■■■■たちが異世界から来るそうですよ?【削除&改訂予定】   作:白結雪羽

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堕神との接触

 

 

 

「ふむ……成る程? まったく、レティシアめ。騎士と謳われたお主がまんまと敵の術中に嵌まりおったな……」

 

 

 手元に寄せた漆黒の契約書類(ギアス・ロール)を握り潰し萃は、雲海にその巨体を隠しながら化け物を落とす巨龍を仰ぎ見た。その目に、今アンダーウッドを包み込む畏怖の感情は見えない。あくまで道すがらの仔蛇を見るようで、泰然自若としていた。

 彼にとって、あの巨龍は然して脅威ではないと、そういう事だろう。

 

 

「萃ッ、貴方も少しは手伝いなさいよ!! こいつら無駄にしぶとくて殺り辛いのよ!」

 

 

 ふと、耽っていた所を傍から苛ついた声が横から飛んできた。

 彼が視線をそちらに向けると、幾多の化け物共と次々に交戦しているペストの姿が映った。と言うより、強襲を受けた時から一緒に行動していたのだが。

 

 ペストの放つ死の風は、霊格(そんざい)に比例した威力を持ってして、一体、また一体と巨大な大蛇やら触手生物を葬っていく。だが、如何せん数が多過ぎた。倒しても倒しても、化け物共は空より延々と降り注いできているのだ。空中戦も出来る身、あまり苦戦は強いられてはいないにしても、苛立ちは着々と募っている。襲撃前からの精神状態も相俟って。

 

 

「ペスト、ちと手際が悪いぞ? あと情に流されて隙だらけじゃ」

「手すら動かしてない萃に言われたくない! それに情に流されてる? ふんっ。私ね、今誰でもいいから当たりたい気分なの。寧ろ都合がいいわ、ねっ!!」

 

 

 ウィラとの事を未だに根に持っているようだった。彼女も、萃がどんな性分なのかは分かってはいるのだろう。しかし、理解するのと納得するのとでは、感情面で大きな差が出てきてしまう。モヤモヤとした感覚を放置しておくほど、ペストはまだ気が長くはなかった。

 因にだが、件のウィラは今、ジャックに担がれて本陣営に避難させられている。たいした傷ではなかった筈なのだが、未だに意識が戻っていないのだ。

 

 

「「「GIEAAAAAAッ!!!」」」

「うるさいッ!」

 

 

 空より奇襲してきた二頭の獅子モドキ三体を纏めて吹っ飛ばす。気のせいか、萃にはペストの表情が少し生き生きとしているように見えた。

 

 

(っと、自分も突っ立とる場合じゃないのう)

 

 

 懐に契約書類を押し込み、片手間に飛び掛かってきた大蛇の頭を消し飛ばしつつ、彼は一向に降りてくる気のない巨龍を再度仰ぎ、億劫そうに息を吐いた。

 それは不幸中の幸いなのだろうが、彼にとってはわざわざ空に向かわねばならなく面倒な状況であった。

 ……この萃、あの巨龍を打ち倒す気満々である。そしてそれが出来る程の力を持つ事も否めないので何も言えないが。

 

 

(はぁ……面倒じゃのう……)

 

 

 内心そうは思いつつ、飛び出す用意はする。

 

 行く前にペストに一言注意しておくかと、彼は彼女の方へ振り返った。相変わらず乱雑に敵を葬っており、今も丁度、一体の仔竜のような化け物に死の風を放とうとしていた。

 

 

 

 ……だがその瞬間、萃の顔色は一変した。彼が今までに一度たりとも見せた事のない、焦燥の色をハッキリと浮かべたのだ。

 

 

「ペストッ!! 今直ぐその化生から離れろッ!!」

「え――――」

『キヒヒャヒャ、おっそ~い♪』

 

 

 死の風を叩き付けられた仔竜は、絶命する所か不気味にな少女の声を発し、その頭部にある角を呆然とするペストの心臓部目掛けて触手の様に突き出してきた。

 

 

 

 

 

 ────次の瞬間、ペストの体は宙に浮き、血飛沫が彼女を濡らした。

 

 

 

 

 

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

 

 アンダーウッドの東南に位置する平野部。そこで繰り広げられる戦いの状況は、目に見えての劣勢だった。二度の襲撃に〝龍角を持つ鷲獅子〟連盟の戦力はその過半数が負傷状態。まともに戦える者達でも、一体に数人で当たらねば釣り合わない巨人族が、何百という勢力を引き連れてきては、到底優勢に回れる筈も無かった。

 既に漂い始めている敗戦の空気。空にはとぐろを巻く巨龍、地上には巨龍の生み出す化生に巨人の軍勢。そして魔王の襲撃。彼らの瞳にはもう、明確な絶望感を映し出されていた。

 

 

