■■■■たちが異世界から来るそうですよ?【削除&改訂予定】   作:白結雪羽

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収穫祭までの彼ら=漆=

 

 

 

 その日の夜、本拠に戻ってきた一行は〝地域支配者(レギオンマスター)〟認証の祝いと称して年長組みを交えた小宴会を開いた。

 

 ────そして今は、その地味に長く続いた宴会も終わり、本拠内の規定で消灯時間が差し迫っている。屋敷中の明かりはポツリポツリと消えていき、頼りになる明かりは外から射す十六夜の月の光だけ。子供達も年長組みの一部の子以外は別館で既に就寝準備をしているだろう。

 そんな中、十六夜と耀の二人は暗がりの廊下を階下に向かって進んでいた。

 

 

「楽しかったですね……」

「少し大袈裟な気もするがな。何かある度に一々こんな事する必要もないだろうに」

「でも、その割には楽しんでましたよね?」

「……悪いかよ」

 

 

 耀の軽い鎌掛けに仏頂面となる十六夜。そんな様子が可笑しくも可愛くて、思わず耀の口許が緩んだ。そして十六夜はそれを見て一層起源を損ねてしまった。

 

 やがて、二人が辿り着いたのは本拠の比較的端の方に位置する湯殿前。要するに夜風呂に入りにきた訳だ。

 ただ、そうすると何故十六夜と耀が一緒なのかとても疑問が浮かぶ。確かに以前、二人は朝風呂を共有してしまう機会があったが、それはあくまでも偶然。耀が十六夜の日課に出くわしただけである。

 なら今回は何故か? と言うのも、最初は十六夜が一人で湯殿に向かっていたのだ。丁度今宵は月も見頃だと、その手には酒も周到に用意してあった。

 で、その道中に彼は、窓越しに月明りを受けながら自身のギフト〝生命の目録〟を片手に物憂げに浸る耀とこれまた偶然出くわしたのである。そこからはまあ、彼女は何を思ったのか湯殿に同席するなどと口走り、それに十六夜は是とも否とも言わなかった。なら勝手に付いていっても構わないだろうという事になり……今に繋がる。

 

 湯殿を前にした二人だが、ふとそこに、偶然見かけたからか二つの小さい影が近付いてきた。

 

 

「あれ、十六夜様に耀様?」

「む? ………………少し待とうか二人とも。歳頃の男と女が湯殿に一体何の用だ?」

 

 

 近付いてきた人影はリリとレティシアであった。リリは恐らく宴会後の後片付けや、他の年長組みとの作業が終わった所で、レティシアはその手伝いだろう。

 レティシアは二人を見つけ、次にその目の前にある湯殿への入り口を見て、至極真っ当な質問を投げ掛けた。

 

 

「は? んなの、湯殿なんだから湯に浸かりに来たんだろ」

「そうですよ。レティシアさんも、可笑しな事を聞きますね……」

 

 

 しかし二人とも、至って真面目な疑問に至って真面目を装った返しを放ってきた。確かに彼らの言葉は正しい。一体何を聞いているんだと首を傾げても不思議ではない。

 ただ、レティシアは湯殿に何の用かとは問うたが、その前に〝歳頃の男と女〟がとも付けている。それを二人は綺麗にスルーした。

 

 

「レティシアさんも一緒にどうですか? 確か、朝から昼過ぎまで瓦礫の整理をしたり子供達の手伝いをしたりで休みを取っていませんよね?」

「あ、確かにそうだが……じゃなくてっ。どうして二人は────」

「リリちゃんもどうですか? 仕事も終わったようですし、良ければ背中の流し合いでも……?」

「え? あ、その……同席しても宜しいのですか?」

「はい。今ならもれなく、十六夜さんが絶妙な匙加減のマッサージ付きです」

「おいこら、待て。何で俺が────」

「勝手にしろと言われたので勝手にさせてもらいます。良いですよね……?」

 

 

