■■■■たちが異世界から来るそうですよ?【削除&改訂予定】   作:白結雪羽

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……話が進まん。



収穫祭までの彼ら=弐=

 十六夜がトリトニスの滝で余裕扱いてゲームを楽しんでいる……二日前、方針会議が終わった翌日の事。

 耀は〝ノーネーム〟に届いた三つのギフトゲームへの招待状の内、〝ウィル・オ・ウィスプ〟からの招待状を片手に彼らの本拠、及び舞台区画等が存在する北側の六七八九〇〇外門を訪れていた。ただ、別に彼女一人という訳ではなく、あまり日頃からは崩さない無表情を心底嫌そうに顰めながら連れてきた人物が一人居る。

 朽葉の流麗な長髪に、口を開けばキラリと覗く犬歯がどこか活発さを思わせ、その身に内包する覇気は箱庭広しと言えど敵う者など居るのか? と思わせる…………言ってしまうと萃である。

 彼は、何時ものようにペストと行動を共にして〝ノーネーム〟の世話焼き紛いの事をしていたのだが、以前耀がジャックと交わした約束を守る為だと半ば強制的に連行されたのだ。勿論抵抗する事も出来たのだが、事情が事情なため仕方ないと大人しく連行されているのであった。本来の予定ではもう少し先、収穫祭が終わってからでも顔見せに寄るつもりだったらしい。

 因みにだが、彼の傘下の状態であるペストについては偶々本拠でレティシアと談話に花咲かせていた飛鳥に任せている。無論ながらペストは断固拒否したが、何時になく晴れやかな笑みを浮かべた飛鳥に連行されて、その後どうなったのかは分からない。ただ本拠を発つ間際に悲哀に満ちた少女の悲鳴が聞こえたと言う事だけは言っておこう。

 

 萃の持ちで境界門を抜けた彼らのばかりの彼らの視界には、決して人数が多いとは言えない、それでもちゃんと手の行き届いた煉瓦造りの街並みが広がっていた。形容するとすれば時代を遡って再現されたゴーストタウンとでも言うべきか。今はまだ昼間であるが、恐らく今晩にでも所々に見えるランプが仄かに明かりを灯し、最高の雰囲気を醸し出してくれる事だろう。知らずうち、耀の心中は微かにだが高揚感を湧かせていた。

 だが、隣で郷愁紛いの呟きを洩らし軽い哄笑を上げる萃を視界に捉えた途端、その高揚感も徐々に萎み、再び無表情に戻ってしまった。そしてそれに萃は目敏く気付く。

 

 

「何じゃ耀。言いたい事があるなら口にしたらどうじゃ?」

「……別にありませんから。お気遣いありがとうございます」

 

 

 冷淡とした返し。余程萃の事が気に入らないと見える。今になって、ペストを連れてきて真ん中に壁として置けば良かったと後悔する耀であった。

 萃はそんな彼女に焦れったさを感じたのか、同じく不機嫌そうに顔を顰める。

 

 

「お主も食えん奴じゃのう……。自分がそれ程疎く思うんじゃったら面と向かって言わんかい。先からその態度が煩わしくてしょうがない」

「それはすみませんでした。以後気を付けてはみます――――──ッ、」

 

 

 耀が一向に態度を変えないと思った……その矢先、耀の首元にジャラジャラッ! と蛇蠍の如く武骨な鉄鎖が虚空より輪を描き巻き付いてきた。ほんの一瞬意識が遠退く程の締め付けだ。しかし彼女は間一髪の所、右手を隙間に潜り込ませたため落ちる事は無かった。

 ギリギリ、と絞まる鉄鎖に抗いながら耀は、それを何時の間にか手繰る萃を射殺すが如く睨みつけた。

 

 

「ッ……、どういう……つもり、ですかッ」

「なに、ちと礼儀知らずの小娘に癇癪を起こしただけじゃ。言うのもなんだが、自分はそこそこ気が短い方じゃぞ?」

「ぐッ……まるで、子供です、ね……!」

「カカッ、童心はいつ何時も忘れぬつもりでいるからの! ……いや、この体に精神が引かれおるのかの?」

「知りません、よ……そんな事ッ……! っ、」

 

 

 と、どうやら萃の機嫌が幾分か落ち着いたからか、鎖からは直ぐに解放された……が、解放された途端に耀から大気を震わす様な殺気が放出され、萃へと叩きつけられる。

 しかし流石は現役の魔王と言った所、常人に限らず卒倒しそうになる程の殺気を、軽薄な笑みを浮かべ涼風にでも当たっているかの様に受け流している。

 

