■■■■たちが異世界から来るそうですよ?【削除&改訂予定】 作:白結雪羽
「………。要するに、レティシアさんの胸でお楽しみだった訳ですね? 変態ですか? ……いえ、変態ですね」
「何を言うの春日部さん。普通そこに山があったら好奇心が燻られるでしょ」
さも当然の事のように胸を張って言う飛鳥。そんな彼女に半眼になった耀は、呆れたように疑問を投げかけた。
「……飛鳥さんって、女の子ですよね? 女性の皮を被った男性、とかじゃないですよね……?」
「あら、春日部さんは私が男に見えるっていうの? うぅ、悲しい事ねぇ。心友にまさか性別を疑われるなんて……女性としての尊厳が傷ついたわ」
メソメソと両手で顔を覆う飛鳥だったが、耀は相手をする事無く夜天の星空を見上げて溜め息を吐いた。
「ハハ。しかし飛鳥、お前も随分とまあ羨ましい事してたのな? 俺なんか北側の新頭様にご挨拶だ」
不意に彼女らの後ろから十六夜の声がした。と言うよりは最初から居たのだが……。
移した視線の先、白岩の上で寛ぐ十六夜に飛鳥は愉快に問う。
「と言うと、噂の〝階層支配者〟さん? どんな子だったの?」
「赤毛の生真面目そうな幼女だったよ。公私はキッチリ分ける頭の利くやつみたいだが、まあ餓鬼だな」
十六夜は何時に無く辛辣だった。何せ黒ウサギとのゲームを決着を付けれずにお蔵となったのだ。邪魔をされる原因に彼が不機嫌にならない訳がない。しかも此方が派手に暴れた分反抗的になる訳にもいかなかった。
しかしまあ、〝新階層支配者〟のサンドラの厚意によって赦しが得られただけでもマシなのにこの態度。黒ウサギ達が居たら肝を冷やして叱責しているだろう。
「結構言うのね。こんな見境い無いドS少年に八つ当たりされるその子に同情するわ」
「そりゃお互い様だ。俺も、胸囲で嫉妬する程度な箱入りドS女にセクハラされるレティシアには同情するぜ」
「「ハハハハハ/フフフフフ………表に出ろよ/出なさい○○○がッ!! あ゛あ゛!?」」
下らない事で火花を散らす十六夜と飛鳥。全く、仲が良いのか悪いのか本当に分からない二人だった。言うなれば、悪友と言った所か……。
そんな中、耀は只一人二度目の溜め息を漏らすのであった。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「んで? チビ精霊を付け狙う奴にまんまと手も足も出なかった飛鳥さんや、〝威光〟が及ばなかった理由は理解してんのか?」
醜い諍いは免れた代わりに、先の騒動について棘のある言葉で十六夜は聞いた。〝サウザンドアイズ〟の旧支店に戻ってきた彼は、疲弊したレティシアからおおまかな話は聞いている為、相手の招待以外の事情は大凡把握している。要は言葉通りの完全な皮肉、遠回しな話題の転換だった。
「自分の力よ? 当然じゃない……と言いたい所だけど、正直把握しきれていない部分が多くて断言は出来ないわね」
「仕方ないのでは……? 飛鳥さんの来た世界は、そのギフト施行する条件を知るには不十分だと思います……」
「そうなのよねぇー。格上相手に通じるのか如何か、それが何処まで通用するのか。この箱庭なら都合の良い子が居そうだったのだけど…………まだ残念な事に、ね?」
肩を竦める飛鳥。彼女の手には、何時の間にか用意したのか徳利とお猪口が携わっていた。仄かに頬が赤い気がするが、未成年故中身が美禄で無い事を祈っておこう。
「格上、か。上層に行けば解決できるだろうが、今のコミュニティの現状じゃまだ無理だな」
農園は耀と十六夜が気紛れで復活させてしまったから、今からでも整備は着々と進んでいる。その内土壌も更に肥えて品質の良い栽培が出来るようになる事だろう。
しかし、人員的観点から見てみると、〝ノーネーム〟はあまりにも不安定だ。コミュニティの人員の役目として、基本大きく分けて二つになる。一つは、ギフトを用いて各地のギフトゲームの商品を勝ち取り、コミュニティの資源を肥やすもの。二つ目は、コミュニティの衣食住を整え、ギフト持ちの出稼ぎ組みをバックアップを務めるもの。
今の〝ノーネーム〟は、圧倒的に後者の方が多い。前者は十六夜、飛鳥、耀、一応レティシアも含め四人なのに対し(黒ウサギは例外)、後者は年少、年中、年長の子供達合わせて120人あまり。釣り合っていないにも程がある。まあ、その分の働きを十六夜達はしているのだが……何時までもこのままという訳にはいかないだろう。
「今回みたいに、大きなゲームに招待してくれれば、調達とギフトの試運転が同時に出来て願ったり叶ったり何だけどねぇ……」
「気長に待つしかないです。……暇な時で良かったら、相手しますよ…………十六夜君が」
「おいちょっと待て春日部。サラリと人を売ってんじゃねえよ」
「……売ってませんよ? 派遣ですから」
「それも待てよ。何時俺はお前の下に就いた? 揶揄ってるのなら……今からその無表情、羞恥で染め上げんぞ?」
「………流石飛鳥さんの同業者。変態度も引けを取りませんね……」
「「これと一緒にすんな/しないで……あ゛ッ?」」
やっぱり仲が良いのだろうかこの二人は。ちゃっかり難を逃れた耀はコテンと首を傾げるた。
