■■■■たちが異世界から来るそうですよ?【削除&改訂予定】   作:白結雪羽

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今度は耀サイド。
それと、少し短めです。



彼女の胸騒ぎ

 

 

 

 

 宿舎の二階。早期回復に努めて泥の様に眠っていた耀は、その驚異的感覚器が感じ取った外の違和感に気付き目を覚ました。数秒ほど意識の覚醒に間を置いてベッドから降り、備え付けのランプを灯して窓の傍に寄った。

 その時同時に、体の調子も確認する。丸一日を治癒に宛がったからだろう、傷と呼べる箇所は一つも見当たらず、最も怪我の度合いが酷かった右足も、多少の違和感こそあれ歩く分には支障は無かった。

 

 

(もう夜……何だか胸騒ぎがしますね)

 

 

 また襲撃が来るなら今夜だろうかと吐息を零し、近くに見える大幕府にボンヤリ眺める。

 

 

 ────そして、悪い予感は的中する。

 

 

「っ」

 

 

 耀は此処で初めて、耳に障る竪琴の音色を、階下に居る二つの気配を感じとった。かと思えば、間もなくしてその内の一つが外へと飛び出したのを感じ取る。

 

 

(……同じ建物の中に居たのに、気付けなかった……? いいえ、それよりもこの匂いは……飛鳥さ────ッ!!!)

 

 

 最後まで考える猶予は与えられなかった。

 突如、外で耳を劈くような雷鳴が数多と轟き、その刹那、彼女の居た宿舎が瞬く雷光を受け木っ端微塵に吹き飛んだのだ。

 咄嗟に風の障壁を逆巻いて瓦礫を弾く事は出来たが、その衝撃だけは防ぎきれず空中へと大きく吹き飛ばされてしまう。

 

 

「くっ……!」

 

 

 冷静に体勢を立て直す。もし眠っていたままだったら、竪琴の音色をモロに受けて意識が沈んでいたら、最悪大瀑布の落ちる断崖絶壁に真っ逆さまになる所だった。実に幸いである。

 だがそこで安心するにはまだ早い。宿舎を粉砕した轟雷は、立て続けに大樹の根を焼き、岩盤を崩壊させた。

 

 

(……!)

 

 

 降り注ぐ瓦礫の弾幕を縦横無尽に飛び回り、時には暴風で粉砕しながら周囲の状況を確認する。

 ふとその途中、彼女は下方に避難の遅れた木霊の少女を視界に捉えた。近くには、誰も彼女を助けられそうな者は居ない。

 

 

(あぁもう、危なっかしいですね……!!)

 

 

 地上に出るのを優先して見捨てるかという思考を頭の隅に追いやり急降下。風圧で目の前の瓦礫を悉く弾き、木霊の少女がそれらに巻き込まれる直前、彼女の手を取り抱え込んだ。

 

 

「はぁ、大丈夫ですか?」

「は、はい。ありがとう、ございます。……あ、貴女は、〝ノーネーム〟の……?」

 

 

 助けた少女が耀のコミュニティネームを名指しで口にする。小首を傾げ、今一度少女の顔を覗き込む。

 

 

「……あぁ。貴女は確か、昨日受け付けに居た……」

「はい、キリノと申します」

「そうですか……っと。細かい話は後にしましょう。今は早く此処を抜けないと危険ですから、振り落とされないよう確り掴まってて下さいよ」

「わ、分かりまし、キャッ……!」

 

 

 少女を右腕に抱え直すと、耀はグリフォンも斯くやという速度で空を翔け、キリノを逃すために視線を巡らす。だが、何処も彼処も阿鼻叫喚と混乱の渦中。さらには途中遠目に微かに巨人族の姿も垣間見えた。その直後、アンダーウッドに巨人族の襲来を知らせる警鐘が鳴り響く。

 

 

「襲撃を知らせる鐘……! そんな、巨人族まで現れるなんて……!」

(……タイミングにしては、出来すぎてますね。でも、懲りずに三度目を仕掛ける程彼らも能無しには思えませんし……────っ!!)

