■■■■たちが異世界から来るそうですよ?【削除&改訂予定】   作:白結雪羽

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収穫祭までの彼ら=陸=

 

 トリトニスの滝近隣の水棲を大きく拡大させ、滝の主・白雪姫を唖然とさせた十六夜は、一旦彼女とは別れ本拠へと向かっていた。そんな彼の表情は、此処最近の鬱憤を晴らせたためかやけに清々しい物である。

 それで、本来であればギフトゲームをクリア後に白夜叉の元へ依頼の報酬を取りに行く筈の彼が何故本拠に向かっているのかと言うと、依頼の報酬として提示した品がそう気軽に受け取れる品ではないらしのだ。故に、コミュニティのリーダーであるジンに直接受け取ってもらいたいと白夜叉から言われていたために彼を連れて行く必要がある訳だったのだ。

 正直十六夜としては、態々トリトニスから本拠に戻って〝サウザンドアイズ〟に向かうなんて遠回りな事は面倒でならないのだが、こればかりは仕方ない。

 まぁ幸い、今の彼は気分が晴れている。誰かが機嫌を損ねない限り多少の面倒も見返りとして甘んじてくれるだろう…………多分。

 

 

「……ん? ……なんだ、レティシアか」

 

 

 元・居住区、現・更地を通り掛った時、十六夜は昨日の後始末の残りに一人勤しむレティシアを見つけた。見渡してみる限り、飛鳥とペストの姿は見えない。どうやら一人でせっせと頑張っているようだ。何とも誠実で堅実な彼女らしい。

 

 

「ハァ…………む? ……なんだ十六夜か、っと」

 

 

 十六夜の存在に気が付いたレティシアは、露骨に肩を落とし……首を少し傾けた。瞬間、彼女の後方で爆音と共に土砂が舞い、目麗しい金髪が暴風に靡く。

 暫く沈黙し、チラリと後ろを振り返ってみると、そこには折角始末し終えた廃墟跡地が盛大なクレーターを空けられていた。

 

 

「………………。十六夜、お願いだからこれ以上余計な手間を増やさないでくれ」

「そう思うなら態度には気を付けたらどうだ、騎士様?」

「あぁ、それは済まなかったな問題児様」

 

 

 二度目の爆音と土砂が舞う。

 十六夜は先程の機嫌は何処へやら、明らかに不機嫌になっていた。そして、よくよく見てみればレティシアも纏う空気は穏やかではない。

 と言うのも理由は単純で、飛鳥とペストが後始末を放置したからである。元来のレティシアならその程度、溜め息と一緒に熟年者の寛大さを示していたのだろうが、今の彼女は色々と荒んでいるのだ。だから、普段は空気を読んで場を治めていたであろう今も感情のままに対応したのだった。

 そして、実のところ十六夜はそれを理解している。理解してはいるが、実害が被られるのなら話は別である。

 

 

「「…………」」

 

 

 両者の鋭い眼光が交差する。昨日とは状況が違うが、同様に一触即発の空気。お互いに本来の目的を忘れてしまっている。

 

 

「「…………ハァ、」」

 

 

 ……と思ったが、険悪な沈黙に二つの嘆息が混じり、溢れていた殺気は成りを潜める。

 

 

「…………チッ」

 

 

 ザッ、と十六夜は地を踏む。すると、大きく空いた二つのクレーターと散布された土砂が不自然に震え、物の数秒で元の地形へと戻っていた。ただ瓦礫はそのままである。

 

 

「どうせなら瓦礫も同じ様に処理してくれないか……?」

「んなかったるい事するかよ。昨日も言ったろ、落とし前くらいお前らで付けろって」

「…………致し方ないな。ならせめて、ペストくらいは連れてきてくれ。飛鳥は言っても聞かんだろうし」

「面倒な……ま、それくらいなら請け負ってやるか」

 

 

 序でに八つ当たりでもするか、そう決め込んだ十六夜はレティシアと別れ本拠に戻る。

 そしてジン(と勝手に付いてくるつもりの飛鳥)を引き連れ、また萃から、否応に抵抗するペストを借りてレティシアに押し付けた後、彼は〝サウザンドアイズ〟の支店へと向かうのだった。

 

 

 

 

 

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

 

「――――や、止めて下さい白夜叉様!! 黒ウサギは〝箱庭の貴族〟の沽券に掛けて、あれ以上に際どい衣装は着ないとあれほど言ったではありませんか……!!」

「く、黒ウサギの言う通りです! この白雪も神格の端くれとして……こ、この様な恥ずかしい格好を人前に晒す訳には……!!」

 

「「「…………、」」」

 

 

 さて、場所は移って〝サウザンドアイズ〟支店。毎度の如く店前で女性店員の足止めを食ったが、それを華麗にスルーして白夜叉の私室前にやって来た三人。だったのだが……何やら障子の奥ではただならぬ……それもお子様には見せも聞かせてもいけないような光景が広がっていそうな声が聞こえていた。

 三人とも、何となく察しが付いているのか中に入ろうとしない。飛鳥は単にタイミングを図っているだけのようだが……。

 

