■■■■たちが異世界から来るそうですよ?【削除&改訂予定】 作:白結雪羽
~前回までのあらすじ~
サーカス団が東側に来てるらしい
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折角だし行ってみよう
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サーカスに黒ウサギが拉致られた
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彼女を(一応)救うために敵のギフトゲームに参加
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漸くテント内に辿り着いたものの、初戦の相手はまさかの黒ウサギ?!(←今ココ
「────ってな、流れでな。黒ウサギはアルバイトとかいう建前を狡くも利用し、俺たちに普段から担がされているストレスを此処ぞとばかりに発散しようと────」
「ち・が・い・ま・す!! 何勝手に捏造してるのですか?!」
「でも半分以上は事実じゃねえか。それに黒ウサギが相手とか……なァ?」
「ねェ?」
「うん、」
「面白そうだしの」
「どこまでお気楽なのですかッ皆さんは!!?」
問題児三人は深くは行ってないのだが、それぞれの悪ドイ表情で何を考えているかは容易に想像できる。
黒ウサギは同士と戦わなければならない事に涙目だ。
「まぁ安心せい黒ウサギ。この私が一瞬でカタを付けてやろうて────ごふぁッ!?」
威厳に満ち溢れ、その瞳の奥に下心見え見えだった白夜叉を耀は黙らせた。そしてそのまま飛鳥と共に彼女を舞台袖へと連行する。
彼女、あれでも元・魔王で東側最強の『階層支配者』である。
「あ、あぁ……元・魔王の威厳は何処へやら……」
「おい黒ウサギ。ボォっと突っ立ってねえで、そろそろ始めんぞ」
白夜叉のお労しい姿を見送る黒ウサギに十六夜はサッサとしろ、と促がす。
どうやら彼が〝ノーネーム〟側のトップバッターを占めるようだ。
当然ながら、黒ウサギはまだ彼らと戦う事に納得などしていない。──と、そこで何か名案を思いついたかのように顔色をパァッと変える。
「な、なぁんだ。思ってみれば黒ウサギがわざと負けちゃえば良いんですよ! そうすれば誰も傷付かず〝ノーネーム〟の一勝に……────」
彼女が言い切る事は無かった。
十六夜は舞台の破片が舞う中後ろに着地する。対して、黒ウサギは何が起こったのか? と状況を確認。そして把握する。
十六夜が後ろに飛び退ったのは黒ウサギが持ち前の脚力で彼へと蹴りを仕掛けたから。彼はそれを冷静に避けたのだ。
呆然とする黒ウサギ。それも束の間、今度はステージ外から両者の間にサーカスで使われていた一振りの剣が突き刺さり、彼女はその柄を取って構える。
ますます混乱する黒ウサギ。どうしてか、彼女の身体は自分の意思で動かせなくなっているのだ。
「へ? えっ、な、何で? え、あれ? 身体が勝手に動いて……ッ!?」
酷く動揺する黒ウサギだが、そんな彼女に十六夜は声を掛ける。嫌に、不気味なくらい落ち着いた声音で。
「……まぁ、落ち着けって黒ウサギ」
「ぁ……い、十六夜さん?」
「……そうなんだな。お前ってそんなにもストレスが溜まってたんだなぁ。────クハハッ。何だ、違わねえし、寧ろビンゴだろ…………日頃の憂さ晴らしがしたくてしたくて、仕様が無かったんだよなァ?」
「ち……違っ…………違うんですーーーーーーーーーーッ!!!」
黒ウサギの悲鳴が上がる、と同時に彼女の身体は動き始める。
十六夜との間合いを一瞬で詰め、手に持った剣で彼の胴を薙ぎ払おうとする。それを十六夜は更に後ろへと下がる事で難無く躱し、気付けば黒ウサギの後方に回りこんでいた。だがまだ攻撃はしない。距離を再び詰められて剣戟を浴びせられようとも全て凌いで凌いで凌ぐ。
黒ウサギも伊達に『箱庭の貴族』とは呼ばれていない為、一つ一つの動作に油断を掛けられない。その中での攻防は激しい物で、観客たちもヒートアップしてきた。
中には……と言うよりその半分以上は、勝負に賭博をしているようで、お互いどちらに賭けるかを言い合っている。
「サーカスだけど、闘技場故の賭博ねぇ……。観客も下賤な人しか居ないのね」
上からの喚声を煩わしいと思いながら飛鳥は呟く。
ふと、その隣の耀に声を掛ける者が現れた。
「────耀っ、耀じゃねーか!! お前ら……何だってこんな所に居るんだよ!?」
「ヤホホ! これは皆様こんばんは!」
「あ、ジャックさんと……………………………………アーシャさん」
「っておいっ!! もしかしなくても今私の事忘れてただろ?!」
「どうしたんですか? お二人こそ、揃ってこんな所に……」
「無視すんなあ!?」
二人は以前、北の祭典の時にギフトゲームで競い合ったコミュニティ〝ウィル・オ・ウィスプ〟のアーシャとジャックであった。
因みに耀は、ちゃんと二人の事を覚えている。ただアーシャについては何となくからかいたくなっただけだ。
それで、耀がアーシャに何故此処に居るのかを聞いたところ、彼女コミュニティのお得意様が誘ってきたかららしく、彼女たちは賭博等には興味がないので早々と帰ろうとしていらしい。で、そんな所に耀たちが来て大層驚いたそうだ。
