■■■■たちが異世界から来るそうですよ?【削除&改訂予定】   作:白結雪羽

29 / 65
─■■■■と移動サーカス団─
そうだ町へ行こう


 

 

 

 

 〝ノーネーム〟の農園区は二ヶ月ほど前に比べて驚異的な変貌を遂げていた。詳細は語ってないが、以前十六夜と耀が気紛れで再生させたとは言ったと思う。とは言っても彼らがしたのはあくまで土地の再生。栽培については種子が不足していたので大きな事は今まで出来なかった。

 だがこの前、北の街を襲撃した魔王を形式上抑えた功績によって、〝ノーネーム〟は〝サウザンドアイズ〟から報酬を戴いているのだった。その中には栽培の元もタンマリとある。

 変貌とは言ったが、流石にもう収穫できるなんて事はない。まだ農園区の開拓とその端から植え込み作業の最中である。黒ウサギを筆頭に今日も子供たちは役割に従って勤しんでいた。

 

 

「────で? 何で私まで手伝わなきゃならないのよ。意味が分からない」

「えぅ……そ、そのね? 萃様からペストちゃんは麦作に詳しいって聞いたから……その、アドバイスをして欲しくて……」

「あの馬鹿…………残念ながらお断りよ。やるなら勝手にやりなさい」

 

 

 そんな作業風景を何気無しに眺めていたペストは、割烹着狐耳の少女・リリに畑作の手伝いを乞われていた。内容は彼女の言う通り、ペストが知っているらしい麦作についてだ。リリも用法を知らない訳ではないのだが、ここは少しでも多くを知っている準専門家に聞くべきかと思ったのだった。

 しかしながらペストの返答は否だ。何時かの晩にも思った事だが、彼女と〝ノーネーム〟はあくまで半永久的な休戦状態なだけ。所属はつどいの下となってはいるが、それでも彼が〝ノーネーム〟に所属した訳ではないので手を貸す道理も無い。

 居候の身で何を偉そうにと思うが、一応あってはいる。……が、案の定その言い分にツッコム者は現れた。

 ペストの後頭部に衝撃が走る。それ以上に勢い余って顔から地面に突っ込んだ。文字通り『つっこまれた』。

 

 

「っ~~~~!?」

「リリちゃん、すまぬの。こ奴はどうやら『働かざる者食うべからず』という道理を知らんようじゃ。一時とは言え世話を掻く身の上、自分もペスト手を貸すから安心せい」

「そ、そんな! 恐れ多いです! わざわざ萃様の手を煩わせるなんて、」

 

 

 だったら何か? 私は手を煩わしても問題ないとでも言うのか。悶えながらも耳に届くリリの声に若干憤りを覚えるペストであるが、次に上がった萃の哄笑にそちらへのムカッ腹の気持ちが集う。

 

 

「カカッ! 気にするもんじゃない。以前にも『ここ』には世話になった事はあるし、その延長戦じゃ。それにな、自分は上下関係はあまり好かんのよ、気楽に接してくれて構わん」

「は、はぃ……分かりました……」

 

 

 萃の豪気に気圧されるリリ。

 その傍ら、挙骨にしては重すぎる一撃を貰ったペストが復帰し、萃へと抗議の視線を向けた。だが萃はそんな視線は気に留める事も無くスルーし、鍬を手に畑おこしをしている黒ウサギの元へ寄っていく。

 

 

「よう黒ウサギの嬢ちゃん、今日も精が出るのぉ?」

「あ、萃様……子ども扱いはそろそろ止めて頂けませんか? 私ももう立派な大人ですよっ」

「ほう、もう経験済みとな。いやはや、見ないうちに積極的になったんじゃなぁ~」

「そういう意味じゃ御座いませんよ?!」

「ん、ではどういう意味か? ほれ、自分の口から申してみよ、ん?」

「この変態! 真昼間から何セクハラしてんのよっ!」

 

 

 黒ウサギが叫ぶ前にペストが萃の胴を打つ。何だか敵味方以前に一人の女性として今の発言は頂けなかったようだ。

 そして当の老い耄れはというと、特に反省するでも無しに豪快に笑って話を流すだけだった。今なら以前の耀や飛鳥の『老害』呼ばわりの気持ちが分かる気がする。確かにこれは『老』い耄れの『害』毒だ。ふざければ度が過ぎ、真面目にやれば別人と思えるくらいの温度差で掛かる……非常に取り扱い説明書が欲しいと思ってしまうペストであった。