()()()()()()()()退()()()()()!!!」

『────!!』

 

 

 そんな彼らも、突如騒然たる戦場に不思議と響き亘った声には、耳を疑った。そして、次の瞬間には唖然とした。何せ、自分達の体が、ひいては巨人族までも、その声の言葉通りに後退を始めたのだから。互いに得物もギフトも使えぬまま、距離だけが開いていく。誰も、一切状況が掴めなかった。

 

 

「……本当にまぁ、えげつねえギフトだな」

 

 

 そこへ続いて、別の声が聞こえてくる。

 一番最初に気付いたのは空に居た幻獣達。声の主は何と、天から降って……否、跳んできたのだ────数十もの巨大な石柱の群れと共に、巨人族の側へ向かって。

 

 それからは想像に難くないだろう。飛来した大樹の根にも匹敵するだろう石柱群は、得体の知れない力によって後退を続ける最中に次々と突き刺さっていく。下に居た巨人族を当然の如く巻き込み、彼らの断末魔は地面が抉れ、吹き飛ぶ爆音に紛れ聞こえもしない。

 

 

『なん、なのだ……これは……!?』

 

 

 誰かが呟くが、それに答えられる者などこの場には居なかった。

 やがて、時間にして僅か1分半程が経過すると、あれ程猛威を振るっていた巨人族は、その数の殆どが命尽き果てていた。残った者達でさえも、戦う意欲を完全に殺がれた上に、「()()()!」と〝威光〟を発動されその場から逃げる事すら封じられてしまった。

 

 

「何て言うか、お前らって学習しねえのな。数押しゃ何とかなるとでも思ってんのか、それともお前らの背後にいる奴が捨て石とでも見なしてんのか……ハッ、どちらにしろ滑稽には変わりねえか」

 

 

 動きを封じられた巨人族に、石柱と共に飛んできた少年・十六夜はそのまま上から目線で嘲笑混じりに呆れを零した。

 その態度に、巨人族の雰囲気が変わる。仮面越しでもその感情、怒りに歪む様が目に見えた気がした。馬鹿にされれば当然の反応だが、それは同時に、彼らにもまだ一縷の誇りがあるのだと分かった。

 

 

(だからどうしたって話だがな……)

 

 

 パチンッと指を鳴らす。瞬間、足場にしていた石柱を含め岩石の剣山に亀裂が勢いよく奔り、間をおかずに瓦礫の雨となり下方の巨人族に降り注いだ。

 十六夜は直前に後方へ飛びすさったが、動く事を封じられた彼らは想像に難くない運命を辿った。

 

 誰も、目の前に降り立った彼に声を掛ける事はなかった。いや、寧ろ彼が微かに体を揺らすだけで全員が後ずさる。ある訳ない、そう頭で理解はしていても……今度は此方が巨人族と同じ結末を辿らさせられるのではないか、彼の薄ら笑みを見てそんな錯覚を覚えてしまったのだ。もうそこに、アンダーウッドを守護するなどと言う幻獣としての誇りは欠片も存在しない。ただただ、獣としての本能が逃走を促していた。

 

 

「あーあ、十六夜君ったら。これじゃあ折角の景観が台無しじゃない。前夜祭をまだ控えてるんだからもう少しやり方ってものを考えなさいよ」

 

 

 そんな中、彼らの合間を縫って一人の少女・飛鳥が愚痴を零しながら姿を現した。そのまま、呆然と立ち尽くす彼らには目もくれず十六夜に歩み寄っていく。

 

 

「……直しゃ済む話だろ」

 

 

 一瞬横目で同盟の者達を一瞥する十六夜は、やや逡巡を挟んでそう飛鳥に返した。どうやら幻獣の琴線に触れそうな言葉が最初に浮かんだようだ。口を滑らせれば面倒になるからと何とか呑み込んだのだろう。

 

 

「そんな荒唐無稽な事言えるの、きっと十六夜君ぐらいよ。私なら頭沸いてるの? って診療所にでも連れていくわ」

「頭沸いてるとは思っても放置して観察だろ、お前の場合は特に」

「心外、私はどこぞの愉悦さんとは大違いよ――――()()()()()()()()()()()()!」

 

 

 その場で振り向き、声を張ってギフト〝威光〟を発動する飛鳥。またも不思議と響いた彼女の声は我に返り始めていた幻獣達の意識を強制的に支配し、取り零した巨人族や化生の元へと散っていった。

 

 

「ふぅ……スッキリしたわね♪」

「地上わな」

「あら、あそこに引き篭もってる蛇さんは十六夜君が何とかしてくれるんでしょう?」

「却下。彼処まで行くのが面倒だ……ってか、あれは寧ろ爺の領分だろうが。ま、今頃は()()()()()と戯れてんだろうがな」

 

 

