■■■■たちが異世界から来るそうですよ?【削除&改訂予定】 作:白結雪羽
「はい、チェック」
「む、むぅ……。今回ばかりは自信があったのだがな……」
「ふふ、まぁ少し惜しい所までは行ったけど、詰めが甘かったわね」
飛鳥は指先で黒の
なんとも優雅に映える光景だあろうか。飛鳥もレティシアも、身体的には成人を迎えていない未発達な
さて、耀と萃を見送りペストを拉致って『××』した飛鳥……とレティシアであるが、二人揃ってその日はギフトゲームの予定も無かったため大変暇を持て余しおり、今は本拠に偶々あった複数のテーブルゲームでその暇を消化していた。因みに今さっき終えたのはチェスである。
以前ならレティシア辺りはジンの庶務の補佐なり黒ウサギと子供達の手伝いなり何かしらの仕事を求めていたのだろうが、最近では専ら飛鳥達三人、いずれかの相手をしている事が多い。
その中でも特に多いのはきっと飛鳥だろう。異邦人組の中では筆頭に性格言動に難のある彼女だ。誰か手慣れた者が相手をしてないと何をやらかすか分かった物ではない、少なくともレティシアにはそう思われているようであった。
……こう言うと十六夜と耀は大して問題が無いように聞こえるが、あの二人も大概である事は忘れてはいけない。
「ふぅ…………それにしても、収穫祭まであと二日。その後には前夜祭が五日間続いてと…………正直退屈ねェ。態々十六夜君と春日部さんに気を使わせなくても良かったかしら……?」
「そもそも、素直に遠慮を見せた時点から飛鳥らしくはないと思うがな。ま、何にしても自分から申し出た事だ。今更嘆いても仕方ないだろ」
レティシアの言葉は尤もであるが、飛鳥もそれを理解してない訳ではない。ただ納得がいくかと問われれば思い悩む所なのだ。
「別に口にされなくても分かってるわよ。はぁ…………一週間、レティシアだけで乗りきれるかしら……?」
「…………」
でもそこは飛鳥、『玩具』があれば一週間程度何とか乗りきれるだろうと考える。その『玩具』についてはハッキリ同情しか浮かばないが、そこは同じ留守番組に宛がわれた同士、堪えて貰うしかない。
レティシアは飛鳥に悟られてしまっているだろうが、内心この先の一週間を堅実に生き延びようと覚悟を決めるのであった。
――――ところで、今までスルーしてきたが、冒頭の方に何やら可笑しなモノが出てきたと思う。
…………そう、『メイド』である。振り返ってみれば明確になるが、確か〝ノーネーム〟にはメイドなる者は居ない筈である。一時期レティシアが自ら仕事欲しさのあまりに成り下がろうとしていたが、あれは最終的に飛鳥が慈悲無く両断していたため彼女はメイドではない。
では一体誰か? そこでもう一度思い返してみよう。冒頭からまだ、若干一名程登場していない人物が居る。それは…………
「さてと。レティシア、そろそろ時間も丁度良い頃だしお昼にしない?」
「…………あぁ、うん。そうだな」
「ん、それじゃあ『メイド』さん、何か適当に……サンドイッチ辺りの手頃な物をお願いするわ」
「っ……か、畏まりました、お嬢様」
顔を熟れたトマトの様に真っ赤に染めぎこちない言葉使いながらも恭しく腰を折り、卓上のティーセットと共に退室するメイドさん。普段愛着している斑模様のワンピース姿ではなく、フリルがふんだんにあしらわれたフリフリの
何故彼女がメイドになってしまったかというと、何て事はなく、ただ飛鳥に拉致られて××された後、以前レティシアや白夜叉に行使したギフトの合わせ技を効かせただけだ。精神面からの自己暗示に、言霊での強制……特に前者は無拍子無動作のせいでやはり対策抵抗のしようがない。
レティシアは卓に広げたゲーム盤と駒を片付ける傍ら、怒りと羞恥心に顔を染めていたペストの後ろ姿を見送り、申し訳程度の同情を向けた。だが飛鳥に止めるよう苦言を呈さない所から、代わりの犠牲となってくれて感謝もしている彼女であった。
「フフ……あの子、案外メイドの素質があるのかしらね。作法とか主人に対する態度の弁え方とか、今から仕込めば……フフフ、楽しくなってきちゃった♪」
「飛鳥、せめて……程々に加減はしてくれ。潰れてしまっては元も子もない」
「あら、珍しく止めないのね?」
「止めた所で被害者が増えるだけだ。私もある程度は学習したよ……」
「成る程? 学習した結果少し薄情になっちゃたのね。……良いじゃない。好きよ、そう感じ」
珍しく飛鳥から褒められたレティシアであったが、何故とも思えない、まったく嬉しくない褒め言葉であった。
――――時間は少し経ちお昼過ぎ。飛鳥のギフトのお陰か、はたまた元々出来た方なのか、それなりに美味しいペスト手製のサンドイッチを食べ終えた飛鳥とレティシアは、遊び以外に暇を潰すためにと〝ノーネーム〟の旧・居住区に向かう事にした。レティシア曰く、何時までもあの風化した建造物群を残していても仕方がないので、今後のためにも整地をしておく必要があるらしい。
