■■■■たちが異世界から来るそうですよ?【削除&改訂予定】   作:白結雪羽

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耀視点 




いざ箱庭へー(棒)

「ところで………北側には如何やって行けばいいのかしら?」

 

 

 曼珠沙華の華刺繍があしらわれた黒地の着物を整えながら飛鳥さんがジンさんに尋ねました。改めて見ますと、とても変わった服装ですよね? でも最初の社交目的の服よりは私は似合ってると思います。

 

 数分位前に起きたジンさんは、少し状況が掴めないで困惑していましたけど、今は落ち着いてます。落ち着いて、私達に返りましょうと提案してます。無論聞き入れるつもりは無いですけど……

 

 

「で、ですから……皆さん戻りましょう? 確かに白夜叉様からの御好意は嬉しい限りですが、僕達には北側へ行く余裕は無いんですよ」

「ええそうらしいわね。で? 北側には如何やって行けばいいの?」

「い、いえ……ですから、」

「如何やって行けるのかしら?」

「あ、あの、」

「如何やって?」

「…………」

 

 

 ジンさん、折れてしまいました。だって飛鳥さんの笑顔が徐々に綺麗になっていきましたから……。人に限らず、笑顔と言うのは本来威嚇だと何処かで聞いた事がある気がします。

 彼は隣に座るレティシアさんに救援の視線を向けました。けれど、レティシアさんは既に諦観を決め込んで溜め息を吐くばかりで、ジンさんにも首を横に振るだけでした。

 ジン君の対面には愉快に笑う飛鳥さんと十六夜さん。二人は本当にワクワクと北のお祭りを楽しみにしている様子。斯く言う私も、表情には出てないかもしれませんがとても楽しみにしてます……!

 

 

「飛鳥、北って言うほどだから、兎に角北上していけば済む話じゃねえか? 俺と春日部なら三人程度抱えても問題ない」

「駄目よ。移動速度に比例して私達の被害がとんでもない事になるわ。まあ途中の箱庭の未だ見ぬ景色を堪能できると思えばそれも有りだけど」

 

 

 少し服装の話しに戻りますね。飛鳥さんは着物だといましたけど、私と十六夜さんは来た当初と服装は変わりません。私も、黒ウサギさんの衣装をどれか戴こうとしましたが、パッとする物が在りませんでした。なので、今は……これからも、この一張羅で行くつもりです。

 

 ジンさんが二人の会話に呆れた様に溜め息を吐きました。

 

 

「もしかしなくても……やはり皆さん、北側の境界壁までの距離を知らないんですね……」

「当たり前だろ。何の説明も戴いてないんだからな。それで? 御チビの反応からして……そんなに遠いのか?」

「………説明する前に一つ聞いておきます。この箱庭が恒星級の表面積を誇っている事をご存知ですか?」

 

 

 ジン君の質問に私達は全員首肯する。これについては、十六夜君と私は黒ウサギさんに、飛鳥さんはレティシアさんに聞き及んでいたようです。箱庭は、その膨大な表面積に対して開拓地は極端に少なくその殆どが野ざらしな状態。また、この箱庭都市を引いても各地に大小の違いはあれど様々な都市、街は存在すると。

 それで、ジンさん曰く。この箱庭都市は、それらの都市を加味しても最大規模の都市であって、その比率は相当なものだそうです。流石に表面積の一割を占めている、なんて御ふざけな事はありませんでした。けれど……

 

 

「……此処は東の中でもやや北寄りだ。大雑把で言うなら…………980000キロ位はあるな」

「「「うわお/………」」」

 

 

 ジンさんに続いてレティシアさんから途方も無い数字が告げられる。……私達の好奇心パラメーターが数割程上昇した瞬間でした。

 如何やらジンさんは馬鹿げた距離を提示すれば諦めてくれるだろう、そう思っていたみたいです。逆に、一ヶ月間も私達と色濃い関係を築きましたレティシアさんはそれでも溜め息を吐きました。

