■■■■たちが異世界から来るそうですよ?【削除&改訂予定】   作:白結雪羽

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─呼ばれた■■■■たち─
呼ばれた三人


 

 

 

 

「あぁー……だりィ」

 

 

 空は五月晴れ。一時雨脚が退いてくれたこの細やかな日和模様の下、少年──逆廻 十六夜は、川の畔で絶賛暇を持て余していた。季節はもうすぐ夏に突入するこの時期、本来ならまだ学生である筈の彼は学校へと行っているべきなのだが……最早彼にはそんな義理など失せてしまった為、こうして昼間に黄昏れているのだ。

 

 

「……お、黒点見っけ、と。…………だから如何したって感じだな………はぁ」

 

 

 口から洩れる溜め息。

 よいしょっと、そろそろ寝そべっているだけというのも飽きてきた十六夜は体を起した。その際に頭にただ何となく付けていたヘッドホンも外す。すると──

 

 

「おいヤベえって。コイツマジ泣きしてるぜ。汚ねえから川に突っ込んで洗濯でもすっか?」

「どうせなら全裸で飛び込ませようぜ。両手両足縛ってよ」

「ひっ………!」

 

 

 ひ弱そうな少年が、長ラン刺繍込みという何時の時代のヤンキーだと問いたくなるような不良集団に囲まれていた。少年は絶賛土下座中だが、今の会話を聞き顔面を蒼白にさせる。十六夜は彼らからやや離れてはいるが、確りとその会話を聞き取っていた。

 だが、彼は特に興味無さそうに一行を一瞥するだけで何もしない。関わるだけ面倒な上、助けてやる義理なんて最初から有りはしないのだから。

 

 

「…………ツマンネェなぁ」

 

 

 そう言いつつ十六夜は立ち上がり、土手道をダルそうに歩き出した。学校にはこれからも行く気は無いし、寧ろ不登校の事を教師に叱責されるような面倒な場所なら退学扱いにしてくれた方が気が楽だ。という訳で家への帰路に就く事にした彼。

 

 

「ふあぁ~……ぁ……ふぅ。……ん?」

 

 

 不意に彼は空を見上げた。其処には、明らかに不規則で不自然な軌道を描いて舞い降りてきた一通の手紙が……

 彼はその不可解極まりないそれを手に取る。差出人は無し、住所も無い手紙にはただ──『逆廻十六夜殿へ』と書かれていた。

 

 

「……へぇ。空から女の子じゃなくて、手紙が降ってくるか。何かの招待状か? まあ何にせよ──────面白うそうじゃねえか」

 

 

 ニヤリと痛快な笑みを浮かべる十六夜。

 

────それと同時に、付近で()()が落ちる様な音が聞こえた────

 

 

「ん?」

「「う、うわああああああああああああああああああああ!!?」」

 

 

────序にさっきの馬鹿共の悲鳴も────

 

 十六夜が振り返っていると、川辺には先程のひ弱な少年と不良の一人。そして、その目の前には────〝黒く焼け焦げた地面〟と、〝人だったもの〟があった。正に落雷が人に直撃したって状況だ。だが考えてみて欲しい、今は雲一つ無いって訳ではないが、それでもほぼ晴天といっても差し支えない空模様なのだ。雷など落とす雲も無い筈。

 しかし、十六夜はそんな疑問も、遠くで叫んでいる野郎らも思考の枠にも嵌めようとせず、ただ何気なしに、

 

 

「あ、やべ。誰か()()()()()()か? つい気分が高揚しちまったからなぁ………ククッ、今度から気を付けるか」

 

 

そう言って歩きながら再び視線を手紙へと向けるのであった。

 

 

 

 

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

「ん? 何だか面白いことが起こりそうな気がするわ……」

 

 

 喧しい程の蝉時雨が鼓膜を叩く夏真っ盛りな今日。少女──久遠 飛鳥は、ふと頭を過った言い知れぬ予感にそう呟いた。その声音にはダルそうでいて苛立だしげな雰囲気とは裏腹にどこか期待に満ちていた。

 

 戦後数年の日本国。彼女は西の端っこまで態々足を運んでいた。というのも、彼女は日本で五指に入る程の大財閥の令嬢で、とある親族会議に呼ばれていたのだ。それは、〝財閥解体〟という齢15の彼女にはまだ些か早い気もする重件。そんな案件を、親族達は未だ健在の本家御当主殿を恐れて「何とかしてくれッ」と泣き付いてきて……此処にいたる訳。

 正直、飛鳥にとってはどうでも良い事だった。財閥が解体されようがされまいが、興味の程など庭先の蝉の数を数える事にも劣る、それが彼女の意思である。故に、彼女はその案件をさっさと終わらせる為に縁側を移動していた────その途中の言葉が今の言葉である。

 

 

「全く、私の予感なんて今の今まで当てにはしてこなかったけれど……今回は如何かしらね? …………さ、現実逃避はここまでにして、早く下らない茶番を終わらせましょうか」

 

 

 やがて見えてきた一つの部屋。その部屋の前に辿り着くと、一応は令嬢、上っ面だけの礼儀を通して厳かに部屋へと入る。

 其処には、現当主他親族の皆々が既に揃っていた。だが、飛鳥はそれらを確りと視認すらせず矢継ぎ早に一言、

 

 

「〝さっさと早急に速やかに、財閥を解体してください〟〝あと──────■■■〟」

 

 

そう言って部屋を後にした。その時の彼女の表情は、どこか解放されたように清々しい笑みを浮かべていたそうな……

 

 

 