幸いにも、飛鳥にはディーンが、レティシアも吸血鬼としての力やギフトの龍影を加減して使えば作業が出来る。つまり何も問題は無いわけだ。
「ねェレティシア、一気にパァーッとやっちゃ駄目かしら? 一つ一つ片付けていくよりはよっぽど効率的だと思うのだけど」
「私は別に構わないが……それだと後始末が面倒になるぞ? 何も今日一日で全てを終える必要はないのだから、無駄に急く必要もない」
「ん……まぁ、そうかもね――――ディーン」
「DEEEEN!」
飛鳥は懐からギフトカードを取り出しディーンを呼び出した。
本来なら、メルンも居た方が更に効率向上が図れると考えてもいたが、彼女は基本農園区で活躍して貰っていおり、今も子供達と一緒に畑作の補佐をしてるだろう。だから贅沢は言わない。
「さ、ディーンも調子は良いしチャッチャと取り掛かり……………、」
「? どうしたあすk――――っ。……おい、少し待て飛鳥」
ディーンに指示を飛ばそうとした時、唐突に飛鳥が何かを思い付いたかのように声を上げた。その彼女を不思議に思い顔を横に向けたレティシアは……飛鳥の、何かやらかそうとする時の笑みを見て瞬時に警戒心を撥ね上げた。加えて実力行使も厭わないつもりか、漆黒の長槍を手に取っておく。ここまでの動作は実に手慣れた物であった。
しかしながら、飛鳥はレティシアの緊迫を気にもせず、不意に右手を持ち上げて
「そう言えばねレティシア。私、箱庭に来てからは以前より体を動かす機会が増えたのよ。それでもね、どうにも運動不足が否めないの」
「……何が言いたい?」
「フフフ、要するに……」
パチンッ! と飛鳥は指を鳴らした…………刹那、二人の後ろで漆黒の風が殺気と共に吹き荒れた。
不意を突かれたレティシアは、ギョッ!? としてその吹き荒れる風の暴力の源――――憤怒を有り有りと示したペストへと振り向いた。
「な、な、何をしたんだ飛鳥……?」
「あ、何だか久しぶりねその表情。最近の貴女って耐性が付いてきちゃったみたいで少し物足りなかったのよねェ~」
「言っている場合か! 一体何をしたか聞いている! いくら好きに操られていたとしてもあの様子は尋常ではないぞ?!」
「ん? だって殺意を覚える位に『怒り』の感情を増幅させたんだもの、当然でしょ?」
「何とんでも無い事をしてくれるんだ君h────」
「殺すッ……!! 元・魔王の私にここまでの生き恥を掻かせるなんて……泣こうが喚こうが、死んでも赦さないわッ!!」
レティシアの叫びを遮り、とうとう堪忍袋の緒がはち切れたペストの怒号が始まりとなった。荒れ狂う死の風の奔流は周囲の廃墟を悉く巻き込んでいき、やがて爆発的な勢力を持ってディーンの肩に移動した飛鳥へと……またほぼ無関係なレティシアへと襲い掛かってきた。
「って、ちょっと待ってええええ!? 何故露骨に私まで襲ってくるんだ?!」
「目の前でただ見ていただけのアンタも充分同罪よ!!」
「うっ……」
酷いとばっちりである、だがレティシアも何分言い返せるような立場ではなかった。
と、そこに、死の風をディーンに防いで貰って悠然と笑う飛鳥から一言
「さぁレティシアにペスト。此処は本拠から大分離れてるし誰も殆ど近付かないわ。だから、派手に愉しく大掃除と行きましょうかっ♪」
プツンッ……と、レティシアの中で何かが切れた音がする。
彼女は吹き荒ぶ死の風を掻い潜りながら徐に髪を結わえている特注のリボンを乱暴に解き、瞬く間に大人形態の彼女へと成り変わる。そして、ギフトカードから二本目の長槍を取り出し鮮血の双眸でギロリッと地上の少女二人を俯瞰した。
「…………」
彼女の口から言葉が出てこない、出てくるのは肌を刺すような怒気、威圧感。それが何よりも恐ろしい。
今此処に三つ巴による大掃除……もとい
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「────……つまり、貴女は別に悪意があって
パシっ……パシっ……
耀は軽く手の中で金槌もどきを遊ばせながら、目下で涙を堪え縮こまる青髪の少女に確認する。その声は酷く平淡で、少女へと向ける瞳も同じ様に冷めている。一言で言うと……怖い。物凄く怖い。
その重圧のせいか、少女の重く閉ざされた口は開かず、首をコクンッと縦に振るしかなかった。
萃の情報提供と本人の確認から、この少女はどうやら〝ウィル・オ・ウィスプ〟のリーダー・ウィラ=ザ=イグニファトゥスであるらしい。見た目は愛くるしいベビーフェイスの少女その物だが、存在感が彼女の地位と実力の真実味を如実に実感させてくる。
だからこそか、耀は何とも言い辛い溜め息を吐いた。
「…………はぁ」
パシっ……パシっ……
掌と鈍器の鳴らず乾いた音が厭に部屋へ響く。その空気が更にウィラの心中を焦燥へと駆り立てる。居心地がただ悪いなんて物じゃなかった。
「どうしましょうか……いえ、どうしてくれましょうか? 私としては、二回分の受けた借りをちゃんと返しておきたいのですけど……」
パシっ……パシっ…………バギャンッ!!
