■■■■たちが異世界から来るそうですよ?【削除&改訂予定】   作:白結雪羽

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トラ子……うん、ごめんなさい



2ndラウンド

「十六夜君、まず私たちに言う事があると思うのだけど……?」

「あ? ……あぁ。いや、まぁその…なんだ。すまん、少しやり過ぎたか?」

「……本当です。楽しくて仕方が無かったとは思いますけど、もう少し周囲への被害を考えて下さい」

 

 

 飛鳥たちの元へ戻ってきた十六夜は、早速二人に詰め寄られていた。件は勿論、最後の一撃だ。あれのお陰で二人は全身を強打する羽目になったのだから、謝罪は貰って然るべきだろう。十六夜も、思い出したように苦笑しつつ一応は反省の色を示した。

 飛鳥は次に涙を浮かべる黒ウサギへも向き直った。こちも十六夜以上に迷惑を掛けたと言う事でこの様に反省色が有り有りと見えている。

 

 

「ひっぐ……みなざま、本当に申し訳あ゛りまぜんでじだぁ~~っ……」

「良いですよ。こうして解放されたんですから、『終わり良ければ全て良し』です」

「そうそう。あとでウサ耳を引っこ抜かせてくれればそれで良いからっ」

「やっばりおごっでますよねぇ~~っ!?」

 

 

 涙声の黒ウサギは、普段の二、三倍くらい煩わしいなぁと思う飛鳥であった。

 

 

「飛鳥、黒ウサギで遊ぶのも良いが、次は誰が行くか決めんぞ。向こうはもう準備万端みたいだしな」

 

 

 十六夜はどういう訳か整然と元に戻っている舞台の上を見る。飛鳥たちもそれに続いて視線を向けると、そこにはもう既に一人の少女が立っていた。虎縞の獣耳に動きやすそうなエプロンとワンピースの中間あたりの服装をした少女。この子も先日の公演で見かけた少女だ。 取り敢えず第一印象は、耀とタメを張れる位に無口で無表情そうな子である。

 

 

「ハッハハ! 次が誰かなど……今度こそこの私! 白夜の星霊こと白夜叉様の出番d、」

「それじゃあ今度は私が行こうかしらね。皆応援宜しくねぇ~♪」

「Yes! 頑張って下さい飛鳥さん!」

「「……(可哀想に)」」

「…………」

 

 

 勇んでキメようとした白夜叉の台詞に被せて、今度は飛鳥が名乗り出る。

 空気を読んでか天然でか、黒ウサギは彼女を信頼して快く送り出し、白夜叉を舞台近くから後ろに下がらせる。

 そして十六夜と耀は、清らかな笑みを浮かべて舞台に上がった飛鳥を見て、対戦相手に同情を示した。

 

 

「……のう黒ウサギよ。張り切ってキメようとしたのに、その台詞を遮られ(あまつさ)え無視されるロリの気持ちって考えた事有るか?」

「Yes! 苛められっ子の気持ちなら! 痛いほど!」

「…………クスンッ」

 

 

 白夜叉の問いかけに悪びれも無く即答する黒ウサギ。白夜叉の不憫度が段々と上昇している気もするが、構っていても面倒なだけなので話を戻そう。

 

 飛鳥は朗らかな笑みを崩さず正面の猫耳少女を観察する。

 得物は右手に握られた、サーカスの公演で見た剣が一振り。耳からも猫科のギフトを所持していて、昼の演目を思い出す限り軽業が真骨頂。恐らく空中に繋げられたロープなども駆使して立体軌道の3D戦法で掛かってくるだろう……

 

 彼女はこの時、霊格が己より下の生物の行動を御する『威光』を使う気など更々なかった。只でさえ此処に来るまで碌な出番が無いのだ。全て派手さと実戦に向く十六夜と耀が持っていってしまうのだから仕様が無い。

 だから、彼女はこの勝負で鬱憤を晴らそうとしている。のだが……相手は沈黙を保ったまま何もしてこない。()()()()全く闘気が感じられないのだ。

 けれども、飛鳥はそれでも笑っている。最早朗らかをアッと通り越して怖い。

 

 

「……フフ。貴女、早く来たらどう? それとも何? まさか降参するなんて事は「降参します」……」

「えっ?!」

「「…………」」

 

 

 飛鳥は笑みを取り消し、少々険しい表情になった。

 猫耳少女は言ったのだ、「降参します」と。そう言って自らの得物を放ったのだ。そして、少しずつ身体を震わせたかと思うと、

 

 

「……やっぱり、あたしもう……もう戦いたくないよぉ……」

 

 

小さく、そう呟き始め……

 

 

「家に帰りたいよっ……! もう、こんなの嫌だよぉ……っ!!」

 

 

最後にはとうとう泣きながらに悲痛の叫びを上げた。

 先のアーシャの説明に因れば、このサーカスの団員はその殆どが他のコミュニティから無理矢理吸収した人々であるそうだ。その全員がさっきの黒ウサギと同じ様に洗脳を受けているのか、兎に角自由など全く無い。

 しかし、もしかしたら彼女は……

 

 

「こらっ、真面目にやんな!! 行き成り降参なんて許さへんよ!!」

 

 

 背後で団長が少女を叱責する。

 その声に少女は身体をビクッ! と揺らし、怯えた表情で尚も涙を、嗚咽を零す。

 飛鳥は険しい表情から一転、驚いた表情を()()と、慌てて彼女へと駆け寄った。

 

 

「貴女……貴女もこのサーカスに取り込まれた被害者なの? だったら、もうこんな所に居る心配はないわ! 今直ぐ降参すれば、私たちが貴女を……いいえ、貴女たちを保護してあげるからっ」

 

 

 しゃくり上げる少女に開放を約束すると飛鳥は慰める。何ともまぁ彼女らしく無いが、これも彼女の数少ない良心なのだろう……。

 

 

「う……っ…………あたし……あたし………っ、」

 

 

 少女が飛鳥に、嗚咽を漏らして上手く言えないながらも何かを伝えようと────

 

 

 

 

 

 ────パシッ!

