■■■■たちが異世界から来るそうですよ?【削除&改訂予定】   作:白結雪羽

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収穫祭までの彼ら=肆=

「…………、のうウィラ。泣き止んだのならそろそろ離れてくれんか? さすがに鬱陶しい」

「………………やだっ」

「……耀を引き寄せるぞ?」

「ひ……!?」

 

 

 相当なトラウマと化したのか、『耀』と名前が出た瞬間悲鳴を上げてウィラは萃に抱き付くのを止め離れた。泣き濡らした顔が大変可哀想に思えてくるが彼女も彼女なので、ここは相手が悪かったと自業自得としか言えない。

 

 

「まったく、あれ程その悪癖は治せと忠言したろうに。これに懲りたら二の舞を演じぬことじゃぞ」

「…………………………………………うん」

 

 

 同じ目には二度と遭いたくないから、そう心の内にしかと留めてウィラは頷いた。また耀は決して怒らせてはいけないとも確り刻み付けた。

 

 ――――ところで、萃は耀に連れてこられこの場に居る訳だが……その理由となったウィラとこうして久し振りに顔を合わせた事で用は済んだも同然だった。なので早急に帰っても良いのだが、それは何か味気無い。何せ百年以上の時を経ての再開だ、久しいなら久しいなりに話の種も尽きないだろう。

 と言う事で、最初はさっさと切り上げようと考えていた萃は、せめて耀がギフトゲームを終えるまでは目の前の無口な放蕩娘の相手をしてやろうかと、腰を落ち着けるのだった。

 

 

 

 

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

 萃とウィラを客室に残してきた耀は、本拠のエントランスに向かう途中でアーシャと出会っていた。話を聞くに今さっきギフトゲームの準備が終わったようだ。

 

 

「それにしても、ゲーム開始は今夜だってのに何でこんなにメッチャ早く来たんだ? ま、耀にしては殊勝な心掛けだと思うけどなっ」

「私にしてはって、どういう意味ですか……。

……以前ジャックさんに頼まれた野暮用を果たすために今日は早く来たんです。ほら、アーシャさんもあの時は一緒に居ましたよね?」

「ん? ……あぁ、サーカスの時か。ってことはウィラ姐に会うためにこんな早かったんだ。ウィラ姐ってば、ジャックさんからその……話してた奴の事を聞いてから珍しく屋敷に留まっててさ? 私はあんま詳しくねえけど、あんなに嬉しそうなウィラ姐初めて見たなぁ」

 

 

 うーん…と唸るアーシャ。きっと本当に珍しかったのだろう。

 耀は部屋に置いてきた豊満で幼気な少女を思い出す。今になって思い返してみると、彼女は終始視線が泳ぐと萃の方を向いており、耀が泣かしてしまった後には自分から彼の胸へと縋り付いて行っていた。

 これだけでは如何せん判断に困る物である……が、総合的に考えてみると……

 

 

(まさかの脈アリですか……? だとしたら……あの老体の何処に惹かれたと言うんですか……)

 

 

 耀からしたら大変理解に苦しむ物だった。当然、長い付き合いの中でヒョンな拍子に恋慕を(いだ)いてしまう事は無い訳ではない。だがしかし、やはり理解は出来そうもない。

 

 

(と言うより、アレにはペストが居た筈では……いえ、きっと分かってるんでしょうね。そしてアレは、結局選ぶなんて人間染みた選択肢は取らない…………ま、私には関係ないです)

 

 

 何時か近い内に修羅場が見れそうだなぁ…と、軽い気持ちで考えを止める。彼女からしたら心底どうでもいい事であった。

 

 この後二人は、次に会うのはゲームの始まる今夜とお互いに意気を示し合い一旦別れた。

 さてどうするかと考える耀だが、先ず萃達の元には戻りたくないため本拠の外、屋敷の屋根上に移動した。

 不可視の天幕を仰いでみれば、太陽はまだ南南西の方角にある。目算してもあと二、三時間は暇を持て余さなければならないようだ。だがこの時間は自身のギフトの調整時間と割り切れば問題はない。問題があるとすれ(グゥゥ~)ば…………