 

 

 部屋に戻った飛鳥は、日本人特有の長い黒髪とその額に光る汗を拭いながらベッドに腰掛けた。冷房も無いこの時代、建築構造だけで避暑をするには些か無理があるため、彼女は茹だる様な厚さを我慢するしかない。

 

 

「……本当、呆れて物も言えないわね」

 

 

 不図、先の遣り取り……とも言えないアレを思い出す。実は、飛鳥が早々と踵を返してしまったため聞けなかったが……あの時、当主は彼女の言い分に「分かった」と、飾り気も二の句も無しにそう告げていたのだ。

 

──久遠家のご令嬢の口にした事は絶対となる──

 

これが飛鳥が呼ばれた本当の理由である。その説明の通り、彼女は昔から何気無しに言った言葉で色んな人達を従わせてきた。彼女自身、途中からそれに気付き、今では先の有様。

 久遠飛鳥は退屈していた。変わらぬ日々に。言葉一つでいとも簡単に築かれる人間関係に。もういっそ死んでやろうかしらと思った日は少なくない。それ程に退屈していた。

 

 

「はぁ…………────ん?」

 

 

 堅苦しい毎日と真夏の暑さに、ベッドに横になりながら溜め息を吐く飛鳥。そんな彼女は不意に、机の方に違和感を感じた。そこにあるのは至って何ら変わりない普通の机。だが、その上に一通の手紙があった。住所不明、差出人不明で、唯一──『久遠飛鳥殿へ』──と書かれた手紙が……

 彼女はベッドから起き上がりその手紙を手に取った。そして首を傾げ、部屋を見渡す。

 

 

「この部屋に誰かが出入りした痕跡は無し、と…………」

 

 

 なら何故この手紙は机の上にあったのか。一体誰が、何の目的でこれを置いたのか。自然と、飛鳥の口許は笑みを浮かべていた。

 

 

「──飲み物はいいわ。下がって」

 

「はい──」

 

 

 飛鳥は唐突に扉の外へそう言う。そしたら、扉の向こうで一つ、短く返事がなされた。

 それすら意識から直ぐに外して、彼女は手に持った手紙を見てより一層、猛暑すら忘れて笑みを浮かべる。

 

 

「ふふ。何処のどちら様かは存じないけれど……面白い投書、感謝するわね」

 

 

 飛鳥は、姿も名も知らぬ誰かに感謝を述べ、嬉々として封を切った。

 

 

 

 

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

「…………何でしょう、これ?」

 

 

 そろそろ肌寒くなってき、紅葉が目立ってきた今日この頃。往来で賑わう紅葉ロードにて少女──春日部 耀は、自身の手の内にある一通の手紙に目を落としていた。

 この手紙、つい先程部屋で素っ気無い、飾り気も無い外着に着替えている最中、部屋の窓から偶然入ってきたのだ。しかも、それには住所も差出人も書かれておらず、ただ──『春日部 耀殿へ』──とだけ書かれて……

 

 

「窓から投げ入れられた……。でも、一体誰が……何の為に……?」

 

 

 なるべく人にぶつからない様に道の端を歩きながらうーんと考える耀。そんな彼女、何処へ向かっているのかと言うと────

 暫く、20分ぐらい歩いただろうか。辺りにはすっかりと人の往来も無くなり、シン……とした────()()が並ぶ丘だけが此処にあった。耀は、その墓石群の内……円形に囲いを作っている特異な墓の中心まで来てチョコンと座った。

 墓石に囲まれて、その中心で花にも囲まれ座る耀の姿は、どこか幻想的で……どこか恐ろしいものだった。

 

 

「ふぅ………皆、久しぶり。半年ブリかな?」

 

 

 一旦手紙の事は置き、挨拶から入り本来の用件を済ませる耀。淡々と、淡々と、独り半年間の思い出を呟く……丘の、墓の中心で、ただ()()。その際、首にぶら下がる飾りを握り締めながら……

 

 

「──でね……。私、皆が居なくなって、ね…………とても■■■。だって────」

 

 

 それから数分、少女の独白は続いた。終わる頃には、彼女の表情はどこか儚げでいて……嬉しそうで……暗かった。

 そして、やっと彼女は先に届いた手紙の事を思い出す。懐から取り出してみて、再度マジマジと見てみた。

 

 

「……本当に、誰からでしょうか?」

 

 

 色々疑問は尽きない。だが、開けてみない事には判断の付けようもない。

 そう思った耀は、静かに、丁寧に手紙の封を切り、中身の便箋に記された文章を読んだ。

 

 

 

 

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

『悩み多し異才を持つ少年少女に告げる。

 その才能(ギフト)を試すことを望むのならば、

 己の家族を、友人を、財産を、世界の全てを捨てて、

 我らの〝箱庭〟に来られたし』

 

 

 

 

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

「なっ……!?」

「っ!!」

「……、」

 

 

 途端、三人の視界は一気に開けた。

 そこは空。まごう事なき、青天の空。彼らは、地上から凡そ4000メートルもの上空に放り出されたのだった。各々の反応は三者三様……だが、その内は確りと一致していた。

 

 

「「「(これは…………面白そうだ/ね/です)」」」

 

 

 我前広がるは、その距離が計り知れない地平線で、世界の端とも思える断崖絶壁。同じく目測では計り間違えるのではないかという程の巨大な天幕と、それに覆われた都市達。

 彼らの視界に映るのは、誰が言ったか。言ってもいなくてもこう答えられる、

 

 

──完全無欠の異世界── だと。

 

 

 

 

 

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