 十六夜とレティシアを置いてけ堀に……よりはとことん無視して湯殿への同席を促してく耀。普段の大人しい彼女からは考えられない、今日は何やら押しが強かった。比較的少ない筈の口も、やや流暢になっている。今の彼女は何処か、将来男を尻で敷いているような場景が何となく想像できてしまった。

 

 結局、レティシアの制止も十六夜の反論も虚しく、流されるままに四人は仲良く(?)湯殿へと入ってしまう事となった。

 と、そんな彼らを偶然遠巻きに見かけたペストと萃は、

 

 

「……十六夜って変態なの?」

「いや、あれは寧ろ自分と似て枯れ木じゃからな。気の迷いはお起こさんじゃろ」

「………………そう」

 

 

 十六夜達への興味は失せた。今は、萃のそっちの気が枯れてると言う自己申告に、気付かれない位小さく気を落とすペストであった。

 

 

 

 

 

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

 

「「ハァ……」」

 

 

 湯船に浸かり月と星の煌く夜空を仰ぐ二人、十六夜とレティシアの口から深い溜め息が吐かれる。二人とも、お互いにキチンと隠す所は隠すべくタオルはちゃんと巻かれており、男女で湯に浸かるシチュエーションに思う所もない。それでも、この状況はどうしても理解できなかった。

 そんな気苦労を抱える二人の背後では、リリが耀に頭を洗ってもらっている。先程彼女が言った通り流し合いをしているようで、今は耀の番と、そう言う事だろう。

 因みに、リリも頭皮を刺激する絶妙な指捌きを余所に気が気でない様子だ。それも、原因は耀である。何せ彼女、十六夜とレティシア、リリがタオルで体の一部を隠す中一人だけ真っ裸なのだから。

 勿論、湯殿に入る際レティシアとリリに慌てて呼び止められていた。けれども、彼女の中には風呂場にタオルを持ち込む習慣がないようで、幾ら言っても聞いてくれなかったのだ。

 その後、間違っても変な気を起こす十六夜ではないだろうと、レティシアは仕様が無く黙っているが、年端もいかない初心なリリはそうも言ってられないのである。さっきからも、彼女は耀に予備で持ってきたタオルを使ってくれないかと聞かせているのだが……効果は無い。そして遂には諦めてしまったようで、もう素直に頭に伝わる心地良い感触に流されるままとなっていた。

 

 言っておくが、十六夜は耀を一度たりとも直視などしていない。その辺はいくら何でも弁えているつもりである。耀がもし視界に入る位置にやってきたらその場限りでも無いが。

 十六夜は、猪口に満たされた度数控えめの酒を静かに口に含み、ぼやく様に呟いた。

 

 

「……女ってマジでメンドクセー」

「それを女性である私の隣で呟くのはどうかと思うが……まぁ否定はしない」

 

 

 彼の言葉にポツリと言い返すレティシアだが、彼女も長い人生の中そう思える事があったのだろう。苦笑交じりに頷いた。

 まず未成年である十六夜が何故酒を煽っているのかと考えるべき所はあるのだが、彼らが一般常識に従わないのは十分理解している。なので彼女としては、年長組みであるリリ達他、子供達が飲酒に手を出さぬよう注意すれば良いかと苦言を呈すのは諦めている。加え、そんな彼女自身十六夜の酌に付き合っている。月見晩酌とは中々に趣を感じる物で、今回ばかりは自分に甘くしていた。

 

 

「はい、終わりましたよリリちゃん」

「は、はい。ありがとうございます耀様」

「気にしないで下さい、申し出たのは私ですから」

 

 

 頭を洗い終わったリリは、耀に頭を下げて、ちゃんとタオルも忘れず湯船に浸かる二人の傍に付いた。

 と、何故か耀はリリを洗い終わり、自身も洗われ終わっているというのに彼らの方へ来る様子が無い。その上、

 

 

「……十六夜さんも洗ってあげましょうか?」

「ブッ!?」

 

 

