■■■■たちが異世界から来るそうですよ?【削除&改訂予定】   作:白結雪羽

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再来

 

 

 

 

 

「「「「……」」」」

「な、なっ……なぁ……!?」

「ヤホホ、これはこれは……」

 

 

 仮救護施設へ着いた一行は、話を伺い安静にしているであろう耀の元へやって来た。やって来たはいいのだが……カーテンの奥にあった光景に、皆が一様に硬直してしまった。

 だがそれもその筈。耀が一人眠っているとばかり思っていたのに、その傍らにはヘッドフォンを宛がい完全な睡眠状態に入っている十六夜が居たのだから。そして当の耀は、彼の腕に縋る姿勢で安らかに眠っている。この状況を唖然とせずして何と反応しようか。

 

 

「い、いいい十六夜さん!? どうして十六夜さんが耀さんと一緒にね、寝て……?!」

「ま、まさか……こいつら行くとこまで行っちまったのか?!」

「「…………」」

「こら待たんかお主ら。なぜ自分に目を向ける? ……はぁ、まったく」

 

 

 主に女性陣が盛り上がる中、ウィラとペストから向けられる謎の視線を流しつつ萃は十六夜と耀に近付いた。彼としては、二人がアレやコレをするなど心底どうでもよい事であったのだが、時と場所を弁えて欲しかった。自由人である彼自身が思う事でもなかったが、それはそれ、これはこれである。

 

 

「……うっせえぞ、お前ら。怪我人の手前静かにするって事を知らねえのか」

「怪我人のベッドに我が物顔で眠りこけてる悪ガキに言われとうないわ」

 

 

 萃が十六夜へと手を伸ばし掛けた時、気怠そうながら棘のある言葉が吐かれた。事実、騒がしかった一同がハッとして見ると、十六夜が寝起きの眼ながらジトッとした視線を送ってきていた。

 

 

「ったく、こちとらデカブツのお陰で寝不足だってのに……」

「あ、あのぉ、十六夜さん? 一つ聞きたいのですが、どうして耀さんとい、一緒のベッドで寝ていたんですか?」

「あ? んなの、救護施設のベッドの方が睡眠妨害されねえからに決まってるだろ。結果的に誤った訳だがな……」

「そ、そうでございますか……」

 

 

 十六夜の本当に眠そうな様子から、けっしてやましい事など無かったとホッとする黒ウサギ。別段彼女が深く考えても仕方がない事なのだが、やはり身内でその様な関係性が発生してしまうと色々距離感が曖昧になってしまうかもしれない。些か考え過ぎではあると思うが。

 

 十六夜は腕に引っ付いてる耀をやや雑に引き剥がし、ベッドから降りる。そしてそのままカーテンに手を掛けた。

 

 

「え、あ、ちょっ! 十六夜さん何処に行くのですか!」

「お前らは春日部の見舞いに来たんだろ? なら俺が居ても邪魔なだけだ」

「い、いえ! お見舞いも確かですけど、それとは別に大事な話が、ってあぁー! 待って下さっ……うぅ、行っちゃいました」

 

 

 黒ウサギの制止も空しく彼はこの場を後にしてしまった。

 

 

「ヤホホ……そう気を落とさずに黒ウサギ殿。彼は少し気難しい性格のようですが、細かな機微は利く良い少年ではありませんか」

「いんやジャック、奴はそんな高尚なもんじゃないぞ。こう言うのもあれじゃが、タイプで言えば自分と同じ様な奴よ。自由気侭、感性で動く輩じゃ」

「好奇で他人に迷惑を掛ける貴方よりは幾分もマシだとは思いますけどね……」

 

 

 ふと、萃を責める声。目を向けてみると、ベッドから身を起こし嘆息する耀がいた。どうやら今までのやり取りの間に目を覚ましていたらしい。

 

 

「耀……怪我、大丈夫?」

「大丈夫、とは流石に言えませんね。危うく右足……どころか全身吹き飛び掛けましたから。我ながらよく生きてると思います」

「? それにしてはあんま傷とか負ってないように見えるけど?」

「そこは……あれです。ギフトでパパッと」

「いや、重傷を速攻で治せるギフトって何だよ。そんなの聞いてないぞ」

「あ……すみません、今のは忘れて下さい。アーシャさんだけ」

「何で私だけ!?」

 

