■■■■たちが異世界から来るそうですよ?【削除&改訂予定】   作:白結雪羽

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サーカス団

 黒ウサギがハンバーガーにされかけた迷宮の茶番から十日が経った昼の頃、見返りに手に入れたバーベーキューセットで盛り上がる〝ノーネーム〟の本拠に一人の訪問者が現れた。

 最近、問題児たちの影響で対応や思考が雑になってきたレティシアが、その訪問者を咄嗟に半殺しにしそうになったアクシデントはいいとして……その訪問者は以前十六夜たちが結果的には助ける事となった少女──名をフェルナと言うらしい。

 何でも、助けてもらったお礼に東側に現在滞在してる移動式サーカスの招待状をくれるようだ。

 純心で、画策など考えようも無い表情。そんな彼女を、問題児三人と吸血幼女のまるで全てを見透かすような眼光が射抜く……と言うのは大袈裟だが、見透かすような目は実際だ。

 

 

「<……ねぇ、こんなに美味しい話があるかしら?>」

「<分かりません。あの瞳を信じるなら、興に乗じてみるのも悪くは無いと思いますが……>」

「<あまり面倒なのはゴメンだぞ? 楽しめるには越した事はねえが……>」

「<ふむ……しかし、そこまで疑うのも彼女が可哀想だ。ここは素直に乗ってはどうだ?>」

「「「<うーん…………>」」」

「あのぉ、皆さん普通に聞こえてますからねっ? フェルナさんが泣きそうなので変に疑うのは勘弁してあげてくださいね?!」

 

 

 純心無垢すら猜疑を掛ける、何て捻くれているのだろうか。レティシアも、そこは止めるべき所ではなかったのか……

 嘗ての同士が徐々に毒されている姿に黒ウサギはヒッソリと泪を呑むのであった。

 

 

「ま、東側には元来娯楽というものが少ない。一座がやってきて周辺住人は大混乱だったらしいからな。その点も踏まえて、今回の誘いには甘んじても良いだろう」

「レティシア様、それは結局の所疑いは晴れてませんよね……?」

「虫の良い話は疑って然るべきだろ? 油断し弛みきった所に寝首でも掻かれてみろ、名実とも目も当てられない」

「そ、それはそうですが……」

「ま、もう行くのは決定なんだから細かい事はいいじゃない」

「…………あれ? 行く事はもう決定事項なのですか? こ、コミュニティのお仕事とかどうするんですか?!」

「んなの、魔王二人に頼んどけばいいだろ」

 

 

 現代回ではまだ最強クラスの魔王を子守に使わせる十六夜。萃なら笑って流しただろうが、ペストだったら喧嘩が勃発していただろう。

 もう向かう事は決定している三人。レティシアは一応中立らしく、妙に期待しているような雰囲気を醸しているのは気のせいだ。

 黒ウサギは、〝ノーネーム〟を放って遊びに惚けるには抵抗があるようで、心中困り果てている。

 と、そこへジンが、

 

 

「黒ウサギ、気にしないで行ってくるといいよ。黒ウサギにはこれまで苦労を掛けてばかりだったし、羽を休めるには丁度良い機会じゃないか」

「ジン坊っちゃん……」

 

 

 ジンに諭され、霧が晴れたようにパァ…! と表情に笑顔が浮かんでくる。これで、行く面子は決定した。

 

 

「んじゃ、御チビの許しも出た事だし洒落込むとすっか」

「Yes♪ 本日は行楽日、ギフトゲームもお休みにして楽しみましょうっ!」

「気の済むまで楽しんでこいよ、黒ウサギ」

「──え? レティシア様は行かれないのですか?」

「近頃は十六夜たちの道楽に合わせ過ぎたからな。私の事は気にせず、行ってくれ……染まらない程度にな」

「イ、Yes……」

 

 

 不吉な言葉残したレティシアは、黒ウサギの今日こなす筈だった業務をこなす為に部屋を後にした。またついでに、萃とペストに事情を反感を買わない程度に伝えに行く事にするのだった………………念のためギフトカードを忍ばせて────

 

 

 

 

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

「へぇー、思ったより随分と賑わってんのな。建造物の様子と街の活気がマッチしてねぇって事は、あのテントの物目ずらしさに惹かれて集まってきたのか?」

「うん。元々ここらへんは廃れかけの寂しい町だったんだけど、サーカス団が来たら自然と集まってきたんだ」

「ふーん、娯楽の力は侮れないものねぇ(本当、まるで規模の大きい()()()())」

 

