■■■■たちが異世界から来るそうですよ?【削除&改訂予定】   作:白結雪羽

28 / 65
異邦人たち静閑な酒宴

 

 

 

 ある日の〝ノーネーム〟本拠、屋根上にて。その日も箱際の夜空は星々に彩られ、月も互いに輝きをジャマすることなく鎮座していた。これが満月だったならばツマミと酒瓶片手に月見と洒落込みたいものだ。

 だが、此処に月の満ち欠けに関係無く酒を仰ぐ者たちが居た。〝ノーネーム〟の誇る問題児三人組、及び数日前に〝ノーネーム〟へと居候となった現・魔王こと萃である。三人と気紛れで箱庭中を荒らし、時には安寧をもたらしてきた魔王様が何故(なにゆえ)本拠の上で酒を酌み交わしてるのか……大層な理由はない。それこそ気紛れだ。

 

 

「アンタって、本当に自由だよな。この前のゲームも中途半端な締め方しやがって」

「ハッ、なにを小生意気な。自分があそこで止めにしなけりゃ、北は終いじゃったぞ? それ以前にの、飛鳥に荷を移した時点で察してはいただろ?」

「…………捻くれてる割に判断は利口だからな」

「何、誉めてくれるのぉ? アハハ、ならお礼に十六夜君の残り酒を貰っちゃうわね~?」

「ざけんな。一升瓶を五本も空にしといてまだ飲む気かっ」

「なによ悪いの? 今宵は私たちの酒宴っ、飲まなくてどうすんのよぉ!」

「……飛鳥さん、流石に飲みすぎです。そろそろ止めておいた方g、ムグッ?!」

「ほらほら春日部さんもそんなツマミばかり食べてないで飲みなさいよっ♪」

「んー! んんーー!? ぷはぁッ……ま、待って下さい飛鳥sムグッ!!?」

「アハハハハっ♪」

 

 

 酔いが回った酒乱(飛鳥)に酒瓶を口に突っ込まれた耀は何とか逃げようとするが、酒乱からは逃げ切れなかったようだ。結果的に押さえつけられて無理矢理飲まされる事となった。

 元より耀はお酒を口にしてはおらず(未成年であるからか、もしくは下戸)、一度に大量のアルコールを体内に流し込まれれば……まず危険だ。最初は目が虚ろになってき、徐々に顔が赤くなってくると力無く飛鳥のされるがままとなってしまった。

 

 そんな戯れる? 二人を萃は愉快そうに笑って眺める、一応深夜帯なので声量の気遣いはして。十六夜も不味いとは思っているが助けようとはしない。何せ口を出せば酒乱の被害が自分にまで回ってくるのだから。

 

 

「ククッ、惜しいのう。忍びの酒宴じゃのうたらチトは悪ノリも出来るものを」

「魔王様の悪ノリなんざ笑えもしねえよ。────んで、どうしてこんなとこに居るんだ?」

「話を聞いておらんのか? 自分は箱庭の創世期からの古参じゃぞ? しょっちゅう余所へ行っておったから実質数百年程度の付き合いじゃがの」

「それは聞いた。俺が聞いてんのは何故図ったようにこのタイミングで来やがったかだ」

「……分からんのか? 十六夜のお頭はただの飾りか?」

「…………愚問だったな、忘れてくれ」

「カカッ、まあ良いよ」

 

 

 萃は手前持ちの酒瓢箪に口をつける。量としては四人の中では最も飲んでいるというのに全く酔いの様子が見えない。

 対して十六夜はペースが遅く二本目を半分減らしたところ。だがまぁ、急いで飲む必要も無い。時間はまだまだあるのだから、それに後ろで今さっき目を回して倒れこんできた耀の様にはなりたくはない。

 チラリと横目で飛鳥の方を見ると先程までの酒乱っぷりは何処へやら、静かに黄昏て猪口を口に運んでいる。着物姿も相まって中々様になっていた。

 

 

「飛鳥、もういいのか?」

「……いいえ。そっちの……低い方、貰える?」

「程々にな」

「……分かってるわ」

 

 