「っ……!?」
ウィラは目を見開いて耀の手の中から響いた爆音に、そしてそこからサラサラと零れ落ちる金槌もどき
見ての通り、金槌もどきは木っ端微塵に砕け散っていた。そして同時に、耀の言った『借り』という単語に堪えて潤んでいた瞳が決壊しそうになる。
ふと、視界の端、ベッドに腰掛ける萃へと視線を泳がす。彼は先程から静観に徹しており、尋問の補完をした以外は基本沈黙を保っていた。聞けば、ウィラと萃は以前彼がまだ箱庭に居た……その更に前からの知り合いらしい。多分彼に今向ける視線は『助けて!』と、そう言っているのだろう。
視線に気付いた萃はウィラを見つめ返した。そして――――
「……耀――――構わん。二回とは言わず二百でもやってくれ。そん位はせんとウィラの悪癖もそうそう治らん」
「萃……!!?」
「……今だけは貴方の意見に同意しましょうか」
無慈悲な死刑宣告を下した。
「それでは、取り敢えず二百……(っ!?)は冗談として、私達が受けた八回分は甘んじて受けて貰いますね」
「っ………………ぇ?」
一つ壊して残り七つとなった金槌もどきを持って耀は少女から離れ、扉の前まで移動した。その謎の行動に不安が募る。
だが、そんな不安の意味を理解させるべくか、耀は片手を空にしてもう片手に金槌もどきを三つ指の間に挟んで持った。そして不意にその手が動いたかと思うと、挟まれていた三つの鈍器が物凄い速さでウィラへと放たれた。
少女の思考が追い付かない。だが絶対に避けられないと、瞬間的に無意識で感じた。
しかし、耀が投擲した金槌もどきはどれもウィラ際どい位置を掠めていく形で通り過ぎ
「ひッ……──――――ッ!!?」
――――直後、盛大に爆ぜた。それはもう、破片は諸共粉々になったので心配いらなかったが、衝撃と音だけはそうもいかなかった。
ウィラは竦み上がった。今すぐにこの二人を掻い潜って逃げ出したい、そんな衝動に駈られる。だがそれが出来ない現状、下手に動いて鈍器の命中と爆発のコンボを喰らわないよう堪えるしか道は残されていなかった。
ウィラの心中を察してか察せずか、耀は次の投擲モーションに入る。その手に握られる金槌もどきは……一つ。
「きゃッ……!!?!?」
今度は下投げのウィラにも視認出来る、だが避けるには厳しい速度で投げられてきた。……のだが、その直線上にあったのはもう殆ど泣き出している少女の顔。その十数センチ手前で得物は弾け飛んだ。気のせいか先程より気合いの入った爆音が部屋に響く。
どうやら耀、抜かり無しで徹底的にウィラに事の理解をさせるつもりのようだ。最悪の場合を想定しろ、と現状が物語っていた。
「さ、あと四つです。アーシャさんやジャックさんに挨拶へ行きたいので、もう続けますね」
「ッ!!? ま、待っt――――」
「待ちません。精々、ご自身の愚行を……二度と同じ過ちを繰り返さないよう猛省して下さい」
ウィラの静止の声をバッサリと遮り淡々とそう告げると、残った四つの準爆発物も一つ、また一つと順々に抛っていった。
────一つはまた目と鼻の先で。
────一つは胴体に当たるギリギリの場所で。
────一つは彼女の直ぐ背後で。
────最後は態々目の前まで歩み寄り、瞳の先に突きつけたままで。
やがて全てを投げ終えた耀は、肩を少し鳴らし足元にへたり込んだ少女を見下ろした。
「ひぐッ……えぅ、うッ……うぅッ…………!」
様子は……見るまでも無い。ウィラの瞳に溜まっていた雫はとうに決壊してしまい、傍で呆れ顔を耀へと向ける萃へと泣き付いてしまっている。
「…………、言い出した手前言うのもあれじゃが……かなりエグイ手を使ったのう……」
「正直……少しやり過ぎました。…………彼女の事はお願いします。私はジャックさん達へ挨拶に行ってきます」
「これ耀、何逃げようとしとる。泣かせた者としてちゃんと責任くらい取らぬか」
「いえ……積もる話もあるでしょうし、私よりも貴方の方が適任と思えますので。……では」
萃の非難の視線を完全にスルー、面倒事を丸投げして、耀はそそくさと部屋を後にしてしまった。
「ひ、っぐ……え、っぐ…………!」
「…………ったく、世話が焼ける」
とは言いつつも、発端となった以上放置はしない萃である。
彼は暫く、ウィラが立ち直るまでこの状態を甘んじて受けるのであった。
次を書いたらそろそろ別のも進めたいですね、
流石に一ヶ月近く放置はいけないと思うんです。