■■■■たちが異世界から来るそうですよ?【削除&改訂予定】 作:白結雪羽
飛鳥、ジンと合流するため来た道を引き返す十六夜、耀、黒ウサギの三人。その道すがら、二人は黒ウサギから彼女のコミュニティの現状を聞いていた。最底辺コミュニティ〝ノーネーム〟、〝魔王〟……二人にとって心踊る(耀は微妙)単語の羅列。黒ウサギとしては後が無い故の一代決心で辛い身の上話をしたのだが……二人の返事はコミュニティ加入の了承だった。十六夜は最底辺から伸し上がる面白さと〝魔王〟という素敵ネームに快く、耀は……表情には出ていなかったが、その雰囲気は心なしか高揚している感じではあった。
まぁ、何はともあれ黒ウサギは今此処に二人の頼もしい〝規格外〟を同士に迎える事が出来たのだった。
「それにしても凄いですねお二人共。黒ウサギの足は並の恩恵では追い付く事も出来ませんのに、」
「ハハッ、そりゃ良い事を聞いた。なぁ春日部? 箱庭の貴族様のお墨付きが貰えたぞ。そんな凄いお二人を迎えられた黒ウサギは恵まれてんな、ハハハっ」
「そうですね……」
「……本当、お二人は如何様なギフトをお持ちなので? 是非ともお教え頂けましたら嬉しいのですが」
「「禁則事項だ/です」」
「息ピッタリですねぇ!?」
とまぁ、道中黒ウサギを適度にからかったり黒ウサギの活動等軽話しをして、気付けば飛鳥達と黒ウサギが別れた外壁門に辿り着いていた。日はすっかり黄昏色に染まって、昼間とは違った味を街は醸している。
初めてお目に掛かる街並みや不思議な天幕に興味を向ける十六夜と耀。その傍ら、黒ウサギは飛鳥とジンに合流すべく辺りを見回した。そして、ヒトも疎らな噴水広場にて予定通り? に合流する事が出来た。
「お疲れ様二人とも。世界の辺地は楽しかったかしら?」
「あぁ。ちっと見足りねえけど、収穫は確かにあった。100点満点中35程度は満足できたかな」
「あら、赤点は免れたのね。それなら私も行ってみたかったわ」
「………お願いですから、危険の轍を安易に踏む事は止めてくださいね? 黒ウサギは心労で倒れてしまいます」
「よし、今度暇な時にでもお邪魔するるか」
「聞いてます!? いえ、聞いてください!!」
新たな同士を加えた黒ウサギは、既に自分が過労で倒れてしまうのではないか? なんて不安を抱えてしまった。この、問題児三人組を奏しきれるのか? 言っては何だが……無理だろう。
「そうそう十六夜君、春日部さん。私ね? 明日〝フォレス・ガロ〟ってコミュニティとギフトゲームをする事になったのよ。虎とのお遊戯に今から心踊ってるわァ」
「あ? 何だよそれ、一人だけ抜け駆けしようってか?」
「それはお互い様でしょう? それに十六夜君じゃあ楽しめないわよ、きっと」
「――……って! ちょ、ちょっとお待ちを! え? フォレス・ガロとギフトゲームの取り付け………い、一体何をしてるのですか?!」
黒ウサギは飛鳥がサラリと口にしたその内容に慌てて引っ付く。飛鳥はしまった…! と何とも態とらしく口の前で手を翳す。
結局、飛鳥とジンは先の事の詳細を黒ウサギに嘘偽り隠し通し無く連ねていき、ウサギさんは大変ご立腹になられてしまった。気苦労が堪えなさそうと考えていた矢先にこれだ。黒ウサギは二人を捲し立てる。
「な、何であの短時間に〝フォレス・ガロ〟のリーダーと接触してあまつさえ喧嘩を売る状況になったのですか?! しかもゲームの日取りは明日で舞台は敵のテリトリー! 準備なんてしてる時間もお金もないですよ! 一体如何いう心算があったのですか!? ちょっと、聞いているのですか二人とも!!」
「楽しそうだったから、つい、ね………テヘっ☆」
「可愛子ぶって許されると思いますか!?」
飛鳥の反省ゼロの態度に黒ウサギは思わず激怒。十六夜はそれを窘めた。
「別に良いじゃねえか。飛鳥も見境無く喧嘩を吹っ掛けた訳じゃないんだし」
「そ、そうは言ってもですね………このゲームで得られるものは只の自己満足なんですよ?」
そう言い黒ウサギは十六夜にコミュニティ間で執り行われるギフトゲームのルールを記載した羊皮紙〝
「ま、こんなやっすいルールを提示しようと、そのガルドって奴の罪が消えるわけじゃない。実質お互いにメリットなんて皆無だが、相手側にはデメリットしか付き纏わないだろこれ」
「はい。彼らの罪は箱庭の法によって遅かれ早かれ裁かれるでしょう。でも………人質の子供、たちは、」