 

「ふふふ、初な奴等よ。おんしらは何も分かっておらん。清く正しく美しく、そして尊いが故に、穢し堕とし辱しめたいと強く望むものよ」

 

 

 それには大いに同意する、と十六夜。だが決して彼の思う〝それ〟は全く形の違う物だと思えてしまうのは……何故だろうか。

 

 

「そう、おんしらの様に高嶺の花は特にだ!! このままではいずれ、その発育した豊満でエロい事を仕込みたいというエロい欲求が爆発したエロい暴徒がおんしらを姦策に嵌めてエロエロにしようと動き出すに違いない! そうッ!! まるで今の私の様にッ!!」

「「黙れこの駄神ッ!!!!」」

 

 

 と、変態の変態極まった欲求の羅列に程無くして鉄槌が下された。何時ぞやの激流と轟雷が障子を突き破り、私室だけに好き勝手振る舞っていた変態こと、白夜叉を吹っ飛ばしてきた。

 そしてデジャブを思わせる形で十六夜の方へと飛んで来……

 

 

「おっと」

「って待たんか小僧おおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉッ――――!!?」

 

 

た所をあっさりと躱されて中庭へと突っ込んでいった。

 十六夜としては、前回の反省を活かしての行動だったのだが、白夜叉からしたらまだ手荒にでも止めてくれる方がマシだったかもしれない。

 

 とまあ庭石や池に埋もれた白夜叉は良いとして、十六夜達は室内に立ち込める水霧を払いながら中へとお邪魔……する所で、息を荒げる二人の被害者を見て思わず呆けてしまった。

 

 

「…………。黒ウサギ……と白雪だったか? 何してんの、お前ら」

「ひゃ……! ぇ、ゃ、ぃ、十六夜さん!?」

「あらあら、黒ウサギったら。ただでさえ恥ずかしい格好だったのに、更にその上を行くなんて……流石〝箱庭の貴族〟様ね♪」

「なっ!? な、納得しないで下さい飛鳥さん! これは私の本意じゃないんですっ!!」

 

 

 そう体を抱き締め隠し言う黒ウサギ。そんな彼女と白雪姫の格好だが、一言で言うと果てしなく艶かしかった。何せ肩と胸元、太股を大きく露出させた超ミニスカの着物擬きを着ているのだ。ただでさえやたら発育の良い二人がそんな物を着れば……世の男性が歓喜に打ち震える事間違いない絵が出来上がってしまうなど当然とも言える。

 だがしかし、この場でジンを除き唯一の男性である筈十六夜は、特にその二人の恰好へ関心を示すでもなく

 

 

「……取り敢えずお前ら二人とも、御チビの教育上宜しくないからさっさと着替えろ」

 

 

そう言いジンを(序でに復活した白夜叉も)引っ提げて部屋から離れて行ってしまう。

 そんな彼の背中を、僅かながら落ち込んだ表情で見る二人。あまり見られて嬉しい姿で無いにしても、ここまで淡白な反応を示されては一介の女性として複雑なのだろう。

 

 

「……もう、十六夜君ったら。少しは歳相応の反応って物が出来ないのかしら……(これじゃあ春日部さんが可哀想ね、本当)。フフフ……」

「? 飛鳥さん、どうかしましたか……」

「何でもないわ。さ、二人とも、着替えるなら早く着替えないと十六夜君にどやされるわよ」

 

 

 私個人としてはそのままの方が面白いのだけど、と飛鳥の言葉に、黒ウサギ達はハッと我に帰り着替えだした。

 

 

 

 

 

 ――――それから六、七分程。

 十六夜と白夜叉が交わした依頼とその報酬についての話がたった今終わった。途中、白夜叉が先程の着物について熱く語ろうとするなど余計な物が挟まったがそれは割愛する。

 

 

「――――つまり纏めると。十六夜君達は前にあった干魃騒ぎの事を考えて大規模な水源施設を設けようぜ、って事でそこの白雪さんを連れてきた(隷属した)って訳?」

「説明ご苦労さん。まぁ隷属に関しちゃパッと出の思い付き……って言うか、面倒になって本人連れた方が早いと思っただけだがな」

「その場の思い付きで出来る程隷属は容易くはないのだかのう、小僧ならやり兼ねないとは思ったが……」

「我も最初は驚きましたよ。その様な狂言を吐くかと思えば、己とそこの娘を山車に賭けを持ち掛けたのですから」

「ちょっと待ちなさい。十六夜君……何私を勝手に山車にしてるのよ」

 

 

 白雪姫の言葉を聞き捨てならないと、飛鳥は十六夜を睨み付けた。だが彼は、心底腹の立つ笑みを浮かべてスルーした。

 

 

「そんじゃあ白夜叉。白雪はアンタに暫く貸す形で、施設についての話は以上だ。後はさっさと済ませてくれ」

「まったく、おんしも萃に劣らず勝手な奴だのう。少し位感謝の意を示そうとは思わんのか?」

「この先別に俺はお呼びじゃねえだろ。担当外だ。それに、これでも感謝はしてる方だぜ? あのまま手持ち無沙汰が続くようなら適当に暴れてやろうかと思ってたしな」

 