などととんでもない事を申し出た。因みに、今噴出したのは十六夜ではなくレティシアである。余程耀の進言が意表を突いたようだ。

 涙目で咽ながらも、レティシアは彼へと怪訝の視線を向けた。しかしまあ、十六夜は耀の言葉に特に反応は示していないようで、

 

 

「子供が居る前で限度を弁えないのなお前は」

「大丈夫です……後ろから洗いますので」

「そもそも前なんて選択肢は存在しねえ。洗うならまたレティシアでも洗ってろ」

「…………耀、申し訳ないがお願いできるか?」

「? えぇ、良いですけど……」

 

 

 少々身代わりに突き出された事への思う所はあったが、少なくとも十六夜(タオル装備)と耀(真っ裸)のお子様には見せられない場景だけでも阻止出来るので、レティシアも誘導には甘んじる他ない。選択肢などそもそも無いのだ。大前提で男女比一対三で風呂に居ること自体がお子様の目に悪いとか、今更だが言ってはいけない。

 頭を抱えたい気持ちを抑え、キョトンと小首を傾げながらも洗う準備を始める耀の元へ行くレティシア。今の反応は果たして天然なのか、それとも確信犯なのか……。いずれにしても質が悪い事には変わりない。耀を直に見ないようレティシアの後姿を一瞥し、初めて僅かながら申し訳ないと十六夜であった。

 

 

 それからほんの二、三分。丁寧かつどうしてか早めにレティシアを流し終えた耀は、彼女共々、四人揃って湯船に浸かっている。その際、耀は変わらずタオルを巻こうとしないので十六夜と耀の間にはレティシアが収まっていた。まぁこれも横並びでなければ全く意味のないのだが、幸いながら二人とも縁に背中を預ける形でいるため今の所問題ではない。でも、落ち着けない事には変わりない。

 

 

「ふぅ…………レティシアさんの髪……やっぱり綺麗ですね。濡れている分普段とは大分印象が違います」

「む、そうか? 確かに今までも手入れを欠いた事は無かったが、それ程気にしてやっていた訳でもないな。ま、そう言ってくれると、私としても光栄だな」

「ん。十六夜さんも、綺麗だと思いますよね?」

「俺に振ってくるな。……少なくとも映えはしてるだろ。女の髪は濡れる程艶やかに見えるとか言うしな」

 

 

 顔を赤らめるでもなく、本当に面倒そうに淡々と言う十六夜。女性を前にその言い草はどうなのかと耀は思ったが、レティシアも気にしてない様子。それに十六夜が無駄に綺麗な言葉を並べて褒める図も想像出来ない。良くも悪くも、らしいのだった。

 

 

「……そう言えばレティシア。お前って以前は〝魔王ドラキュラ〟とか言う異名があったとか聞いたが……まさかドラキュラ公本人なんて事ないよな?」

 

 

 十六夜は流れが悪いと、無理矢理話を逸らし、レティシアについての質問を投げ掛ける。

 だがそれに彼女は、思わぬ問いだったのだろう、キョトンと目を丸くした。

 

 

「あ、いや……その、十六夜? 詳しくは私も知らないが……ドラキュラ公は確か男性の筈だろう? 君は私が男性に見えると?」

「な訳ねえだろ。……って事は、あれか。レティシアの異名元はドラキュラの語源、〝龍の子〟って方なのか? 確か影のギフト……あれも龍の影だとか言ってたから、少なくとも無関係ではないだろ」

 

 

 今度こそレティシアは普通に驚いた。まさか、これだけのやり取りで自身の生い立ちに近付くとは思わなかったのだろう。彼が聡い事は既に承知していた彼女だが、ここまでとは正直意外であったようだ。

 

 

「相変わらず、可笑しな頭の働き方ですね……。一度中身を覗いてみたい物です」

「覗いた所で理解できるとは思わんがな。ま、この体のスペック様々って奴だな。……それで、レティシア。解答の方を聞かせてくれ」

 

 

