■■■■たちが異世界から来るそうですよ?【削除&改訂予定】 作:白結雪羽
怒鳴り声を散らして少女を追っていたのは、ハンバーガー店の店員をしているような厳ついオッサンだった。逃げる少女に、それを追いかけるオッサン、飛鳥が最初に思いついたのは『食い逃げ』だったが、瞬時に二人の内心を見た限りでは違うらしい。
「ふふ、小父様。貴方が追いかけていたのはこの子で良いのね?」
「あ? あ、あぁ、すまねえ。おいコラァッ!」
「きゃっ! い、いや! 放してよこの卑怯者!!」
「ああ゛!? この俺様にギフトゲームをけしかけておいて、挙句の果てには卑怯者だぁ?!」
「卑怯じゃない!! あんなルール絶対におかしい! どう見ても公平なゲームじゃなかったでしょう?!」
どうやら話を聞く限り少女はオッサンにギフトゲームを挑んだは良いが、そのオッサンが箱庭の在住の少女に卑怯と言わせるくらいのルールをゲームで敷いたようだ。その真偽は当事者達以外に察せる訳なく、飛鳥たちにはどうしようもない。ただ、後方で話を聞いた幼退レティシアは、見過ごせる話では無いと考え、詳細だけでも聞き判断を取ろうと……したが十六夜の肩に座って尚且つマトモに喋れない今の自分ではどうしようもないと、投げた。
「何だ、言い掛かりを付ける気か!? コイツめッ────」
そろそろ頃合かしら? 飛鳥は、その冷淡な笑みを浮かべた唇をそっと開────こうとして右に半歩ズレた。と、ほぼ同時に、丁度肉叩きを振り上げ暴力に訴えかけようとしていたオッサンの腹部に丸められた何かが第三宇宙速度で衝突した。目の前の少女は唖然として、その正体を見る。
「え、あ………か、紙……?」
ハラリと落ちる何か──紙屑とオッサン。オッサンは軽く気絶しており、それをやった張本人は少女以外から呆れの視線を集めていた。
ついでだが、よく見てみると紙屑の中には石ころ……のような粘土が入っていたのだが、気にすることでも無い。
「おっと、インコースハイで投げたつもりだったが……紙じゃ軌道確保は難しいなやっぱ」
「……ちょっと、十六夜君? 粋の良い餌が釣れたと思ったのに何横から掻っ攫ってくれるのよ」
「いえ……そういう問題じゃ無いと思うのですが……」
「いじゃよい! あんまメンドウなことにクビをツッコンではだめだぞっ…ってまたひどくなってる?!」
「はいはい了解しましたよレティシア『ちゃん』っ。ハハハハハッ!」
少女と倒れ伏したオッサンを放置して四人は先を進む。
気のせいかレティシアの退行が酷くなってる気がするが、まあ気のせいだろう。そろそろレティシアの羞恥心も顕著になりそうだが、そこは彼女、吸血鬼としてのプライドが許さないのか顔にはあまり出さない。言動には諸に影響されてるが。
「さて、このまま……また適当にほっつくか」
「そうねェ………………まぁ、取り敢えずは」
「兎鍋が食べたいです」
「何て鬼畜外道な事をおっしゃるのですか耀さん!!? 最近妙に自重をお忘れでは無いですか?!」
「………食材」
「ひ……!? じょ、冗談でもや、止めて下さいってばぁあああ!!?」
そういう事で、黒ウサギが一行に追いついたようだ。とてもご立腹らしく、耀の冗談に怯えつつも問題児三人に苦言を呈する。
「全く! どうして皆さんはもう少しジッとしていられないんですか! 毎度毎度肝を冷やす黒ウサギの身にもなって下さいよっ!」
「いやぁ……実は俺な、『ジッとしているとレティシアを苛めたくなる病』なんだ」
「じゃあ私は『ジッとしているとレティシアを辱めたくなる病』」
「…………すいません」
「耀さん以外は反省の色が無いとよぉーく解りました! というかお二人とも、それはジッとしていなくても変わらないですよね?」
「クロウシャギ! モンダイはそこじゃないだろ!?」
涙目で叫ぶレティシア。黒ウサギにまでこの状態を放置されてしまっては労しいにも程がある。飛鳥がとっとと飽きれば済む話なのだが……その気は微塵も感じられない。
黒ウサギは、取り敢えずレティシアを元に戻すよう飛鳥に促す……が、
「えぇ~」
「えぇ~じゃにゃい! ひゃやくもどしてくれっ!」
「……黒ウサギ、本気で戻したい? こんなに可愛らしいのに」
「………………。そ、その……レティシア様、本拠に戻るまでどうかご辛抱の程を……」
「クロウシャギっ?!」
レティシアは救いの手を失い涙目となった。そこに十六夜が彼女の位置を肩から背に変えあやし始めた所で本気で泣き出してしまう。
嘗て、こんな幼子の同然のレティシアを見た事が無い黒ウサギは、本心に負けてしまった事に罪悪感を覚えてしまう。という事で、流石に飛鳥も満足したのと黒ウサギの嘆願あってレティシアの言動は元に戻された。
けれども、とんだ醜態を晒してしまったレティシア。元に戻った後は徹底的に不貞腐れてしまった。これでは元に戻ったのか実感が湧かないが、これ以上触れてやるなと三人は自重の末、話を戻した。話とは言うが、要は黒ウサギの説教である。
「────それで、皆さんはまだまだ箱庭には不慣れな身です。適応能力は充分に認めますがそれでも、数多くの腕利きのギフト保持者が居る此処での独断は危険極まりないのですよ。ですので、常に慎重を心掛け、避けられる揉め事や事件はなるべく避けなければ────」
「あぁ、黒ウサギ。それなんだがな……」
黒ウサギの言葉を遮り、十六夜は苦笑して右手側を指す。
〝?〟を頭上に浮かべる黒ウサギ。彼の促す通りに右手へと視線を移すと……怒り心頭のご様子で、先程ダウンしてたオッサンが青筋を浮かべて彼らを睨んでいた。
「!!?!?」
「実はもう揉めちゃってるんだこれが」
「さっきはよくもやってくれたな小僧……。こりゃ、仕返しをしねえと腹の虫が治まらねぇぜ……!」
「ひ……!? ちょ、ちょっと十六夜さん!! 誰ですかこの厳ついハンバーガー屋さんみたいな人は?!」
「おう、先日リストラに遭ってムシャクシャしてる元ハンバーガー屋さんだ。あ、あとロリコンだ」
「設定を勝手に作るな!!」
十六夜の
すると、後ろの方からさっき追いかけられていた少女が現れて、
「そいつは肉屋のカラッチ・ロートって言うの! 最近この町で好き放題やってる悪党だよ!」
「あら、貴女まだ居たのね。それと解説どうも」
カラット・ローチ……ドジョウを揚げるのだろうか?