 

 うがー! と突っ掛かってくるアーシャに微笑を浮かべて返す耀。今も尚、体中の痛みは少し顕在なのだが、幾分か気が楽になったようだ。

 よいしょ、と上体を起こして皆に向き合う。

 

 

「あ……本当に大丈夫なのですか耀さん? もし辛いのならそう言ってください」

「心配し過ぎですよ。次の襲撃も何時あるか分かりませんし、その時は足手纏いにならない程度には動けるようにします」

「それは流石に容認しかねますよ春日部嬢。私が出しゃばる事でもありませんが、貴女の傷はけっして一つのギフトで直ぐに完治出来るものではありませんよね? 足手纏いなどと言う以前、コミュニティの同士を心配させるものではありません」

 

 

 黒ウサギを誤魔化そうと微笑む耀だったが、ジャックにはどうやら傷の具合が見通されていたようで、思わず押し黙ってしまった。こう反応を返してしまっては、抜け出そうにも見張りの一人でも付けられてしまうかもしれない。思うように動けないと考えると、溜め息も零したくなる、そんな心情を胸の内に浮かべた。

 しかし、彼女も引くに引けない。なぜなら、彼女に痛手を与えた者は、生半可な力を持った者では対応する事も侭ならずお陀仏となってしまうだろうから。少なくとも、耀並みの五感は必要最低限必須であった。故に、「なら……」と彼女は皆に忠告をしようと思った。……しようと、した。

 

 だがそれは叶わなかった。突如としてアンダーウッド全域に響き亘るの鐘の音……警鐘が鳴り響いたから。

 不意を突かれた一同。だが、遠くから聞こえた〝巨人族〟というワードと、大樹ごと大地を揺るがす地鳴りに直ぐ様意識が移り変わる。

 

 

「……()くぞ、ペスト」

「はぁ……はいはい」

 

 

 先ず動いたのは萃とペスト。彼は口許を吊り上げ、彼女は慌しい事態に溜め息を零しながら、カーテンを上から飛び越え外へと向かっていった。

 

 

「巨人族! まだ襲撃から少ししか経っていないのに、もう第二陣が……!?」

「この感じでは、下手をするとさっきの時よりも数が多いかもしれませんね。仕方ありません、アーシャ行きますよ!」

「わ、分かった!」

 

 

 アーシャを頭に乗せて、ジャックも萃達の後に次いで向かおうとする。その際、彼はチラリとウィラを一瞥した。彼女は、何処か悲しそうな表情で首を横に振り、そして耀を横目で見た。

 それだけのやり取りで、ウィラが前線には出ないと把握する。元より戦いを好まぬ性質。また、彼女はそのギフトの特性状敵味方問わずに被害が出かねない事も考慮したら、耀のお守り任せた方が得策だろう。

 

 最終的に、黒ウサギとジンもジャックとアーシャと共に地上へと向かっていった。残されたのは耀とウィラの二人。

 

 

「……ウィラさん」

「っ、だ、駄目……! 安静にしてないと、無理したら────」

「逃げますよ」

 

 

 刹那、声を上げる間も止める間もなく、ウィラは突然ベッドから飛び出した耀に抱えられ、カーテンを越えようとした

 いきなり何を……!? そんな疑念が過ぎる。だがそれは、、次の瞬間に襲ってきた耳を劈くような音と爆風によって瞬く間に消え去る事となった

 

 

「っ!?」

 

 

 飛びかけの体勢で爆風に煽られた二人は、仕切りや器材を巻き込む形で吹っ飛ばされ、四つ五つを巻き込み終えた所で停止した。

 救護区画を強襲。混乱する意識の中、ウィラはそれだけは理解できた。そして、ここには多くの搬送者が居て、爆発の近辺に居た者達はまず、ただでは済んでいないとも。

 

 

「ぁ、ぐっ……!!」

「ッ、よ、耀! 耀!?」

 

 

 耳元に聞こえた苦痛を孕んだ声。そこで漸く、自身が耀に庇ってもらったのだという事を思い出した。

 被さるカーテンを除け、目の間の彼女を見る。その乏しい表情が、確かに苦悶を示していた。次に患部に目を移すと、包帯越しに紅い染みが急速に広がり、遂には押さえきれずに幾筋もの線を引き始めた。