 幼い老成と未熟な少女の愉快と殺意の視線が織り交ざる事数秒。先に場を退いたのは耀の方であった。

 彼女は徐に殺気を納めると、萃の元に陣風を起こし、彼の頬に浅い傷を負わせた。

 

 

「……これでさっきのはチャラです。まだ風穴を空けられた分がありますけど、今ここで殺り合う訳にもいきません」

「ん、賢明だの。まぁこの程度の報復なら素直に受けてやる。風穴については……知らん。自力で一矢報いてみるのだな」

「言われずとも……」

 

 

 頬の傷を痒そうに掻く萃からフイッ、と視線を外して……と思ったら道の先を歩き出していた彼に対し仏頂面を張り付けて後に続いた。

 

 

 

 

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

 やがて着いたのは、手入れは行き届いているが宛らお化け屋敷とも取れなくもない古調の洋館。聞く所によると、此処が〝ウィル・オ・ウィスプ〟の本拠であるようで、萃が以前来た時とあまり変化はないようだ。

 耀としては以前から関わりがある事が気になるのだが、ジャックが彼を知っていたのを改めて思い返し驚くことでも無いかと思った。

 

 萃のどうでもいい懐古話に適当な相槌を打ちつつ、コミュニティの者であろう子供に招待状を見せ話を通し、二人は本拠へと足を踏み入れる。

 招待状にも書いてあるが、ゲーム開始は日が落ち月が昇る頃──今夜のようであり、そのためか本拠内の人気は少ない。どうやらアーシャとジャックもメインの主催者(ホスト)と言う事で姿が見えなかった。耀としては招待状を送ってくれた礼をしたかったのだが、準備に出張っているのなら仕方が無い。

 

 

「…………ところで、貴方の名義で上がらして貰いましたけど、他コミュニティの本拠を頭首の許可無しに好き勝手歩き回るのはどうなんですか? と言うより良くあの子も通してくれましたね、貴方は曲がりなりにも魔王だというのに……」

「ん? あぁ……まぁ、そこら辺は気にするな」

「…………まさか、()()()()誤魔化したりしたんですか」

 

 

 そう考え付くや耀は怪訝そうに半眼で萃を横に見た。

 だが彼は「馬鹿言うな」と即答で否定をしめす。

 

 

「自分がそんな狭小な事をすると思うか? 偏に顔が利くとは考えんかのう」

「いえ全くこれぽっちも。……豪胆に反して胡散臭さは異常ですからね、貴方」

「敢えて否定はせん(ま、朱呪に言われよう物なら即刻叩き伏せるが……)」

 

 

 と、そんなこんな遣り取りをしている内に二人は客間らしき部屋へと辿り着いた。例によって無断で使用しても良いのかと疑問に思う所だが、萃に一切の気兼ねは無く入室し

 

 

──ズガシュッ! パシンッ、──

 

 

ようとした所で両者の頭上から急襲を仕掛ける者が現れた。音から察する通り、片や忽然と来た襲撃をまともに受け、片や難無く『それ』を掌に収め込んだ。

 ゴンッ、と音を立てて頭上から落ちた物体を、鈍痛に苛まれながら耀は目で追う。

 それは一風変わった代物であった。形状は十字架を意識した物のようだが、頭に受けた時の衝撃と感触から考えるに金槌(ハンマー)の類の鈍器と思える。拾い上げてよくよく見てみれば柄のバランスからしても小振りのハンマーに尚更感じられる。だがまあ、彼女にとってそれが金槌だろうが何だろうがどうでもいい。問題は何故頭上から行き成り襲撃を受けたのかと

 

 

──ズガシュッ!! パシパシパシンッ、──

 

 

言う事なのだが、同じ箇所への追撃にその思考は中断。そしれまた被害者は耀だけであった。どういう訳か萃は金槌もどきの襲来を予見できている……いや、単純に出現からの反応速度が速いだけかもしれない。見た感じでは手が一瞬ぶれていて、気付いたら手中へ既に握られている状態であった。

 あと序だが、彼の方が襲来した数が耀の二倍……四つも飛んで来ている。

 

 

「…………、」

「はぁ……全くあの娘は。百年経とうとあの悪癖は変わらぬのか」

 

 

 耀の気配が若干怪しくなってくる最中、萃が呆れ返って頭を掻く。流れと直感的にもう一打来そうな予感がするが、流石にこれ以上は黙って見過ごす訳にはいかない。彼とて好きに頭を殴られる趣味などないのだ。