 

 

(お腹、空きましたね……。お弁当くらい持ってくればよかったです……)

 

 

 後悔しても腹の虫には何の足しにもならない。なるならどれだけ助かることか……。

 耀はそんな中、嘆いていても仕方がないので、無駄な体力を使わないようにその場に大人しく座り込んだ。

 

 

 ――――と、そんな感じが続いき漸く数時間。耀はどうしようもない空腹感を気力と根性で黙らせて、境界門を越えた先に見た『パンプキンストリート』と呼ばれる舞台区画へとやって来ていた。昼間見た時に感じた通り煉瓦造りの街並みは、仄かに光るランプの灯火達に随所照らされて最高の演出を見せている。

 また、ゲームに参加するのは耀だけではなく、総勢二百人程の子供達がこの場には集まっている。下は一桁、上は耀の二つ、三つ上位と層は別れているが、大人は誰一人として居ない。これは〝ウィル・オ・ウィスプ〟が彷徨える子供達の霊魂を保護してきたという彼らの意志に関係しているのだろう。招待状にも、参加条件に『未成年の者』と書かれているから間違いないと思われる。

 

 とまぁ、そんな事は今の耀には全く気になる事でもない。何よりも空腹であまり動きたくないのだ。普段から表情に乏しい彼女だが、今は余計に能面を思わせており、彼女の回りだけ不自然に他の参加者と距離が空いてしまっている。

 そして、そんな彼女の様態に関係無く〝ウィル・オ・ウィスプ〟のギフトゲームは始まる。

 

 

「大変長らくお待たせしたぜ! 今から私達の〝キャンドル・ザ・ゴーストタウン〟の〝契約書類(ギアスロール)〟をばら蒔くから、参加者達は手に取ってくれ!」

 

 

 ストリートの門の上に立ったアーシャがそう告げると同時に〝契約書類〟が蒔かれる。

 耀はハッ、として不気味過ぎた能面顔をやや崩して蒔かれた羊皮紙を手に取った。

 

 

 

――ギフトゲーム名〝キャンドル・ザ・ゴーストタウン〟――

 

・参加資格

一,参加費は〝サウザンドアイズ〟発行の銅貨を一枚(十歳未満は無料)

二,参加者は未成年である。

三,〝ウィル・オ・ウィスプ〟の招待状を持参している。

 

・プレイヤー側勝利条件

一,ゴーストタウンで徘徊しているランタンの使い魔から宝玉を奪う。

二,宝玉の種類で贈与される恩恵が異なる(各参加者に一つのみ授与)

三,ジャック・オー・ランタンから、宝玉を奪った者には特別恩恵を贈呈。

 

・プレイヤー側敗北条件

一,一刻以内に宝玉を一つも手に入れられなかった場合。

 

 

 

 

(……時間は一刻以内、狙うはジャックさん一択…………ん、問題はありませんね)

 

 

 方針は決まった。あとはゲーム開始と共にジャックを捕捉し、宝玉を奪い取ればいい。

 耀は以前、ギフトの制限から彼の不死性を破る事が出来なかった。だが、今回は()()()()()()()()()謎多きギフト『奇跡の執行(グラティア)』が使える。

 星を粉砕し、同時に再生させ、他者の霊格を何倍何十倍にも引き上げるなど……〝ノーネーム〟の面子の中では十六夜と同格かそれ以上の規格外を誇るギフトである。絶対とは断言できない物の勝利確率は前回とは火を見るより明らかな物だろう。

 

 

「――――〝ウィル・オ・ウィスプ〟の旗印を刻んだ、炎を蓄積・供給出来るギフトを贈与するぜ」

「ん……?」

 

 

 ふと、アーシャの言葉が耳に入り彼女の指差す方向を向く。そこには、今まで見てきた中でも最大級のキャンドルランプが安置されていた。今の言葉通りであれば、アレ一つを上手く活用するだけで水樹の苗に追随するレベルでのコミュニティに有益となる効果が望める筈。