 

 一同、町の中央に鎮座するサーカス団のテント。そしてこの街の思った以上の活気に舌を巻く。これが先日まで廃れかけだったというのだから、その反応も最もだ。人々の往来は著しく、十六夜の指摘通り建造物の微かな外観を見てみない限りは納得も出来ないかもしれない。

 

 サーカスの開演はお昼過ぎからのようで、時間はまだ一時間くらいある。折角なので、彼らは時間潰しと遊楽を兼ねて『一緒に』屋台巡りをしよう……と黒ウサギが後ろを振り返る。

 懸念していた三人は居なかった。案の定、淡い彼女の期待を裏切るように…………、

 

 

「少しは団体行動というものを理解して下さいよぉーーッ!?」

 

 

 それから一時間、黒ウサギは問題児たちを探し回った。折角の行楽日だというのに、彼女の知らず内に与えられていた『お仕事』は年中無休のようだ。当然見返りは無い、あるのは溜まりに溜まるストレスオンリー。ストレスフルで老けてしまいそうだ。

 

 以下、ダイジェスト────

 

 

「あ、飛鳥さん! 勝手に居なくなっては困りますから……って、何をしてるんですか?」

「ん~? 何って、屋台巡り?」

「あ、いえ……それは見れば分かるのですが………どうして目を離した数分で両手が食べ物で埋まっているのでしょうか?」

「買ったからに決まってるじゃない。今春日部さんと一緒に『祭り名物! 屋台荒らし!』っていう遊びをね────」

「遊びじゃないじゃないですからね!? ただの迷惑行為でしかないですからね!? と言うか、飛鳥さんそんなに食べれるんですか……?」

「あははっ、何言ってるの黒ウサギ。無理に決まってるじゃない♪ 甘い物ならまだしも」

「今直ぐお店の人に謝罪をして下さいっ!!」

 

 

「~~♪」

「春日部さん! 飛鳥さんから聞きましたッ、屋台荒らしは遊びでは無いので止めてくだ……さ…………あれ? 思ったより普通?」

「? ポップコーン、いりますか?」

「あ、はい。有難うございま………………因みにですが耀さん、これは……何食目で?」

「27食目です。ポップコーンもメガ盛りを頼みましたが、思ったより早くなくなりそうでした」

「やっぱり遅かったぁーー!? 何人ですか! この十数分の間に何人の店主さんを泣かせたんですか?!」

「? 皆さん感涙とばかりにサービスもしてくれましたよ?」

「それは感涙じゃなくて悲涙です!! 『もう来ないで下さいお願いします』って意味ですよね、それぇ!?」

 

 

「あ、あとは十六夜さん、だけです……────」

「見当たりませんね………あっ、サーカスもう少しで始まっちゃいます!」

「あーっ本当にもう~~! 一体何処に行っちゃったんですか十六夜さんはーーーー!!」

「呼んだか?」

「──うひゃっ?! って十六夜さん!? 今まで何処にいたんですか! 必死に探してたのですよ!?」

「そりゃこっちの台詞だ。特にする事もねえからテントの傍でずっと立ちっぱだったんだぞ? そんで開演間近ってのにお前らが来ないからわざわざ迎えに来てやったんだろうが」

「「…………あ、はい。すいません……」」

 

 

 十六夜は黒ウサギの予想とは真逆で一時間近くテントの近くに居たようだ。灯台下暗しとは正にこの事か、疑ってしまった事に若干の後ろめたさを感じた黒ウサギであった。

 

 そして数分後。折角の休日だと言うのに黒ウサギの心労は尽きかけていた。だがこれからはもう心置きなく楽しめる時間、彼女のストレスも少しは晴れるといいだろう。

 テント前の笑い声が若干喧しいピエロに入場券を渡し、一行はテントの内に入っていく。因みに、さっきのピエロ曰くこのサーカス団のコミュニティは〝トリック・スター〟と言うらしい。

 

 中央の舞台を囲むように円形の客席が並ぶ。町の様子からも窺えていた事だが、かなり盛況のようで席はほぼ満席。

 十六夜たちはチケットに記載された最前列側の席に腰掛けると、改めて全体を見回した。

 と、程なくして照明が落ち、舞台中央にサーカス団の者たちが現れる。流石は箱庭と言ったところ、現実世界では見れないような変わった面子が揃っている。それぞれがギフトを駆使して行うサーカス、一味も二味も違ってくるだろう。

