■■■■たちが異世界から来るそうですよ?【削除&改訂予定】   作:白結雪羽

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やっぱ、完全な読心が出来る能力って強いですね
そして今回、グダグダ書いていたら7000文字を超えてましたね………申し訳ないです。





fainalラウンド?

 サーカステントの外。フェルナはたった一人、神妙な面持ちで紅白の天幕を見上げていた。

 その瞳は、飛鳥の耳打ちを受けた後から成り果てた光の籠もらない無感情な色をしている。どう見ても、中でサーカス団と戦っているで

 

あろう〝ノーネーム〟の者たちを案じる目では無い。

 彼女の口が不意に開き何かを呟こうとする。すると其処へ、思わぬ訪問者がやってきた。

 

 

「っと……ほう? 此処が噂のサーカスかっ。こりゃまた大仰に構えておるものだな!」

「全く、何で私がアイツらの迎えなんかに……」

 

 

 上空から飛来してきた二人の少年少女。

 サラリと腰まで伸びる赤朽葉の髪を先の方で一房に結わえた幼少年に、くすんだ赤桃のショートヘアをした少女…………萃とペストである。

 どうして二人がこの様な時間、この様な場所にやって来たのかというと……単純に黒ウサギたちの帰りが遅かったからだ。

 ジンとレティシアがその件について話している時、偶然二人が話を耳にして、折角だからと迎え(捜索)を請け負ったのだ。勿論、ペストは渋る所か断固拒否の姿勢を示したが、萃とレティシアの説得(物理)で泣く泣く付いて来たのだった。

 萃はまだしもレティシアは予想外であった彼女、帰ったら必ず仕返しを喰らわせてやると誓いながらの……現地到着である。

 

 

「そう愚図るなペスト。安い借りの一つでも作れると思えば儲けモノじゃろ? そう機嫌を落とす出ないぞ」

「……借りなんて、作った所で惚けられるのが落ちよ」

「む、それもそうだの! カーッハッハハ!」

 

 

 豪胆な萃の笑い方に再三目と若干憤りを感じつつ、ペストは辺りを見回した。こんなに賑やかな天幕なのに、周囲には観衆の一人も居ない。

 この夜更けに光を照らし続ければ数人くらい興味本位で出てくれてもいいものを…………と、彼女の瞳が自分たちを呆然と見るフェルナを捉える。

 

 

「貴女、少しいいかしら。この辺でアホみたいに騒いでたと思う四人組を知らない? 男一人に女三人、内一人は『箱庭の貴族』よ」

「っ、もしかして……〝ノーネーム〟の方ですか?」

「む………あぁ、お主がフェルナと言う童子か」

「あ、は、はいっ……」

 

 

 フェルナはペストに話し掛けられた瞬間に無機な瞳に色を灯し、変化を斯くして対応する。

 

 

「ん、彼奴らの事を知っているのならば話は早い。自分らは態々(わざわざ)探しに来てやったのだが……お主、十六夜らの所在を把握しおるか?」

「あ……はい。十六夜さんたちは……────」

 

 

 フェルナの瞳が空虚に戻った気がするが、それもほんの一瞬の事。彼女はテントとは別、明後日の方向へ指を指すと、

 

 

「今は町外れの宿で休んでいます。今日も遅くまで町を周っていて、疲れたから帰るのは明日の朝でと……」

「呆れた。刻限も忘れて遊び惚けていたって言うの? 無駄骨にも程があるわ……」

「カカッ! まあ案外黒ウサギが奔放になり過ぎたやもしれんがのっ。──童子、礼を言うぞ」

「い、いいえ。此方こs────ガッ!!?」

 

 

 安心して、萃たちを撒けたと思って油断したのか……フェルナが状況を認識した時には彼女の足は地から離れていた、首元から軋むような嫌な音を響かせて。

 

 

「が、ぁ……ッ!?!」

 

 

 喉元を掴まれているせいか声がマトモに出せない。

 そんな彼女を、萃とペストは冷ややかな双眸で射抜いていた。ただ、口許は微かに嗤っている。

 