 しかし相手の姿が確認できない今、どうやって予兆無しの襲撃を掻い潜り見つけ出すのか……。やってしまえば簡単な事である。見えなければ目の前まで引き寄せれば良いだけの事だ。だけど一応自分から少し待ってはみる。ここでどう動いてくるかによって彼の、及び耀の対応が随分と変わってくる…………耀はもう手遅れかもしれないが。

 十……二十……三十…………、

 

 

──パシパシンッ!──

 

 

 二人の腕が神速で頭上へと移動し、襲来物を受け止める。それと同時に萃はその全く同じ形状の金槌を握り砕き、一度左脚を踏み鳴らした。

 すると、忽然と二人の正面に一人の少女が出現した。顔と背丈は非常に幼い印象を与えながらも、その胸元は酷く自己主張の激しい……所謂ロリ巨乳に片足を入れているような少女。恰好も胸元と太腿を大胆に見せる蠱惑的な物で、でもその表情はやや純心無垢。免疫の無い男性ならコロッと旅立ってしまいそうな、そんな背徳感を漂わせる少女である。

 彼女は突然視界に入る景色が変わったせいか少々目を丸くしているが、正面の悪鬼()羅刹(耀)を捉えるや、その表情に乏しいベビーフェイスから血の気を引かせた。一体どんな表情をしているのだろうか……想像するも口にするのも恐ろしい。特に耀は三度の襲撃において二度も殴打をされた。そして彼女、意外と枠外の理不尽には厭に敏感である。

 

 

「……………………だ、大丈────ッ!!?」

 

 

 幼けな少女。今直ぐこの場から退散したい衝動に駆られるも、こちらを見つめる二人に何とか声を掛ける。が、最後の『夫』とまでは言えなかった。

 時既に遅し。彼女は近くの壁に手加減されながら押さえつけられ、強制的に顔を固定。耀の静かな怒りと若干の虚ろに満たされた双眸を間近で拝む事となった。

 

 

「……………………………………………………、」

「ひ……!?」

 

 

 顔を押さえたまま一向に無言を貫いて顔を覗く耀。そんな彼女にとうとうゴスロリ少女も悲鳴を上げてしまう。

 実際考えてみよう、背反敵感情を内包した無機質な表情でずっと顔を真ん前で覗かれる…………軽くホラーだ。

 

 今更だが、萃が引き寄せた事から彼女が襲撃の犯人。それも物を遠距離からノータイムで飛ばせる所を考えるに厄介そうなギフトを持っているのだろう。そして引き寄せの際に忽然と虚空から姿を現した事から空間を跳躍できる可能性が高くなった。

 因みに、萃の引き寄せた力は、本人の持てる移動手段を活用して最短で当人の意思に関係なく引き寄せるのである。つまり空を飛べるのなら飛ばして、地に足が付いてるのなら走らせて、問答無用で引き寄せる。と、考えると、少女は飛んできた訳でも走ってきたわけでも壁をすり抜けてきた訳でもない。なら単純に消去法で転移辺りに落ち着くのである。

 

 (いい加減名前を知りたい)少女の本能的危機感が激しく警鐘を鳴らす。今直ぐに逃げろと、さもなければ……のような警告が幻聴として聞こえてきた。

 だから少女は本来の目的を一旦置いて逃走を図ろうとした…………が、

 

 

「…………っ!!(あか、ない? あ、境界門(アストラル・ゲート)が、開かない……?!)」

 

 

出来なかった。

 思わぬ事態に内心彼女は混乱する。内心で思う所、あくまでも表は取り繕いたいのだろう。だがまあ微かに震えているのは隠しきれていない。それに気付けないほど取り乱していた。

 藪を突いたら蛇が出てきたなんてレベルじゃ済まない。もっと恐ろしい、得たいの知れない物が出てきてしまった。今更後悔しても遅いが、もうどうにもならない(のかもしれない)。

 

 

 ────だが、そこに彼女にとって救いの声が割って入ってきた。

 

 

「耀、その辺にしてやれ。そ奴も……故意にと言えば否定は出来んが、悪気は無いんじゃよ……多分な。

そして、何より早う止めんと話が進まん」

「……………………そうですね。シバクのは話が付いてからにしましょう」

「あぁ、それなら構わん」

「ぇ…………、」

 

 

 ────訂正、少女に救いの道は無かったようである。

 とまあ、こうして一旦は怪しい感情を落ち着けた耀は、丁度目の前を訪れていた客間に少女を連れ込みじんm……事情聴取に取り掛かるのであった。

 

 

 

 

 




当初は一話ごとで十六夜、耀、飛鳥と分けるつもりだったのに気付けばダラダラと中途半端な物に……本当申し訳ない。
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