■■■■たちが異世界から来るそうですよ?【削除&改訂予定】   作:白結雪羽

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2015/01/19
勝手ながら、ギフト名を一部変更しました。



試練とギフトカード

 

 

 

 

「さて、今一度名乗り直し、問おうかの。私は〝白き夜の魔王〟――――太陽と白夜の星霊・白夜叉。おんしらが望むのは、試練への〝挑戦〟か? それとも、対等な〝決闘〟か?」

 

 

 銀幕と暮れぬ太陽の世界。その中心にて、白夜叉は三人に問うた。

 突如訪れたのは爆発的な視界の変異。狭量な八畳間の空間など其処にはなかった。これは太陽の運行を司る星霊・白夜叉の持つゲーム盤の一つなのだ。それを瞬く間もなく顕現させたというのだから、彼女の実力は相当………予想の範疇にも収まるものではないだろう。今此処に、彼女に真っ正面から衝突して勝てる者など………、

 

 

「――――む?」

 

 

 白夜叉は違和感を覚えた。否、その違和感は明らかにその双眸が捉えていた。単純な事、対面していた筈の三人が居ないのだ。黒ウサギも今丁度気付いたのか、彼らを探して辺りに視線を泳がせる。

 

 

「あ、あれ? 御三人様………?」

「(連れ損ねた? いや、それは有り得ない。では一体何処へ………?)」

 

 

 隠れる場所など無いし、彼らがそんなひ弱な行動を取るとも思えない。白夜叉は広大な雪原に視線を揺らし、気配を辿ろうとした――――その時、

 

 

「――いやぁ、流石だな白夜叉様。太陽の運行を司る星霊……か。ハッ、滅茶苦茶オモシレエじゃねえかアンタ」

「ッ!?」

 

 

 突然、白夜叉の右手側から感嘆と愉快を孕んだ声がした。反射的にバッ! とそちらを向くと、其処には――――壮大な白夜と暮れない星を望む十六夜が悠然と立っていた。その続け様に、

 

 

「ほんっとう……最高ね。これでも彼女以上の強者が上には居るのよね? もう至れり尽くせりじゃない」

「少なくとも、飽きはしないです……」

 

 

 今度は左手と背後、それぞれ飛鳥と耀が世界を見て嗤っていた。

 白夜叉は愕然とした。一体いつの間に………いや、それ以前に自身に三人を覚れなかった事実に愕然としたのだった。彼女はとある事情で力は大幅に格下げされているが、それでも童三人程度を丸め込む力はある。今回は、この箱庭で彼らが越えていかねばならない壁を目の前に彼らを試そうとしたのだ。

 だが、その期待は全く予想だにしない結果となった。

 

 

「(そ、そんな馬鹿な……!? この私が容易く接近を許しただと……!? ギフトを行使した気配はなかった……ということは、こやつらはそれ相応の実力を兼ね備えているのか!)」

 

 

 唖然としていた白夜叉であったが、その表情は直ぐに『面白い』と凄みを帯びた笑みにとって変わった。

 

 

「く、くくく………おんしら、実に面白いな。いやはや、こんなにも驚かされたのは何時ぶりかのう」

「そりゃお互い様だ。こっちも随分と良いもん見せてもらった。――――でだ、アンタのゲームだかな、」

「うむ……して? おんしらはどちらを望む?」

 

 

 三方向からの気持ちを昂らせる視線。十六夜は二人にそれぞれ視線を移し………数瞬の末、返答を口にした。

 

 

「俺達は――――〝試練〟を受けてやる」

「ほう? 〝決闘〟でなくて良いのか? 私はてっきりそちらを指名すると思ったのだが、」

 

 

 嘘だ。白夜叉も、きっと三人は()()()試練を選ぶと予想はしていた。今はその時ではない、四人は理解していた。

 

 

「ふふ、お楽しみは先にとっておいた方が面白いでしょう? 何も日帰りで箱庭から去る訳じゃない。時間はまだまだ全然あるわ」

「そういう事です……」

「そうか。では、私も気長に待たして貰う事にするかっ」

 

 