 残念な事に、私達を今一番理解しているのはレティシアさんですね。ジンさんは全く分かっていません。私ならともかく、こちらの二人にそのような数を示してしまっては、

 

 

「よし飛鳥。とっとと行くか」

「ええっ。何だか燃えてきたわ」

「え……!? 皆さんちゃんと聞いてましたよね!? 今ならまだ笑い話で済みますからっ、戻りましょうよ?」

「「ハッ、冗談」」

「…………はぁ」

 

 

 ジンさんは肩を落とす。そして今になってレティシアさんの諦観の意味を察したのだった。

 

 新たに一名の心を組伏せた私達は「招待してるのは白夜叉なんだから彼女に話をつけるのが妥当」という結論に至りまして、只今〝サウザンドアイズ〟の支店の前に迅速に駆け込もうとやって来ました。店前には、以前と同様にあの店員さんがいまして、丁寧に一礼して――――

 

 

「お帰り下さい」

 

 

………ご丁寧に迎えてくれました。私達も確りと一礼して店内へと、

 

 

「お帰り下さい! 前にも言いましたが勝手に敷居を跨がないでくれますかッ?」

「「あ゛?」」

 

 

 二人とも、そんなドスの利いた威嚇をしないで下さい。店員さんが可哀想です。ほら、顔が青褪めてるじゃないですか。……それでも勇敢に睨み返すあたり、この人の仕事への真剣さが窺えますね。

 

 

「おい店員さんよォ、俺達もそこそこ常連客だろ? だからな、その反応は愛想が無さすぎないか?」

「じょ、常連客というのは…店にお金を落としていくお客様の事を言うのです……! 何時も何時も換金しかしない者は、お客様ではなくて取引相手と言うのです!」

「そう? ならお邪魔するわね」

 

 

 二人はまるで遠慮を知らない……押し入り強盗を彷彿とさせます。因みに私は後ろで見ています。愉しそうですけど、遠慮はあの二人よりは持ち合わせているつもりですので……

 

 

「彼らは……遠慮を知らないのだな……」

「良いんですか? 止めなくて、」

「止めた方が、良いのだろうな……止められ、たらな………フフ……」

 

 

 ………。レティシアさん、やり過ぎちゃったかな? 飛鳥を見る目が虚ろです。

 しかし、このままでは店員さんが危ないですね。二人の威圧感で血の気が……

 

 

「だ、だからうちは! 〝ノーネーム〟はお断りです! 来るのならせめて、オーナーが要る時にして下さい!」

 

 

 店員さんが竹箒を握りしめそう叫ぶ。すると、十六夜が不意に、「ん、」と上の方を指差した…………と思ったら、

 

 

「やっふぉおおおおおお! 漸く来おったか小僧共おおおおおお!」

「……わーレティシアさん、空から女の子がー(棒)」

「……そうだな………はぁ」

 

 

 いけない。レティシアさんの幸福指数が尽きかけてる。今日だけで34回も溜め息を吐いてる。

 降ってきたのは案の定と言いますか、白夜叉さんでした。以前も降ってきてましたけど、一体何処から現れてるのでしょうか? それと、店員さんが頭が痛そうです……安堵もしてますが。

 

 

「よっ白夜叉。また突飛な御登場だな。それしかネタが無いのか?」

「む、なら次は二倍増しの演出を――」

「しなくていいですっ。オーナー、もう少し体裁を気にして下さい」

「何を言う! この幾百、幾千の年月と共に研磨された私の風格が分からぬというのか!?」

「分かりたくもありません………はぁ」

 

 

 あ、此処に新しく苦労人の称号を会得した犠牲者が誕生しました。……いえ、もう既に仕込みは万全だったのかもしれませんね。

 

 それはさて置き、白夜叉さんは如何やら私達を待っていたそうで、以前からお馴染み彼女の私室に通されました。待っていたと言うのは、話を聞くところによると少々きな臭い件があるみたいだからです。

 

 