そして、ついでとばかりにこのサーカス団についても話してくれた。
このサーカス団コミュニティ〝トリック・スター〟は、ギフトゲームで負けた相手を自分たちの元に吸収してしまうらしく、昼間の公演でショーを演じていた者たちもその殆どが別のコミュニティ所属だったらしい。
仲間が攫われれば、同士たちは必ず助けに来る。そこを今の黒ウサギと十六夜のように仲間同士で戦わせる。勝てば良いのだが、もし負けた場合は一生の操り人形。
何とも非道で、それでいて箱庭らしい内容であった。
「ふーん……要するに勝てば問題ないと、そう言う事なんですね」
「あ、いや……そうだけどよぉ。話聞いてたか? 今まで此処から出られた奴は居ないんだって」
「大丈夫ですよ。最悪……『奥の手』を切りますから」
「…………、そこまで自信があるならこれ以上とやかくは言わねえけど……」
だが、アーシャは何となく彼女たちなら大丈夫だろうと感じた。
何せ少し前に北の街で魔王を退けた功労者は紛う事なき彼女らなのだから……。
話が終わり、アーシャはジャックの背に乗りテントからお暇する事にした。
その際、ジャックが耀に、
「春日部嬢、一つお聞きしたい事があるのであうが……、」
「? 何ですか?」
「以前、北の都市においての襲来した魔王の一人────萃様が今は〝ノーネーム〟に身を置かれていると言うのは本当ですか?」
「え……?」
予想外の名前が彼から聞かされる。
確かに萃は今現在〝ノーネーム〟に居候の身ではあるが、何故彼がそれを問う? いや、きっと口振りからして知己の間柄なのだろうが、アーシャの表情は彼を知らない様子。という事は……、
「もしその噂が真であるならば、一つ言伝をお願いします。『少しは此方にも顔を出して下さい』と。──それでは、皆様! ご機嫌よう────」
「あっ、ちょっとジャックさん! よ、耀! 精々ヘマすんじゃねーぞ! 絶対だからな!?」
「あっ、はい……」
耀の返事を待たずに彼らは行ってしまった。
萃……彼は白夜叉曰く『箱庭』の黎明期からの古参だという。神出鬼没で二つ名通り『不羈奔放』だったならば、昔に何かまだやらかしてる因縁でもあるのだろうか?
それは結局彼の知るところでしかない。
「あの人……何処まで人脈の幅が広いのかしらね」
「さあの……何せパッと消えてはパッと現れる傍迷惑な奴だ。私の知らぬ場所で何をしでかしているか見当も付かん」
「…………」
そこで三人は一度萃について考える事を止め、舞台の二人へと意識を戻した。
舞台上は……それはもうこっ酷く荒れていた。マトモに踏める足場が半分も無く、砕け、剥がれ……と悲惨な有様になっている。
原因は言わずもがな、十六夜と黒ウサギ。
今まで守勢を貫いていた十六夜が、遂に攻勢へと切り替えていたのだ。それに本能的命の危機を覚った黒ウサギも、今や生き残る事だけを考えて十六夜と幾度と衝突している。
音を置き去りにした拳の猛攻が迫れば跳ぶ事で上へと躱し、そのまま上半身の捻りを加えて強烈な蹴りを放つ。
その蹴りを、今度は勢いのまま体勢を低くする事で事なきを得て、地面へと掌が接触した瞬間柱状の岩盤が黒ウサギを押し上げた。
追撃をさせまいと下方に警戒を払い、跳躍退避をする。だが、奇襲は下からではなく岩盤柱の天辺からやってきた。
「っ……!?」
「オッラァ!!!」
何時の間に?! という驚きは一瞬。着地と同時に十六夜の拳へと上段蹴りを放つ。
拳と脚の衝突は凄烈な衝撃波を生み、観客席の者たちも、舞台袖の飛鳥たちも思わず伏せた。
もくもくと砂塵が闘技場を覆い尽くす。
やがて砂塵が落ち着いてくると、舞台上にはお互いまだ健全で構えていた。
「……やりますね、十六夜さん。これでも黒ウサギ、大分本気なのですが……」
「種族としての本気だろ。ギフトまで使われちゃ流石に不味いぜ?」
「それは……十六夜さんにも言える事です。まだ隠していらっしゃいますよね? 奥の手を」
「まあな、っと。──黒ウサギの本気、随分と楽しめたぜ。その礼と言っちゃなんだが……次で決めてやるッ!!」
「Yes! 黒ウサギも気分爽快なのですよ! そして……その言葉は、そっくりそのままお返ししますッ!!」
十六夜は体勢低く腰を落とし、全身のバネをフルで使い黒ウサギへと肉迫した。
それは黒ウサギも同じ事で、月の兎の脚力を以ってして一瞬で彼と同等かそれ以上のスピードで接近し……、
「あ、これって……」
「避難した方が────」
悟った飛鳥と耀の言葉が終わる直前、闘技場全体を激しく揺るがす程の衝撃波が怒濤の嵐となって駆け巡った。
視界は激しく散る火花に埋め尽くされ、観客席前列の者たちや、飛鳥たちは例外なく後方へと吹き飛ばされた。
壁と衝突し背中に奔った衝撃に耐えながら、
「(こっちの事も考えなさいよあの馬鹿っ!)」
と飛鳥は心の内で叱咤を飛ばす。
咄嗟に伏せてはいたがこの有様。今さっきあった一度目を遥かに凌ぐ威力だ。
煙が晴れると、今度はそこに二人の姿は無かった。視線を巡らせて見ると、両者弾かれるように飛ばされたのか同じ舞台袖まで……いや、十六夜が数センチの所で舞台に踏み留まっている。つまり────、
「(チッ……計算がチト狂うたな)〝トリック・スター〟側リングアウト! この勝負、先ず〝ノーネーム〟に白星どす!!」
第一戦は十六夜の勝利と終わった。残るはあと二勝だ……────