったら、人の痛みが分からないような人間になっちまうぞ!俺達はお前の悲しみを理解してやる事は出来ないかもしれないし、一緒に背負ってやる事は出来ないかもしれない。けど、お前の傍にいてやる事は出来る!」

 

 来人「レン・・・」

 

 レン「それに来人、お前は普段から作り笑いばっかしてるけど、楽器を演奏してる時は少しだけど心から楽しそうに笑ってた。知ってるか?お前自身の笑顔、なかなか悪くない」

 

 来人「俺自身の・・・笑顔?」  

 

 レン「お前は沢山の人の心を照らして笑顔にする為に楽器を始めたんだろ?けどお前自身がもし作り笑いしか出来ないって言うなら、俺達がお前のことを笑顔にする!だから来人、お前の夢に俺達も付き合わせてくれないか?」

 

 そう言うとレンは俺に手を差し伸ばしてきた。初めてだった、俺の夢に付き合うって言ってくれたのは・・・今まで世界中を旅してきたけど、すぐに別の場所に移ってしまうから仲間と一緒に何かに挑戦するなんてこと出来なかった。一瞬、本当に俺が仲間に加わって良いのか戸惑った。けど、笑顔で俺がその手を取るの待つ4人の姿を見てすぐに俺はその手を掴んだ。

 

 レン「改めてこれからよろしくな、来人!」

 

 来人「ああ・・・けどまず初めに聞かせてほしいことがる。レン、お前の夢って何なんだ?俺だけ教えておいてお前らが教えてくれないってのは不公平じゃないか?」

 

 俺が問いかけると、レンは明るく、生き生きとした表情で自身の夢を口にした。

 

 レン「俺は・・・俺はヒーローになることだ!誰にでも希望と勇気を与えられる、そんなヒーローに俺はなる!」

 

 来人「ヒーロー?」

 

 レン「ああ、子供のころからの夢だったんだ!テレビでやってる特撮とかアニメに出てくるヒーローみたいになりたいって。けど、成長するうちに俺には特別な力なんて無い、ヒーローになんかなれないって気づかされた。でも音楽はそんな人を変えてくれる、誰もが身に着けられる特別な力なんだ!だから俺はその力を使って沢山の人に希望と勇気を与えられる、ヒーローになる!」

 

 来人「ハハハッ!とても正気とは思えないな?けど悪くないな、お前の夢。俺もその夢、付き合うぜ!だから見せてくれ!お前が夢を叶えるその瞬間を・・・そしてその先を!」

 

 明日香「ちょっと、僕達も忘れないでよ?」

 

 利久「僕達も付き合いますよ!」  

 

 碧斗「俺もお前の背中を預かった身だ。最後まで支える」

 

 レン「お前ら・・・よし!ならとことん付き合ってもらう!夢の果てまで!」   

  

 こうして、俺達のバンドは結成された。俺は生みの親に捨てられて、初恋の人を亡くした悲しい俺の過去を変える事は出来ない・・・けど、未来は変える事が出来るかもしれない。俺達は進んでいく、これから先に待っている明るい未来に向かって。この5人でなら、それがきっと出来る!ちなみに、この後俺達はSPACEでのファーストライブをする事になるんだけど・・・その話はまたの機会のお楽しみってことで!

 

 

 

 

   ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 

 

 

 

 

 

 来人「これが俺がバンドに入って、5人そろった時の話だ」

 

 俺が話し終えると案の定、場の空気が少し重くなった。

 

 たえ「ライ君・・・」

 

 沙綾「ごめん来人・・・」

 

 有咲「こんな話、気軽に聞いていいことじゃなかった…」

 

 来人「別に気にすることないって。過ぎた事を何時までも思い悩んでたって仕様がないだろ?」

 

 りみ「でも・・・こんなの辛すぎるよ…」

 

 辛すぎるか・・・確かに俺の今までの出来事は客観的に見れば前途多難って言葉じゃ表せない程辛いものだったかもしれない。けど・・・

 