「さて……。先ずはおんしらに一つ問いたい」

 

 

 座敷に就いた白夜叉さんは、厳しい表情でそう言いました。私達も、戯れなく真面目に次ぐ言葉を聞き入れます。

 

 

「〝フォレス・ガロ〟との一件以来、おんしらが魔王に関するトラブルを引き受けるとの噂を小耳に挟んだのだが────真か?」

「はい……その話なら、事実に違いないです」

「ふむ……ジンよ。それはおんし──コミュニティの長としての方針か?」

「はい。名と旗を奪われた今、これがコミュニティの存在を広める最前手と思いました」

 

 

 ジンさんは慌てず冷静に返しました。荘厳な白夜叉さん相手に緊張感は拭えませんけど、それでも毅然としていられてますね。

 そんな彼の言葉に、白夜叉さんは目を細め、

 

 

「リスクは承知の上なのだな? そのような噂、魔王を引き付ける事も有りうるのだぞ?」

「覚悟の上です。それに、現状僕らの組織力では仇をとろうにも上層へ行く事は叶わない。なら、迎え撃つ姿勢で然るべきです」

「それが無関係な魔王と敵対する事となってもか?」

「ハハッ、それこそ願ったり叶ったりだ。倒した魔王を隷属させ、より強大な魔王に挑む〝打倒魔王〟を掲げしコミュニティ────最高に良いじゃねえか。箱庭広しと言えど、こんな面白いコミュニテイィは他にはねえだろ?」

「………ふむ」

 

 

 ……そっか。魔王は打倒できれば隷属が可能でしたね。現にレティシアさんという事例が此処に居ますし、彼女は神格のギフトを失ったとはいえど〝ノーネーム〟の戦力としては五指に入ります。

 因みに個人的コミュニティ内の力量の見解としては──私←十六夜君←レティシアさん←黒ウサギさん←飛鳥さん──です。更に、質の悪さで言うなら飛鳥さんがトップです。彼女のギフトは……戦闘向きではくて()()()()()()()()ですから。

 私が一番というのは自惚れている訳でも周りを卑下している訳でもないです。ただ、ギフトが恩恵(ギフト)であり奇跡(ギフト)である限り、これは揺るがない事実です。

 

 ……コホン。柄にも無く難しい事を考えてばかりですね、私。今はは無しに集中しましょう……

 険しい様子でした白夜叉さんは、十六夜君の言葉に数瞬考え込んだ後、一転して苦笑を浮かべました。そして、これ以上の問答は終わり、ジンさんに一介のコミュニティの長として依頼を告げる事にしたようです。

 ジンさんも、嬉しそうですね。此処まで無理矢理連れてきて損は無かったようで良かったです。

 

 それで今回の件はですね、何にも北側一角の〝フロアマスター〟が世代交代するらしいです。〝フロアマスター〟というのは〝階層支配者〟……簡単に言いますと下層の秩序と安寧及びコミュニティの成長を見守るボスの方々の事。今回はその内の〝サラマンドラ〟と呼ばれるコミュニティの頭首が交代するそうです。

 

 

「そうですか……〝サラマンドラ〟とは親交があったのですけど………まさか頭首が変わっていたとは知りませんでした」

「私達はそれ処ではなかったからな。致し方ない……。それで白夜叉、今は誰が頭首に就いているのだ? サラか? それともマンドラが────」

「いや。頭首は末の娘………ジン、おんしと同い年のサンドラが襲名した」

「…………は?」

「何………? あのサンドラが?」

 

 

 ジンさんは一瞬耳を疑った様に呆ける。レティシアさんも、俄かには信じがたいと言った表情です。

 ジンさんと同い年と言うと…………

 

 

「サ、サンドラが!? え、ちょ、ちょっと待って下さい! 彼女はまだ十一歳ですよ!?」

 

 

 そう、十一歳で…………十一歳?

