■■■■たちが異世界から来るそうですよ?【削除&改訂予定】   作:白結雪羽

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収穫祭へ向けて

 

 

 

 

 現状報告会兼ね活動方針会議が始まる前から若干三名程の退席者が出てしまったが、取り敢えずは残った面子で会議は始める事となった。ジンと黒ウサギは酷く頭を抱えていたが、あの状態の三人を引き止める事は愚か連れ戻しに行くなんて自殺行為は遠慮したくないため……萃の勧めに従い放置である。それに気にせずとも、彼らもそこまで奔放ではないのだから直ぐに戻ってくるだろうとの事。

 

 さて、まずは現状報告……とは言っても然して報告する事は多くなく、先の魔王襲撃の件における報酬が規定以上に多くなってコミュニティの備蓄が暫くは問題無くなった事。農園区の復興が完了し、残数ヵ月後に第一陣の栽培成果が確認できれば安泰である事。大雑把に言ってしまうと主にこの二つである。

 補足すると、農園区で現在栽培を実行しているのは生活を支える為の食物関係に治められており、十割が復興した今貧窮に陥る事はない状態である。一部では主食類の栽培を目的とした区域も開拓中だそうだ。

 

 そして、今回のコミュニティ方針会議の本題はこの農園区に大きく関わっている。

 簡単に説明すると、農園区は今凄惨な状況を嘘と思わせる程に回復した。リリも思わず泣いてしまうくらいに元通りにである。そこで黒ウサギとジンは、これを期に農園区を新たに開拓して特区を設けようと考えたのだ。で、その特区にはコミュニティ内の収入となるような霊草や牧畜を取り入れようという事になったのだが……

 

 

「成る程、それでその招待状が重要になってくる訳ですね」

 

 

 耀は黒ウサギの持つ三つの招待状を、その内コミュニティ〝龍角を持つ鷲獅子(ドラコ・グライフ)〟の封蝋に留められた封書を一瞥し納得する。

 招待状とは言わずもがな、ギフトゲームの招待状である。今回はその内の南側で開催される収穫祭が味噌となってくるのだ。何せ先の誕生祭と証した北側の技術メインの祭典とは違って自然感溢れる祭典、今欲している霊草や牧畜の類も確実にギフトゲームの商品として存在するだろう。

 要するに、今回の方針は南側の収穫祭に参加して大いに成果を上げてこようという事である。

 

 因みに、残りの招待状の内片方は、以前耀が北でのギフトゲーム〝造物主達の決闘〟で対戦相手であった〝ウィル・オ・ウィスプ〟からの物である。此方については、収穫祭の前に耀が参加するつもりらしい。

 

 

「……それでジン。話はそれで終わりではないのじゃろ? お主のコミュニティの方針会議に態々自分等まで呼んだのじゃからの」

「はい。方針については一通りで以上ですけど……一つだけ問題があります」

「問題、ですか……?」

 

 

 耀が首を傾げる。

 と、そこである意味タイミング良く広間の扉が開き、やや着物の解れた飛鳥に、何故か全身ボロボロ満身創痍の十六夜とレティシアが戻ってきた。飛鳥は「やりきったわ……」みたいな清々しい笑みを浮かべ汗を拭う反面、十六夜とレティシアは今にも死にそうな程疲弊している。

 飛鳥は兎も角、後ろの二人を見た瞬間黒ウサギとジンは血相を変える。

 

 

「お、お二人とも一体何があったのですか?! というより今まで何をしてたんですか!!」

「「…………」」

「……え、あ、あの? い、十六夜さん? レティシア様?」

 

 

 黒ウサギの刺を含んだ言葉が飛ぶ。だが二人は碌な反応を示さずに大人しく割り当てられた席に就いた。耀とリリがそれぞれ二人に声を掛けるも、こちらにも一切反応せず重い溜め息を洩らすだけ。本当に何があったのだろうか……