 確か本拠の地下には大仰ながら使われていない工房区があったなぁ、と耀は思い出す。そして、彼女の空腹で死にそうだと主張する瞳がややモチベーションを取り戻した。

 

 

(やっぱり、何かしらの目標を添えられるとモチベーションも大分違いますね。ここは……辛抱しましょう)

 

 

 

 

 

 ――――それから程無く。ゲーム開始の定刻になり、門上のアーシャは舞台を背にする場所へ移動し高らかに告げた。

 

 

「さあ、時間だぜジャックさん! 今夜も全力で逃げ切るぜ!」

 

 

 刹那、アーシャの背後で轟炎が巻き起こったかと思うと、彼女はその轟炎に飛び乗った。それと同時に炎が霧散し、中からハロウィン恒例のカボチャお化けことジャックが現れる。

 

 

「ヤホホホホホホ! 今宵は皆様、〝ウィル・オ・ウィスプ〟の定例祭へようこそ! お子様達はチビランタンを、一般参加者の皆さんはビックランタンやこのカボチャ頭を追ってきて下さいな!」

「ま、捕まえられっこないだろうけどな!」

 

 

 二人はそれぞれ、彼等らしい言葉を残すと、再び炎を纏って虚空へと消失してしまった。

 

 それがゲーム開始の合図である。

 未成熟の参加者達は一斉に、星光と月光とランプに怪しく照らされたゴーストタウンへと駆け出した。中には、やはりというか過去何度も挑戦してきた者が居るそうで、その経験を活かし他の参加者へと指示を飛ばす者も居る。子供だけに絞ったゲームにしては中々に熱かった。

 そんな中耀はというと……勇んで動き始めた彼等とは対照的に、物静かなままタンッ、と地面を蹴って空へと飛翔した。

 

 

「…………さて、」

 

 

 活かせる限りに五感を尖らせジャック達を詮索する。

 

 

「――――……見付けた。屋内に逃げていないようで助かりましたね……」

 

 

 と言うのも、何せ時間は一刻のみ。悠長に一つ一つ隠れ場所を当たっていては時間の浪費もいいとこである。

 耀は周囲に旋風を逆巻かせグッと腰を落とし、次の瞬間には大気を唸らせながら上空へ更に急上昇。それから対象が豆粒に見えるくらいの位置まで来ると転じて急降下、ジャック達の意識が彼女へと向く数瞬早く渾身の蹴りを叩き込んだ。

 重力と風による加速、また持てる最大重量を遺憾無く注ぎ込んだ蹴り。これで終わらせられれば耀としては良いのだが……

 

 

「ま、そう簡単にはいきませんよね……」

「あ、あぶねぇ…………ふ、ふんっ! まだまだだな耀。その位じゃジャックさんはヤられないっての!」

「ヤホホ! いやはや、中々に肝を冷やしましたよ春日部嬢! しかしっ、あと少し及びませんでしたね!」

 

 

 そう言ってジャックはまた炎に包まれて消えてしまう。

 陽気な声に耀は歯噛みした。

 ジャックには確かに蹴りは命中し勢いよく街路へと叩き付けた。手応えもはっきりとあった。しかしながら、流石は不死性を備えた彼。やや損傷した頭も瞬く間に修復されてしまい、今や損傷跡など見る影もない。

 これは本当に困った。前に星や金槌を爆散させた『破壊』を行使すれば何とかなるだろうが、下手をすれば宝玉まで巻き込みかねないので採用できない。また彼女のギフトだが、都合良く力のみを上げるなんて事は出来なかったりする。

 

 

(さて、どうしましょう……。…………………………そう言えば、〝アレ〟も確か幻獣の類いでしたか? とすれば……)

 

 

 何か打破の策が思い付いたのか再度ジャック達の気配を辿り、今度は煉瓦の街を影を縫う様に滑空し始める。

 またその間、その両手には今まで見せてきた物とは少々違う、空色の淡い光が収束していく。以前は他者の霊格を底上げする時に見せたその光だが、今回は全く方向性が異なる。

 

 

 

(ぶっつけ本番……でも、やらなきゃ勝てません……!)