 

 

「何を驚いてるのよ。ジン君も十一歳で私達のリーダーでしょ?」

「クク、察してやれ飛鳥。同い年の知り合い、幼馴染と来てこの慌てよう………アレだろ」

「あら、アレなの? ジン君も隅に置けないわねえ」

「何の話をしているんですか! 僕と彼女はそんな関係じゃ……何より彼女に失礼です!!」

「ん? そんな関係ってどんな関係だ?」

 

 

 ここぞとばかりにジンさんをからかう十六夜君と飛鳥さん。

 仕方が無いので私とレティシアさんで話を進める。

 

 

「それで白夜叉さん。大方予想は付きましたけど……私達の依頼って何をして欲しいんですか?」

「ん、実はな。此度の誕生祭は北の次代マスター・サンドラのお披露目も兼ねておっての。しかし、その幼さ故に、東のマスターである私に共催を依頼してきたのだ」

「…………成る程。不明瞭な点は目立つが、今までの話を踏まえるなら当たりが付くな」

「幼いマスターへの世代交代…………反対派が居ない事を考える方が難しいですね……」

「詰まりは権力争いの渦中に護衛役が欲しいってわけだろ?」

「ん、んー………まぁそんなところだ」

「悲しいこと。名立たる神仏の集う箱庭の上が、そんな人間味溢れた世俗的な輩だなんてね。所詮は感情を備えた思考生命の一介でしかないと」

「むぅ、手厳しいな。だが全く以ってその通りだ。実は東のマスターである私に共同祭典を持ち掛けてきたのも、様々な事情があってな」

 

 

 様々な事情、ですk──────あっ。

 私はここでとある事を……今の私達の状況を思い出しました。それは十六夜君と飛鳥さんも同様、ってこの二人は確信的に気付いてましたね。なのにこの余裕です。楽しんでますね、ギリギリを……

 

 

「白夜叉さん、その話は長くなりそうですか? 長くなりますよね? でしたら詳しい事は後で聞きますので今直ぐに、迅速に早急に北側へとお願いしますっ……」

「む、むぅ?」

 

 

 取り敢えず私は白夜叉さんの話を無理矢理切り上げて、北側への移動を頼みました。

 その言動に、ジンさんとレティシアさんは一瞬疑問に思ったようですが、直ぐに気付いてしまったようです。レティシアさんはまた溜め息を吐いた後苦笑。ジンさんは咄嗟に立ち上がって、

 

 

「し、白夜叉様! 如何かこのまま、」

()()()()()()()()ジン君」

 

 

飛鳥さんの〝威光〟によって引き戻されました。

 残念、最初から切り出していればまだ望みは有りました。

 

 

「白夜叉、聞いた通りだ。今すぐ北側へ向かってくれ」

「あ、いや……それは構わんが、急用でもあるのか? というか依頼内容は聞かんでも良いのか?」

「構わねえ。それに、俺はゲームの説明書も攻略本も読まない質だ。何せそっちの方が────面白いだろ?」

 

 

 そう、理由なんてそれだけでも十分なんです。色々不愉快な出来事が、出会いがあっても………面白いことがあればそれで帳消しですから。

 私達三人の顔に自然と笑みが零れました。……私、上手く笑えていますか? 笑うの、あまり得意じゃなくなってしまったんですよね。

 

 

「……カカッ、そうか。面白い、か。いやはやすまぬ。確かに娯楽は大事だ! 我々神仏の生きる糧にそれは欠かせない。クク……ジンには悪いが、面白いならば仕方が無いのぅ?」

「!? …………! …………!!?」

 

 

 白夜叉の悪戯な笑みは見た目相応に子供っぽいながらも、言い知れぬ気迫が感じられる。

 そして彼女は、私達の視線が集まる中、拍手を一つ打った。………………ん?

 

 

「────ほれ、北側に着いたぞ」

「「「………………はぃ?」」」

 

 

 白夜叉の何気ない言葉に、箱庭に来て初めて私達は素っ頓狂な声を上げさせられたのでした。

 いや、その…………えぇ?

 

 

 

 

 

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