 

「改めて、礼を言うぞ()()──壊滅した魔王コミュニティ〝トリックスター〟の者よ」

「……このサーカスって魔王の物なの? それに壊滅しているですって……魔王の残党なの?」

「今し方こ奴を『覗いた』から間違いないじゃろうて。自分は三桁も箱庭を留守にしておったから当事の事は知らんがの」

 

 

 魔王コミュニティ〝トリックスター〟。

 フェルナから情報を蒐集してみるに、そのコミュニティは既に数十年前には滅びている。彼女はその残党だと言う。

 ……いや、萃が思うに遺品の一つだろう。この、大仰なテントを含めて……。

 

 ドサッと、フェルナは萃の手から解放されて盛大に咳き込む。目尻には光る粒も見えるが、その瞳に感情的な色は無い。ふと全身を見てみれば、所々ボロボロと、外装が剥がれている。まず間違いなく、人間ではない事が理解できた。

 

 

「ぁ……あ、…………みん、な…で……もっ、と……サーカス、を…………よかっ、たら……みんな、も……────」

「ちょ、ちょっと……まさか壊れたの?」

「……まぁ、ちと寿命を早めてしまったかもしれんな。だが、保っても一刻は行かんであっただろ」

 

 

 ブリキの如く全身を軋ませる彼女は、駆動の尽きかけた……正に人形と言うべき姿。

 サーカスへと人々を集める為に。今昔と、箱庭を盛り上げる為だけに、その役目を全うしてきた彼女。

 萃もペストも、彼女に向ける感情は憐憫を越えて同情へと募っていった。

 

 それから数分が経つ頃に、彼らの眼前でテントが大きく爆ぜたのだった。

 

 

 

 

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

 少し遡ってテントの内側。

 残す所二戦……うち一度でも勝利を収めればゲームクリアと行き着ける〝ノーネーム〟は、先程のトラウマ戦を意識の片隅へと追いやって次の勝負へと望もうとしていた。

 向こうももう退く事が出来ないからか、舞台の上には次の対戦相手──サーカスの団長が毅然として待っている。追い詰められていると言うのに余裕を見せる態度、これは何か秘策があるからか……それとも自身の力を信じて止まないからか……。

 何にせよ、次の勝負が大きな分かれ目となる。

 少し優勢で浮かれている黒ウサギをウザイと感じながらも、三人は次は誰が出るかを相談する。

 

 

「ふふんっ!」

 

 

 不意に後ろを振り返り……直ぐに相談を再開する。

 

 

「ふむ! そろそろ私の出番だなっ!」

 

 

と言う妄言を無視して協議する。普通に考えてみれば、三人等しく勝負に出た方が不公平ではないので、此処は耀が行くのが最も良手かもしれない。

 彼女は十六夜に次ぐ〝ノーネーム〟の前線戦力だ。ギフトも十六夜以上に応用が利く分心配する事もないだろう。

 ここで一つ、軽く彼女のギフトの片方『生命の目録』について再確認しよう。

 『生命の目録』とは、一ヶ月半ほど前に彼女がグリフォンとのギフトゲームの時にその効力を見せた。それは、異種との意思疎通を可能にする効果、及びに接触した生命の系統樹……特性(ギフト)を行使出来るようになるというもの。

 最近は一方の『奇跡の執行(グラティア)』の頻度が多いので目立たないのだが、こちらも充分に強力なギフトである。まだ、彼女の知りえてない秘密もあるのだから。

 

 

「のうおんしら、良ぉく思い出してみてくれ。私が此処に参った理由は、人攫いをする不逞な輩が居ると噂聞きそやつらを『階層支配者』として灸を据える為に────」

「よし、春日部。あと二戦余ってる訳だが甘んじてやる事もねえ。次で勝負をつけて来い!」

「心配無用です。<ある程度のタネは割れているのですから、後は隙を作り出せば直ぐに済みます>」

「耀さん! 頑張って下さいね! 団長さんのギフトはまだ未知数ですからっ、決して油断をなさらないように!!」

「了解です」

 

 