 

『イッツ・ショータァイム!!』

 

 そこからのは中々に見物。内容はサーカスと言ったら想像できる品目ではあるが、出来も規模も違う。やはりギフトの有り無しでは映え方も大分変わってくるものだ。

 黒ウサギは普段のストレスを大いに発散しているのか物凄くはしゃいでいる。まるで子供のようにはしゃいでいる彼女は何とも微笑ましい物だが、その分のストレスを駆け込んでいた事が露見したも同然で、問題児三人は内心申し訳程度の同情を懐いた。あくまで申し訳程度だが……

 

「──さあさあショーもクライマックス! ラストは大マジックで締め括りどすえ!!」

 

 時間はあっという間、一時間半ほどの公演ももう終わりのようだ。サーカスの団長らしき女性が、締めに入ろうとする。

 

「これから、そのマジックの主役を一名────お客さんの中から選ぶさかい!」

 

「へぇ~。ご定番だが、粋な演出だな。誇りと自信を持ってないとまず出来ないな」

「本当ねェ。さてと、誰が選ばれるのかしら? 最後の締めを任される幸運な人は」

「飛鳥さん……分かっていて言ってますよね、それ」

「仕様が無いじゃない。勝手に見えちゃうんだもの」

 

 読心のギフトはネタバレ嫌いには少々困り物のようだ。飛鳥もほんの少しだがテンションが落ちてしまっている。オンオフが利かないというのは何とも不便のようだった。

 

「────それは、この方っ!!」

 

 上から照明が客席の一箇所に集められる。そして、その場所に居たのは……、

 

「……えっ? えっ!? く……黒ウサギですかっ!?」

「おめでとぉウサギはん。さあ、舞台の方へおいでやす」

 

 急に選ばれれば混乱もする。

 一応言われた通りに舞台まで降りてきたが、

 

「で、でも…黒ウサギは何をすれば……」

「ご心配なく。此処に(すを)てるだけでええんで」

 

 逆に観客に無茶振りするようなサーカスがあるのか疑問に思う所。実際にそういうサーカスはあるのだろうか? あるとすれば……呼ばれたくは無いが見ては見たいものだ。

 女性に促されるままに、黒ウサギは舞台中央の椅子に腰掛ける。少し見た感じでも、何の仕掛けも見られない。

 彼女は混乱を忘れ、当人ながらワクワクとその時を待つ。

 

「ほんでは今から! こちらのウサギさんの姿を変えてみせるどす! ────スリー!! ────ツー!! ────ワン!! ────」

 

 それは一瞬の御技。カウント一の時に黒ウサギの周囲を煙と旋風が巻き始めたかと思うと、瞬き一度も許さない隙に、そこに現れたのは紛れも無い──ドラゴン()であった。ウサギからドラゴン、ショーの締めとしては最高の演出だろう。客席からはドッ! と歓声が沸き立った。

 

「────これにて本日の公演は終了どす。皆様の、またのお越しを待っとります」

 

 客席から人が疎らになっていく。

 そんな中、三人は先程上げた感嘆とは打って変わり、舞台中央を注視する。そこには『空』となった椅子が一つ……黒ウサギは何処へ行ったのか?

 

「……まぁ、こういう時ってのは舞台裏から表に案内されてるだろ。俺たちも出るか」

「…………フフフ、そうね。」

「…………了解です」

 

 口々にそう言って、テントの外へと出る三人。

 外には黒ウサギは居なかった。どこかをほっつき歩いているのだろうか? それでも三人は特に気にする様子もなく好きにさせておくとした。

 

「取り敢えず、今日は此処に泊まってくか。黒ウサギをほっぽてく訳にもいかねえし、この時間だと帰るまでに大分日が暮れちまう」

「そうねェ、夜道は危険だもの。私は構わないわ」

「──と言う事ですので、フェルナさん。この町の宿屋が何処にあるか知りませんか?」

「あ、はいっ。でしたら案内します、付いて来て下さい」

 

 その日はこうして過ぎ去ったた。黒ウサギは結局見付からず仕舞いだが、また明日に探せばいいと三人は一休みを取る。

 ただ、耀は眠る訳でもなく窓際に腰掛け、飛鳥と十六夜は明日に()()()祭り事に怪しい笑みを零すのだった。

 

 

 

 

 

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