と、つまらない冗談はさて置き。どうやらこのハンバーガ屋さん、ギフトゲームで相手に不利なルールを敷いて武力脅迫で強制参加をさせる何とも小物臭い人物のようだ。程度の知れた『
「フン! ゲームのルールってのは全て『主催者』が決められるシステムだろ? 嫌なら断ればいい。ま、その後どうなるかは知らねーけどな!」
それは琴線だ。思うや案の定、〝ノーネーム〟の重鎮二人は身の程知らずの発言に険しい眼を向ける。
「……聞き捨てならいな、愚か者。箱庭における神聖な試練を、貴様のような不逞の輩の自己満足で語るな!! 恥を知れ!」
「そもそも、両者の合意あってこそのギフトゲーム。貴方がしている事は恐喝と何ら変わりません! 箱庭でも許されるとは思わない事です!!」
「あ゛ぁ……!? っ、お前……『箱庭の貴族』! 月の兎の末裔か!! ハッ、面白ぇ……」
何かあくどい事を考え付いたのか、一行を一瞥しニヤリと笑うハンb……オッサン。正直キモイ……と憐れとも思った耀。
それと、レティシアは餓鬼と見られて無視されていた。一応彼女は『箱庭の騎士』と呼ばれていた〝吸血鬼〟であり元・魔王ドラキュラであるのだが……まぁ見た目から判断はし辛いかもしれない。だがここでレティシア、久しぶりの大人な態度を見せ、あくまで冷静に相手を見据える。後ろで飛鳥が「スルーされたわね……」とボソリ、呟かれはしたがそれこそ無視。
オッサンは、
「おいそこの餓鬼ども四人! 俺とギフトゲームで勝負しろ!! 勿論『主催者』は俺、ルールも俺が決める! それと
と宣戦布告した。
まだ名も知らない被害者の少女と、黒ウサギは唖然とした。そして当然ながら反論しようと────、
「────いいだろう。そのゲーム受けて立とうじゃないか」
「突然何を言い出すかと思えば、ってレティシア様!? 何で挑発に乗ってしまうのですか!? アチラは此方へ不利なルールを仕向けてくると分かっていると言うのに!」
「止めるな黒ウサギ。こういう輩は一度灸を据えて置かねばいけないんだ。決して私だけ無視したとか『餓鬼』扱いされたからとか、その様な私情で絞めようとは思ってないから安心しろ」
「思いっきり私情を挟んでますよねぇ?!」
「十六夜、飛鳥、耀。徹底的にやるぞ、私が許す」
「クハハッ! 当然」
「手加減なんて」
「端からする気は無いです」
「皆さん黒ウサギの話を少しは聞いて下さい!!」
まさかレティシアから挑発に乗ろうとは思っていなかった黒ウサギに流れは止められなかった。最近、レティシアの内心も度重なる心労で荒んできていたのだろう。二ヶ月前からするときっと見れないような恐ろしい笑みを浮かべている。その反面、黒ウサギはそんな彼女にこれ以上制止を掛ける事は出来なかった。
「ふんっ、やっぱりだな! テメェーらみてぇに群れてる餓鬼どもが一番身の程って奴を知らねえ!」
「御託はいらない。早く宣誓を済ませろ……」
「ククッ……まぁ待て。先にゲーム盤の用意が先だ!」
刹那、一行の周囲を突然霧が覆い、次の瞬間一気に視界が開けたかと思うと、其処は既に町の通りではなく静寂に包まれた石の迷宮遺跡となっていた。
プレイヤーの手元に『
──ギフトネーム名〝ラビュリントス〟──
・プレイヤー一覧
逆廻十六夜
久遠飛鳥
春日部耀
レティシア=ドラクレア
・クリア条件
・ステージの謎を解き迷宮を突破、又はステージ内に潜むホストの打倒。
・敗北条件
降参、もしくはプレイヤーが上記の勝利条件を満たせなくなった場合。