「残念ながら、逝去済みね。外道に人的道徳なんてあったものじゃないもの。今更そこを気にしても事実は変わらない。まあ亡くなった子供達の弔い合戦とでも思って行くとするわ」
子供達が既にこの世に居ないという事実は、黒ウサギにとって思い現実だった。しかし、問題児三人組はその点に関しては特に思うことはなかった。結局は見知らぬ他人なうえ実力が物を言う世界、力及ばすな方がうだうだ言ってても仕方がないのだ。
「はぁ………でもまあ、此方には耀さんも十六夜さんもいますし、今回のゲームは楽しょ――」
「何言ってんだ? 俺は出ないぞ」
「……私も」
「ええ。そもそも出させないわ」
「えっ……え、ちょ、ちょっと待ってください! お三人はコミュニティの仲間なんですから協力しませんとっ、」
口を揃えて黒ウサギの余裕を否定する三人に、彼女は慌てて説こうする。が、
「違う違う。黒ウサギ、このゲームはあくまでこの二人が売って、相手が買ったもんだろ? なら、そこに当人以外の俺達が手出しするのは常識的に考えて無粋ってもんだ。飛鳥も拒否してんだ、尚更無理だ」
「そうよ黒ウサギ。他人の喧嘩に口は挟まない方が身の為なのよ? 十六夜君だって、正直参加できなくて惜しい気持ちなんだから」
「全くだ。愉快な契機を逃した反動はデカイぜ?」
「………。あぁ、もうっ。好きにしてくださいっ」
どうあっても十六夜と耀は出るつもりはない。黒ウサギは投げ槍気味に諦めるしかなかった。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
日が落ちてきた頃合い、彼らはそろそろ場所を移す事にした。黒ウサギは沢山と持て成しの為の店等を用意していたらしいが、度重なるアクシデントにそれは全て無駄となってしまったようだ。
そこで、この際三人の〝
道中、暮れ時の街並みや初めて見る街路樹の列に好奇を燻られたり(耀はry)……
で、半刻程歩いたところ表に暖簾を掲げる建物を見付けた。その前では割烹着の女性が箒を手に看板を片付けようとしている。間違いなくあれが目的地の〝サウザンドアイズ〟の支店だろう………もう店仕舞いの支度をしているが。
黒ウサギは急いで店に滑り込みで制止を……
「待っ――」
「待った無しです御客様。うちは時間外営業はやっていません」
……掛ける事も出来なかった。その凛然とした拒みように黒ウサギは悔しそうに店員を睨み付けた。しかし、
「へぇ? 此処が超大手の商売コミュニティの支店か。支店にしても洒落てんな」
「箱庭のほぼ全土に着手しているそうだから、相当ね」
「…………」
店員の待った無しも憤る黒ウサギもスルーし、三人は暖簾を潜り店内へと入ろうと……
「待った無しと言った筈です! 勝手に入らないでください!」
「黒ウサギ、さっさと用事を済ませようぜっ」
……して立ち塞がった店員を無視。再度店内へと……
「おっと(パシッ)………御客様に手を上げるとは、この店の歓迎作法は随分と過激なのな」
「くっ……まさか。営業時間外に無作法を働く不埒者を押さえるのは店前を任される者にとって当然の事です……!」
女性店内が振りかぶった箒を右手で白羽取りする十六夜。彼は険しい表情の彼女に溜め息を吐きながら肩を竦め、仕方無く飛鳥、耀共々黒ウサギの許へ下がった。
「全く、商売っ毛の無い店ね」
「あの飛鳥さん? それ、押し入ろうとした後に言う台詞じゃないですよね?」
「………用があります。入れてください」
呆れて怒気も萎れてしまった黒ウサギ。それを余所に耀は店員に率直な頼みをした。だが当然ながら超大手の店前を任された店員、拒否の姿勢は頑ななものだった。
「最終通告です。時間外営業はうちはしておりませんのでお引き取りください。さもないと出禁を執行させて頂きます」
「待ってください! こちらの御三人の非礼は確かに警告されてもおかしくないですが、せめて厳重注意でしょう! 出禁は流石に商業冥利に背くのでは?」
「問題ありません。だいたい、もし入店許可を求めるのであれば、先ずコミュニティの名と旗を示してからにしてください」
「………う」
ここで言葉に詰まった黒ウサギ。何せ店員の言う名も旗も彼らには今無いのだから。
しかしまあ、女性店員ももう少し言い方を考えた方が良かったかもしれない。黒ウサギの後ろで控える飛鳥が……形容し難い迫力の微笑を浮かべているのだから。因みに十六夜と耀は知らぬ顔で他所を向いていた。
