■■■■たちが異世界から来るそうですよ?【削除&改訂予定】   作:白結雪羽

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それぞれの一時

 ────二日前、ギフトゲーム〝The PIED PIPER of HAMELIN〟の審議決議、及び交渉は終わった。

 不正は見付からず、プレイヤー側は不利な状況でのゲーム再開を強いられる……筈であったが、〝ノーネーム〟のジン=ラッセルの尽力により、最悪の事態は回避。魔王の正体、〝黒死斑の魔王〟こと斑少女。名をペストと言うらしい。

 彼女と舌戦の末、参加者は一週間の相互不可侵を経たのち、24時間のタイムリミットの中でゲームを再開する事となった。

 24時間クリア条件を満たされなければ主催者側の勝利、24時間以内に条件を二つ、または24時間経ち条件が一つでもクリアされていればプレイヤー側の勝利。尚、その時からは〝箱庭の貴族〟である黒ウサギも参戦可とし、自決、同士討ちを犯した者は即刻脱落とする。

 

 

「……そう。やっぱり、まだまだ甘いのね……」

 

 

 展示会場の最奥。其処を拠点とする斑少女────ペストは、二日前の交渉に軽い叱咤をされて、ヘコんでいた。

 今まで悠然とした姿勢を崩してこなかった? 彼女の珍しい一面である。そんな彼女を、ラッテンは慰めつつ内心可愛いな~と悶えていた。

 

 

「だ、大丈夫ですよマスター? マスターはよくやっている方ですってば~」

「……駄目。こんな体たらく、貴方達のマスターとして顔が立たないわ……」

「わ、マスターが珍しく下手に……?! かなり違和感ある……けど可愛いわねもぉ~!」

「おいラッテン、からかうのも大概にしておけよ。マスターがこれ以上拗ねたら如何する?」

「…………」

 

 

 ペストは無言になり、射殺さんばかりの威圧感のヘッタクレも無い瞳でラッテンと十六夜と対峙した男・ウェーザーを射抜く。

 場の空気は何というか……とても和ましいものだ。もう交渉席前の尖った空気が嘘のよう。そしてやはり、悠然としたが印象的なペストが見た目相応の反応を示すのはかなり違和感が……またはレアな光景だ。

 

 不意にペストは、膨れ面のまま備え付けのベンチから立ち上がり出口へと続く通路へと歩き出した。

 

 

「あっ、ちょっとー。マスタ~何処に行くんですかー!」

「………風に当たってくる」

「えっ。それなら私も付いて」

「来なくていい。…………ふんっ」

 

 

 最後に不貞腐れた子供のようにそっぽを向いて行ってしまったペスト。そんな彼女にラッテンとウェーザーは苦笑して、見送ってあげた。

 

 

「ふふ。……マスターも、最初の頃とは大違いね」

「まあ当然だろ。〝アイツ〟の知り合いって知れば厭でも納得できる」

「本当っ、久しぶりだったわよねえー……タイミングが見計らったようで、変わらず何を考えてるのかサッパリ分からないけど」

「〝不羈奔放(ふかほんぽう)の魔王〟の名は伊達じゃねえって事だ。寧ろあれを理解できる奴は相当なキレ者だよ」

「…………今からでも尽力願いたいものよねぇ……」

「ハッ。それは、マスターの意思次第だな」

 

 

 

 

 ────場所は変わり境界壁の頂上。

 ペストは今までの無表情な彼女に戻り、夜に沈む黄昏の街を見下ろしていた。二日前までの活気は全く無く、何処と無く寂しさを覚えてしまいそうな雰囲気。当然ながら、彼女はそんな事は微塵も感じていない。

 

 

「…………」

 

 

 目を閉じ、舞台に潜ませた呪いを感じ取ろうとする……が、その気配は一切合切感じられず、完全に霧散していた。

 はぁ…と溜め息が漏れ、間を置かずに歯を噛み締めた。

 

 

「駄目ね……本当に、駄目。魔王が弱気になるなんて………これを見れば弱きにもなるわよ……」

 

 

 彼女の弄した策が、悉く潰されていっている。呪いを解かれた以上、相手は万全の状態で一週間後、勝負を仕掛けてくるだろう。勿論程度の知れた有象無象共に打ち果てるなんて愚かな醜態は見せない。否、そう考えている内だからこうして何もかも失敗に終わっていくのだろうか?

 

 

「ねぇ……教えて。私、如何すれば良いの…………?────……そう。でも、その時は……────……っ、くッ……!」

 

 

 ()()()()()、天を仰いだ。その瞳には迷いが、怒りが、悲しみが……様々な感情が渦巻き、そして陰に隠れるように…………

 

 

「────……そうね。……そうよ、あの時言ったじゃない……邪魔立てするようなら……殺す、って。それで、良いのよね……? ────フフ、何よその的を射てるようで全く見当違いな檄は……────なっ……う、煩いっ。わ、分かってたわよそのくらい……────う、うん……。ありがとう、ってこれで何度目かしらね。本当……(魔王)らしくないわ……」

 

 

 最後にそう零しつつも、些か気分が晴れたペストは境界壁を後にする。だからと言って、やる事が変わったわけじゃない。あくまで冷徹に、冷酷に、主催者(ホスト)としてとしてプレイヤー達の相手をするのだ。