 若干一名、華麗にスルーされた駄神様がいらっしゃったが、耀は意にも介さずに舞台上へと上がった。

 

 

「私の相手はお嬢はんか? フフ、精々粋の良いよぉ調教してあげようやないの♡」

「……あくまで余裕なんですね。貴女の泣き顔を少しだけ拝みたくなってきましたね……」

「……フッ、アハハハハッ! ……出来るものならやってみ? ま、────お嬢はんは私に傷を負わせる所か、こちらの攻撃も防げやしめへんえ!」

 

 

 バチイイィィンッ!! と団長の鞭が舞台を打った。

 耀は瞬発的に飛び退った事でそれを回避。そしてそのままグリフォンのギフトを応用し、空を蹴って団長への懐へと潜り込んで反撃の隙を与えないまま顎を思いっきし蹴り上げる。

 しかし、そこで耀は止まらない。足を振り上げた反動を活かし、左足で腹部に二度目の襲脚。そこから空中へと躍り出ると、今出せる最重量の蹴りを再び腹部へ叩き込んだ。

 流れるような足技の猛攻。耀はハッキリとした手応え……足応えを感じ取る。意識を狩り取る勢いでやった為、これで起きてこられる筈は無いのだが……、

 

 

「っ、やっぱり駄目ですか……」

 

 

 団長の意識は顕在だった。その上、取れこむ直前に地面に手を付き綺麗なバク転を決めて元の姿勢に戻る。その表情は依然として余裕を引っ提げた笑みを浮かべており、耀の攻撃など蚊程も通じないと言わんばかりだ。

 彼女がふと手を上げて、パチンッ! と指を鳴らす。すると、

 

 

「……ッ! つッ……!」

「耀さん!!? 嘘、何時の間に……?!」

 

 

 耀の全身から鮮血が迸る。

 黒ウサギの言う通り何時の間にやられたのか、耀の至る箇所に裂傷が生まれていた。

 今の攻撃、黒ウサギはおろか十六夜も飛鳥も認識出来ていない。気付いたら全身を斬られていた、正にそうとしか言いようが無い。

 けれども十六夜と飛鳥はうろたえない。そして耀も。だって、彼らは既に、確証までは至ってないが団長のギフトに当たりを付けているのだ。黒ウサギに告げ口をしないのは……ポーカーフェイスに向いていないからだろう。

 

 

「ほぉー? まだ立ちはるんか。今ので分かったと思うんけど、アンタは私に勝たれへんよ。降参するなら今のうちやえ?」

「……寝言は、っ、寝て言って下さい」

 

 

 耀は駆け巡る痛みを表情に出さず、普段と変わらぬ様子で地を蹴る。

 拳を引き絞り、団長へと振りかぶる。対して団長も鞭を耀へと這わせた。……だが、耀のその姿はフェイントだ。

 緑髪がフワリと靡く。それに気付いて後ろを振り向くが、そこには淡く光を纏った拳が鼻先にまで迫っていた。

 

 ギフトを二重に行使した割りかし本気のパンチ。耀は今度も手応えを感じ、そこで手を止めずに殴り、そして蹴りを入れ続る。

 合計で数十発、打ち込まなかった急所は無いくらいに団長をワンサイドで殴打し続けた。

 耀は一旦距離を置く。

 

 

「…………此処まで見せて、まだ駄目ですか。やはり仰々しく試すしかないのでしょうk────イ゛ッッ!!?!?」

 

 

 突然、耀の身体が電流でも流されたかのように仰け反った。……違う、実際に身体を()()()()()()()()()()()のだ。

 全身を焼く激痛、衝撃の最中、耀は偶然にも持ち堪えて背後を睥睨する。……団長が立っていた。確かに、今さっきまで目の前に居た筈の団長が、電撃の奔る鞭を自身の胴から下がらせる様を……。

 

 

「ぐっ……!」

 

 

 ここで倒れる訳にはいかない。耀は一歩間違えれば死んでも可笑しくない位に負傷した身体を根性と気力で立たせる。

 

 