 

 

 その疑問は、直後空を覆い尽くす程に舞ってきた黒い封書によって解かれた。

 巨人のみならず魔王の襲来。まず間違いなく両者は結託している。巨人族はあくまでも隙を突く為の前哨戦に過ぎなかったのだと、理解した。

 

 耀は即座に封書を手に取ると、一旦地上に降り立ち封書の内容を確認した。

 

 

「…………レティシアさん? (どうして彼女がホストマスターに……? それにこのゲーム……これまた、飛鳥さんの好きそうな内容ですね)」

 

 

 紙面に記されていたゲームの内容は冷酷無慈悲、その言葉がピッタリと嵌まり込むような内容であった。そして、文字列越しだと言うのに比類無い憎悪の念が感じ取れた。このゲームを強制した魔王……恐らくレティシアだろうが。彼女は一体何を思ってこの様なゲームを強いたのか、そこが酷く記憶の淵に引っ掛かり、耀の表情を険しくさせる。

 

 

「っ! あ、危ないっ、避けて!!」

「ッ」

 

 

 キリノの叫びに耀は頭上から不自然な速度で飛来する岩塊らしきモノを一瞥した。そして反射的に、右手でキリノを抱き寄せ、空いた左手を力強く握り締めた。瞬間、岩塊モドキは激しい爆音、紅い飛沫と妙な硬さの破片を伴い粉々に爆散した。

 キリノを庇うように立った耀に、弾けた液状のものが降り注ぐ。

 

 

(これは……血? では、今のは……)

 

 

 空を仰ぎ、今度は複数落下してきた岩塊モドキを流石に捌ききれないと、バックステップで避ける。

 

 

(あの弾け方は間違いなく生き物のそれ……とすると、下手に近づかない方が賢明ですね)

 

 

 肌を伝う得体の知れない血? に不快感を感じながら、謎の塊から距離を空けようとキリノの手を引く。

 しかし、彼女が一瞬目を離したその瞬間。謎の塊から突如巨大な触手が出現し、隙を突いてキリノを捕らえられてしまった。

 

 

「きゃあっ!!?」

「っ、しまっ……くッ!」

 

 

 振り向き様、左手に光点を出現させ思いっきり握り潰そうとする。だが、残る四つの塊が、それぞれ耀の四、五倍はある巨大な蠍や蛇、火蜥蜴といった異形に変貌し耀をの動きを邪魔してしまった。その間に、触手の化け物はキリノを捕まえたまま移動を開始してしまう。

 

 

「邪魔ですッ……!!」

 

 

 両手に引き寄せた光点を握り潰し、二体を粉砕。

 莫大な熱と炎を撒き散らしてくる火蜥蜴は暴風を叩きつけ仰け反らせた所を、間髪を入れずに同じ末路を辿らせる。

 しかし、それで終わりではない。今も次から次へと謎の塊は地上に飛来し、巨大な化け物へと変貌。破壊と火災を振り撒き暴れだしている。言ってしまえば限が無い。

 

 

「面倒な……!」

 

 

 敵と炎に撒かれながら、血飛沫を被りながらも、キリノを見失わないよう彼女は翔ける。空にから行こうにも化け物の塊とそこから変貌した怪鳥がそれを阻んでいるため、地上スレスレを無尽に。

 時には拳で、脚で敵の攻撃を弾き、また近くの水流を竜巻で巻き上げ周囲を掃討したりもする。それでも減らしきれないのだから相当な数が今、アンダーウッドで暴れていると嫌でも認識させられる。最早ジリ貧だった。

 

 

「…………」

 

 

 耀はふと、雷雲の覆う空を仰ぎ見る。

 時折雲間から覗く、化け物の発生源となっている塊を落とす巨躯長躯な胴。それが動く度に雲は怪しく動いていた。そして遂には、

 

 

『GYEEEEEEEEEEEYAAAAAAAAAAAAAaaaaaaaaaaaaaaaEEEEEEEEEEYYAAAAAAAAAAAAAAAAaaaaaaaッ――――!!!』

 

 

耳障りな咆哮を轟かせる最強種・龍の頭部を視認する。

 途端、耀の瞳が氷点下に達したが如く冷めきったものとなった。

 

 

(本当に、毎度毎度……はぁ。……やっぱり、見たくもない奴が平気で居る場所なんですね、此処(箱庭)は)

 

 

 冷酷な表情。化け物の返り血も相俟って宛ら幽鬼のようだ。

 

 

(……いけません。今は彼女(キリノ)の救出を優先しましょう。アレを消すのは後でもいいです……)

 

 

 ジリリ……と、耀の懐のギフトカードの記載が僅かにぶれた。だが彼女はそれに気付かない。

 

 背後から飛び掛ってきた二つ頭の猛犬を、()()()()()()()()、耀は急いでキリノの後を追い駆けた。

 

 

 

 




血塗れの耀が敵をバッサバッサと倒してく光景……想像するとけっこうヤバイ図ですね、うん。
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