 このままでは不味い。直ぐに傷を抑えないと……そこまで考えてふと、思考が冷静なった。そして思う。この状況を作り出した者は誰で、今何処に居るのかと……

 

 

「……避けなければ、苦しまずに済んだのに」

「っ!!」

 

 

 不意に聞こえた、幼い少女と思われる声。

 灯りが減り薄暗くなり、粉塵も舞って視界が利きにくい中、その声の主は二人の目と鼻の先に逆光のシルエットを映す。パキンッ、ジャリッと、恐怖を煽る足音を鳴らして、近づいてくる。

 ウィラは早く逃げないとと思った。だが出来ない。体が、足が、言うことを聞かないのだ。幼い、だけど、心を鷲掴むようなオドロオドロしい声音を聞いてしまってから。

 

 やがて、声の主……一人の少女が、萎縮するウィラの目前で立ち止まった。

 それは本当に幼い少女だった。箱庭では見かけない水兵の姿をした、背で言えばす萃と同じか少し大きいか位の少女であった。

 

 

「? 貴女は……まぁ、いいのです。今直ぐに退いて下さい、私はそちらの人に用事がありますので。……でも、もし承諾頂けないようでしたら……二人仲良く逝かせてあげます」

 

 

 そんな少女が、その手に装着した二連の砲塔を持った得物を向け、ウィラに語りかけてくる。耀を渡せば、命だけは見逃すと。そうでなければ一緒に殺すと、隠すこともせず告げてきた。

 

 当然ながら、ウィラはそれに頷く筈はなかった。得体の知れない恐怖を無理矢理押し殺し、彼女は少女へ杖を突きつけ叫ぶ様に唱えた。

 

 

召喚(summon)、〝愚者の劫火(ignis fatus)〟!!」

 

 

 彼女の呼び声に応じ、地獄の境界から全てを焼き尽くす劫火が放たれる。少女もそれに応じ砲塔から爆撃を放とうとしていたが、寸分の差で間に合わない。

 蒼炎は一瞬で少女を包み込み、塵芥の一つも残さずに全てを燃やし尽くした。

 

 完全に消失した。それを認識した途端、ドッと彼女は脱力した。今の少女は一体誰だったのか、そんな疑問ももはや考える余裕もない。

 

 

「……ウィラさん」

「っ、耀! だ、大丈夫……!?」

 

 

 声を掛けられハッとして耀を見る。

 痛みに苛まれているのか苦しそうではある。でも、全身の傷口はギフトのお陰か徐々に傷が治癒していっている。目で見れば微々たる速さだが、普通にしてみれば驚異的な速さだ。

 取り敢えず、これで大事には至らないのだと、安心する。が、さっきの少女が口にしていた言葉がふと頭に過ぎった。少女は明らかに耀を狙っていた。と言うことは、二人は何かしらの関係があった者同士ではないのかと。

 

 

「……耀、さっきの子……耀のことを狙ってた」

「……そうですね」

「……知ってるの、あの子の事? もしそうだったら……」

「はぁ、何を気に病む必要があるんですか。彼女は私を殺すつもりだった、それをウィラさんは助けてくれた。それで充分では?」

「う……そ、そうだけど……」

 

 

 耀はウィラの疑問はバッサリと切り上げた。 ウィラも、これ以上は聞いてはいけないのかもしれないと感じた。だから、募る疑問は一旦飲み込むことにするのだった。

 

 

「……あぁでも、一つだけ言っておく事がありますね」

「え……あ、なに────っ!!」

 

 

 意図せず息が詰まった。

 耀の瞳が……先程の少女に似通った感情を映していたのだから。表情は穏やかに、だけど瞳の奥はそうでない。ウィラはさっきと全く同じ心地に追いやられた。

 

 そんな彼女の心情を知ってか知らずか、耀は続けて言った。

 

 

 

 

 

「────次、()()()()()()()()()()、私を助けようなんてせずに逃げて下さい」

 

 

 瞬間、ウィラは側頭部に激しい衝撃が奔り、意識を深い暗闇へと沈めてしまった。

 

 

 

 




4巻終了までの流れは考えてあるものの、予定とは少し違った展開になってしまう……。
そんな事ありませんかね?
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