「あらまぁ。これを貰ってまだ立てるんか? 見上げたしぶとさどすなぁ?」

 

 

 どうして? 彼女のギフトでは、こんなに都合良く……! 耀はギリッと、初めて苦悶の表情を表した。

 

 ここで耀たちの考えた団長のギフトについて明かそうと思う。

 そのギフトとは、団長自身を除いた人々の心象を具現化するというもの。民主主義的に多数の心象が具現化されるのが普通の考え方だろうが、彼女が自信に、余裕に満ち溢れている今、負ける事を想像する者は居ないだろう。

 此処までで、具体的な証拠は何一つとしてないと思う。今まで見てきたモノと言えば、サーカス公演時のドラゴン、黒ウサギの洗脳操作だけだ。後者に至っては団長のギフトによるのかすら怪しいと思われる。

 ではどうして? これも何度目になるか分からないが………飛鳥のお陰だ。

 結局の所彼女に隠し事など出来ない。

 物事を考えられる何某というものは、その事項を示唆された場合、表には出さずとも心の奥底では僅かながらその事を考えてしまうのだ。つまり、飛鳥に覚られないようにするには、意識を除外しての行動……無意識下で相対するしかない。

 だがまあ、これはあくまで飛鳥の読心のみに言える対策である。彼女には、もう一つ厄介な精神系の技があるのだ。

 

 団長は、身体が麻痺して思うように動けない耀へ鞭を振るう。

 耀は身体を前に投げ出す事でそれを回避するが、背中が鮮血の飛沫を上げた。

 

 

「……ッ!! (どうして、何故ですか?! こんな都合良く大多数の人たちが心象を共有するなんて事……!?)」

「ほらほら、早ぉ舞台から降りれば死なずには済むかもしまへんで? それとも……まだ踊り足りないんか?」

「ッ、耀さん! 此処は退いて下さい! このままでは本当に死んでしまいますッ!!」

 

 

 黒ウサギが悲痛に叫ぶ。

 ……耀は退こうとしていない。彼女の目はまだ諦めてはいないのだ。

 

 一度冷静になって考えて見る。団長のギフトは心象の具現化、大多数の物に影響される扱い難いながらも強力なギフト。

 瞬間移動も、鞭から放たれた電撃も斬戟も、全てそのギフトによるものだ。

 しかし、斬戟はまだしも電撃は無理がないか? この円形闘技場には確かに多数の観客が居る。一人くらいその様な心象を浮かべても否定は出来ない。

 だが、だからと言って多数の者が同時に電撃を思い浮かべる? それこそ、団長のギフトに飛鳥のような精神干渉系のギフトでもない限り…………

 

 

「っ……」

 

 

 耀はハッとして後ろを……険しい表情の十六夜の隣で悠然と微笑む飛鳥を見る。

 彼女は、漸くか…と言わんばかりに笑みを色濃くし、口のみを動かして言った。

 

 

『セルフハードモードって……見ていて楽しいわね♪』

 

 

 鬼だ悪魔だ外道だ。

 最悪の人物がまさか身内にいらしゃったのである。そんな事随分と前から分かってはいた事だが、この様な窮地にまで介入してくるとは、怒りを通り越して逆に笑えてくる。

 

 

「(あー、そうですか……そうなんですね……。分かりましたよ……そっちがそう来るなら────私も加減はしませんよッ……!!)」

 

 

 全身を隈無く蹂躙されて、漸く、やっとだ。耀は()()()()()するのを止めた。

 その意思を読み取った飛鳥は、一層に愉しそうに笑った。十六夜も、この時になって飛鳥が余計な手を出していた事を知り、取り敢えず頭が吹っ飛ばない程度の拳骨を振り下ろした。

 脳天に響いた衝撃に覆わず蹲る飛鳥。そんな彼女を見て耀は思い、

 

 

「(自業自得です。それと、十六夜さんグッジョブです)」

 

 

十六夜へと親指を立てた。

 彼も苦笑しつつ同様に返してくれる。

 

 

「? ……(空気が変わった?)」

 

 