 それで、そんな心身共に沈みきった二人を他所に、飛鳥は不気味なくらい晴れやかな雰囲気でジンに遅れた謝罪を述べた。

 

 

「ごめんなさいジン君。少し手間取ってしまったわ」

「…………、自分で決めた時間はちゃんと守って下さい。それと、退席を許すのは今回限りです。次はありません」

「フフ、肝に命じておくわ」

 

 

 最初何から言うべきか迷ったジンだが、十六夜とレティシアについては彼らのためにも触れないでおく事にし、飛鳥には代表で厳重注意を告げて席に戻って貰った。

 

 退席者三名が帰ってきたは良いが、内二人が空虚な状態。このままでは最後の話に移れないと困り果てるジンであったが、気力を振り絞って二人から「続けてくれ」と言われたので、気を使いながらも最後の問題点を話しに移る。

 

 

「もう一度軽く纏めると、近々に控えた南側での収穫祭に参加する事になりました。皆さんには、そこで催されるギフトゲームに参加して、今後のコミュニティの支えとなる品を勝ち取って貰い、同時に外聞を広げて貰います」

「後者は前者の功績を積み上げていけば自ずと上がってくるわね。

それで? 何か一つ問題があるようだけど、」

「はい。実は、この収穫祭ですが、大体三週間程の期間で開催される予定で、前夜祭を入れれば二十五日、約一ヶ月にもなります。この規模のゲームはそう開かれる事もありませんし、出来れば最後まで参加したいのですが……長期間コミュニティの主力が本拠に居ないというのは良くありません。

そこで、レティシアさんには事前に話を通しましたが、彼女の他にもう一人、誰か留守を頼みたいのですが……」

 

 

 ジンはそこで言葉を区切り、十六夜達異邦人組と萃、ペストの仮所属組に視線を回した。

 彼の心配は尤もで、〝ノーネーム〟の主力勢が留守の間コミュニティに何かあってからでは遅い。そのため、最低でも二人は本拠に残って貰いたいのだ。幸いな事に、五人のギフトはどれをとっても強力な力を携えている。未だ不確定要素の多いながら、その効果は折り紙つきである。

 ただ、懸念があるとすればこの五人が素直に留守を任されるかという事。また、萃と彼に付いているペストについて。二人には現在箱庭でも少々特殊な規定が適用されているため、拒否されては残る三人に頼る他なくなってしまうのだが……

 

 

「ふむ……話は理解した。

――――すまぬがジン、自分等は辞退させて貰う。何分享楽には目が無い質での、この歳ともなると顕著なものじゃ。身勝手じゃが、お主には以前話した通り。

なに、分際は弁える。コミュニティの名に泥を塗るような事はせんし、ある程度の戦利品は持ち帰ってくる……。

――――ペストもそれで良いな?」

「好きにすれば。どうせ私に選択の余地なんて無いんでしょ」

「む? いや、残りたければレティシアと共に留守番してても構わんぞ?」

 

 

 止めはせんと肩を竦める萃。そんな彼の態度にムッとしたペストはやや思考に耽入り、

 

 

「…………行く」

 

 

やがて仏頂面にながらも萃の意思に乗った。流石に萃と別れて大人しく本拠でお留守番は嫌なのだろう。

 こんな所にも彼女の依存が垣間見えた瞬間であった。そしてそんな彼女に意地の悪い笑みを露骨に浮かべる飛鳥である。わざと気付かせるように向けている辺り、やはり彼女は異邦人三人の中でも群を抜いて陰湿だ。

 飛鳥の笑みに気付かされたペストは、眉間を顰めながら心中でぼやいた。

 

 

(あとで覚えてなさいよ……!)