 移動してきた耀を、なるべく目を見る状態で軽くあしらう。そして、気恥ずかしさで顔を染めるリリを次いで見て、彼女を元の位置に押し返し、再度レティシアに問いを掛けた。

 

 

「十六夜の推測は正しいよ。私は……いや、我等吸血鬼は最強種・龍の純血から生み出された種だからな」

「……へぇ? つまりは、伝説上の存在は確かに存在するのか。聞く所によれば〝系統樹が存在しない幻獣〟なんて呼ばれてるそうだが……是非一度は相見えてみたいもんだ」

「……いや、いくら君が出鱈目とは言っても、最強種を相手取るなんて事はする物じゃないぞ? アレを相手にするなど、無謀にも程がある」

「…………そうかい。しかし、見てみたいって欲は正直どうにもならないな。特に春日部、お前のギフトってのは幻獣の(ギフト)を再現できるんだよな? 一度は会っておいて損はないんじゃねえの?」

 

 

 その問いが掛けられた時、一瞬。ほんの一瞬だけ、耀の瞳が不自然に揺れた。だがそれにレティシアもリリも気付く事は無かった。ただ一人、十六夜を覗いてその機微に気付くことは出来なかった。

 僅かな逡巡を垣間見せた耀だが、「そうですねぇ……」と誤魔化しを入れ、何事も無かったかのように「興味はあります」とだけ口にした。

 この様子、耀も十六夜に悟られた事を気付いているだろう。だが、今はレティシアとリリが居る。あまり公言する胸中でもないので、彼女はやはり黙っておこうと思った。

 

 

「……質問はそれで終わりか? だったら、私からも……二人に質問しても良いかな?」

「…………構いません。でも、」

「俺達にってのは……どういう事だ?」

「何、君達の他に飛鳥も含めてだ。……君達は此処(箱庭)へ来る以前からの知人、なのか?」

 

 

 それは彼らの経緯を知り、今までの彼らを観察してきたからこそ出た当然の疑問。

 そう、彼らはあまりにも通じ合い過ぎている。それこそ、外見年齢も込みで言えば十数年来の幼馴染と言っても不思議では無い位に。箱庭に呼ばれた時も、サウザンドアイズで白夜叉と対面した時も、レティシアが初めて出会った時も、北の都市で魔王が襲来した時も。全てを通して、お互いを良く分かっていた。時に仲を違える事さえあれど、それは知る者同士の喧嘩の域を出ない(その規模は規格外も良い所だが)。二ヶ月、それだけとは言えこれだけ提示出来る物があれば充分だろう。

 強大なギフトの持ち主三人共が偶然にも、同じ場所同じ時間に箱庭へ呼ばれた。これがもし事実であれば、それは天文学的奇跡と信じるか、何者かの思惑が働いている。言ってしまえばこの二択に絞られる。

 

 

「「…………」」

 

 

 湯殿に沈黙が降りる。レティシアは二人の口が開くのを静かに待つ。リリは思わぬ状況に内心アタフタとしながらも、成り行きを見守るしかない。

 やがて、少年と少女の視線は一度交差し、息の合った溜め息が吐かれる。そして、次に浮かべられたのは……苦笑であった。

 

 

「ったく……()()()()()()()()()()。良く考えてみろよ、俺達は星の数すら及ばない無限の可能性の一点からランダムに呼び出されたんだぜ? これは最早天文学レベルの確率でどうこう説明出来る話じゃない。だがまぁ……神の見えざる手、なんて物が存在して、同じ世界、同じ時を生きていた知己の輩を引き込んだってのなら……話は別だけど」

「何にしても、私達は以前から知り合い何て事はないです。ただ、呼ばれて、初めて出会ったあの時、私達の中で通じ合う物があった。それが偶然私達の関係を旧知の知人に思わせているだけでしょう……」

 

 

 ────それは嘘だ。レティシアは直ぐに分かった。伊達に彼らに幾度と振り回されてなどいない。どれ程分かり辛い機微な反応でも、今の彼女なら易々とは見逃さない。…………だが、

