■■■■たちが異世界から来るそうですよ?【削除&改訂予定】 作:白結雪羽
闇夜に紛れアンダーウッドを強襲してきた巨人達。
彼らはその一人一人がその名称を示す通りの巨体を持ち、他種族十にも及ぶだろう戦力差をたった一人で埋めてしまう。十六夜や耀のように一撃で葬れるようなギフトでも所持していない限り苦戦は必死だった。
灯火が照らす闇夜の戦は乱戦状態だった。
刃と刃同士が鍔競り火花を散らし、空には炎々と燃える火矢と、鷲獅子達の巻き起こす風壁が幾度と鬩ぎ合う。
また、突然の奇襲だったが故にか統率も儘なっていない。各々のコミュニティの者達は我武者羅に巨人の掃討を真っ先に考え、連携を取っている者達は俯瞰するだけで半数にも満ていない。その上、彼らの現時点で実質の纏め役であるサラも、巨人達の主戦力らしき三体に手を焼いている状態で気を配る事も出来ない。
このままではジリ貧。例え一時的に退ける事が出来たとしてもその被害は大きくなるのは免れない。
……だが。その戦場に現れたたった二人の人間によって、戦況は180度ガラリと変わる事となる。その二人とは言わずもがな、十六夜と耀だ。
巨人を一体葬り地上へと出てきた二人はまず、手当たり次第に見敵必殺とばかりに巨人達を屠り始めたのである。耀は陣風を逆巻き、自身の十倍近くはあろうかと言う巨体を巻き上げ、空中で破壊。辺りに比喩でない血の雨が降り注いだ。一方の十六夜は、手頃なサイズの石を第三宇宙速度で頭部に投げつけたり、相手の得物を真っ正面から砕きつつ巨体も粉砕させていた。
正に鬼神の如き無双っぷり。ただ一つ、残念なのは……周囲への配慮が限りなく足りていない事だろう。
今も、十六夜が亜人と交戦中の巨人を横から蹴り飛ばしているのだが、余波で亜人達も吹き飛んでいた。耀については、三十尺はある巨体を易々と巻き上げている時点でお察しだった。
「あー、怠い。スゲー怠い。ってか
「さっきからそれしか言ってませんね……」
また一体、巨人の頭部を蹴り上げながら倦怠感を漂わせる十六夜。元々寝付こうとしてたためだろう、少し前から欠伸がやや目立つ。
「……数は大分減ったとは思いますが…………増えてますね、この感じだと。戦況を見て増援を入れたのでしょうか……」
「面倒な事してんじゃねえよ、ったく。……春日部、後は任せる」
「逃がすと思いますか?」
逃走を図ろうとする十六夜の進路を塞ぐように、耀は河川を巻き込んだ竜巻を登らせた。だが、それがどうしたと十六夜は水流の壁を無理矢理打ち払い、水樹の天辺へ向かって駆けて行ってしまった。
「……ハァ、まったく」
少し、残念そうに息を吐く耀。けれど、口許は僅かながら微笑ましそうに緩められていた。
思考を一新。耀は改めて、粗方蹂躙し終えた地上を空より見渡した。
戦況は一刻前よりは概ね持ち直しており、まずまずではあるが、人間である十六夜と耀の獅子奮迅ぶりに影響され統率も取れてきている。少なくとも、考えなしに交戦しているようには見えない。
そんな時ふと、視界の端に未だ三体の巨人に手を煩わされているサラの姿を見つけた。
「……意外と手間取って、ますね」
でも、だからどうするでもない。が、十六夜や飛鳥なら兎も角、耀としてはこのまま見なかった事にするのも忍びなかった。一応はアンダーウッドへの招待主である。
「一度、義理くらいは返しておきましょうか……」
三体の巨人を見定めながら、即座に三つの球を出現させる。そして、サラから離れている順番に宛がわれたそれを一つ一つ叩き壊した。
唖然とするサラの表情が見てとれる。まぁ、目の前で猛攻を仕掛けていた巨人が間髪を容れずに爆散すれば当たり前の反応だろう。
「さてと…………っ?」
このまま前線へ更に出ようかと考えた時、それは唐突に起こった。
ただでさえ夜間のお蔭で視界が通り難い地上を、数メートル先すら視認させない程の濃霧が立ち込めてきたのだ。耀は今上空、目測で百メートル程度の地点に居るが、空間的に四方何処を見ても奇怪な霧が覆ってしまっている。