「ったく………ん? そう言えば春日部。明日ゲームの決勝を控えてたよな?」
「ええ。〝創作系のギフト〟の条件で他のギフトが使えない事が苦難でもありましたが、決勝までは問題なく進む事が出来ました」
耀の参加しているギフトゲームとは、白夜叉の提案で参加している〝造物主達の決闘〟というもので、その名前から察せるように、各コミュニティが創造したギフトを用いて競い合う至ってシンプルなゲームである。その制約として、創作系以外のギフトは使用出来ないのだが、耀の持つ〝生命の目録〟は充分に戦える部類の恩恵であった。
今まで出逢った生き物達の特性を所有者に付与する恩恵。彼女が箱庭に着てから主に使っているのは、空を飛べるグリフォンのギフトだ。だが、それだけで勝ち進めるほど甘いゲームでは無いので、耀は今回臨機応変に特性を発揮してきた。
彼女が外で出逢った生き物達は軽く三桁を超えると言うのは本人談だ。
「創造系って事は、私と十六夜君は先ず出られなかったって事ね。はぁあ、折角お祭りに来たというのに、ゲームに参加できなくっちゃ意味が無いじゃないっ」
「そうカッカするなよ飛鳥。飛鳥は逆に展示や露店を満喫してただろ。しかも最後の最後には面白そうなことに巻き込まれやがって。こちとら不完全燃焼だぞおい」
「ふふ、そう言って……貴方も良いじゃないの。白夜叉に許しを貰ったんでしょ────魔王の隷属の権利」
「…………まあな」
話は二、三個戻ってサンドラに顔合わせをした時。
些か不機嫌だった十六夜であったが、その時話が今回〝ノーネーム〟が白夜叉直々に招待された訳を聞いたのだ。
彼女曰く、この〝火龍誕生祭〟にて魔王襲来の兆し有り、と。〝サウザンドアイズ〟きっての未来予知の力を持つ幹部様が言うのだから間違いないらしい。しかも、予知できているのは襲来情報だけでなく、コミュニティ、トップの容姿、目的など全て明らからしいのだ。
物凄く胡散臭いものだが、少し考えれば納得もいく。口にするのも憚られる輩が黒幕に存在しているって事だ。
正直、十六夜にとって北側の俗な権力抗争など如何でもいい。彼が心惹かれたのはたった一つ……〝魔王〟というネームだけだ。
白夜叉は、もしもの時は自分が魔王を相手取ると言うが、十六夜はそんなもの関係ない。宛がわれた役割が露払いだろうが、娯楽者の彼を止めるなんて不可能。
だからこそ、最後に十六夜は白夜叉にこう言った、
「万が一にだ、何処かの誰かが偶然にも魔王とやらを打倒、または隷属させちまっても……問題は無いよな?」
と。
例え拒否されようとヤるつもりだったが、白夜叉は呆ればがらも必然的偶然を良しとした。
その時の十六夜の表情といったら………一同、言い知れぬ未知の寒気を感じたという。
「出来れば隷属だな。なに、所詮は
「良くもまあそこまで見栄を切れるものね?」
「そうです……。慢心と油断は思考を殺すんですよ? もう少し物事は考えて、」
「ああ分かってる。だから…………頼りにしてるぜ、飛鳥、春日部」
キョトンと目を丸くする女性陣。しかし、次の瞬間にはフッと軽く吹きだした。
「フ、フフフ……アハハハハ! ま、全く十六夜君たら。そこは男の子らしく大胆に宣言しなさいよっ。「俺は一匹狼だ。他人の助けなんていらねえ」みたいな? フフフフ」
「誰だよそれ。んなキザったらしい台詞が言えるかッ」
「ふふ……。十六夜さんって意外と………あ、いえ。何でもないです……ふふっ」
「おおう、春日部? 死にたくなる程辱めんぞゴラァッ………………ふ、」
「「「ハハハハハハハハっ/フフフフフ」」」
満天の星空の下、三人の異邦人の笑が響いた。
一頻り笑い終わった三人の内、十六夜は「よっ」と腰を上げ、首を鳴らす。
「んじゃ、俺はそろそろお暇するわ。後は女性陣で勝手に楽しんでくれ」
「そう? 良い機会なんだから、十六夜君も
「そうしたいのは山々だがな……」
苦笑混じりに十六夜は、対面に見える曇り硝子の格子戸を指摘した。そこからは、ガヤガヤと騒がしい……よりは姦しいレベルの話し声が聞こえてきた。
やげて戸が開き、中からは手ぬぐいで体の秘所を隠すノーネームメンバー女性陣+白夜叉が……。
そう、敢えて触れていなかったが、彼らの話していた場所は……露天風呂。しかも女湯の方である。あまりにもそのような気配を感じさせない雰囲気に騙されていたが、女湯である。もはや完全に覗きを通り越して清々しいご身分で談話を交えていた十六夜なのであった。
因みに彼、黒ウサギ達が入ってくる直前にもう退散したため、彼女らに見付かってはいない。
「あれ? 飛鳥さんと耀さん。先にいらしてたのですか?」
「えぇ。レティシアから聞いてなかったの?」
「あ、いえ。私は今さっき戻ってきたばかりですから……────」
その後女性陣は湯煙立ち上る露天風呂で、ガールズトークに花を咲かせるのであった。ついでに白夜叉のセクハラが入って黒ウサギの心労メーターが中々下がらない事になったのだが、それは別に気にすることも無いだろう。
遠くなる女性陣の姦しい声を背に、十六夜は旧支店の屋根の上に登っていた。そこで不意に見せる期待に満ち双の眼差し。
これから予見できるありとあらゆる道筋に、十六夜は鮮烈な笑みを浮かべるのであった……