 

 

「…………そうか。いや、済まない。君達があまりにも以心伝心ぶりに目が行ってしまってな。少し疑ってしまったんだ」

「いえ、仲が良く見える事は私達にとっても嬉しいですよ。そうですよね、十六夜さん?」

「俺からしたら面倒極まりない厄介な悪友が出来たのと変わらないが……悪くはないな」

「「素直じゃないな/ありませんね」」

「……ほっとけ」

 

 

 女性陣二人の返しにそっぽを向く十六夜。そのまま、三度目の溜め息を吐いたかと思うと、酒具一式を片手に湯船を出た。

 残った三人は顔を見合わせ、何とも言えない微笑を浮かべ、律儀にも彼の後に続く。

 

 

 ────結局レティシアは、彼らを追究する事は無かった。これ以上踏み込んでも、彼らは必ずお茶を濁し続ける。それに、言いたくない事柄など、誰しも一つや二つ抱えている物だ。それが分からない彼女ではないのだ。

 だから今は待つだけ。何時か、彼らが自分達から口にしてくれる日が来るまで。そして、彼等が進む道を決して踏み外してしまわぬように、必ず……

 

 

 

「って待て待て待て!! だから耀! せめて十六夜の前ではタオルを巻いてくれないか!? さっきも言ったが、歳頃の娘が簡単に裸体を晒すものじゃないだろ?!」

「は、早く! 十六夜様も気を使っているんですからっ!」

「? いえ、私は一行に気にしませんけど……」

「「私達が気にするんだ/です!!」」

 

 

 ……けれどまぁ、彼女の気苦労はこの分ずっと続く事となるだろう。仕事者が祟りストレスフルで倒れなければ良いが……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────で、あの時何を思い悩んでたんだ? 大方お前のそのギフトの事だろうが」

 

 

 寝静まった本拠の一室、十六夜の部屋。月明りで辛うじて視覚を許されるそこで、十六夜は耀の手に持つギフト、〝生命の目録〟を見る。

 

 

「…………北の、〝ウィル・オ・ウィスプ〟をお邪魔した際に、そちらのリーダーの子から少し……気になる事を言われたので」

「ギフトが関係してるってか? …………ハァ、態々気に掛けて損したな」

「っ…………無責任ですね」

「んなの今更だろ。……ま、そう一々悩むな。そんな物、近い内にあっさりと晴れる。此処はそう言う世界だろ?」

「………………そう、ですね。ハァ……一体私は何を……。他人の言葉に気を使うなんて……本当、らしくないです……」

 

 

 呆れに呆れてどうしもうもない。そんな思いを自身に自問自答させた耀。

 それでも、次の瞬間には吹っ切れたとばかりに普段の表情の乏しい顔付きに戻った。そして徐に月明りに翳る十六夜の正面まで移動し、

 

 

「手間を取らせてすみません。これは迷惑料として受け取って下さい」

 

 

彼の顔へと……詳細には、彼の口許へと自身の顔を寄せ────

 

 

「む……、」

「やらせると思うか」

 

 

額に当てられた人差し指に、残り数センチの所で止められてしまった。そのままツンッと軽く押し返される。

 耀はそこで久しぶりに、不満そうな表情を如実に浮かべた。だが、文句は受け付けんと十六夜の視線を受け、肩を落としつつも苦笑をすると、「おやすみなさい……」と告げて彼の部屋を後にした。

 一人残された十六夜は、癖の強い髪をガシガシと掻き、本日何度目かの嘆息。そして、ふと

 

 

「聞き耳立てるなら立てるで気配くらい溶かせ、悪趣味女。次は無いと思え」

 

 

 夜更けに静まる廊下に、クスクスと含み笑いが聞こえたような気がした。

 

 

 

 

 




やっと次話からアンダーウッド突入。不穏な影が迫っているが、萃が居るのでなんら恐れる要素が皆無……
その内バランス調整で一時退場してもらわないといけませんね。
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