 

 

「「なっ……!? /アタシこんな弱いのと戦うのもうやだ」」

 

 

 猫耳少女は驚愕に表情を染め、飛鳥の右半身へと振り抜こうとした折り畳み式ナイフを握った右手……それが彼女の左手に掴まれている事を認識して有り得ない者を見る目で彼女を見た。

 そんな少女に飛鳥は清楚で優しい少女の面から一転、残酷無慈悲で冷徹な笑みを浮かべて少女を見据える。

 

 

「────あーあテンション下がるなぁー」

「────折角思いっ切り体動かせると思ったのにさぁ?」

「────相手が只の人間とだなんてマジ最悪!」

「────折角のショーが台無しね」

「────余興にもならねェよ、この田舎女じゃさぁ」

 

「な……なぁ……っ!!?」

 

 

 少女は恐怖した。口から次々と自身の心情を放つ目の前の人間の少女に恐怖をしめした。

 慌てて腕を引こうとするが、彼女の右手はまるで固定されたかのように動かない。気付けば胴も、足も、全てが彼女の言う事を聞かない。動け、動けっ! と頭に命令を送るが、その信号は無慈悲にも叶う事は無かった。

 そんな彼女の頬へと、飛鳥はゆっくりと手を伸ばし、腫れ物を扱うかの様な手付きで撫でる。

 

 

「ひ、ひぃっ!?」

「フフフ、そう怯えなくても良いじゃなァい。こんな田舎女では余興にショーの余興にもならにんでしょう? なら、早く私の全身を掻き切ってみなさいよ? ほらァ、貴女のその手にあるナイフはお飾りなの? 違うでしょう? それにまだまだ、貴女は『サーカスの道具を無尽蔵に扱える』のでしょう? だったら早く使ってはどうかしら? ギフトは私たちを何時だって裏切ったりはしないもの」

「な……な、何なのよアンタはッ!? くッ……────ッ!? えっ、な、何で? どうして?!」

 

 

 飛鳥の煽り言葉に激昂した少女は、彼女に何時の間にか知られていた自分のギフトを行使する。

 だが、一行に待っても彼女のギフトは効果を表さない。

 少女はもう飛鳥から手を離されて自由の身。今直ぐ彼女から離れれば、早急に体勢を持ち直して嬲り殺しにでも何でも出来る。

 なのに……どうして動いてくれないの? 頭も、手も、足も、ギフトも……!

 

 飛鳥の鳴らすブーツの足音が、少女には死神の物のように聞こえてくる。

 ふと、彼女の身体が動いた。だがそれは尻餅を付いて無様に後ずさるだけの、滑稽な姿を演習するだけであった。

 

 少女の目の前に飛鳥が立つ。その表情は依然と冷然な微笑みを浮かべたままで、その瞳は本来ならば少女が飛鳥に向けていた筈の見下した眼差しであった。

 

 

「ゃ、い、いやっ……!」

「────人間の女って高慢で命知らずだよねぇ! 何でも思い通りになると思ってさぁ!?」

「こ、来ないでぇ……っ!」

「────それで、涙さえ見せちゃえば態度をコロッと変えて騙される! ……あっ、これは人間自体に言える事かしら! ホンット、可笑しいったりゃないわねぇ! アハハハハハッ!!」

「来るなっ……来るなぁッ!!」

 

 

 瞳を閉じて、本気の涙を目尻に浮かべて少女は叫んだ。

 声が止んだ。足音も。

 舞台上を除くざわめきを除けば不気味な程の静寂が訪れた。だが同時に、僅かな安心感も心の底から()()()()()

 

 少女は全身を脱力感に見舞われながらも、静かに瞳を開けた。

 

 

「……────ッ!!?」

「どう? 束の間の安心感は。随分と心地良かったでしょう?」

 

 

 涙と鼻水でぐちゃぐちゃになった少女の、鼻先数センチに飛鳥の顔があった。

 少女の喉から声にならない悲鳴が漏れる。

 そして次の瞬間……顎に脳を激しく揺らす程の衝撃が奔り、少女はいとも簡単に意識を暗転させてしまった。

 

 

「「…………」」

「あーあ、だから同情してやったのに」

「……同情しただけで忠告はしてませんよね?」

 

 

 茫然自失と飛鳥を見る常識組み(仮)。

 その逆に猫耳少女に同情と言う名の黙祷を捧げる非常識組み。

 

 

「やったぁ~♪ 皆っ、これで二勝目ゲットよ♪」

 

 

 で、舞台の上で柄に合わず甘い勝ち鬨を上げる最凶問題児……。

 

 

 こうして、一部の者たちに軽いトラウマを植えつけた第二戦は、非常に、申し訳ないくらい呆気無くケリが付いたのであった。

 

 

 

 

 

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