 

 

 ジャックの気配が出現した場所まであと少し。

 耀はその近くに他の参加者が居ない事を確認。最悪、参加者が近くに来てしまった場合を想定して『制御』を誤らない様にと細心の注意を払い

 

 

「はぁッ……!」

 

 

 

奇襲対策と参加者の静観の為に広場の中央に陣取っていたジャックとアーシャ、双方が視界に収まった所で光纏う両手を思いっきり地面へと接触させた。

 ────その瞬間

 

 

 ズァバアアアアアアアアアアア──────────ッ!!!

 

 

「ヤホッ!?」

「え? あ、ちょっ、ま……!? そ、それはいくらなんでもデタラメ過ぎだろーーーーーーーーーー!!?」

 

 

 ジャックとアーシャは驚愕の叫び上げ、そして戦慄した。

 彼らの視界に映るのは正に嵐その物。数十メートルにも及ぶ規模の竜巻と、それに巻上げられた膨大な量の〝()〟である。それが三つも形を成して猛スピードで襲ってくるのだから、そりゃ驚くは驚くし慄きもする。

 

 耀がやった事は至って単純。その手で濁流の如き水を発生させ、突風を並行して巻上げた。たったそれだけである。

 俗に見る風雨の嵐の象徴でもあるこの御技ならば、毎度消失の為に炎を纏わなければならないジャックも逃げる事は適わない。但し欠点として、耀は一撃で決めないと制御に精一杯のためにその場を動けない。この隙に逃げられてしまえば時間的にも不味かった。

 

 

 

「必ず、決めますっ……。もう、逃げ場は有りませんよ……お二人とも……!」

「うわッ!? ちょ、ジャ、ジャックさん! は、は早く! 早くーーーー!!?」

「い、いや、これは……ぶっちゃけ参りましたね…………」

 

 

 天を翔るまるで龍の様に四方を取り囲む自然の暴力達。アーシャはあまりにも常識ハズレな光景に判断を見失い、ジャックは『詰み』だと感じていた。

 吹き荒れる風と水っ気のせいで炎はまともに纏えず、耀の渾身の蹴りでも砕けなかったカボチャ頭も自然の暴力には流石に敵う訳ない。

 

 そして、圧倒的な幾本の水竜はジャックを飲み込み、彼の頭の中に隠された宝玉を天高く巻上げると跡形も無く霧散しゴーストタウンの一角に雨を降らした。

 その時になって、ジャックにギリギリの所で避難……もとい投げ飛ばされて難を逃れたアーシャはハッ、と我に返り上空に上げられた宝玉を追おうとする。だが、視線を向けた時には既に遅し。全身を自らの技で濡らしながらもしっかりとその手に宝玉を握った耀が凛然と彼女を見下ろしていたのだった。

 

 

「私の勝ち、ですね……」

 

 

 パチンッ! と耀の指が鳴る。と、瞬く間に一帯を濡らし暴風雨の被害を少なからず与えた景観が嘘のように元に戻っていく。気付いた時には全てがゲーム開始の時と変わらぬ風景と化していて、その現象に一層アーシャは驚愕させられてしまった。

 

 

 

 こうして、北の一角で行われた〝ウィル・オ・ウィスプ〟のゲームは〝ノーネーム〟一の規格外少女の手によって幕を閉じるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「…………、」」

 

 

 そんな一部始終を遠巻きに眺めて萃とウィラ。二人揃って開いた口が塞がらず、特にウィラに関しては夢でも見ているのかと自前の金槌もどきを頭に落として自滅していたのは此処だけの話である。

 

 

 

 

 

 




せめてもの、キリの良い所までいきます。(多分あと一話……か二話)
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