■■■■たちが異世界から来るそうですよ?【削除&改訂予定】 作:白結雪羽
他のもそうですが、なるべく早く投稿できればと思ってます。
(……む?)
〝ノーネーム〟と〝ウィル・オ・ウィスプ〟の一行がサラと対談している頃、アンダーウッド地表面から二千メートル離れた上空にて。今も尚ウィラを抱えてペストと鬼ごっこ続けていた萃だが、ふと眉を顰めその場に止まっかと思うと瞳を閉じた。その唐突に不可解な行動は、まるでこの先そう遠くない内にやって来る厄介事を見透かしているかの様だ。いや、もしかしたら事実、そうなのかもしれない。
「?つ……萃────ッ……!?」
「ハァ……ハァ……! 捕まえたわよッ……!!」
急に思考に耽り、動かなくなってしまった彼に心配の声を掛けたウィラだったが、とうとう追いついたペストに捉まってしまった。黒死病の風は継続で散らして貰っていた様だが、流石に接近までは気に掛けていなかったようだ。
同じ心情を萃に持つ者同士の二人。しかしウィラに関しては生来の質なのか何処か初心でズレを隠せない。その為、ペストに向けられる覚えの無い殺意に満ち満ちた視線が、酷く彼女を困惑させてしまう。
「ぁ……ゃ、は、離し……t「煩い!!」ひぅ……!」
嫉妬の一喝に黙らされる。
するとペストは、叫んだ事で幾分か冷静さを取り戻したのか、ウィラを目の仇でも見るように睨みながら耽っている萃に、怒りを押し殺して問いを
「…………ククッ、」
「っ……?」
投げ掛けようとしたが、不意に笑った……否、嗤いを噛み殺し不敵に口許を歪める彼に思わず臆してしまった。ウィラも同様である。
「……ウィラ。ペスト」
「ど、どうした……の?」
「な、何よ……じゃなくて! 萃ッ! 〝コレ〟はどういう事?! 何で〝コレ〟とそんなに馴れ馴れしく……!!」
さり気無くウィラを指して〝コレ〟呼ばわりするペスト。実力的には萃の擬似神格を授かっていてもウィラの方が上手なのだが、現状そんな事は些細である。嫉妬の心は実力の壁なんて何のその、と申し立てる位の威圧を風に乗せ吹き荒らす。
しかしながら、それを煩わしそうに蹴散らす萃。その序にペストに本気の殺気を飛ばして黙らせた。顔面蒼白になる彼女が少し可哀想に思える。
「ったく、お主等の諍いなぞ旅籠に帰ってからでもやっておれ。それより……ククッ、喜べ二人とも。祭りの前にチト一波乱ありそうじゃぞ」
ウィラは声を掛けようとして、止める。彼の言う一波乱の意味を正しく理解したからだ。
百年以上経つとは言え、彼女と萃の関係が長い事は以前にも言った。それ故に少しばかりの機微なら察する事が出来るのだ。
「…………どうする? 折角のお祭り、台無しになっちゃう……」
「じゃのう。……ま、それも一興じゃろうて。悪戯に童共の遊戯に付き合うよりかは、そちの方が此処の為にもなしの」
「でも……危険。ジャック達に伝え────ひゃっ……!?」
「なっ……!?」
争い事を好まないウィラ。もし萃の言う事が事実であれば、収穫祭も……それ所かアンダーウッドすら無事で済むかどうか分からない。それならば、彼女がその事態を避けるべく同士に事を伝えようとするのは必然である。だが、何と萃。鈍感でなく察してる分質が悪いとはこの事か、突然とウィラを抱き締めると言う普段なら絶対に執らない行動を執った。またそれに加え、
「のうウィラ────此処で自分と縁を切るか、箱庭の一時の安寧を取るか……どちらか選べ」
「!?」
酷薄な笑みを浮かべ最低な二択を彼女へと提示した。耀が感じた疑問が尤もに思えてくる。本当、彼女は彼の何処に惚れたと言うのだろうか……。
萃は耳元で囁き終えると、ウィラを抱擁から解放し「如何する?」と再度問う。
彼が離れた理由は単純、今此処で大樹に居るジャック達の元へ向かうも良し。先に差し迫る事態を伝えずこの場に残るも良し。ただ後者を選んだ場合、ウィラはこの先一生萃との関係性が途絶えてしまう事になる。
そして、ふと彼の隣で状況が呑み込めずに狼狽える
だが、今更萃の人脈を気にする事は無い。問題は、ウィラ自身ハッキリとした理由は分からないが、少女が彼の隣……今まで自分が納まっていた位置に就く事を想像すると、酷く胸の内が苦しかった。この燻る胸中の痛いみが何なのか、感情と直結して理解する事がウィラには出来ない。