 

 その時、一同のそれは洒落にならないから止めて欲しい、と考えが一致したのはある意味当然だろう。

 

 自分のやる事は終ったとばかりにジン達の後ろで姿勢を崩す。そんな彼に白夜叉は洩れる嘆息を隠そうともせず、けれども次には、表情を正しジン達に向き直った。

 

 

「さて、ジン=ラッセルよ。コミュニティのリーダーであるおんしを呼んだのは他でもない。小僧の受けた依頼の報酬を託す為だ。〝ノーネーム〟に託すのは前代未聞ではあるが……東側の地域発展に神格保持者を貸し出す故な、他のコミュニティも文句は言うまい」

 

 

 そう告げた白夜叉は、二度拍手を打つ。すると、虚空から一枚の羊皮紙と羽ペンが現れ、記載事項の文末に自身のサインを記すと、ジンに手招きをする。

 ジンは表情に緊張の色を宿しながらも白夜叉の前に座り直し、その手に羊皮紙を受け取り文面に視線を落とす。そして間を置かず、彼はそこに記載されている事項に目を見張った。

 

 

「こ、これ……まさか……!!?」

「どうしましたジン坊ちゃん?」

 

 

 ただならぬ様子に黒ウサギも後ろから文面に目を通す。そして、ジンと同様に彼女も思わず己が目を疑った。

 

 彼らの反応は至極当然の物である。何せジンの手に握られている羊皮紙は、箱庭の外門各所への移動手段である境界門の権利を示す〝外門利権所〟。その外門一帯の地域の管理権を有する〝地域支配者(レギオンマスター)〟の承認となる物なのだ。

 これは以前飛鳥が降したガルド率いる〝フォレスと・ガロ〟の所有していた物なのだが、コミュニティが消えた事で一時的に白夜叉が与っていたのである。

 要するに、〝ノーネーム〟はこの時を以って〝地域支配者〟としての地位を獲得した事になる。十六夜からしたら図らずも一級の報酬が舞い込んで来た感じだ。

 

 

「良かったな御チビ。今日を以って移動に余計な賃金が掛からずに済むぞ」

「え、あ、で、でも……! 例え〝地域支配者〟と認められたとしても、僕達には外門に飾る旗印がありません。これでは、地域のコミュニティから異論が上がっても可笑しくは、」

「そんな一々こまかい事は気にする事もねえだろ。〝階層支配者〟様が直々にくれたんだ、貰える物はありがたく素直に貰っとけ。それに、俺達は水資源の無償提供者になんだぜ? 喧しい事言ってくるならそれを楯に黙らせりゃ良いさ」

 

 

 言い方は悪いが、その尤もな言い分にジンは言葉を呑み込んだ。しかし彼はまだコミュニティの長と言う枠に収まり日が浅い身。このような場合にどう反応して良いのかとても困惑していた。

 

 

「フフ……フフ、十六夜君も……まあ似合わない事をするわねェ。どうしたの、何処かに頭でも打った? あ、打って変わるような頭でもなかったわね。ごめんなさい、フフフ……」

「取り敢えず貶さねえと気がすまねえのかお前は……。チッ、あんな物ただの付属品だろ。こちとら気晴らしが出来りゃそれで充分────っ!」

 

 

 好きに言わせておくのも癪なため弁明をしようとした……その矢先。羊皮紙を見てから顔を俯かせ震えていた黒ウサギが、突然と勢い良く顔を上げて十六夜へと飛びついてきた。思わぬ不意打ちにやや上体を仰け反りかけたが、寸の所で耐える。

 一瞬で不機嫌面を成した十六夜は、一体どういう了見かと口を開こうとする。が、それはまたも黒ウサギによって遮られてしまった。

 

 

「────凄いのです、凄いのです!! 凄すぎるのですよ十六夜さん!! こんな、こんなにも早く……たった二ヶ月で外門の利権所まで取り返して頂けるなんてっ……! 本当に、本当にありがとうございます!!」

 

 

 抑えられない歓喜の嵐。らしくない奇声すら上げながら黒ウサギは十六夜に感謝の言葉を述べていった。

 損なわれた機嫌が急速に冷めていく。もう抵抗するのも億劫に感じられた十六夜は、恥を忘れて抱き付いてくるウサ耳の少女に内心ホトホト呆れながらもなされるがままにした。

 その間、隣で殴り飛ばしたくなる程清々しい笑みを浮かべる飛鳥を横目に収めてしまい、瞳に僅かな殺意を宿す。

 

 

(チッ! 後でゼッテェしばいてやる……!!)

(フフフ、それはそれは……是非とも、期待はしないで待ってて上げるわ♪)

 

 

 

 

 

 

 




まだ一つ書こうと思う所があるのだが、正直入れるか入れないかは悩みどころ。
いっそ次回の冒頭に入れ込むかな……
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