(……フフ)

 

 ペストの心中は飛鳥には手に取る様に解る。後で可哀想に泣かされない事を……まぁ祈っておこう。

 

 (主に飛鳥のせいで)空気を多少読めるようになってきている〝ノーネーム〟の面子だが、もう暗黙の了解で飛鳥には触れず話を進める。

 

 

「――――という訳じゃ、ジン。選別するならそこの童共の中から決めてくれ」

 

 

 萃の言葉に十六夜達は……反論しない。萃の扱いについては前々から聞かされ理解はしているから、また口答えしても無駄だと悟っているからだ。

 さて、ジンの懸念通り萃とペストは頼れなくなった。という事は十六夜、飛鳥、耀の三人の中から留守番を一人出さなければならない。ただこの三人が大人しく留守番を任されてくれるか……正直厳しいとジンは思っている。

 耀はまだ聞き分けが持てているだろう。だが十六夜と飛鳥は全くの対照的だ。特に……毎度の如く飛鳥については間違っても癪に障らせてはいけない。

 彼女は、力こそ〝ノーネーム〟の主力勢の中では最も非力だとしても、そのギフト故に主力勢の誰よりも抜き出ている。あの未だにギフトゲームで実質の負けなしという萃でさえ、彼女のギフトには敵わないのだ。

 この場は、どうにか彼等の理知的思考に賭けるしかない。一応代替案を一つ用意はしているのだが、出来ればそこで妥協をして貰いたいと考えているジンである。

 

 ジンの懇願する視線に対し、顔を見合わせる三人(十六夜復活済)。そして、暫しその状態が続くと飛鳥が代表としてジンに口を開いた。

 

 

「ジン君、私達はそこのお子様みたいな老い耄れさんと違って留守番くらい任されても良いわ」

「ほ、本当ですか?」

「ちと待とうか飛鳥。誰がお子様じゃと? せめて童心を忘れぬと形容せんかっ」

(大して変わらないじゃない、それ……)

 

 

 萃の抗議はスルー安定。

 飛鳥の意思表明に安堵の息を吐くジン。しかし、それも束の間「但し、」と続けられた事で再び体が強張った。

 

 

「ふふ、何もそんな身構えなくて大丈夫よ。

一つだけ要望があってね、一人だけお祭りに参加出来ないのはちょっと不公平じゃない? だから、期間毎に人数を振り分けてほしいのよ。

例えば、前夜祭と本祭を計三つに分けて二人ずつ日を当てていくみたいに、ね? ジン君はこれくらいなら許容に入れて良いと思ってるものね」

「あ、は、はいっ。それでしたら構いません。

僕の案としては、前夜祭に二人、オープニングセレモニーから数日は三人、残りを二人と配分するつもりですが……」

「つまり……一人だけ収穫祭を全日程満喫出来る訳ですか」

 

 

 そこで再び顔を見合わせる三人。今度ばかりは少々時間が掛かり、ざっと一分くらい。不意に飛鳥が肩を竦めて、

 

 

「はぁあ……前夜祭は十六夜君と春日部さんに譲るわ。全日程過ごすのは十六夜君ね。席順から考えてみても妥当でしょう」

「ま、そういう事だ」

「えっ、あ、飛鳥さん? 耀さんも、それで良いのですか?」

「はい。何故そう意外そうな反応をされるのか今一腑に落ちませんが……私はこれで構いませんよ」

「私も。なに、レティシアも一緒なんだから……退屈はしないわ」

「っ……!?」

 

 

 飛鳥の発言にまだ復活しきれてないレティシアが異常に反応する。考えてみれば、彼女が若干荒んできている原因は飛鳥である。そんな彼女と暫く留守を任される…………地獄だ。

 が、まぁ彼女に救いの手が伸ばされる事は無く、一同は心の内で静かに合掌をするのであった。

 

 とまあ、こうして難航するかと思われた方針会議は恙無く終わった。収穫祭の前夜祭まであと一週間程。それまで〝ノーネーム〟は、祭りへ向けて何時も以上にギフトゲームに勤しんでいくのであった。

 

 

 

 

 




せめて一週間に二話くらいは投稿したいです
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