■■■■たちが異世界から来るそうですよ?【削除&改訂予定】   作:白結雪羽

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呆気無い終幕、そして

 二つの旋風が鬩ぎ合う。片やペストの死の風、片や耀のグリフォンから授かった風だ。ペストに致命傷は与えられない、それでも縦横無尽に迫る風圧に気を取られて先程よりも黒ウサギの轟雷とサンドラの火球を捌き辛くなっていた。

 彼女は眉間を顰める。おかしい、此方はもう殺すきで死を〝与えよう〟としている。この場合、死の風にはあらゆる物理的干渉は通用しなくなる……その筈なのだ。例外も勿論存在するが、目の前の少女の風がその例外に入るかと問われれば迷わず〝否〟と答える。初めは神格を持った神童の類いかと疑った。だが直ぐに否定する。では何故……

 ――――そんな時だった。ハーメルンの街が激しく振動したのは……。同時に感じる、同士の二人の霊格が消滅したのを。

 間に合わなかった。彼女は思う。結局、高を括ってゲームに臨んだ結果がこれだ。徹頭徹尾、全ては主催者である自分のゲームメイクの甘さ。これまでにも幾度と思考した。しかし結果に反映などされなかった……。全て、全ては………

 

 ペストの全身を三人の一撃が直撃し、家屋を何軒か突き破って漸く停止した。酷い手傷、だけど神霊であるこの身だ。瞬く間に熱傷も内出血の痣も、全ての傷が癒えていく。

 ペストは起き上がろうとしない。瓦礫の隙間から日が沈み始めいよいよ薄暗くなってきた空を見つめる。

 

 

「――――……如何してかしら。何だか、胸の奥が酷く痛むわ。――――……そう、ね。いいわ、それ以上慰めなんて……――――そう。……少し暗いなら慰めてくれてもいいじゃない……――何でもない。――――……フフ、魔王、か。なんて無様で滑稽なんだろ……本当、に――――」

 

 

 

 

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

「……やった?」

「いいえ。相手は神霊、それも恐らく〝与える側〟の高位の存在。先の攻撃で倒れるとは思えません」

「…………」

 

 

 ペストが吹き飛ばされた瓦礫の山から若干の距離をとり警戒をする三人。早計で安易な考えは捨て、僅かな動きも見逃さないようにする。

 

 ……ガタ。耀の驚異的な聴覚が微かに立った物音を捉えた。そして次に彼女の触覚が、空気の振動を感じとり――――

 

 

「……後ろです!!」

「「っ!」」

 

 

 耀の叫びに触発され散々に解散する三人。その直後に猛り狂う死の風が死角の建物を粉砕しながら通った。耀は、その風の孕んでいた殺気の密度に冷や汗を流す。

 

 

「――――何度も考えさせないで。何度も言わせないでッ。さっさと………死んでくれない?」

 

 

 瓦礫を吹き飛ばし現れたペストは、神格を解放し、天をも覆う絶対死の陣風を解き放つ。神格所有者の更に高位、〝与える〟権限を持つ者が行使できる最高にして最凶、手加減抜きの神業。

 

 

「黒ウサギさんッ、私もあれは流石に返しきれません!!」

「向こうも霊格を解放してきたということですか……!」

「ま、不味い! このままじゃステンドグラスを探している参加者がッ!!」

 

 

 ステンドグラス。〝偽りの伝承を砕き、真実の伝承を掲げよ〟のクリア条件を満たすための鍵。耀達主戦力が主催者に対応している内に、残りの参加者達はハーメルンの街を奔走していた。そんな中、ペストの死の恩恵が吹き荒れる……先ず只では済まない。

 異変に気付いた参加者達は〝サラマンドラ〟の者達の誘導で屋内に非難する。だが、そのせいで逃げ遅れた彼らは襲い来る死に当てられ次々と命を落としていった。

 

 

「よくも……サラマンドラの同士を……!!」

「如何しましょう黒ウサギさん……。他の参加者に手を回す余裕なんてありませんよ……!」

「そう、ですね。(十六夜さん………仕方ないです。こうなったら、勝負を掛けるしか……!)っ!」

 

 

 黒ウサギと耀の後ろから、一筋の閃光が駆ける。ペストへと空気を焼きながら一直線に進むそれは、彼女の意識が向く前に接触し、諸共大地を割った。

 