 白夜叉は痛快に哄笑を上げる。十六夜と飛鳥もそれにつられて声を出した。

 そんな中黒ウサギはというと……状況が理解出来ずポカーンと呆けていた。

 

 

 

 

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

「さてと。試練を選んだおんしらには……そうだのう、」

 

 

 一頻り笑い終えた白夜叉は、仕切り直しとばかりに三人に与えるべく試練を思案する。三人は黒ウサギの有り難いお説教を苦笑気味に流しながら彼女の次の告げを待つ。

 すると、不意に彼方の山脈から空気を揺らす甲高い鳴き声が聞こえた。

 

 

「……何ですか、今の鳴き声」

「ふむ………そう言えばあやつが居たな。丁度良いか」

 

 

 手招きを山脈に向かってする白夜叉。間もなくして、其処から獅子の胴と鷲の頭・翼を持つ幻獣――グリフォンが姿を現した。

 

 

「へえ、グリフォンか。実物は初めて見たな」

「おんしらの世界ではお伽の存在だろうからな。あやつこそ、鳥の王にして獣の王。〝力〟〝知恵〟〝勇気〟の全てを兼ね備えた、ギフトゲームを代表する獣だ」

「と言う事は、お相手は彼なのね」

 

 

 一行の前に風と共に降り立つグリフォン。こうして対面すると、5メートル程の体躯はとても大きく見えた。

 

 

「さて、肝心の試練だがの。おんしら三人とこのグリフォンで〝力〟〝知恵〟〝勇気〟の何れかを比べ合い、背に跨がって湖畔を舞う事が出来ればクリア、という事にしようか。くれぐれも天狗に終わらぬよう気を付けるのだな」

「ハッ、冗談!」

 

 

 三人は白夜叉が顕現させた契約書類(ギアスロール)を手に取った。

 

 

―ギフトゲーム名 〝鷲獅子の手綱〟―

 

・プレイヤー

 逆廻十六夜

 久遠飛鳥

 春日部耀

 

・クリア条件

 グリフォンの背に乗り湖畔を舞う

 

・クリア方法

 〝力〟〝知恵〟〝勇気〟の何れかでグリフォンに認められる

 

・敗北条件

 降参かプレイヤーが上記の勝利条件を満たせなくなった場合

 

 

 一通り読み終えた三人は、誰がゲームの先陣を切るか話し合う……

 

 

「春日部が一番合ってるだろ」

「ええ、春日部さんが一番合ってるわね」

「……。理由を聞いてもいいですか?」

「「春日部/さんだから」」

「…………」

 

 

……までもなくあっさりと決まった。釈然としない耀だったが、確かに自身のギフトには丁度良いと考え、素直に了承した。彼女としては、十六夜が打って出ると思っていたのだが………世の中分からない事はあるものだ。

 

 グリフォンと耀は向かい合う。耀はこんな時にも無表情。ただ能面顔までいっていないのが救いだろう。

 耀は普段と変わらない声音でグリフォンに話し掛ける。

 

 

「初めまして。春日部耀と言います」

『!?』

 

「ほう………グリフォンと言葉を交わすか。おんしらはこれを知っておったのか?」

「まあ予想だがな。判断材料は気休めにもならない程度だったが」

「私は十六夜君に教えてもらったわ」

 

 

 その判断材料は? とか何時教えたのか? とかはスルー。

 耀はグリフォンへと交渉に出た。

 

 

「遠回しは失礼なので率直に………私を貴方の背に乗せて、誇りを賭けて勝負をしましょう」

『……何……!?』

 

 

 交渉と呼べるかは甚だ疑問だが、揺さぶりには成功。気高い……悪く言ってプライドの高い彼らに〝誇りを賭けろ〟というのは最高の挑発に他ならなかった。

 耀は間髪入れずに続けた。

 

「あの山脈。そしてこの湖畔。始発と終着はその通りに、時計回りで貴方は空を駆ける。勝敗は、私が途中で振り落とされれば貴方の勝ち。私が最後まで乗っていられたら私の勝ち。これでどうです?」

 

 

 なんと単純明快な。耀の揺るがない双眸がグリフォンを見つめる。対しグリフォンは、

 

