■■■■たちが異世界から来るそうですよ?【削除&改訂予定】 作:白結雪羽
白夜叉の元へバルコニーへ向かっていた飛鳥とジンは、白夜叉を囚えた黒い風に扉を塞がれ行く手を阻まれていた。急を要する事態に足止めを喰らい歯噛みするジンだが、飛鳥は至って平常。無理矢理突破なんて十六夜や耀みたいな事は間違っても出来ないので、扉越しに白夜叉へ声を掛けた。
「白夜叉! そっちの状況は如何なってるの!」
「分からん! だが、行動を制限されておるのは確かだ! 連中の〝契約書類〟には何か書かれておらんか!?」
飛鳥は先程手にした〝契約書類〟を懐から取り出す。ジンと共に文面に目を通そうとすると、文面が新たな記載事項を顕した。それは、プレイヤー側のゲームマスターの参加条件。如何やら白夜叉はとある条件をクリアしないと参戦が許可できないようだ。そして、その条件は今、充たされていない。
「ゲームマスターの参戦条件が、クリアされてない…………?!」
「参戦条件は?! 他に何が記述されておる!」
「駄目ね。〝条件がクリアされていません〟の一文限りよ」
「ヂィッ………! よいかおんしら!今から言うことを一字一句違えずに黒ウサギへ伝えるのだ!」
白夜叉の緊迫に満ちた声にジンは体を強張らせた。分かってはいるが、事態は待ってはくれない程に非常なのだ。現状において、情報伝達等の些細なミスはそのまま死へと直行しかねない。
しかし、そんな状況でも飛鳥は冷静だ。彼女は扉越しながらも、白夜叉の言わんとしてることを読み取った。
一つ目が、このゲームは故意のルール説明の不足が考えられ、最悪の場合クリア方法が存在しないこと。もしそれが本当ならば、飛鳥は心中で魔王とやらを嬲り倒すと決めた。クリアしてこそ、楽しんでこそのゲームに、下らないご都合など必要ない。
二つ目が、魔王のコミュニティは新興……つまり発足したばかりのコミュニティだと言うこと。そう考えると、これが初陣なのだろう。魔王とは初っ端から大胆にやらかすものなのね、とある意味感心する飛鳥だった。
そして三つ目は、白夜叉を封印した方法――――
「はぁい、そこまでよ♪」
扉の向こうで若干艶やかな響きの女性の声が聞こえた。間違いなく、魔王コミュニティに所属する一人だ。そして飛鳥はギフトで理解した。扉の奥の女は……あの時自分と懐に隠れる精霊を急襲した
「ジン君、黒ウサギの所に行きなさい。向こうの人は私が相手するわ」
「そ、それはッ…………はい、分かりました!」
一人では危険。飛鳥のギフトは交戦には向かない。そう思うジンではあったが、ここは飛鳥を信用して白夜叉の言葉を一刻も早く伝えねばならない。
一瞬の迷惑を振り払い、ジンは頷いた。
「良い返事ね。それじゃ――――
威光を適用されたジンは、瞬く間に来た道を引き返し、黒ウサギへさの元へと走っていった。
それとほぼ同時。飛鳥の目の前の扉が破壊され、部屋の状況を確認できた。
扉を壊したのは〝サラマンドラ〟の配下である火蜥蜴が三匹。左手には白夜叉。舞台側には露出度の高い白装束にフルートのような笛を持った女性。彼女は、余裕に凝然と佇む飛鳥を視界に入れるや、興が冷めたとばかりの呆れを吐いた。
「なんだ、人間だったの? てっきり〝サラマンドラ〟の頭首だとおもってたのに……」
「あら、ごめんなさいねェ〝サラマンドラ〟の頭首様じゃなくって、露出狂のおばさん?」
「なっ…………ふ、ふふッ。小娘ごときが、身の程を知らないようね……?!」
女はフルートを指揮棒のように振るった。それに応じて、体長二メートルはあろう三つの巨体が飛鳥へと飛び掛かる…………が、
「ふふ、
一匹残らず床に叩き落とされた。フルートの女性はその現象に驚愕し、表情を険しくする。今のから、恐らく彼女のギフトは精神干渉系のもの。自身の霊格を考えれば、人間程度に操られるほど彼女も甘くはない。そう自負できる。たが、彼女は自身のマスターか警戒するように言われた人物が三人いる。
――一人は、
――一人は、愛想のない茶髪の少女。