 で、そんな影響度が原子力発電並みの萃は、一通りからかい終わると何処からともなく肥やしを萃めた袋を数個担ぐ。それを見て黒ウサギはウサ耳をピンッと伸ばして驚いた。

 

 

「まさか、手伝ってくださるのですか? 」

「嬢ちゃんも狐子と同じ様な事を言うんじゃな……。自分が手を貸すんがそんなに不思議か?」

「「はい」」

「……そうかい。っと、リリちゃん。その握り飯一つだけ貰えるかの」

「あ、はい。黒ウサギのお姉ちゃんもっ、疲れてると思うからちょっと休憩したらどうかな?」

「有難うございますリリ。黒ウサギの事は心配に及びませんよ。折角皆さんに元通りにしてもらったのですから、一日でも早く素晴らしい成果をお見せしませんといけないですからっ」

「……聞いて見る分にも信じられないわね、死んだ土地を一瞬で蘇らすなんて。殆ど神の奇跡も同義じゃない……」

「神の奇跡、か。……寧ろ逆かもしれんがの」

 

 

 萃の最後の呟きは三人には届くことはなかった。

 そんなこんなで、軽食挟み終わった一行。ペストも渋々だが手を貸すことにする。萃に言われては従わざる終えないのだ。

 

 

「さてっ────」

「大変でーーす!!」

 

 

 意気揚々と────のところ出鼻を挫くような叫びが……。何事かと一同が振り向くと、ジンがなにやらその手に持って駆けてきた。表情からして明らかに緊急事態。と、萃だけは何となく事情を察したように呆れ顔で頭を掻いていた。

 

 

「ジン坊っちゃん!? どうかされたのですか?!」

「そ、それが……! 今朝から十六夜さんたちの姿が見えなくて探していたら広間にこれが……」

「手紙……?」

 

 

 黒ウサギはジンから簡素な手紙を受け取り、中を確認する。

 

 

『前略──そうだ、町へ行こう。ってな訳でレティシアも連れてチョイと行ってくるわ。あぁそうそう、畑作の手伝いだが……まぁ頑張れ! ──by彼の三人』

 

 

 …………、暫しの沈黙。黒ウサギ、リリ、ジンは、手紙の内容に硬直した。方やペストと萃は、まぁ可能性の範疇と耕地作業に入る。

 …………、

 

 

「あ……ああ……あの問題児たちはーーーーっ!! まったくもーーーーーーッ!!!」

 

 

 今回の苦労人は一巡回って黒ウサギに戻ってきたようだ。レティシアに至っては、もう何も言うまい。

 

 

 

 

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

 〝ノーネーム〟で黒ウサギが叫喚を響かせている頃。十六夜たちはと言うと……本拠やお馴染みの区画からは少し離れた東側の街を悠々自適にほつき歩いていた。自適の通りに目的など無く、何となく楽しみを求めて探索するだけ。箱庭に着てからは何かと忙しなく過ごしてきた彼らにとって、偶には思うままにぶらつくと言うのも悪くないようで、三人の表情はどこか晴れやかだ。一応三人の中では真面目な方の耀も、今回ばかりは息抜きと考えているのか両手に屋台の品を抱えパクパクと消化している。

 そんなストッパーを失った彼ら、十六夜の脇にはもう違和感も感じられない……レティシアが力無く肩を落として並歩していた。

 

 

「ハハッ、行けども行けども知らない街並み! 流石は箱庭、全く飽きさせないぜっ」

「フフッ、久しぶりに羽を伸ばすにはもってこいね。伸ばしすぎて弛んでしまわないか心配だけど、その時はその時よねっ」

「出来れば避けたいですけど………ん、このチキンはいけますね。もう少し買っておけば良かったです……」

「あ、春日部さん。私にも一つ貰えるかしら?」

「はい、早く両手を空けたいので、好きに取っても構いません」

「後先考えずに買うからだ馬鹿。ま、丁度雑用もいるし全部預けておけば────」

「いやいやいや待て待て待てっ!! 農園区へ向かおうと思えば行き成り拉致して、逃げてきたから共犯と脅した上に今度は雑用とはどういう了見だ?! 私は君達のお守り役でもなければ使用人でもないのだぞ?!」