 

『――娘よ。お前は私に〝誇りを賭けろ〟と持ちかけたな。確かにお前の述べる通り、娘一人振るい落とせぬようでは私の名誉は失墜するだろう。――――だかな娘。誇りの対価に、お前は何を賭すのだ?』

「私自身を賭けます」

 

 

 即答だった。思わぬ返答に少し詰まるグリフォン。

 と、ここで黒ウサギは慌てて耀に叫んだ。

 

 

「だ、駄目です! 本気なのですか耀さん!?」

「……貴方は誇りを賭ける。私は自身の全権を。もし私が負けるようなら、貴方は私をどうしようと構わない。例え命を絶てと言われてもその通りにします。……如何します?」

『…………、ふむ』

 

 

 耀は二つの案を考えていた。一つは〝命〟。もう一つは〝春日部耀の全権〟だ。どちらも正気で言えるような条件ではない……が、耀は本気であった。後者は場合によっては情けを掛けられそうだが、グリフォンならそのような無粋な事はしない。そう確信を持っての提案だった。そして、グリフォン自身もそれを理解した。

 耀の無謀とも言える案に、黒ウサギの焦りは募る一方だが、他の三人が、制止に入る。

 

 

「黒ウサギ、下がらんか。これはあの娘から切り出した試練だぞ」

「気持ちは分からんでもないが、大人しく見とけ」

「そうよ。ここで手を出してしまっては二人に失礼でしょう?」

「っ、お二人は! 耀さんが部の悪いゲームをしなければならないのに、心配ではないのですか!?」

「「ああ/ええ」」

 

 

 黒ウサギの悲痛な叫びに何の躊躇いもなく返す二人。黒ウサギはその薄情な対応に顔を真っ赤にし――

 

 

「態々不利なゲームを勧めると思うか?」

「………え?」

「そうよ。心配なんて必要ない。春日部さんは無事にクリアしてしまうもの」

 

 

 十六夜と飛鳥のその言葉は確信を秘めていた。

 

 

「で、ですが……」

「えぇ、やってみなければ分からないでしょうね。でも断言できるわ。()()()は必ずやってみせる、必ずね」

 

 

 飛鳥の答に黒ウサギは押し黙ってしまった。

 以上の会話を自然と聞き入れてしまった耀は、内心複雑であったが、意識を直ぐに転換する。

 

 

『………乗るがいい、若き勇者よ。鷲獅子の疾走に耐えられるか、その身で試してみせよ』

 

 

 黙って頷き返す耀。そして、彼の背に跨がると手綱を離さないよう確りと掴む。そのまま、お互いこれ以上余計な言葉を交わすことはせず、疾風を巻き、白夜の空へと飛び立った。

 

 

 

 

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

 結果だけ言おう。耀は勝負に勝った。氷点下二桁にも及ぶ極寒の風とその衝撃に見事耐えきってみせたのだ。

 そして、湖畔に戻ってきたと同時にグリフォンの背から飛び降りた。その行動に彼と黒ウサギは驚愕したが、何と耀、グリフォンの纏っていた風を展開し静かに空を蹴って降りてきたのだ。

 そんな終始ヒヤヒヤとさせてくれた彼女に、十六夜と飛鳥は労いをかけた。

 

 

「お疲れさん」

「うん……」

「春日部さんも、結構悪戯っ子なのね。最後に中々魅せてくれたじゃない」

「……そんな心算はないです。ただ、新しい力を試しただけなので」

 

 

 耀は首に下げられた飾りを握り締めた。

 

 

『見事。お前の得たギフトは、私に勝利した証として使ってほしい』

「……感謝します」

「いやはや、大したものだの。このゲームはおんしの勝利だ。………ところで、おんしのそのギフトは……先天性のものか?」

 

 

 白夜叉は先の御技に大いに関心を寄せていた。グリフォンの特性を手中に修めてみせたギフト、その特異性は箱庭でも珍しい部類のものなのだ。

 耀は、白夜叉の質問に否と返す。グリフォンと話せるのも、グリフォンの風を奏してみせたのも、彼女の木彫りのお陰だという。その木彫りは、どうにも父親が作った――人造のギフトのようで、白夜叉は耀に頼みその木彫りを眺めた。