 団長は耀の挙動を訝しみ、次の瞬間初めて動揺を見せる事になった。

 何と、耀の身体を撫でるように旋風が巻き初め、その端から彼女の傷という傷が全て消滅していったのだ。まるで消しゴムで消しているかのように傷はその数を減らしていき、最終的には五体満足の春日部耀がそこに佇む事となった。

 十六夜と飛鳥(とイジケル白夜叉)を除き、誰もがその光景に目を疑う。

 

 

「!?(そんな……あの状態からどうやって……?! あないな事を可能にするギフトを持ってるとでも言うんか?!)」

「はぁ…………疲れますね。やはり『奇跡(ギフト)』での真似事は精神的に疲れます。それとお腹も空きますね。どうしてくれるんですか………ねぇ、団長さん?」

「っ、(……あ、焦る事あらへん! まだ勝利は私の方に傾いてる。口振りから、あの回復も無限でない筈や。それが分かれば……、)」

 

 

 無理矢理気を沈める団長。耀の言葉から彼女のギフトが有限であると理解し、その力が尽きるまで攻撃を繰り返せばいい。

 そう彼女が考える矢先に、耀は声の調子を確かめるように声を出し……、

 

 

「あーあーあーー…………コホンッ────ご来場のお客さんに言っておきますね! 今から私、とっておきの大技を放ちますので、もし巻き込まれたくなければ今直ぐに避難する事をお勧めします!」

 

 

 会場にざわめきが奔る。今まで死に掛けていた少女が唐突に観客を巻き込む程の技を繰り出すと言っているのだ。動揺くらいはするだろう。

 でも、なら何故それを先に使っておかなかったのか? ハッタリじゃないのか? と疑問も当然出てくる。

 それが口に出される前に耀は更に続ける。

 

 

「もし、ハッタリだッ、嘘だッ、と思っても構いません! その時は、皆さんの五体がこのテントごと粉々に吹き飛ぶだけです! 信じるも信じないも皆さん次第! 例え死んでしまっても私は一切責任を負いませんので、そこの所は宜しくお願いします!」

 

 

 『信じるも信じないも自分たち次第』『死んでも責任を負わない』……信憑性は兎も角、人々の生存意欲を働かせるには充分足りえる殺し文句。だろう

 この一、二言があるだけで、人々は一気に不安の渦中へと叩き込まれた。ハッタリかもしれない、嘘かもしれない。だがもし……本当だったら? そんな感情が観客たちを席から続々と立たせた。

 

 

「な……! 皆待ちなはれ!! 最後まで此処で見てるんやっ! そないなデタラメに騙されたらいかんどす!!」

「デタラメかどうかは…………体験してみれば分かる事ですよッ!!」

 

 

 刹那、耀の掌に限りなく白に近い青白い球が出現した。

 一見何の変哲もない只の球体に見える。だがしかし、それは綺麗な球体ではなかった。

 陽炎のように微かに揺らめいているそれは、その圧倒的熱量により彼女の周囲の空間をやや歪ませている。

 

 耀から、その炎熱球から放たれる威圧感に、団長は額に汗を滲ませ数歩後退した。

 

 

「……団長さん。貴女の手品のタネは疾うに割れているんです。命が惜しかったら……降参して下さい。貴女の味方(観客)が一人残らず居なくなった今、手品のタネは貴女を殺す災いでしかないのですから……」

 

 

 久しぶり、と言うか初めて声を張り上げたであろう耀は、淡々とした口調に戻って告げる。

 彼女は飛鳥や十六夜と違ってまだ平和的思考の持ち主だ。あまり手荒に事を終わらせたくないのだ。

 

 団長は暫く耀を無言で見つめ……やがて観念したかのように息を吐くと、

 

 

「……やれやれ。その様子やと全部分かってるみたいやね。これはもう…………参りましたわ」

 

 

トサッと鞭を落として恭しく礼をして負けを認めた。

 

 

 〝ノーネーム〟は三勝目。これにて、ギフトゲーム『Funny Circus Clowns』は〝ノーネーム〟側の勝利として終わりを告げたのだった。

 

 

 

 

 

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