 

 

 雑用とまで言われて憐れなレティシア、とうとう十六夜の発言にキレてしまった。一見(似てはいないが)兄妹喧嘩の和ましい光景を目の当たりにしているようだが、当然そんな和み要素など皆無で、強いて言うなら手を焼く親御とその息子だろう。髪質は違えど十六夜もレティシアも金髪なのでそれはそれで有りかもしれない。

 

 

「有るかぁッ!! 誰がこんな悪ふざけの過ぎる男を息子にするものか!?」

「レティシアさん、壊れましたね……」

「そうだな。ま、取り敢えずは──、」

()()()()()()()()()()()()♪」

「っ……?! ──い、十六夜のばか! なんでいつもそうやって私であそぶのだぁ! あ、飛鳥もだぞっ! って……う、うぅ……や、やめないか飛鳥ぁ!?」

 

 

 今までにない飛鳥の〝威光〟の使い方。レティシアの舌が気のせいでも何でもなく拙いものとなってきた。それに行動も十六夜の腰に引っ付いて駄々を捏ねる子供、もとい幼児のようになっている。元より幼い容姿のレティシアでもこれは如何せん幼すぎると思うが、飛鳥は大変満足なようだ。しかし言動が幼くなったと言えど彼女は吸血鬼、その力が衰えた訳では無いので、その被害を一身に被る十六夜はかなり不機嫌になっている。

 

 

「……おい飛鳥、やるなら手を抜くんじゃねえよ」

「あらごめんなさい。そうね……いっそ赤子までやってみる?」

「ッ!!? や、やだぞ! それはぜったいにいーやーだーーーー!!?」

「……抱っこって十六夜さんに甘えるレティシアさん(外齢13)…………面白そうですね」

「よ、よう……?!」

 

 

 耀にまで乗っかられて絶望を感じる。そしてドンドン拙くなっていくレティシアの口調に動作。なまじ中身が元のままなのが酷かった。

 

 結局、レティシアの幼児プレイはその場でキープとなり、今は十六夜に肩車されている状況となった。当人はギャーギャーと不機嫌を散らしていたが、十六夜がその度姿勢をわざとずらし「ひゃぁ?!」と可愛らしい悲鳴を上げさせられるループをされ続け、不服ながら今は大人しく現状を呑み込んでいる。下手に口を出すと墓穴を掘ってしまうと、彼女の大人な中身が考えた結論であった。

 こうして彼らはまた町の探索を開始する。途中で飛鳥と耀がナンパされたりしたが、飛鳥の『ドS体験学習』なる10秒に亘るオハナシの末、一人のドMを誕生させるに終わったあと、何事も無く愉快で楽しい時間がまた始まる。耀が物凄く引いていたが触れない事が身の為と思って頂こう。

 

 

「いざよいー、いったいドコまでいくのだぁー?」

「所詮見切り発車だからなぁ、行けるとこまで行くまでよ。まあ最低限日暮れまでには戻るかね」

「ぎゃくに、ひぐれまではかえらないんだな……。はあぁ…………む?」

 

 

 レティシアが何かに気付き顔を上げる。それは他の三人も同じで、会話を止めて前を向いた。すると、

 

 

「どいて退いてぇーー!!」

「だが断る」

「hムグッ?!」

 

 

 前方の人混みから一人の少女が人を掻き分けて走ってきた。その延長線上には飛鳥と耀が……。このままでは激突する、普通なら避けるのかもしれないが、飛鳥は敢えて受け止める方を選んだ。いや、受け止めると言うよりは捕まえたが正しいかもしれない。

 

 

「は、離して下さい!」

「人にぶつかっておいて随分な言いようね? さて、一体誰から逃げてたのかしら……」

「待てや、このクソガキいいいッ!!」

 

 

 瞬間、飛鳥の瞳が標的を変えたとばかりに閃いた……のをレティシアは見逃さなかった。

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。