 度数の低い一品を受け取ると、再び静かに夜酒を始めた。

 

 それから暫く、三人の間に会話はなかった。聞こえるのはコポコプと液を注ぐ音にチンッと瓶が地に付く音のみ。

 ──ふと、そんな静寂に踏み入る少女がいた。

 

 

「……貴方たち、姿が見えないと思ったら何お酒なんて飲んでるのよ……」

「ん? ……なんだペストか。どうしたこんな時間に、お前にやる酒ならは生憎とないぞ? 外見年齢お子様のロリ婆にやる酒は無いっ」

 

 

 唐突な闖入者は萃と共に〝ノーネーム〟に身を置いているペストであった。ペストと認識した瞬間、十六夜は軽く煽ってみた。理由は単純、何となくだ。そして案の定ペストは額に青筋を浮かべ、

 

 

「そう。取り敢えず喧嘩を売られた事は分かったから死ぬ覚悟は良いわよね……!?」

「これペスト。折角の酒宴に殺気を撒くな、酒が不味くなる」

「そういう問題じゃないで──っ………分かったわよ……。っていうか、人に歳の事言うならアンタたちも同じでしょうがっ。月の兎にチクるわよ?」

「別に構わねえぞ? そん時はペストの弱みが五つ増える時だからな」

「そこは普通一つじゃないの?! って違う、一つでも最悪よ!」

「因みにレパートリーじゃがな、」

「言わなくていいわッ、って何で萃も入ってきてるのよ!」

「発案者なんじゃから、当然であろう?」

「ふざけんな!!」

 

 

 調子が狂う。何故自分はこんなにも弄ばれているのか、内心腹立たしいペストであった。そんな彼女もちゃんと声を抑えて時間帯を弁える気遣いは出来ているのである。

 ペストはずっと立っているのもあれなので仕方なく萃の隣に腰を下ろした。残念ではないが酒は行ける口ではないのでツマミだけ貰う。

 その時彼女はふと思った。ほんの数日前に殺し合いをした仲だというのに、どうしてこんなにも馴染んでしまっているのか? 自分はあくまで復讐を達成する機会を見定めるために萃と一緒に〝ノーネーム〟に居座っているだけだ。それは萃も否定はしていない。だからこんな滅茶苦茶な奴らに気を許してやる必要も無いのに……、と。

 因みにその訳は、毎度の如く飛鳥の精神干渉系の謎スキル〝心神の種〟によるものなのだが、そんな事過ごした日の浅いペストが知る筈も無い。ましてコミュニティ内でも個人の見解に一任している状態なので、理解しているのは現時点では十六夜と耀と萃ぐらいだ。

 

 

「なぁペスト、水いるか?」

「…………戴くわ」

 

 

 水割り用のか、それとも酔い醒ましのためかは別にいいが、十六夜の注いだ水を素直に受け取る。それを口に含んだ所でまた十六夜から、

 

 

「なぁペスト、お前って……萃に惚れてんの?」

「ぶふぅーー!? な、なっ……いきなり何よ?!」

「おう、そうらしいの」

「萃は黙りなさい! あ、貴方、い、いいいい加減な事言わないでくれる!?」

「…………やっぱいいわ。大して興味もなかった」

「敗血症にするわよ貴方!?」

 

 

 声を抑え、十六夜に掴み掛かって怒鳴り散らす。しかし顔は茹蛸のように真っ赤で、問いの真偽は大凡分かったも同然であった。

 ヤハハ、と憤るペストを適当にあしらい、十六夜はまた月見酒に戻っていった。暫く騒いでいたペストも、その騒ぎ方が墓穴を掘っている事に気付き、蹲って拗ねてしまった。

 

 そして再び静か酒宴が始まった。今宵はまだまだ長い。彼らは朝日が昇る前、寅の刻まで悠々と酒を交わすのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 余談だが、翌日に飲み明かした中で二日酔いにあったのはある意味被害者の耀だけであったそうな……

 

 

 

 

 




次回は……乙に入りたいと思います。その次に短編のアレを挟んでアンダーウッドへ、ですかね。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。