 来人「確かにそうかもしれない。けど・・・あの時の出来事には、辛いこと以上にシャラと過ごした楽しかった日々の思い出もあった…その思い出の中でシャラは生きている。だから俺はこの時の事は絶対に忘れちゃいけないんだ…」

 

 そう言いながら俺は右手首に付けてある少し汚れたミサンガを懐かしげに眺めた。

 

 来人「それに俺にはそれ以上の出会いがあった。俺を支えてくれる、俺のすべてを受け入れてくれた仲間にな…こいつらは紛れもない、俺にとって最高のヒーローだ!」

 

 俺は目の前にいる碧斗、利久、明日香の3人に視線を向けると若干照れ臭そうに視線をそらし、周りはその姿を微笑ましい目で見ていた。けどそこで沙綾が何か引っかかる事があったようで俺に疑問を投げかけた。

 

 沙綾「ねえ来人、そんなにいい出会いがあったのになんでナンパを続けてるの?」

 

 りみ「そういえばどうして?」

 

 来人「あ〜・・・確かにそうだけどさ、けどやっぱりいつまでももう会えない人の事を思い続けてたら天国にいるシャラに心配されるだろ?だから1歩前に進む為にも、俺は新しい恋を求めて女の子に声を掛けいるんだ」

 

 沙綾「来人・・・」

 

 りみ「来人君・・・」

 

 有咲「ただチャラチャラしてた訳じゃなかったんだな」

 

 お、3人の俺を見る目が優しくなった。ちょっとかっこつけすぎたかな?

 

 明日香「とかなんとか言ってるけど、実際はただナンパが癖になってやめられなくなっただけでしょ?」

 

 来人「おい言うなよ!折角かっこ良くきまったのによ〜」

 

 沙綾「ああうん、なんかそんな気は少ししてた」

 

 りみ「えーと、さすがに私も今のはちょっと引いたかも…」

 

 有咲「一瞬かっこいいって思ったのが恥ずかしい…」

 

 来人「うぐっ!」

 

 3人の軽蔑の言葉で俺の精神にクリティカルでダメージが入った。すると今度はたえちゃんが追撃をしてきた。

 

 たえ「安心してライ君、たとえライ君が最低な人でも、おっちゃん達はライ君の事軽蔑しないから」

 

 来人「いやウサギにまで軽蔑されてたまるか!?てか、え、なに、その言い方だとたえちゃんは俺の軽蔑してるって事!?やだなにそれ泣いていい?」

 

 明日香に暴露され、温かい視線が一気に冷たくなったが周りには笑いが起こり、場の空気は少し暖かくなった。そんな中、ただ1人だけ俯きながら何かを呟いていた。

 

 香澄「・・・・・」

 

 りみ「香澄ちゃん?」

 

 沙綾「香澄?」

 

 香澄「私、思い出した・・・」

 

 明日香「思い出したって?」  

 

 明日香が香澄ちゃんに問いかけるもその声は耳には入らず、急に立ち上がると自身の決心を口にした。

 

 香澄「私、もう1度レン君と話してくる!やっぱり私レン君にはSPACEの最後のライブに出てほしい!」

 

 そう言う香澄ちゃんの目には、確かな決意とレンに対する何か特別な思いが感じられた。もしかして香澄ちゃん・・・いや、今そんな事どうでもいいか。香澄ちゃんがレンを説得しようとしてくれてるんだ。それなら俺達もするべき事をしなくちゃな・・・

 

 来人「そっか・・・なら香澄ちゃん、説得が上手く行ったらレンに伝えておいてくれないか?『俺達は初めて5人で一緒に演奏したあの場所で待ってる』って」

 

 香澄「うん、分かった。絶対にレン君を行かせるから!」

 

 俺達はレンの事は香澄ちゃんに任せる事にした。そして放課後、俺達4人はそこにいた。初めて5人で演奏した思い出の場所に楽器を手にして。いずれやってくる、俺達のリーダーを待って…  

 

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