……結局、
「…………離れるの、嫌……!」
「…………………………そか。ハァ……」
ウィラの選択は前者一択であった。
それと、何故か彼女の回答を聞いて溜め息を吐く萃。どうやらウィラの優しさを知る分前者を取ったのが少し予想外だったようである。
そんな呆れ果てる彼に、置いてけぼりを喰らっているペストは
「良く分からないけど……貴方最低ね」
「……フッ、最低で結構。自分は元よりこう言う奴じゃよ。それで、その最低に付いて来たのはお主等自信の判断じゃろ?」
「…………薄情なのは知ってたけどね」
彼の嘯く態度に嘆息するペスト。それでも、彼に失望する事は無かった。彼女自身、ウィラには及ばずともそれなりの付き合いがある。故に、少女としての洞察か、はたまた感か、自然と彼の人間性など理解していたのかもしれない。もし心の底から最低な下種であったと思えるならば、今まで一筋に思い焦がれてなどいなかっただろう。
何にしても、彼女が最終的に示したのは、敵である少女への僅かな同情であった。
「────それでェ、萃? そろそろその女の事、説明してくれないかしら……?」
「自分の伴侶じゃが?」
「え……ッ、~~~~!?」
「…………ヘェ?」
ニヤニヤと悪戯な笑みを貼り付け、ウィラを再び抱き寄せながらそう告げる萃。
身に覚えの無い彼の〝伴侶〟発言に硬直し、顔を真っ赤に染めるウィラ。
そして……徐々に光が失われ、混濁したガラス球の様な瞳で二人に目を細めるペスト。彼女をウィラが視界に捉えた途端、真っ赤に染まる顔が一瞬で蒼白に反転した。今のペストが放つ威圧案は正に修羅のそれである。
こうして、本日二度目のリアル鬼ごっこが始まった。日が暮れる頃、萃が飽きるその時まで、その修羅場は続いたそうな……。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
同じく日暮れ頃、十六夜と耀の二人は宛がわれた宿舎の一室で適当に休息を取っていた。
午前中、〝一本角〟の頭首であるサラとの挨拶を終えた彼等は、彼女の言葉に甘えて収穫前夜祭の出展を思う存分満喫したのだ。
まだ前夜祭の初日と言う事でギフトゲームは出場予約に止まっていたが、それでも未知の文化との触れ合いには二人もそこそこ満悦気味である。
ただやはりと言うか、団体行動は性に合わないらしく、自由行動から早々黒ウサギ達と別れて行動していた。黒ウサギ達からしたら何をしでかすか気が気じゃなかったらしい。しかしまぁ、これと言って問題を起こさなかったのだから結果オーライだろう。
あとこれは余談だが、黒ウサギが十六夜達を探している途中展示会場にて〝ブラックラビットイーター〟なる物を見つけたそうで、見敵必殺とばかりに
と、初日にして大いに満喫した二人であるが、まだ半分も回りきれていないのだから退屈しなさそうだ。
「ふぅ…………この分では、最終日まで参加出来ないのが悔やまれますね。出し物もそうですけど、此処にはギフトの〝餌〟が豊富で助かります」
「〝餌〟って……お前飛鳥が伝染ってきてねえか?」
「? ……では、〝素材〟とでも言いましょうか?」
胸元の〝
耀のギフトは系統樹を持つ生物の力を蒐集し、彼女自身に反映する特性がある。そして、一日アンダーウッドを見て回った所、此処には幻獣が相当な種類居る様だった。南側は元々幻獣の宝庫と聞いていたのだが、聞きしに勝ると言っても過言ではない。
つまり、アンダーウッドは耀の
悪気の無い、純然たる本心を宣った耀。もし十六夜以外の誰かに聞かれでもしたら、面倒極まりない事態に陥っていただろう。
十六夜は暫し沈黙する。が、特に幻獣達に思い入れは無く同情の欠片も湧かないので、今の問題発言は聞かなかった事にした。
「……んで。滞在権利が寄越せってならそう言ったらどうだ? やる気は更々無いがな」
「ケチですね。…………私が思うに、十六夜さんは本拠で怠惰に過ごしている方が合ってると思いますよ?」
「怠惰ってのは否定はしないけどな、