 

「ガァッ……!!?」

「よお魔王様! ちぃとばかし遅刻しちまったが……春日部が手ェ抜いてたお陰で俺もまだ楽しめそうだな!!」

 

 

 ウェーザーの時のまま雷電を纏った十六夜の拳がペストの腹部を突き抜ける。身体を地盤ごと砕かれ雷を流されたペストは黒ウサギ達の時とは比べようもない、速攻で満身創痍へと貶められた。そこに十六夜は更に容赦のない蹴りを繰り出し、地盤を十数メートル陥没させて黒ウサギ達のもとに降り立った。

 因みに丁度その時に雷電も効力を失って何時もの彼に戻っていた。

 

 

「いっけね。やり過ぎたか……?」

「「「…………」」」

 

 

 答える者は誰もいなかった。死の陣風が治まった事に対する安堵の表情も。開いた口が塞がらない、正にそんな表情で十六夜を見る黒ウサギ達。まだ耀は復帰が早かったが、それでも呆れを通り越して可笑しくて笑ってしまう。

 

 

「十六夜さん……やり過ぎです」

「かもな……だがまぁ、魔王を隷属させたきゃアイツを倒さなきゃならねえだろ? かと言って手を抜いて如何にかなる相手でもなさそうだったからな。」

「確かに、回復力は異常でした……。黒ウサギさんの雷、サンドラさんの龍火、私の神風を受けても十秒足らずで完治でしたから」

「そりゃまた面倒な。んじゃまだ叩いとくか? 細部の制御を司ってる腕を潰し続ければ大丈夫だろ」

「な、何て鬼畜な手法を考え付くのですか十六夜さんは?! 警戒を怠らないとこは良識的判断ですのに!」

「相手は理不尽に秩序を破壊する魔王だぜ? 慈悲も情けも必要ないだろ」

「そ、それは……そうですけど、」

 

 

 黒ウサギが言い終わる前に十六夜は屋根を蹴って陥没点の上空に移動、そのまま右手を掲げて身の丈5倍は有りそうな岩塊を発現させた。

 黒ウサギはその出鱈目な大きさに顔面蒼白となり、慌ててサンドラと耀と共に安全圏まで後退した。

 

 

「オラァ!! とっとと起きろよ魔王様ッ!! 就寝時間にしては早すぎんぞ!?」

 

 

 ハーメルンの街並みが加速して瓦礫を増やしていく。ただ、彼も何も考えずに暴れているのではない。クリア条件に必須なステンドグラスを巻き込まないように直感で調整はしている。果たして彼の直感が信じられるものか、不安でしかないのだが……きっと大丈夫だろう、多分。

 

 ……まさかの、十六夜の凶行はそこで止まらなかった。岩塊を叩きつけたあと彼は重力に従い落下、瓦礫の山を払拭して腕を突っ込んだ。

 

 

「捕まえ…った!!」

「ぁ……ぐッ………!!」

 

 

 首根っこを掴まれ引き摺り出されたペスト。片目、片腕が完全に潰され、両足は力なく揺れており、胴には瓦礫の尖端が複数突き刺さっている。それでも彼女の身体は回復の兆候をみせていた。しかし、死の恩恵を十六夜に与えようとする力は一時的に絶たれてしまっているようだ。

 

 

「あらまぁ、十六夜君。これはまた……派手にやったわね」

「おっ? 飛鳥か……って、おいおい。何だよその鉄人形。どっか行ってたかと思ったらそんな面白そうなもの奪いに行ってたのか?」

「奪ったなんて……ちゃんと正当な手段で貰ったのよ。まるで私が普段から人から強奪してるみたいに言わないで頂戴」

 

 

 ディーンに乗った飛鳥が一行に合流する。耀達も十六夜に促されて地上へと降りてきた。

 

 

「――――…………!!」

「春日部さん。――──()()()

「……っ?!」

 

 

 飛鳥の威光が発動。対象は耀………ではなく、十六夜に捕まりながらも抵抗を試みたペストにだ。普段の飛鳥では高位の神霊というを押さえ付けることは……出来ても数秒。だが今は耀に霊格を増長させたので、ペストは腕を十六夜に向けた状態で停止した。なんという対応力だろうか、普通なら真似できない息の合った流れだった。

 

 