 曇天を見上げ、雲間の巨躯を遠い目で見る。

 

 アンダーウッドに轟雷が鳴り響き黒ウサギから〝審判権限(ジャッジマスター)〟の宣言がなされたのは、それから間もなくであった。そして、巨龍の真の脅威を目の当たりにするのも……

 

 

 

 

 

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

 

「ッ……!?」

 

 

 鮮血に濡れ、後方に飛ばされるペスト。だが、彼女の体に角の刺突が届いていなければ、濡らしたのは彼女の血でもない。

 

 

『おぅふ……もう、ちょっとは手加減してよ~、お爺ちゃア~ん♪』

「往ね、堕神が」

 

 

 首から離れ離れとなった頭から不気味に甘い声が発せられるが、萃はそれを踏み砕き一蹴した。

 すると、鮮血を噴き出す仔竜の体が空間に溶けるように歪み、やがて一つの人の形をとった。それは、先に飛鳥とレティシアをローブの詩人と共に襲ったクルエルと呼ばれていた少女、その人であった。

 突然現れた見知らぬ少女。間違いなく敵なのだとペストは理解でき出来た。だが、クルエルの妖しく細められた瞳に言い知れぬ悪寒を感じ、息を呑んだ。

 

 

「キャハハ♪ そう怯えないでってペストちゃァん。今回は君には手を出さないからさっ。ね? 用事があるのは、そこのお爺ちゃんだけだよォ?」

「相変わらず耳に障る声じゃの。今度こそ監獄に放り込まれたいか?」

「アハハハっ、いやだよ。アイムノンギルトってねェ♪ ……()()、捕まる様な事をする気はさらさらないよ」

 

 

 刹那、萃はペストを抱き上げその場から飛び退いた。話についていけない彼女は「な、何なのよ?!」と困惑を顕にするが、自分達が居た地面がこの世のモノとは思えない大口に変貌してる様を見て血の気が引いた。萃が反応していなければ、間違いなく口内に覗く何重にもなった歯牙に噛み砕かれていただろう。

 

 

「……ペスト、他所を当たれ。この堕神は自分が相手する」

「な、何言って――――っ」

 

 

 ペストは彼の目を見て言い返す言葉を咄嗟に呑み込んだ。その目は暗にこう言っていた……「邪魔」だと。それは、目の前の少女が彼の手にも余るかもしれない程の強敵だと、そう言う事なのだろ。

 

 

「おーおー、お熱いねェ。なんだかRPGの夫婦キャラって感じかなっ? まぁそれはそれとして、ペストちゃん。お爺ちゃんの忠告はちゃんと聞いた方がいいかもよー? 貴女はまだ……挽き肉になんてなりたくないもんね♪」

「行かんかペスト!!」

 

 

 その言葉が発破になったのだろうか。ペストは何かを悔いるように歯を噛み締め、他の激戦区へと飛び去っていった。

 

 

「クヒヒ、折角のランデブーを邪魔しちゃってごめんねェお爺ちゃん♪」

「黙らんか、一々鼻につく。その口、縫い合わせるぞ?」

「あらま、そう言うお爺ちゃんこそっ。そんな窮屈な喋り方まだ続けてるの? 全く進歩ないんだからそろそろ止めたらァ?」

 

 

 萃が地面を蹴り抜き、岩盤が散弾となってクルエルを襲う。が、彼女は避ける事もせず服に解れすら付けずにそれらをやり過ごした。

 

 

「いきなり酷いな~もうっ。キヒヒヒっ♪」

「…………はぁ、止めだ止めだ。貴様とあの役柄(キャラ)で話しては私が疲れる」

「うんうん、やっぱりそっちの喋り方の方が似合ってるよ~。

――――それじゃ、気を取り直して……()()、君のお邪魔をさせてもらおうかな? 今あの蜥蜴さんを失う訳にはいかないのだよってねェ、キャハハハハ♪」

 

 

 ジャキンッと、クルエルの腕が大刃に変形し、地面からガチガチと牙を鳴らす彼女の身の丈五、六倍はあろうかという四足歩行の〝何か〟が這い出てくる。

 萃は深く息を吐いた。そして目元に陰りを落とし、ニィイと壮絶な笑みを浮かべた。

 

 

「それなら私は何時もの様に、貴様をとことん殺してやる。覚悟は出来てるな、()()()()?」

 

 

 ゴォンッ!! とアンダーウッドを決して軽くはない地響きが襲う。それが、古の小さな魔王と神すらも堕としめる神との衝突によるものだと、殆どの者が知る由もなかった。

 

 

 

 

 




ゲーム中断までが長過ぎる……(汗
い、いやぁ……思ったよりここで書きたい事が多く自分でも収拾がつかなくなってしまったのでして。


……はい、すみません。早めに進めるよう頑張ります。


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