腰掛ける耀を他所にベッドへ体を預け瞼を閉じる。怠惰な性分に反して祭りを満喫し過ぎて少々疲れたようだ。今まで活動的だった奴が何を言うかと思えるが、それはそれ。これはこれである。
本来の彼は、娯楽が無ければ半日以上は横になっている事が常だったりする。
分かりきっていた拒否に、耀は息を吐く。
しかし、彼女は何も前夜祭で帰省しなければならない訳ではない。本祭も期間の半分は滞在出来るし、その間に開催されるギフトゲームも予約済みである。幻獣と触れ合う機会など幾らでもあるのだ。
(でも、時間は有効に使わないといけませんね……)
どうせなら今から巡ってみようか、と考える。外ではまだ夜祭に興じる者達が多く居る。最低でも一人位は接触する機会があるだろう。
チラリと十六夜を見て、一瞬悪戯心が働くも自粛。そのまま腰を上げると最低限の荷物を纏め、部屋を退出しようと……
「――――……十六夜さん、」
「……あぁ、」
気付けば、十六夜はベッドの上に立ち上がり、耀は邪魔だと手荷物を部屋の隅へ投げ捨てた。
――――刹那、宿舎を地震と勘違いする程の揺れが襲い、二人の居た壁には大穴が空けられた。
穴を空けたのは他でもない十六夜。軽く拳を叩き付け外への道を確保したのだ。
だが、宿舎を襲った揺れは彼が原因ではない。
「……これは、あれか? 新手の余興かなんかか?」
「だとすれば、此処の人達は戦好きの酔狂さん達ですね。……多分賊か何かでは? とても利口な方々には見えません」
崩れた壁の縁から状況を眺望する。
飛び交う怒号、叫喚。響き亘る金属音、破砕音。地下都市は正に阿鼻叫喚の最中に陥っていた。
そして、その元凶は……体躯が三十尺はあろうかと言う
二人が確認出来る範囲でも十数人。また、それだけに留まらず地上側からは更に慌ただしい。恐らく眼前の倍以上の数は確実に居るとみて良いだろう。
すると、一人の巨大な薙刀を携えた巨人が宿舎へと……正確には、物見している十六夜と耀を捉えて迫ってきた。仮面のせいで表情は窺い知れない。だが、二つ空いた穴から覗く双眸は殺る気に満ちている。
「オオオオオオオオッォォォォォォーーーーーー!!!」
耳に障る咆哮が空気を揺らし、大きく振りかぶられた薙刀の一閃が、巨躯の四分の一にすら満たない少年と少女へ降り下ろされる。けど、二人はその場から逃げる気配は無い。
殺った。それはもう必然的だっただろう…………力を持たない普通の少年少女なら。
バンッッ!!! ビチャッ!!
瞬間に響いた炸裂音。そして直後に鳴った無数の水音。
二人の少年少女は……一枚の岩盤を隔てて無事であった。しかし、巨人は見るも無惨な光景を演出していた。
……否、それはもう巨人とは言えない。赤い、紅い〝何か〟だ。彼奴の居た場所には三十尺にも及ぶ巨躯はなく、そこを中心に真っ赤な大輪の染みが広がっているだけである。
「……汚ねえ花火だなおい」
紅い染みがベッタリと付着した岩盤を瓦礫に崩しながら十六夜は呟く。その隣では、徐に右手を正面に翳し、その拳を閉じている耀。
そう、紅い大輪を飾ったのは他でもない、彼女だ。やり方は以前にも……ウィラの金槌モドキを粉砕した時に使った『破壊』の
「……やはり(破壊)箇所は選ぶべきですか。手加減が利きませんからね、これ」
「分かってんなら最初からやれよ」
「次からは善処しますよ」
そう言いつつ耀は再び、今度は左手に『寄せた』点を握り潰して、遠くで暴れていた巨人を粉砕した。そこにはやはり、躊躇も慈悲の欠片もない。
「それで……どうしましょうか。どうやら地上の方は此処より状況は酷いみたいですし、そちらに向かってみますか?」
「クソ面倒だな、ったく。……最近殺り足りねえし、埋め合わせとでも考えりゃいいか」
「決まりですね」
十六夜の足下に黒光が収束し、やがて消える。
そして二人は、宙を蹴り、風を逆巻いて地下都市の上へと……水樹の根を潜って、宵闇に沈む戦場へと躍り出た。
「――――十六夜さん! 耀さん! 緊急事態で…………って、え?」
息を切らした黒ウサギが二人の部屋へとやって来たのはその数秒後。半分崩壊した部屋の有り様を見て顔を青褪めてと、勘違いを募らせていた。