不図、後ろの違和感に気付き振り向いた黒ウサギはそんな飛鳥を見て固まった。
「ねえ店員さん、少し良いかしら?」
「っ…な、何でしょうか?」
「サウザンドアイズは………〝ノーネーム〟お断りのようね。提示する旗と名が無いのだから、店の体裁・沽券に関わる不安要素過多な取り引きは臨めないと………そういうことなのね?」
「え、えぇっ。まさにその通りです。理解が早くて助かります。なので、早々にお引き取り願え――――」
「なら――――それを知っていて、私達がその〝ノーネーム〟だと分かっていて、そんな性根の悪そうな対応をしたのね。えぇ、貴女は正しいわよ? 規則に法って職務を全うしているだけ………それでも、最低限人としての礼節は図らなくてはいけないんじゃなくて?」
刹那、一同の視界から飛鳥が消えた。その不可思議な現象に十六夜、耀以外の二人は唖然とした。
しかし、彼女は直ぐに姿を顕した…………女性店員の目前に、変わらぬ笑みで。後数センチで鼻と鼻、額と額がぶつかってしまう、そんな間近に。
店員は……動けない。まるで蛇に睨まれた蛙の如く、背筋に悪寒を感じながら。それを何とか竹箒を握り締める事で紛らわせようとするが、効果は薄かった。
「…………」
飛鳥は何も言わない、笑顔のまま何も。後ろで事の経緯を固唾を呑んで見守る黒ウサギも、それが何十分にも及んでいるような錯覚を感じた――――と、その時、
「――ぃぃいいぃぃやほぉぉぉぉぉ! 久しぶりだ黒ウサギイィィィィ!!」
「え……!? キ、キャアァァ――――…………!」
緊迫とした空気に、やや馬場臭い少女の声が木霊した。それに気を取られる暇もなく、黒ウサギはその降ってきた〝ソレ〟の抱擁という名のボディタックルを見事に貰い、傍の用水路に吹っ飛ばされていった。
場の空気は完膚なきまでに破壊されたのであった。空気を読まないにも程があるが……まあ今回は良い意味で働いただろう。女性店員も、降ってきた人物に呆れながらも同時に深く感謝した。
「……」
「なあ店員さんや。この店は空からの襲撃サービスなんてモノやってんのか? もし別バージョンがあれば所望したいんだが……」
「有りません」
「有料でも今なら、」
「やりま────如何してもというなら私が────え?! あ、ち、違っ……!」
唐突に口から発せられた言葉に女性店員自身が驚いた。まず間違っても口走らないような返答だった。それを聞いた十六夜、そして後ろの飛鳥は一瞬視線を交え可笑しそうに笑った。
一方用水路に落ちた黒ウサギは………着物を着た白髪の幼女にセクハラされていた。それを耀はしゃがみ込みながら特に助ける訳でもなく静かに眺めていた。
「――し、白夜叉様! ちょ、ちょっと離れて下さい!」
そんなうちに、白夜叉と呼ばれた幼j……少女は、執拗なセクハラに耐え兼ねた黒ウサギによって店先に向かってぶん投げられた。その延長線上には、丁度十六夜が……
「っと」
「グフォアッ……!!?」
何と十六夜、迫り来た彼女を蹴り落とした。それから「あっ」と声を漏らす。
「……十六夜君。躱すならまだしも蹴り落とすは無いと思うわ」
「いや……反射的につい、な」
「反射的に、で許されると思うか!? まだ避けられる方がましだったわ!」
ガバッ! と起き上がった白夜叉は十六夜にもう抗議する。が、それだけの元気があれば大丈夫かと二人は何事もなかったかのように話を切り替えた。
「んで。アンタは、この店の関係者か?」
「む。おお、そうだとも。この〝サウザンドアイズ〟の幹部様で白夜叉だよ小僧。取り敢えず先に謝罪を貰いたいんだがの?」
「いや、そんな事はどうでもいい「良くないわ!!」んだ。先にそっちの頑固な店員の説得でもしてくれ」
あっけらかんと言う十六夜。
後ろでは、ウサ耳をショボンと萎らせた黒ウサギが複雑な心境で呟く。
「うぅ………まさか、私まで濡れる事になるなんて……」
「黒ウサギさん……因果応報って知ってますか?」
痛いところを突かれて押し黙る黒ウサギ。びしょ濡れとなった服は、仕方無しと耀が前回と同様に水っ気を払ってあげた。
白夜叉が、濡れた服も気にすることなく黒ウサギ他、召喚組三人を見繕うように眺めた。
「ふふん。お前たちが黒ウサギの新しい同士か。異世界の人間が私の元に来たという事は………遂に黒ウサギが私のペットに、」
「なりません! 如何いう起承転結があってそんなことになるんですか!」