自然現象にしては唐突過ぎた。その上、
「……成る程。力押しでどうにかなるから、目と鼻を潰してきましたか……」
これは厄介だと、そう思えた。しかしながら、多少厄介なだけで対処法が無いわけではなかった。
要するにこれは感覚を惑わす霧なのだ。直接干渉型ではなく、霧を中継にした間接干渉型の術なのだ。霧であるなら……
「払えばいいだけの話ですね」
耀は無事な聴覚を最大限に使い、霧の立ち込める範囲を出来る限り把握しにかかった。全ては無理だろうが、此処にはグリーのような風を操るギフト保持者もそれなりに居る。カバーは幾らでも利くだろう。
程無くしておおよその範囲を把握した彼女の周囲に、少しずつ旋風が収束してくる。そして、巨人の半分のサイズまで集め終えた瞬間、地上を途轍もない暴風が襲った。
「「「「「「――――っ!!?」」」」」」
巨人、亜人に拘わらず至る所から叫びが聞こえてくる。下手をすれば地上の全てを一掃しかねない風の暴力だ、それも当然と言えば当然なのだが……
どうやらこの霧、耀一人で事足りたみたいで。完全に払拭するにはやはり届かなかったものの、視界の阻害は殆ど無くなったにも等しい位には晴れてれてた。
ふと、耀は確認出来るようになった地上を見て首を傾げた。まだ三分の一は残っていた筈の巨人達が、一様に体を切り裂かれていたのだ。そして、よく目を凝らしてみると、その中心には全身を紅く染めた一人の騎士? が佇んでいた。
「これは……」
まさかあの暴風の中、一瞬で大多数の巨人を屠ったと言うのだろうか。だとしたらそれは、彼女が相当な実力者であると……
『見つけ、ました』
――――聞き覚えのある声が、聞こえた気がした。
「……ッ!!」
脳内に警鐘が鳴り響き、耀は咄嗟に身を翻した。
……だが
「ぐッ……!?」
右大腿部に焼けつくような激痛が奔る。どうやら躱しきれずに直撃……いや、掠ってしまったようだ。
だがその怪我の度合いを確かめる間のもないまま、次の攻撃が襲いくる。今度は意識が少し向いたお蔭で、余裕を持って躱せた。そして、そこで初めて相手の攻撃……その
それは早いなんてレベルじゃなかった。軽く音速を凌駕する、認識出来たのが奇跡な位の強襲。
このまま空に居ては良い的だと、耀の判断は早かった。
『早く、沈んで下さい』
「っ、また……!」
脳に直接声を伝えているようなその感覚は、決して幻聴などと呼べるものではない。それは果たして、耀一人に向けられたものなのか。それともアンダーウッドに居る全員に向けられているものなのか……。
その答えを出す間もなく、降下する耀へ更なる追撃が落とされた。
「あれ、は……うそ……!?」
空が遠退くなか高速で近づくそれは、言うなれば鉄の筒。
耀の知識から見るそれは、近代史からその姿を見せ始めた戦略兵器。箱庭に存在するには些か錯誤が過ぎる近代の遺産だった。
「くっ……!」
あくまで平静でいた耀に焦りが滲む。
接近するそれの全長は目測でも六メートル弱はある。もし直撃、それはおろかこの近距離で迎撃しようものなら確実に、無事では済まないだろう。逆に、回避したとしても、地上の被害は避けられない。
(っ、はぁ……考えてる暇が無いですねっ)
もう手前まで来てしまっている脅威に絶えない激痛か相まって、耀は深く考えるのを止めた。そして、周囲に旋風を球状に加速させ防御体勢に入る。
(ミリタリーには精通してませんし、何処まで防げるか分かりませんけど…………まぁ、五体不全でも生き残れれば上々ですね……)
最悪十六夜さんに骨でも拾ってもらおう。そんな冗談を零し、数秒後に控える衝撃に備え
ガキンッ!!
「あ」
思わず声が出た、が遅い。
地上から飛来した〝何か〟が、耀の懐を掠め鉄の先端を貫き……
直後、彼女を黒煙と爆風が叩いた。
うちの主人公達は兎に角災難が酷いと思うこの頃(やってるのは自分ですけど)