――そして、
「……そう、貴女がマスターが言ってた子なのね。黒髪の高慢そうな女の子……正に貴女のことじゃない」
「へぇ? 私も他人様に噂される身分になったのね……。ふふ、取り敢えず……貴女のマスターとは一度オハナシガシタイワッ!」
「っ!?」
目を離してなどいない。警戒も怠らなかった。なのに、フルートの女の前から飛鳥の姿が消滅した。前触れも何もなく、灯りをパッと消す時のように、一瞬で。
彼女は苦虫を噛んだように顔を顰め、飛鳥を炙り出そうとフルートに息を(ズブッ)……
「ごふっ……!?」
「はい、残念。貴女で二人目、隙だらけで欠伸が出そうよ」
彼女の心臓………ではなく、胸の中心部を白銀の十字剣が貫いた。背後にはユラリと微笑む飛鳥が、瞳に落胆の色を浮かべて立っていた。幾度と彼女が見せてきた消失の御技。初見で隙だらけなど言語道断だというのだろう。
女性は、血反吐を吐きながらも飛鳥から距離を取り空中へ退避した。流血が酷いが、そこは笛吹きの悪魔――面倒なのでラッテンと呼ぼう――突飛出た戦闘能力は無いとはいえ、人間よりは頑丈なようだった。
「ぐっ…ぅ……に、人間の小娘ごときに……!」
「なら貴女はその小娘以下ね。ふふふ……今のはね、貴女が鼠なんて小汚ないモノを仕向けてくれたお礼よ? あの時は手を抜きすぎて鼠程度の支配、エキスパートの貴女に破れてしまったけど、今回は如何かしらァ? ――――
ダンッ! と飛鳥の威光がラッテンをバルコニーの床に縫い付けた。有り得ない……! そう思うも時既に遅し。飛鳥は彼女の前にしゃがみ込むと、愉快そうに顎を指でなぞった。背筋がゾッとする。
「アハッ♪ 滑稽ねェ、支配する側が支配されるなんて。人間だからって甘くみてるからそうなるのよ? 貴女達………へえ、他にも二人居るの? 信頼感も上々。新興ながら絆は強固ってこと? ま、いいわ。そんなこと私には関係無いし……フフフ」
「ぐっ……!! 」
「はぁあ、貴女達も可哀想。よりによって私達が訪ねてる時に襲撃なんて……白夜叉さえ封じれば安心だと思ってたの? ん、それにしては最初に警戒してたみたいだから………半信半疑だったとか? ――――はぁ……お喋りも飽きたし、如何する?」
飛鳥の瞳がラッテンの苦渋と憤恚を映し、ますます冷酷な笑みを湛える。彼女の質疑はこうだろう。此処で今直ぐに消えるか、それともまだ良いように玩ばれるか?
実質選択しなど無いも同然。ここでゲーム盤を引っくり返そうにも、笛の音を奏でる事が出来なければラッテンは無力にも等しかった。
だが、彼女もそう簡単に……まして、このような小娘に挫けている暇はない。
半ば無駄だと悟るも、彼女は己の霊格を駆使して拘束から抜けようとした―――――刹那、北の街に雷鳴が轟いた。
「そこまでです!」
「え、なに……黒ウサギ?」
飛鳥は唐突に聞こえた黒ウサギの声に唖然として、彼女の立つ尖塔に目を向けた。
「〝
呆然自失とする飛鳥。今黒ウサギは何と言った? ゲームを中止? 確かに、ゲームの不備が考えられるとさっき白夜叉から伝えられて、その伝言をジンに託した。ちゃんと因果の理に叶った中止宣言だ。
しかし、しかしだ。何故このタイミング? 明らかに飛鳥が魔王陣営の一人をなぶ……優勢な時に?
ああ、彼女は勿論分かってる。自分だけがこのゲームに参加してるわけではないのだから、個人の我が儘が通る訳がない……
「………。ねぇ……白夜叉」
「う、うむ? ど、如何した飛鳥……?」
白夜叉が軽くキョドった。色々と緊急事態な中飛鳥の無感情な笑みにビビってた。
「あのね? 私の中でとある感情が渦巻いているのだけど…………何か丁度良い情念ノ捌ケ口ハナイモノカシラ……?」
虚ろな笑い声を洩らす飛鳥。彼女から黒いオーラが立ち上ってるように見えた白夜叉は、敢えて閉口し静かに心の内で合掌した。
一方のラッテンはというと、まさかの敵陣営に助けられるという屈辱感……より、安堵の念の方が勝ったのか、密かに息を吐いた。
ラッテン、黒ウサギに救われる