「おう危ねえな。つうか、本当に回復が早すぎだろ。半ば殺すきで殴ったんだがな……」

「本気ではないところが嫌味ですね。――――それで、黒ウサギさん。この魔王さんですけど……如何します? 今は私と飛鳥さんで押さえてますけど、このまま放置という訳にもいかないと思いますが……」

「い、いや。そもそも魔王を取り押さえること自体異例過ぎて黒ウサギも対応に困るのですが……と、取り敢えず他の参加者方がステンドグラスの捜索が終わるまで押さえることは出来ますか?」

「今ならお茶の子さいさいよ。春日部さんが四割くらいで頑張ってくれてるから」

「そ、それは頼もしいですネ……」

 

 

 ヘニョリとウサ耳を萎らせて内心大変戦慄する黒ウサギ。この三人は彼女の想像以上に敵に回してはいけないと、そう実感出来た瞬間であった。

 

 

 

 

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

「(…………はぁ。なんて様かしら。今更、悪かったのは私だけじゃなくて相手もだったのか……――――ここまでくると落ち着きもするわ。最後の最後、勝手に癇癪を起こして、その挙げ句に一方的に臥せられるなんてね………フフ、嗤えてくるでしょ?)」

 

 

 ペストが飛鳥の威光に縫い止められ凡そ三時間。参加者達は全てのステンドグラスを発見、真実の伝承であるウェーザー川が描かれたもの以外を割り終え、広場に集まっていた。

 集合した彼らは魔王がその場に居ることにギョッ!? としたが、サンドラが事情を説明し今では喜び勇むものが殆どだ。魔王という脅威が手を出せない、これ程の安心材料はないだろう。そんな彼らの姿は、ペストにとって非常に屈辱で苦渋を飲む事でしかなかった。

 

 

「(完全な敗北、ね。まだ、こんな所で終わるわけにはいかないのに………皆の、太陽への復讐が達成出来ないまま果てるなんて……! ――――煩い! こんな時も見ているだけの()()に何が解るって言うのよッ!! 私は――――……えっ? ――――…………)」

「……ねえ、貴女って情緒不安定なの? さっきから()()で躁鬱と……五月蝿いから大人しく黙ってなさいよ」

 

 

 ペストの横で威光を適用中の飛鳥は煩わしそうに顔を顰めてペストを叱責した。

 と、その時。パリンッとハーメルンの情景が砕け散り、其処は元のペンダントランプが照らす黄昏の北の街であった。そしてハーメルンの街の消失……詰まり〝ハーメルンの魔書〟の効果が失われたことで、そこをプロセスとして神格を会得していたペストから神霊としての霊格(そんざい)は無情にも霧散した。彼女に残されたのは、格段に下がった群霊としての霊格のみである。

 

 

「ん? ……春日部さん、もういいわ。何だか拘束が楽になったの」

「そうですか……?」

 

 

 耀はギフトの使用を止めた。ペストは……逃げることは出来なかった。と言うより顔に翳を落として沈黙していた。

 

 契約書類に第二勝利条件クリアの文字が浮かび上がり、粒子となって虚空へと消えていった。その後直ぐに無事解放されたのか、白夜叉が忽然と現れ、申し訳なさそうに頬を掻きながら参加者に謝礼を申した。しかしながら批難の声が一切上がらないのは、彼女への厚い信頼が伺えるものだと思う。

 

 

「なあ白夜叉。あれは……〝ノーネーム〟が引き取っても大丈夫なんだよな?」

「む? ああ、勿論だとも。しかし……まさか本当に魔王を組伏せるとは思わんかったぞ。益々おんしらに興味が湧くのう。どうだ、この後の祝勝会で私と一興でも講じてみんか?」

「ハハッ、気が早くないか元・魔王様。それは将来のお楽しみに取っておくんじゃなかったのか? ま、俺は一向に構わないけどな」

 

 

 黒ウサギのストレスがマッハになりそうな不穏な会話を交わす十六夜と白夜叉。二人はサンドラの勝利宣言で歓声の上がる広場にて、愉快そうに笑うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「全員直ぐに逃げなさいッ!!」

 

 

────威光を発動するのも忘れ、僅かな恐怖と焦燥を孕んだ飛鳥の叫びが発せられるまでは。

 

 

 

 

 




次回、安直でありふれたフラグ回収
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