「価はどれくらいだ?」
「このお馬鹿様ッ!! 真剣に悩まないでくださいよ!?」
バシィィンッ! と黒ウサギの何処から取り出したのかは分からないハリセンの乾いた音が響いた。そんなやり取りに笑った白夜叉は、まあいいと店の中に彼らを通す。閉店済みという事で、案内されたのは白夜叉の私室。八畳間程の広さを持つ純和風の部屋であった。
「さて、もう一度自己紹介しておこうかの。私は四桁の門、三三四五外門に本拠を構えている〝サウザンドアイズ〟幹部の白夜叉だ。この黒ウサギとは少々縁があってな。コミュニティが崩壊してからもちょくちょく手を貸してやっている器の大きな美少女と認識しておいてくれ」
「………その外門というのは、何ですか?」
珍しく耀からの質問。だから如何したって話だが……
「箱庭の階層を示す外壁にある門の事ですよ。数字が若い程都市の中心に近く、同時に強大な力を持つ者達が住んでいるのです」
黒ウサギはが描く箱庭の相対図。それは宛ら……
「「「バームクーヘン?」」」
「あ、いや……その例えはどうなのですか……?」
阿吽の呼吸で同じ回答を導き出した三人。何というか、見も蓋もない例えであった。だがまあ的を射ているのも確かなことだ。
「ふふ、うまいこと例えるの。その例に倣えば、此処七桁の外門は最端の薄皮の部分か。更に説明するなら、東西南北の四つの区切りの東側、外門のすぐ外は〝世界の果て〟と向かい合う場所になるな。あそこにはコミュニティに所属していないものの、強力なギフトを持った輩が揃って棲んでおる……その、水樹の持ち主などな」
白夜叉の視線の先には、黒ウサギ腕にある耀のとある八つ当たりの副産で手に入った水樹の苗があった。
「して、一体誰が、如何なゲームで勝ったのだ? 知恵比べか? 勇気を試したのか?」
「いえいえ。この水樹は十六夜さんと耀さんが此処に来る前に、蛇神を力で叩きのめしたのですよ」
「あぁ黒ウサギ、俺は何もしてないぞ。というか出来なかった。春日部が一人で片付けちまうもんだからな」
「あ、そうだったのですか……?」
「……直接打倒した、だと……!? ではその童は神格持ちの神童か?」
「それ程でもないです。……アレなら、十六夜君にも務まりました」
畏まるかと思えばサラリと意味深な告白をする耀。それに白夜叉は二人を見定め、唸るしかなかった。
そんな時、十六夜は不意に目を細め、白夜叉に問うた。
「ところで………アンタは何れ位デキルんだ? さっきの話通り、箱庭の四桁に居を構えてるってんなら相当強いんだろ?」
「む? ふふん、当然であろう? 私は東側の〝
白夜叉がそう言いきるや途端、十六夜と飛鳥の瞳が妖しく輝いた。耀は……気付きにくいが、今までよりはそわそわとした雰囲気を感じさせていた。
「へぇー………詰まり、貴女のゲームをクリア出来れば私達は名実共に東側最強を手に出来るのね?」
「無論、そうなるかのう」
「ま、そんな事はどうでもいいんだがな。オモシレエもんが目の前にある、それで充分だ」
三人は静かに立ち上がる。十六夜と飛鳥は嬉々とした笑みを浮かべながら。耀は相変わらずの無表情だが、微か……ほんの微かに、口許が緩んでいる。二人とはまた違った気迫を感じさせた。
「カッカッカッ! 全く、抜け目の無い童達だ。鑑定の依頼をしておきながら、私にギフトゲームを挑むと?」
「え? ちょ、ちょっと二人様!? 春日部さんまで!?」
物静かな質だと思っていた耀まで挑戦的な態度を取っている事に黒ウサギは大変慌てた。元からストッパーとして期待はできてはいなかったが、これでは更に彼女の負担が増えるだけだ。
勘違いしないように言っておくが、別に春日部は寡黙キャラという訳では無い。ただ彼女以上に十六夜と飛鳥が色濃いだけで、彼女も充分に人並みよりは上の異常を望んでいるのだ。最初に十六夜と世界の端へ行こうと乗り出た点からも窺えるだろう。
「よいよ黒ウサギ。私も常日頃遊び相手には餓えておる」
「ノリが良くて助かるな」
「うむ――――しかし童達よ。ゲームの前に一つ聞いておきたい」
その意味ありげな言葉に三人は疑問以前に、気配を鋭くさせた。それを面白そうに見ながら、白夜叉は懐から取り出した〝カード〟を取り出し、
「おんしらが望むのは、
――――〝挑戦〟か?――――
それとも、
――――〝決闘〟か?――――」
――刹那、世界はその有り様を大きく変えた――
次はギフトゲームで切る予定です。調節です。