 白夜叉曰く、その木彫りは〝系統樹〟とよばれる生物の発祥・進化の系譜を示したものらしく、材質・正確な幾何学等も含め人間の手によって作られたものとは思えない程の代物らしい。序でにその素晴らしさに惹かれ白夜叉は買い取りたいなどとほざいてきたが、当然却下された。

 

 話は移り、本題のギフト鑑定の事になったのだか………白夜叉に鑑定は専門外のようだった。まあそれ以前に、

 

 

「あれだ、他人の価値観で勝手にレッテルを張られるのは気に入らないな」

「そうね。趣味じゃないわ」

「お断りします」

 

 

と、こんな感じに一同お断りだった。全く以て、此処へ来た理由を全否定だ。それには白夜叉も困ってしまったが……不図、妙案が思い付いたとばかりに笑みをとる。

 

 

「何にせよ、だ。試練を越えたおんしらには〝主催者〟として……星霊の端くれとして何か〝恩恵〟を与えねばならない。ちょいと贅沢な代物だが……今後の楽しみ、コミュニティの復興の前祝い、とでも思って受けっとってくれ」

 

 

 パンッ、と軽い柏手が一つ鳴り響く。すると、忽然と三人の前に輝くカードが顕れた。

 

―コバルトブル―

逆廻十六夜・〝正体不明(コード・アンノウン)〟〝八象〟〝■■■■〟

 

―ワインレッド―

久遠飛鳥・〝威光〟〝覚〟〝■■■■〟

 

―パールエメラルド―

春日部耀・〝生命の目録(ゲノム・ツリー)〟〝ノーフォーマー〟〝奇跡の執行(グラティア)〟〝■■■■〟

 

 

以上が三人に与えられた色のカードに記されている事だ。数は一番耀が多い事になっている。

 まあ何にせよ、これは〝ギフトカード〟というもので、所有者のギフトを示し、顕現されたギフトを収納できたりする………謂わばかなりお高い便利グッズだ。本来ならコミュニティの名と旗印も記されるらしいが、彼らは〝ノーネーム〟故に少々味気無い。が、三人は特に気にする事もなく些細な差だろ? とご機嫌に流した。

 

 

「そのギフトカードは、正式名称を〝ラプラスの紙片〟即ち全知の一端だ。そこに刻まれるギフトネームとおんしらの魂で繋がった〝恩恵〟の名称。鑑定は出来ずとも大まかな正体くらいは把握できる」

「へえ? ………それじゃあ俺達は中々にレアケースなんだな」

「ん?」

 

 

 白夜叉は三人の許に歩み寄り、ギフトカードを覗き込んだ。そこには十六夜の〝正体不明〟の他、全てに一箇所ノイズが走っていた。

 面白そうに笑う十六夜と飛鳥。不思議そうにカードを見つめる耀。だが、白夜叉の視線は三枚のカードに吸い寄せられていた。

 

 

「〝正体不明〟に、ノイズが入ってる、だと……? いいやありえん。全知である 〝ラプラスの紙片〟がこのようなエラーを起こすなどと……」

 

 

 顔を顰め、訝しむ様子で三人を見る白夜叉。彼女にはますます三人が理解できなくなってしまった。判断材料はあるにはある。だが、何れも不明瞭極まりないもので確信には至れなかった。

 その時、白夜叉はゾワリ! と背筋に寒気を感じた。背中に氷柱でも差し込まれたような不穏当な感覚。だがそれは直ぐに治まり、結局何だったのかは分からず仕舞いだった。

 

 こうして、ギフトの疑似判定物品を授かり用件は済んだノーネーム一行は、最後に白夜叉から〝魔王〟についての忠告を受け、心踊らせながらサウザンドアイズの支店を後にしたのだった。

 

………その時に、十六夜と飛鳥の口許が冷たく三日月を描いていた事、耀の瞳が一瞬不適に光った事に、気付く者は居なかった………

 

 

 

 

 

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