 彼女が背負う万斛の怨嗟は、こんな辺境で潰えて良いほど安くは無い……

 

 

 

 

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

 休戦期間──六日目──

 

 

「……十六夜さん」

「んー? 如何した春日部………って本当に如何した? んな分厚い本なんざ持ってきて」

 

 

 運営本陣、宮殿の尖頭下────西洋瓦の上で暇を持て余していた十六夜の許へ、春日部が大量の参考文献らしきものを抱えて飛んで来た。何故十六夜はこうも高い場所によく居るのか(何とかと煙は高い所が好きと言うが、言ったら後が酷そうなので自粛)はさて置こう。

 耀はドサリと本を二、三個その場に置くと、彼の隣に座って訳を話した。

 何でも、黒死病の危機は耀のお陰で去ったとは言え、謎が解けなければ意味が無い。モチベーションの低下は死守出来ても解けなければ意味が無いのだ。まあ要するに……

 

 

「俺も手伝えってか?」

「そういう事です。飛鳥さんが今は何処かに行ってしまいましたし、他の参加者の人達も、残り一日という事で躍起にはなってますけど挫折気味です。ここは十六夜さんの意外性トップな知能が必要なんです」

「………。珍しく饒舌になったと思ったら……なんだ? 春日部は俺に助けを求めに来たのか? それとも馬鹿にしに来たのか? もし後者ならその喧嘩、勝ってやるよ」

「いえ、そんな物なら包装して送り込んだ船がタイタニック状態ですから結構です。……それよりも、」

「春日部が引っ張ってけばいいだろ。お前でもこの程度の謎、直ぐに解けるさ」

「解けていたら、訪ねたりなんて…………え? い、今なんて……?」

 

 

 聞き間違いか? 耀は聞き捨てなら無い詳細が聞こえた気がしたため、十六夜に再度問うた。

 

 

「あ? その貧相な胸の悩みなら俺なんかより黒ウサギに聞けって(ズガンッ!!)……ったく、冗談だっての。そう怒るな」

 

 

 寝転ぶ十六夜の真横でパラパラと洋瓦から耀の手が抜かれる。いくら下着ワイシャツで屋敷を闊歩出来る無頓着な耀でも、譲れない点はあるみいだ。

 これ以上ふざけるのも逃げるのも良しとしないためか、十六夜に馬乗り状態となって閑話休題。耀は再問う。

 

 

「…………それで、今さっき何と言いました? 「お前でも」? 私にはもう謎が解けているフレーズに取れるのですが……」

「あぁ、解けてんぞ」

「…………因みに、」

「三日前」

「…………」

 

 

 三日前。つまり交渉から三日後。その時にはもう十六夜はゲームのクリア条件を理解していたという事だった。では、必死に黒ウサギやジン達、参加者の人達が四苦八苦して解明を急いだあの三日間は何だったのか?

 逆廻十六夜は娯楽が好きだ。快楽的思考の持ち主で、自分が満足できれば基本それで良いような少年だ。そして、同時に努力をした怠惰な少年でもある。彼は面倒な事が嫌いなのだ。偶に面倒と娯楽の為の境界線が分からなくなる時もあるが、目に見えて面倒な事はパスをする。

 

 

「……で、如何する? 怒りに任せて俺を殴るなり打っ飛ばすなりするか? 今なら一発位は甘んじて受けてやら無くもねえぜ?」

「…………はぁ……。いえ、結構です。貴方はそういう人でしたね……」

「漸くご理解戴けたようで何よりだ。ま、取り敢えずは退いてくれ」

「嫌です」

「………。下の奴等に解答を、」

「まだ時間はあります」

 

 

 聞く耳も無しの取り付く島は無し。十六夜は呆れたように肩を竦めると、素直に諦めた。

 耀は、そんな彼の腹部を枕にして、一緒に寝転んだ。傍から見ると仲睦まじい恋人同士にも見えなくもない光景……だが、別に二人はそんな関係ではない。

 

 

「……星空。こうして正面と向き合ってみるのは、何時以来でしょうか……?」

「俺に聞かれても困るんだがな、」

「「…………」」

 

 

 会話が途切れる。本来耀はあまり喋る方でもないし、十六夜もそれを分かっている。自然と会話は無くなっていくのは寧ろ当たり前だろう。静かな時間。いよいよ以って、発展はしなさそうなものの、良い雰囲気になってき────

 

 

「む、十六夜、耀! 二人ともこんな所に居t…………何をしてるんだ?」

 

 

────たところで空気の読めない(来たばかりだから寧ろ普通だが)ロリ吸血鬼(レティシア)のご登場。状況が読めず、首を捻る彼女に二人は、

 

 

「「…………使えないロリ(ボソッ)」」

 

 

 グサリ! そんな音が聞こえた気がした。 

 耀は持ってきたハーメルンについての参考文献を抱え直し、十六夜は耀が退いた後に立ち上がり、二人してその場を後にする。

 残されたロリ吸血鬼は……

 

 

「わ、私は…………私は使えない子なんかじゃなああああああぁぁぁぁぁぁぁああああいっ!!?」

 

 

ややおかしくなって(言い換えるなら滑稽?)夜空に向かって叫んだ。

 

 

 

 

 

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